Ad
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自分で自分のことくらい分かっている。
間違えているのは俺なんだ。
「はい、212円のお返しね!いってらっしゃい!今日も頑張ってね!」
いや、きっと間違えてるというか間違え続けてたのは俺なんだろうと思う。
毎朝見かけるレジのおばちゃんが他人に対してする損得の無い挨拶ひとつにも苛立ちを覚える、そんな状態がまともであるわけもない。
けど、まともでなくったって犯罪者でも俺でもバレない限りは平常な面して生きられるのが、要は空気を読んでれば生きてていいのが社会の姿らしい。
口や態度に出すことなく、バレなきゃ心中で何考えてても殴っても殺すぞてめぇ、なんて毒づいても見逃されるのが世の中ってやつらしい。
…たとえ警察官やってる俺が普段そんなこと考えてても、だ。
「はい、おはようございまぁす。…え~?若いのにそれで足りるの?」
余計なお世話だよ。
「大丈夫です、あっ。レジ袋ください。決済バーコードで。あと、お箸もいらないので。」
「はい、いってらっしゃい。頑張ってね!」
ウィダーインゼリー。
トマトジュース。
サラダチキン。
昨今の物価高で1日の目標食費500円を少し超えるけどせめて肉は食わなきゃ活力が出ないし、仕事にならないんじゃ話にならない。
それでもその量で足りんのか、なんてさっきののレジのおばちゃんや先輩や上司にも毎日言われるけど高校の時に死ぬ気で蓄えたまだ落とせる脂肪が嫌という程あるから別に平気だ。
むしろ食とか、恋とか、三大欲求を喜べる連中にそういうことで絡んで欲しくない俺の気持ちは分からないだろう。
あなた方は喜びを広めようと、分け与えようとしてるのかもしれないけどそれはウシの人が密かにやる反芻みたいなもんで、自分の喜びを再確認してるだけで、本当は俺にあげたいわけじゃないだろう?
追加で“してやった”感も得られるわけだし。
ぶちまけたゲロを食うのは自己満足なのに美味いからっていいものであると吹聴するのはありがた迷惑の極みだ。
……いかんいかん。
…でも、飯なんて不味くなくて腹に貯まれば正直なんでもいい。
別にモデルみたく細くなりたいわけじゃないけど、俺の身体を形作っているものとはいえ自分以外で構成された何かっていうのが気持ち悪くてしょうがないだけなんだ。
誰に食わせるわけでもなし、舌を飽きさせないだけの甘いかしょっぱいかの刺激があればそれで十分だしあとは栄養なんてビタミン剤で補える。
とりあえず今年中に100万貯めて、寮から引っ越す部屋決めて、それで、あとはどうでもいい。
誰も、俺が俺にすら興味を持たないそんな生活。
飯も服も何もかもが二の次だ。
トラックの排気音。歩行者信号の音。ガサガサと鳴るレジ袋。
俺に関わる俺に触れる何もかもにうんざりで、何もかもが耳障りで、欲してもないのに干渉してきて、俺の世界に鬱陶しく絡んでくるそれらはいつだってやっぱり《《俺が間違っているんだ》》ということを否応なく五感で知らせてくる。
早く、早く。
もう誰にも迷惑かけないように。
早く、誰もいない所へ。
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ダッシュ!
