クリスマスの贈り物

  今年もやってきたクリスマス。

  去年も千秋さんと街を歩いて、二人でクリスマスのプレゼントを探した。

  今年は、何をあげよう?

  千秋さんは背が高いしかっこいいから、なんでも似合うし着こなす。

  だから、俺が何をあげればいいのか毎年分からなくて悩むんだ…(苦笑)

  「貴和、出掛けられる?用意出来た?」

  「はいっ」

  クリスマスの日は、ちょっとずるいけど、平日だったら学校も仕事もお休みする。

  年に一度の、特別な日だもん。

  一回くらい良いよね…?

  今年は土曜日だから、どっちも休まずに済んだ。

  クリスマスはどこのお店も混むから、早めに行きつけのレストランを予約しておく。

  千秋さんと出会ってから、毎年クリスマスは一緒に出掛ける。

  その、何も気にしなくていい時間が、俺は大好きだった。

  まぁ、同棲(?)してからは、ほぼそうなんだけど。

  「…うん、かっこいいね。」

  そう言って俺の腕に軽く触れる千秋さんは、白いセーターに黒いズボン、セーターの上に灰色のコート、そして俺が去年贈った紺色のマフラーを巻いている。

  俺は、厚手の黒いセーターにジーンズ、千秋さんから貰ったミルクティー色のコート、白いマフラーにした。

  お互いが去年のプレゼントを付けているところに、大事にされている感じがして嬉しい。

  千秋さんは俺を軽く眺め、最後にじっとCollarを見つめる。

  俺は、段々と首周りが熱くほてってくるのを感じていた。

  幸せで、多分俺は、千秋さんの視線だけでSub spaceに入れると思う。

  「…好きだよ。」

  じっと見つめられた後の言葉は、熱を持っていて…。

  「…俺も、大好きです。千秋さん。」

  ちゃんと言葉にしてくれる千秋さんは、本当に優しい。

  玄関を開けると冷えた空気が頬に触れた。

  千秋さんが伸ばしてくれる手を握る。

  手から伝わる温もり。

  その温もりを、この先もずっと離したくないと思った。

  空を見上げれば、星が綺麗に見えた。

  「これはどうかな。良く、似合うけれど。」

  服屋に入った俺達は、お互いに合う服を探して奮闘していた。

  千秋さんは何かと俺に服をあてがうし、俺は俺で、この服似合いそう、あの服も、あれも、いや、もう全部似合う。とかなって、結局決められない(苦笑)。

  そのうちに、どっちともなくお腹が鳴って、一旦夜ご飯にすることにした。

  レストランの中は例年通りの賑やかさで、予約しておいてよかったねなんて、千秋さんと顔を見合わせて笑った。

  千秋さんが椅子を引いて、先に俺を座らせる。

  その紳士な所も、かっこいい。

  席に着くと、膝にナプキンがかけられる。

  やがて運ばれてきた食事を取りながら、二人他愛もない話をする。

  いつも通りの会話。

  だけれど、この聖夜はどんな話も、輝く。

  「…そしたら、急にうさぎが出てきてね笑」

  「可愛い笑笑」

  声量に気を付けつつ、二人で笑い合う。

  やがてふと、会話が途切れる。

  「…天使が、通りましたね。」

  「…難しいのに、良く知っているね。」

  まだ口元に残る余韻に浸りながら、デザートを堪能する。

  ふわふわのパンケーキの上に乗ったアイスクリームが、口の中でとろけてゆく。

  「…はい」

  その声に顔を上げれば、千秋さんが俺にフォークを差し出していた。

  フォークには、俺と同じバニラアイスの乗ったパンケーキが…。

  「…ぁ、ぇ……」

  照れて固まった俺に、千秋さんは思わずといった感じで笑みを漏らす。

  「ふっ……可愛すぎ」

  その言葉に、更に顔に熱が集まる。

  「ほら、アイス溶けちゃうよ?」

  仕方なく小さく口を開ける。

  「っぁ……」

  「ふふっ入らないよ、もう少し」

  「……ぁー……/////」

  「うん、可愛い。」

  ゆっくりと口に入れられたパンケーキは、どんなものより甘美だった。

  外に出ると、多くのカップルが目に付く。

  千秋さんと出会うまでは鬱陶しかったクリスマスムードも、多くのカップルも、自分がそのうちに入れば何も気にならない。

  千秋さんと繋いだ手を持ち上げて眺める。

  あぁ〜、幸せ笑

  「クス…何してるの?」

  俺が手を持ち上げたままだから、千秋さんは付き合いながらも不思議そう。

  「…へへ、幸せだなぁって」

  照れながらそう言うと、千秋さんは目を見開いた後、幸せそうに笑った。

  「そうだねぇ」

  次に足を運んだのは、雑貨屋さん。

  これまた行きつけで千秋さんは慣れたように店主と話をしていた。

  店内を見ていると、そこで美しく、でも高そうなボールペンを見つける。

  値段を見ると、3000円。

  随分高いけど、テスター用を使って納得した。

  滑らかな書き心地は、どこまでも文字を書けそうなほど。

  重さも丁度良く、色も千秋さんに合いそう。

  何より千秋さんは、仕事でペンをよく使うから、いいプレゼントじゃないかな?

