3話 ロリハーフエルフのタオ・メイメイ ナメクジ生物の触腕がパンツの中に パーティを追放(以下略)4

  さて、ホーイッツだがピィピの指さした方角を駆けた。

  駆けながら『マナアローの魔法』を詠唱している。

  「我が信念よ。弓となりて、我が敵を貫く矢をつがえよ」

  ホーイッツは自分の周囲のマナが目に見えない矢となり現実に干渉する物質になる感触を脳の中で感じた。

  魔法。それは『マナ』の世界から『理』の世界の法則に干渉し現実を歪める力である。

  ホーイッツが生み出したマナの矢は3本。既に完成した魔法は彼の頭上に光る矢となって滞空している。

  マナアローは初歩的な魔法であれど、マナに干渉する才能がなければこれすらも難しい。

  (現にイチもメイメイもパルテルラットでさえもマナアローのひとつも扱えない)

  マナアローを纏う事により魔力が消費される事を感じながらもホーイッツは林の中のジャグを探した。

  見つけ次第、矢を打ち込む心算である。

  ____いた。

  ホーイッツは視線の先に、不快な音を鳴らしながら地を這うナメクジのような危険生物、ジャグを発見した。

  「くたばれ!」

  ホーイッツは幻想の中でマナの弓矢を引き絞り、そして放つ感触を感じた。

  ビュ、ビュンと空気を裂く音と共に光の矢が放たれるとジャグに突き刺さり、ジャグは粘液を噴き出し身体をくねらせると動かなくなった。

  ____他愛ない。

  ホーイッツが動かなくなったジャグの死骸を見下ろしていると、来た道からイチを先頭にメイメイとパルテルラットが追いついた。

  「ジャグは始末した。問題ない」

  「そいつは斥候だ! 本隊は別だぞ!」

  パルテルラットがホーイッツに言い放つとイチとメイメイは周囲を警戒する。

  林の中なので見通しが悪いが、耳を澄ませると生い茂る灌木の向こうからジャグジャグという粘液質の足音が聞こえ、次には大量のジャグが這い出て来たのである。

  ジャグの群れはまるで波のように灌木から現れ、白く濁ったブヨブヨの塊はホーイッツの目の先で絨毯のように広がってゆく。

  「イチはメイメイを援護。ホーイッツ君は周囲を警戒してくれ!」

  パルテルラットが言うとメイメイのバレア2魔導ショットガンが火を噴いた。

  メイメイのバレア2から放たれた散弾が強烈に大気を震わせると、ジャグ達の先頭を文字通り吹き飛ばした。

  彼女の魔力を伝導させた散弾は岩をも砕き、大地を抉る威力がある。ジャグの群れのような標的には存分にその火力を発揮する。

  「思ったより数が多いわ!」

  メイメイの魔導ショットガンはフォアエンド(銃身の下の取っ手)を前後させ次弾を送り込む。薬莢を宙に弾き飛ばしながらメイメイが次々と火力を叩き込むと、巨塊を金槌で少しずつ砕くようにジャグの群れが崩されてゆく。