…ダッシュ。
ランニング。
…ちょっとストップ。
軽くジョグ。
…早歩き。
……………ストップ。
………。
「…ぶはぁ!…あっついんじゃクソボケェ!」
歩道でただ一人放った俺の叫びは窓を締め切りクーラーに当たったドライバーたちの目にも耳にも入らないらしい。
ご近所さんにすら届かない声なのだから当然、天に向かって吠えても聞く耳などなく太陽は光を弱めるどころか遮る雲ひとつ用意しようとしない。
…無理だこれ。
普通ならたかだか2キロのランニングなんてなんちゃないのに、先程までの労働で溜め込んだ疲労と息を吸う度に一緒に入ってくる今年一の熱気が本能で走ることを拒否させた。
まだ店出て五分くらいなのに。
国道沿いの道路には街路樹なんて1本もないのに一体どこで鳴いているのやら、じーわじーわと猛暑を煽る蝉たちの声は『なっさけな~( 笑 )』と俺に対して言わんばかりで、熱波はへたれた俺にもたらす慈悲などないとばかりに降り注ぐ。
「ちょ…ダメだ一旦水。」
ペットボトルに口をつけガボガボと水を口に含まずそのまま喉を通過させていると動きを止めたせいか一気に汗が吹き出す。
顎先から鼻先からしょっぱい汗がボタボタと滑り落ちていき、自分がどんなみっともないビジュアルを晒しているのかは想像に難くない。
冬毛でもねぇ体毛なんてなんのそのとシャツやパンツが汗でへばりついてくるのをひしひしと感じて、不快指数に拍車をかけていた。
まるで摂取した水分が飲んだそばからそのまま流れ出ているみたいだ。
「あ~…しんど。」
小学生の時、9月の運動会練習中に先生が
『自分で走って風を起こせば涼しくなる!』
なんて言ってたのに対して実際やったのは行進の練習と開会式の練習なので風なんか起こせるかと怒りを覚えた記憶がある。
しかし大人になった今、いざ真夏日のアスファルトを疾走してみても湿気を孕んだ染み込んでいた熱気が下からも『逃がさんぞ』とばかりに湧き上がってきていて、どこかにあるはずの冷風を塞き止めており正しいことを言いたがる大人ってのは大概嘘つきだと思い知らされていた。
でもその大半の嘘は自分を騙し騙し動かすための虚勢で構成されているのだろうとも思う。
警察からの電話を切るなり、汗を吸った制服とカバンだけをとりあえず掴んでタイムカードを突っ込み、情けない土下座を続けるオーナーにせめてもの土下座をやり返して店を飛び出した俺は猛暑の中をとにかく走って警察署に向かっていた。
いや、土下座のことが情けないというかバイトを途中でバックれてるわけだから悪いのは圧倒的に俺だし、留置所もあるんだから別に仕事終わってから勦介のことを迎えに行ってやればいいだけの話なわけで。
というか、オーナーよりも小代チーフに後日事務所で貧乏ゆすりされながら詰められる方がよっぽど恐ろしいし想像しただけで涼を呼ぶけどもっと冷静になって考えていれば『警察に呼ばれたんですぐ戻るからちょっと出てきていいですか』でよかったのかもしれないというか絶対そうだろうな。
うっすら抱えていたやんなるなぁ、の一時の感情で何もかも間違えた方向に進んでしまっている。
その一時の感情を抑えて頭を整理しようにも脳味噌は既にオーバーヒートを起こして『謝罪』とか『社会』みたいなワード脳の外側だけ使った連想ゲームみたいにぼやぼやと浮かんでくるだけだった。
『一応当事者ではないということと初犯ということで今回は微罪処分とさせていただきますんでつきましては本人の希望もあって条件的にも____』
県警の人は電話口でそう言ってたからチャリ泥棒は本当なんだろうが…もう時効とはいえあいつはあいつで叩くと《《多少》》ホコリが出てくるからやはり心配の気持ちはぬぐい去れない。
……なにか重要なことを見落としてるような忘れてるような、すごく嫌な予感。
…腹の底に隠してしまい込んでいたものをむしられるような胸糞悪さというか、とにかくイヤな予感がしていて、そういう時の感覚は大抵正しいもんだ。
そもそも警察署にいい思い出なんかないしな。
とにかくあいつを引き取って、早く帰ろう。
明日謝って始末をつけて、また同じような日常に戻る、それで終いだ。
別に誰がってわけでもねぇし義務でもないんだけどこの茹だるような暑さの中でも俺に冷静さを求めてくるなって話だ。
俺は悪くねぇと俺だけは思いたい。
ついでに手間かけさせたアイツにもそう言わせてやろう。
あれもこれも全部夏が悪い、そういうことにしておこう。
いつまでたっても冷めやらぬ気温に行き場のない苛立ちをぶつけてペットボトルを道路に投げて叩きつけそうになるがグッとこらえ、再びカバンへとしまう。
…早退けしたもんはしちゃったんだから勦介とたまには酒でも飲みに行こうか?