  よし、決めた。

  俺は箱に入ったそのボールペンを片手にレジに向かった。

  レジには、千秋さんの姿はなく、店主は俺を見て片手を上げた。

  お金を払って、ラッピングを頼む。

  店主は手を動かしながら笑って言った。

  「愛されてるね、お兄さん。」

  「え…」

  千秋さんから何か聞いたのか。

  驚きつつ、同時に落ち着いた雰囲気の店主にいい印象を抱いた。

  千秋さんは外で待っていてくれた。

  その後もいくつかお店を回って、最後に入ったのは、アクセサリーのお店。

  メンズもレディースも扱っているお店で、美しいデザインのネックレスやピアスや指輪が並ぶ。

  千秋さんと二人で見て回っていると、千秋さんがふと立ち止まった。

  そこは、ペアリングのネックレスのコーナー。

  「…どれが一番綺麗だと思う?」

  そう聞かれて、俺は商品を眺める。

  天使の羽や、ハート、星、星座や十字架。

  色んなデザインがあるけど……。

  「…これ、かな。」

  本能的に指を指したのは、少し小さめの、2つのリングが重なり合ったペアリングのネックレスだった。

  文字は何も書いてない、至ってシンプルなデザインだけど、どこか惹かれる。

  片方がゴールドで、もう片方がシルバーだった。

  「…クス。分かった、ちょっと待ってて。」

  そう言うと、千秋さんはそのネックレスを手に、店の奥へと行ってしまう。

  別にCommandではないけれど、大人しくアクセサリーを見て待っていたら、暫くして千秋さんが戻って来た。

  行こうか、と促されるままお店を出る。

  千秋さんは少し歩いた後、不意に立ち止まって俺の手にさっきのネックレスを乗せた。

  「ありが……」

  ありがとう、と言おうとして、ネックレスをよく見る。

  交差する二つのリング。

  さっきまで何も書かれていなかったそこには、一つのリングに筆記体で“Chiaki and Takakazu.”と、もう一つのリングに、“2017.05.15”の文字が刻まれていて…。

  この日付は、俺と千秋さんが出逢った日の日付だった。

  「……っ……」

  千秋さんがどれだけ俺を愛しているか、

  どれだけ大切に想ってくれているか、

  そのプレゼントから全てが伝わってきて、俺は泣かずにいられなかった。

  「……っう……ふぅう……」

  嗚咽を漏らす俺に、千秋さんは優しく微笑んでいた。

  ネックレスを俺に着けた千秋さんは、自分の首にも着ける。

  「…貴和、」

  千秋さんの声に、涙を零しながら顔を見上げる。

  「…きっとこれからも、何回でも、何十回でも、言うよ。」

  千秋さんの瞳が、神秘的に煌めく。

  「…愛しているよ。貴和。誰よりも、何よりも。」

  

  「っうぅ"……ふうぅっっ」

  嬉し過ぎて、幸せ過ぎて……。

  溢れんばかりの気持ちが、涙となって頬を伝う。

  千秋さんの優しい声に、何度救われたんだろう。

  その言葉に、行動に、全てに、俺はいつも、いつだって、励まされ、救われる。

  「……っこん、な…物しか渡せな…けどっ…」

  つっかえつっかえ言いながら、ボールペンを差し出す。

  「わぁ、嬉しい!最近使ってたボールペンが古くなってきてて、新しいやつを買おうと思ってたんだ。」

  千秋さんは嬉しそうに言った。

  「……ごめん、な、さ…こんなの、しかあげら、れなくて…」

  気落ちしながらそう言うと、千秋さんは俺の顔を両手で包んで、視線を合わせた。

  「…貴和がくれた物ならね、どんな物でも、宝物なんだよ。だって、貴和が私の為に選んでくれたんだから。」

  ね?そう言って笑う千秋さんに、俺はボロボロ涙を零す。

  そんな俺を、千秋さんはただ笑って抱き締めた。

  はらはらと雪が舞い降りる。

  二人で空を見上げ、「初雪だね」なんて呟いて、恋人繋ぎをしたまま家まで帰った。

  今年も、とても幸せなクリスマスになった。

  END