  「撃ちまくれ!」

  イチもカーペイト15式で銃弾を浴びせメイメイを支援し。パルテルラットの大口径バルザック8式もメイメイほどではないがその火力を発揮している。

  しかし、数が多い。

  メイメイの魔導ショットガンは4発しか装弾できない。全弾を撃ち終えると拳銃やライフルよりも弾込めに時間を要する。

  ジャグは単細胞生物なので群れが全滅しようと行進を止める事はしない。

  敵と見做した存在がいれば何があろうと前進し、群れの中に取り囲もうとする。

  このジャグの群れも怯まず、何匹かのジャグが触腕をバネのように弾いて地面を蹴り、4人に向かって飛びかかってきた。

  「怯むな! 火力を集中させれば問題ない数だ!」

  パルテルラットは冷静にジャグの群れの規模を見極め、イチとメイメイ、そしてパルテルラットの火力で殲滅できると踏んだ。

  「メイメイ! 早く!」

  「なによ! 急かさないで!」

  イチは正確かつ驚異的な速度の連射でメイメイや自分に飛びかかるジャグを撃ち落とす。

  全弾を撃ち尽くせば、得意の奇術めいた高速リロード[弾込め]ですぐさまジャグを迎撃した。

  が、ジャグの群れはどんどんと4人に迫り飛びかかってくるジャグの数も増えてきている。

  「メイメイ!」

  「なによ! 今終わったわよ!」

  メイメイは装填が終わるとフォアエンドを引き、薙ぎ払うように散弾を連射した。

  まるで箒で埃を祓うかのようにジャグの群れが飛び散り土を粘液で濡らしてゆく。

  あらかたのジャグを殲滅したが、数匹撃ち漏らしたジャグが飛びかかり弾丸の雨の中を抜けて来た!

  「なによ! ふざけんじゃ________むぐっ!」

  「____ちぃっ!」

  生き残った数匹のジャグがメイメイらに飛びかかり、2匹はメイメイに、1匹はイチに張り付いた。

  メイメイは顔面と腹部をジャグに張り付かれて、触腕を口にねじ込まれた。

  「____ぐっ、____えっ、____もっ"がっ」

  

  腹部に取りついたジャグは彼女のスカートの中に触腕を潜り込ませ、ショーツの中に触腕を潜り込ませようとしている。

  その粘液を纏った悍ましい感触にメイメイは酷く狼狽しもがいた。

  ____い、いや! き、気持ち悪い!

  イチは銃を握った腕にジャグが張り付き、手をからめとろうとする触腕と格闘する必要がありメイメイを助けられない。

  「メイメイ! 待ってろ!」

  パルテルラットはまだ動きのあるジャグにバルザック8式の大口径弾を浴びせて沈黙させると、腰のナイフを抜いてメイメイに張り付いたジャグをメイメイを傷つけないように慎重に切り裂いて殺した。

  「ぶぺっ____! ____ぺっ! ぺっ! ____うぇええ」

  メイメイは顔をジャグの体液で汚され、口の中の不快感を無くそうと唾を吐きながら最後にはえずいて口から粘液を吐き出した。

  どうやらジャグの触腕は彼女の喉奥まで侵入したらしい。

  イチのほうは腕に張り付いたジャグを己のナイフで処理し、腕が多少汚れただけで済んだ。

  「苦労したが、殲滅できたようだな」

  パルテルラットの視線の先には弾けたジャグの死骸が体液をまき散らしながらグロテスクな絨毯を作っている。

  何はともあれ、危機を退けたのでパルテルラットは安堵した。

  ホーイッツは何かをできるわけでもなくイチやメイメイが奮戦するのを眺めているしかできなかったらしく呆けていたが、気がつくと顔がジャグの体液塗れになったメイメイが表情を怒りに歪ませ彼近づくと、渾身のビンタを食らわせ叫ぶ。

  「____!?」

  「最悪! 馬鹿! ジャグが1匹いたら近くに群れがいるのなんて常識なのに!」

  「メイメイ! やめないか!」

  メイメイが二発目をお見舞いしようとした所でイチがメイメイを羽交い絞めにして止めた。イチとしてもホーイッツに言ってやりたい事もあるが、今は激怒したタオ・メイメイを落ち着かせるのが先と判断した。

  「まあまあ。結果、ジャグの群れを駆除できて良かった。放っておいたら人を襲うかもしれないからな」

  パルテルラットがメイメイとホーイッツの間に入って混乱を収めようとしたので、ようやくメイメイも多少落ち着きを取り戻した。

  「ホーイッツ君のその気概は冒険者らしくて良いぞ!」

  パルテルラットは今回のホーイッツの先走りもさして重要視していない。弾薬は無駄に消費したが冒険者としてジャグの駆除に貢献できて良かったとすら本気で思っている。

  だが、パルテルラットは単純だが大烏の冒険者だ。

  ホーイッツが冒険者としては迂闊すぎるという事は事実の不安要素として忘れる事をしなかった。

  「次からは駆けだす前に私に声をかけてくれよ」

  そう言うパルテルラットの目が笑っていないかった、という事はない。まさしく英雄型の人物だったのだろう。