いやいや、昨日はタコだのイカだの買って浪費したんだからやっぱ節約して素麺あたりで…。
……。
とにもかくにも。
「…さっさといくかぁ。」
きっと、アイツが待っている。
勝手な義務感を胸に、再びとぼとぼと歩き始めるのだった。
##########
パトカーの群れを通り抜けて自動扉をくぐると正しくそこは別世界だった。
文明を感じるひんやりとした風が肌に触れて、灼けた喉や舌を復活させる。
目の前にあるのは懐かしい光景だった。
緑のコンクリタイルに薄暗い玄関。
職業柄、草食肉食関係なく身体がデカイ奴が多いので広く作られたエントランスは免許証の住所変更なんかで訪れた一般人を容易に飲み込み、パイプ椅子に座して待つ彼らを尻目にゾウだのヘラジカみたいな体格に優れた連中が往来するのはまるで特撮映画みたいだ。
体格に応じてデカさや威力の変わるタクティカルロッドや銃も装備にあるのでどちらかといえば巨大ロボットが近いかもしれない。
市民の皆様には信頼感→重厚感→威圧感の順できっと感じられることだろう。
よくもまぁこんなバケモノ揃いのとこで働いてたな、俺。
懐かしさ半分で周囲をチラチラと眺めつつ、受付担当の警官を探すと目立つ白い毛並みのイヌが一人。
玄関立哨の立場でありながら退屈がより暑さを意識させるのか、舌をしまうこともなく息を吐き時折ため息も漏らしていた。
「こんにちは、どうも。…ご要件は?」
受付であるかどうか尋ねる前に教えてくれるあたり慣れているのだろう。
歳上なんだろうが俺より少し小さい体格をした受付のスピッツに話しかけられ、少し心の余裕を得た。
「えーと、身元引受けです。…ちょっとそこの扇風機で乾いてていいですか?」
「あぁ、どうぞどうぞ。今日暑かったっすよね外。…ちなみに名前教えていただいても?」
「お電話頂きました小車響です。窃盗犯三枝勦介の引き受けです。えぇ、ほんとに暑くてかなわないですよ。」
制汗シートで顔を拭いながら答えると、スピッツはヘラヘラとした表情を崩さずに内線電話へと手を掛ける。
話半分といった感じだ。
「はは。それじゃ繋ぎますんで暫くお待ちくださいね。署内のサントリー自販機はちょっと安めですので、小銭があるなら良ければ。ウチ、ゲータレードまだ置いてますんで。」
「ありがとうございます。…あれまだ置いてるんすね。」
「…?まだとは?」
「いえ。扇風機のとこで待たせてもらいますね。」
少々行儀が悪いがシャツの裾を捲って身体に直接風を送り込みながら冷やし、乾かしていく。
背中の汗がもたらす気化熱が徐々に明瞭な意識を戻し始めるのを感じた。
……いやマジで、本当に暑かった。
………本当に、な!
身体の熱が引いていくタイミングでこんなとこへ呼び出された怒りが再燃し、俺の間違いだらけの振る舞いを棚に上げて勦介へなんて言ってやろうか、そんなことを考え始めていた。
さすがに1発はカマシ入れなきゃ気が済まない。
『してもらう前提の女はやめとけ』なんて吐かしてたお前が俺のことを窃盗で呼び出すとはどういう了見だ、とかか?
カッコつけすぎだろうというか説教くさすぎるな。
…いやぁ、でもなぁ。
でもな、だよ。現行犯なのに実行犯じゃないってどういうことなんだよ。
落ち着いて考えてみるとあの話の中には腑に落ちない部分が多いというか、電話口で聞いた限りだと分からないことが多い。
ここに連行されてるあたり逮捕されたのはおそらく多分場所もここから離れてない、いつもの『ラッキーシャムロック』だろう、以前仕事帰りに部屋で鉢合わせしたことのあるあのケツァールの女の子のいる。
(勦介の連れ込む女の子の中では最も長い付き合いがあるというか街中で彼女とはたまにカルディやジュピターで会うことがあるのでほんの少しだけ面識もある。)
微罪ってのもなんかあれだし…財布盗んだとかなら微罪で済むわけないし。でも現行犯で冤罪もへったくれもないだろう。
もしかすると貰い逮捕?
貰い逮捕ってなんだよ。
現行犯やっちゅうに。
というかなんだろう。
俺の抱える嫌な予感に対してアイツのことはそう大したことでもないような。
「おっきーい!え、おっきい!ママ!」
「こーら、もう!…すいません。本当もう、静かにしててお願いだから。」
「いえいえ大丈夫ですよ。…お母さんあんまり困らせちゃダメだよ?」
「かっこいいねぇ。」
「えへへ。ありがとね。」
考え事をする裏であこがれ混じりの少年の声と優しい警察官との交流の声が聞こえる。
ご近所さんとのやり取りはいいもんだ、人情交番とかアレ最高だよな。
勝手に聞き耳に挟む微笑ましいシチュエーション。しかしこの声、どっかで聞いたことあるというか…
なんか。
見られている気がする。
…なんかさっきから、とても嫌な予感がする。
ここに来る前からあった嫌な予感が収束し始めてるというか…
というかすぐ側に迫ってるような。
ただ、あいつの、勦介のことでは無いような。
ただでさえ元職場で喧嘩別れに近い警察署なんて居心地が悪いのに……だとしたら俺由来か?
なにか重要なことを見落としてるような、忘れてるような。
じゃあ…
なんなんだ?
ばたばたと風に揺られシャツについた汗がほどよく乾き、今度は脂混じりの生乾きの匂いを放ち始めたところで別の香りが鼻腔をくすぐる。
それは懐かしい、嗅ぎ慣れた蛍光のピンクを想起するような甘ったるい香り。
………ダウニー?
柔らかく香る柔軟剤と、汗と制汗シートの入り交じった懐かしい匂い。
___想起されるのは程よく硬い道場の畳。
物理的にも精神的にも押しつぶされるような、重たさの記憶。
この匂い、俺は知っている。
そして俺が知っているそれは、すぐ近くで今きっと俺の方を見ていて______。
「…響先輩?」
…聞き覚えのある声。
……そして、聞きたくなかった声。
_____目を向けると、そこに彼女はいた。
記憶の中で朧気に映る、バタバタと大きなしっぽをはためかせながら匂いを振りまき、俺に向かって徐々に大きくなる歩幅とスピード。
見かける度に、話す度にいつも暑そうに赤らんでいた頬。
声で呼び覚まされ徐々に明瞭になっていく記憶の中の姿と視界の中の彼女が重なり…
「…響先輩ですよねっ!?」
ずんずんと駆け寄る姿はあの時のまま。
遠慮のない、体格差を理解してない強さで肩を捕まれ、それと同時に胸へ鉛の塊でも押し付けられるような、胸騒ぎ、そして衝撃。
俺よりもはるかに大きいタッパ、デカい体。
…というかまたデカくなってないか?
警ら用の防刃ベストはさらに屈強さを加えて威圧感すらある。
「響先輩、響先輩だ!ですよね!?生きてたんですか!?いやそんな気はしてたんですけどね!?死んだとか思ったことないですけど!えと、あの、ずっと毎日先輩のことか…心配してて!」
パヤパヤした毛並みも柔和な顔つきもそれでいて激しいリアクションも以前とまるで変わらない。
彼女は、普通の大人が全力で避ける、感情を顔に出したり尻尾や毛の起こりで感情を表す現代社会だと品がないとか言われる仕草をフル稼働して俺にアタックしてきた。
「ちょ、あのタイム。タイムタンマ。」
「あ~。あのまんま。身体も何も全然変わらない。忘れたことなんてないですもん。でもちょっと痩せました?」
「ちょ…ちょっと、さらっと失礼なことまで言うなよ。あとここ…公共の場だから。」
…頼むから俺にだけはこれを言われるな。
諭されて周りを見渡し、あわあわと後ろを向きながらエントランスの市民に向かって頭を下げ、その際に突き出した尻が俺の腹を突飛ばす。
「ぐえっ。」
腹を押さえて呻く俺を受付のスピッツが『あらあらまぁ。』といった表情でニヤニヤと見ていた。
「あっ!さっきももう…えっと、ごめんなさい。…あの、私のこと覚えてませんか?」
相変わらず表情がころころ変わる奴だな。
覚えてますとも。
「…大北だろ、パッと見ですぐ分かったよ。」
「私だってすぐ分かりましたよ!遠くからでも先輩だって!」
「分かった、分かったから。」
大北奏音。
俺の、1個下の後輩。
……こっちはお前に会いたくなかったんだけどな。
「…警官やってんだ。」
「はい!!」
なら、尚更。
今のお前を見て、なんなら、お前にだけは会いたくなかったと、心から思った。
「ええと、その、どうしよ。どっから…」
「もしかして、大北がアイツの担当だった?」
「えと、あ、ごめんなさい勝手に盛りあがって。えと、はい。三枝さんですね、とりあえず案内します。あ、でもその前になんですけど…あの、言わないので…」
「?」
一瞬もじもじとしてから耳に声を寄せてひそひそと話し出す。
だから、一応男と女なんだから公共の場で職務中にそういうことするなって。
怒られるのお前なんだから。
「連絡先!電話番号…はもう覚…いや、LINE!LINE!後でいや今でもいいですけどLINEのID教えてください!お願いします!」
「あー…おう。兎にも角にも身元引受予定の奴のところに案内してもらえっかな。」
お前はそういう子だから、会いたくなかった。
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「ごめんなさいねぇ、仕事中に。しかも歩きかな?外暑かったでしょお?」
通された部屋の中には中年のシマウマがひとり居て、やや薄い麦茶を出してくれた。
立ち振る舞いや服の着こなしから見てこだわりのあまり無さそうな…逆に言えばこういうタイプは態度が一貫してブレないタイプが多い。
警官の素質があるタイプの人だ。
大北の上司だろうか?
「えー…家族じゃなくルームシェアね…そしたらそこ横戦で消してもらって。はい、そんじゃあ連れてきますんで引き続きお願いします。」
「…はい、書類、書けましたんでチェックお願いします。」
「さすがに手慣れてんね。というか、見慣れてるの方が近いか、なはは。」
「…どうも。」
「ん、ん、ん、はいオッケオッケ。君が小車君、ね。なるほど…ちなみにあの大北とは?」
俺と同様、目を合わせて麦茶を啜りながら俺に向かって問いかけを寄越す。
やっぱりこの人も、|《知っているのだろう。》
俺がどんな奴かってのを。
「大北は…同じ高校の後輩です。…俺なんかには、勿体ない。…良い後輩ですよ。」
「そうですかい。…いや、野暮かな?」
「?」
彼は、疑問を浮かべる俺の顔を見ながら美味そうに麦茶を啜った。
「んはは!いえいえなんでも!ほいじゃもう少し待ちましょうね、腰縄つけて連れてきますんで。…つってもあんま驚かないかな?」
「…まぁ。というか、電話じゃよく分からなかったんですけどアイツ現行犯だけど実行犯じゃないってどういうことなんです?何盗んだんですか。」
というかなんでこんなことになったんだ。
暮らしのことやこれまでのこと、大北と何を話そう、なんて鬱屈とした思考を切り替えるために一旦話題を切替える。
「んー、まぁ端的に言えば窃チャやね。パチ屋の駐輪場から自分のじゃないのを持ってって丁度帰ってきたところを遺失届受けて現場見てた我々がタイミング良く捕まえたってとこかな。」
「はぁ、それで。…で、」
「でも…だよね、そうそこよ。ただね、鍵を開けたのはどうも彼じゃないらしいというか、大北が見た限りだと指か細い爪で器用に開けたやつがいるっぽいんだわ。トリの手じゃあれは無理やし指紋も爪模様も合わんかったしね。」
「あいつ自身はなんて?」
「よくわかんないけどたまたま開いてたやつを借りるつもりで乗っただけ、の一点張りよ。ただ誰かがいたずらで開けただけなのか…」
「…他に協力した奴がいるか?」
「どうよ。…君から見て普段彼、変な付き合いしてる奴とかいない?」
変な付き合い……。
『この子はもうめんどい、切る。』
『いや自分だけで食ってるウチならいいけどヴィーガンヌードル俺に買わせようとすんのはしんどいて』
『笑い合える付き合いのない女ほど笑ってもらいたがるんだよな。俺の面倒臭さ無視して。』
『宗教勧誘だった。』
『もうちょっと数絞らねぇのかって、向こうだってどうせ何枚か手札あるんだからさ。』
『小車の料理が一番美味い。手料理作ってくれる子ってやっぱいいわ。』
………。
…付き合い方、なぁ。
「ロクデナシってのは間違いないです。」
「………当たらずとも遠からず、かな?」
「女癖は悪いですけど、変な奴はいないと思います。俺と部屋にいる時は俺とずっと一緒なんで。そこ以外だと分かりようもないですけど。」
双方麦茶を掴んだまま見つめ合い、シマウマの黒い瞳を存分に受止めたあと麦茶を一息に飲み干す。
俺の意図を察して納得したのか、彼もまたゆっくりと麦茶を口に含んだ。
「…了解!分かった。まぁ、一応身元引受人なわけだからそれとなく心配しといてくれな。…なんかあったらここに連絡して。麦茶おかわりいる?」
「いや、来たっぽいんで大丈夫です。」
[[rb:斧木野忠 > おのきのただし]]と書かれた名刺を財布にしまい、それと同時に扉が開く。
「連れてきました。」
「…おう。三枝勦介は…彼で間違いないね?」
「…ぷっ。」
俺よりも身長の高い同居人がさらにガタイのデカい俺の後輩に腰縄で連行されてくる姿が少し面白くて、なんか笑ってしまった。
「…よぉ。」
俺の苦笑を見てか、手錠と腰縄をほどかれてるのにも関わらず若干態度のでかいふてぶてしい表情を浮かべる同居人。
「まずごめんなさい、ありがとうやろ。迎えに来てもらってんだから。」
「や、大丈夫です。どうもお世話になりました。おら帰んぞ。」
「…ん。」
「もうくんなよー!」
少し逡巡して、部屋を出る前にメモ紙を頂戴し落ち着いた様子の大北に手渡す。
「…連絡貰えるか?」
「あ、はい!絶対しますから!」
###########
5時になったくらいじゃ気温が下がる様子もなく、汗をダラダラと流しながら勦介と国道沿いの帰路に着く。
「警察の中じゃいい人に当たったみたいじゃん、名刺貰ったし。」
「…ん。」
「………」
「………」
しばらく無言で並びながら歩き、先程まで忌まわしかったセミの鳴き声に僅かながら救われるのを実感していた。
勦介が何か言いあぐねているようなところをあえて放置し、ひたすら言葉を待つ。
普段なら助け舟を出してやるところだけど今日のところは本人の口から言われなきゃ溜飲の下げようもない。
やがて、いいにくそうに口を開いた。
「えっと…ごめんな、バイト中だったのに。いやでも言い訳するつもりじゃねぇけど」
「それはいいよ」
「え?」
「状況聞いてみりゃヘンテコな話だし、なんか自分なりに考えてやったんだろ。話さなくても話しても、どっちでもいい。」
「…」
「2年も一緒に住んでんだから、部屋に入ってきた時のお前の顔見りゃ何書いてあるかくらい読めるようになるって。」
「…さんきゅな。」
「気にすんなよ。俺も今日はもう仕事やる気なかったし。」
「…悪いついでに、なんか…あれもごめんな。しんどいっつーか、なんとなくだけどあの子、お前は多分会いたくなかったんじゃねえかなって。」
大北のことか。
「まぁな、でも…んー…あの子が悪いわけじゃないんだよ。俺が全部悪いっつーか…いや、やっぱいずれ向き合わなきゃいけないことだったろうしそれもいいや。」
「俺も今日は色々疲れた。あっこのパチ屋出禁になったし。」
「ほーー!マジか!迎えに来てやった俺より先に疲れたなんて口に出すからバチ当たったんだなこりゃ!」
「…だから悪かったって。」国道を逸れやがて住宅街に入っていく。
再び無言の中夕日を背に二人で歩いた。
「…警察署、しんどくなかったか?あの人と大北ならまぁ、あんま詰められたりしなかったろうけど。」
「大丈夫だよ。…もう、やってねぇし。」
「…そっか。……疲れたし暑いし今日はもう料理もしたくねぇんだよな。」
「…実は俺も酔いたい気分だったんだよな。」
「…」
「…」
「串カツ」
「刺身…いや、今日は譲るわ。」
「ついでに奢れよ?」
「分かった分かった、今日はありがとう、そして悪うございましたって。」
そういうことになった。
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あの子のことお前どういう目で見てんのって…そりゃ大北のことかよ?
なんだその詮索の仕方、俺の彼女かなんかか。
…いや今までいたことねぇけどそこはどうでもいいだろ。
んー…あいつ、俺が高2の時に海外から転入してきてさ、いやいや学年は違ぇのよ俺が先輩。
アイツのご両親も海外の血を引いてるけど、どっちも日本生まれ日本育ちだったのが起業でカナダに渡って…なんか二人共スポーツ選手なんだったっけか?そんでカナダで生まれたのがアイツ。
外人っぽいけど外人じゃないちょっと外人みたいな…なんかそんな感じだよ。
…まぁ、初めて見た時はでっけぇガタイしてる奴だよなとは思ってたし実際デカいし重いしで地区県予選じゃほぼ無敗だったよな、やっぱ種族差はでけぇわ。
ん?あぁ柔道柔道。俺、剣道と柔道部かけ持ちしてたんだよ、あと生徒会もやってた。
剣道は学校外の個人でやってる道場だったけどな。
なんのかんのいっても柔道はフィジカルいるし剣道だってリーチ差出るんだから同種階級別でも異種無差別級でもデカくて長いやつが結局有利なんだよ。
団体だとロクな結果出せなかったけど大北だけは個人でインターハイ常連だったな。
たしか今年で21か?じゃあもう柔道5段くらいあんじゃねぇかな。
柔道の情報は要らねぇってなんだよ。
…俺は本当は剣道1本で行きたかったんだけど柔道の方の講師の先生…つっても学校の裏に住んでて剪定ばっかやってるおじいちゃんが元々親父の先生みたいでそれでな。
一応俺が主将やってたけどほとんど同好会に近いしお飾りみてぇなもんだよ、男も女も少なかったし男女混合でやってたって感じ。
でもほら、海外からの転校生って上手く馴染めなかったりするもんだろ?ご両親はどっちも日本育ちだから日本語普通に喋れるしあいつも喋れたけど環境もガラッと変わるわけだし。
それで転入したての時に女子とちょっと揉めた…ってほどでも無いけどなんかあったんだよたしか。それで上手くいってなかったみたいだから多少手を貸したらそれからは結構ハキハキし始めてなー。
なんか生徒会やってみたいとかいうから書記もやって貰ったし何かにつけて話しかけてくるし手伝ってくれるし良い後輩だったよ。
あっすいません、生おかわりで、勦介は?あ、じゃあ生2つ。…白レバカツって今日これまだあります?
あ、ない。
じゃあこの普通のレバカツと焼きタラコと獅子唐、あ、濡れ皮…以上で。
…?んだよ。
異性として…?恋愛的に?………いやぁ~ないだろ!アイツと俺って身長30センチ以上は差があんだぜ?男としてまず見られてねぇって。
お前はどう思ってんだよって…いやだから良い後輩だったよ。
そもそも学生の時はあんま恋愛とか興味なかったっていうか……なんか俺も色々と詰め込みすぎてたっていうかな。そこまで余裕なかったんだよ。
学年も違ぇし、昼休み一緒に飯食いながら部活とか生徒会の打ち合わせしたり、道端で会ったら談笑したり、これは向こうから話しかけてくることの方が多かったけどな。
あとは…家の進行方向一緒だったから部活終わりにどうせ帰り道の途中だし家の前まで送って帰るんだけどちょっと買い食いしながら遠回りして歩いたりな。
そんくらいだろ、普段一緒にいた時間なんて。
剣道の道場に通う日の方が多かったしな。
…なんだその顔。
あー、でもあれだ。
…俺、飯食っても太れない体質でさ、60kg階級の試合出るために毎日食トレみたいなのやらされてたんだよ。朝も昼も夜もカレーだの中華丼だのとにかく米になんかかけられてな。
新米にもかけられたんだぜ?当時はもう米が嫌で嫌で、毎日学食代持たされてカレー2杯食わされて、弁当まで付けられてさ、大会近づくと憂鬱でしか無かったよ。
大北もかなり大食……よく食べる子だったから学食で俺見つける度に向かいの席座ってその日面白かったこととか俺が行かなかった日の部活の話とか話してくれながら同じくらいの量食っててさ。
食トレは死ぬほど嫌だったけどあいつまぁ美味そうに飯食うんだよ。
…それ見ながら食ってるとかなりマシだったな。
あとはなんかあれだな、武道に関しては相当熱心だったんだろうな。
オフの日とかなると総合とかやってみませんかってジム誘われて一緒に体験してみたり、太極拳やってみませんかって朝早くからちょっと離れた公園まで二人でランニングしたり足運びの勉強になるかもなんでって俺の剣道の試合見に来たりしてたっけ。
俺のなんて対して参考になんねぇのに。
そんなもんだよ。
「は?」
「は?」
「……いや何をどう考えてもお前のことメチャクチャ好きだろそれ?」
「部活も生徒会も一緒なんだからそれ繋がりでたまたま一緒に帰って飯食ってても大した意味なんかねぇだろ。」
「はぁぁ!?た・ま・た・ま・だあ!?マジで言ってんのお前それ!?バーカ!馬鹿!馬鹿か馬鹿じゃねぇのお前!?」
「そんな頭ごなしにバカバカってお前そんな…そもそも大北とは3年ぶりに会ったってのに向こうが俺に対して好意とかあるかよ。」
「3年の間音沙汰も無かったのに名前聞いただけで一瞬でお前だと分かる女が好意を抱いてねえわけねぇだろ!?」
「…大北が?俺に?」
てかそうなの?
「そりゃそーだろ、おかけでこっちゃ死にかけたわ。俺の見立て…ってかあれは誰がどう見てもお前のことが好きだって。なんか高校の頃そういう雰囲気なかったのかよ?」
「死にかけたって何があったんだよ。………いやまぁ良い後輩ってか、うーん…」
「なんかそれっぽい思い出とか会話とかさ。」
「ん~…」
❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋
『大北ってなんか制汗剤とか使ってる?』
『…………え!?私今そんなに汗臭いですか!?もっと使った方がいいですか!?』
『いやいやいや…普段から全然汗臭くはないし柔道部が汗臭いの気にしたってしょうがねぇじゃん。ただお前と組手やってる時いつも嗅いだことない甘い香りがするっていうかさぁ…』
『えっッ……!』
『シーブリーズってんじゃないしな。まぁ、とにかく近くにいるとすぐ分かるって言うか普段廊下歩いてても“あ、大北さっきここ通ったな“ってのが分かるんだよな。』
『あぅ…え…ぃや……あ、あの、多分…柔軟剤…ダウニーっていう海外のやつ使ってるから…それかもです。向こうで使ってて、あの…え…やっぱり匂いキツかったりします?』
『ん?いやいや、大北はいい匂いだって。俺もトップとか柔軟剤入れてるけどなーんか効果感じないっていうかな、陰干しもしてんのに。』
『………っ……~~~………。』
『…?歯になんか挟まってんのか?』
『いえ……あ……えと、もしあれなら、私と同じ香りのやつ、か、貸しますよ。』
『いやいやさすがにそこまで出してもらわんでも自分で買ってみるって。大北はダウニーなのな、おっけおっけ。』
『いえ!この辺の店じゃダウニー置いてる少ないですから!高くて量多いし重たいですし!とりあえず1回分!分けて持ってきますから!1回使ってみてください!明日絶対持ってきますから!お金もいりませんから!』
『おぉ、ドラッグの売人みたいな言い回しだな。』
『…小車さ、お前ヤバいよ』
『え?…あ~…売人のくだりやっぱ不謹慎だったか?…てかそもそも女子に匂いのこと言うのやっぱまずかったか!?』
『いやお前さぁ…』
❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋
…思えば完全にセクハラだったなぁ、あれ。
「…やっぱ嫌われてるかもしんねぇ」
「何思い出したか知んねぇけど多分杞憂だよそれ。」
「…で?なんであの子のこと避けてんの?」
「…やっぱ分かるか?」
「そりゃ2年も一緒に暮らしてりゃ顔に書いてあることくらい分かるよ。あの子はまぁ、かなり舞い上がってたから今日は気づかなかったっぽいけどあの時のお前まぁまぁ顔が青ざめてたぜ。」
「…………」
「別に嫌いってわけじゃないんだろ?」
…どっから話したもんかなぁ。………なんつーか、俺長男だったし、他はみんな妹だし昔っから責任とか、結構しっかりしてなきゃって場面多くてそれはそれで楽だったんだけどさ。
学生の時も、それで全部上手く回ってたし。
それが当然だったし、当たり前だって思ってたんだな。
やなことあっても我慢するのが。
で、ある時ってか、警察学校いた時どうしても我慢しきれねぇことがあって…なんか溜めてたのも全部含めて爆発しちゃってな。暴力沙汰起こしちゃったんだよ。
そんでその後、向いてねぇなって思って、辞めた。
なんつーか、社会が?
全部ぶん投げて、誰にも迷惑かけないように消えようって思ってたんだよ、当時は。
そっからお前と出会って、暮らし始めてさ、毎日楽しいし、すげえ気が楽になったっていうか。
でもやっぱさ、ふと色々考えるんだよ。
せっかく進路のこと、親にも先生にも後押ししてもらったし、育ててもらったのも事実だろ?
何より、今までさんざんいい顔して振舞って、俺が選んできたことなのに…
それ全部ひっくり返すような真似して…好き、なのかどうかは分かんねぇけど大北はすげぇ俺の事慕ってくれてたし。
…俺の起こした行動が学校とか親とか、風評被害作って、苦労したんじゃねぇかとかさ。
怖くて聞けねぇし、知る勇気も出ないけど。
…大北が、あいつが俺と同じ警察になったんなら、尚更こええんだ。
だからその、仮にあいつが俺の事どれだけ心配してたとか、その、好きとか別にしてさ、やっぱそれでもしんどいだろ。
誰かに迷惑かけんのって。
結果的に今はお前と暮らしてるけど勦介ってほら、まぁ、対人関係とかあれだろ。だからお前といるのはすげぇ楽っていうかさ…親には連絡して謝ったけど、やっぱ帰れねぇっていうか。
……………。
………分かんないんだよな。
…分かんないんだよ。今までの俺ってのを一旦全部ゼロにして、でもそれでどんな顔して今までいたとこに出ていけばいいのかってのが。
「…まぁ、聞いてみりゃ結構失礼なこと言われてっけどこの際それはいいや。」
「…悪い。言葉間違えた。」
「気にしなくていい。」
「…ごめん。」
「いいって。」
「……」
「俺はそうじゃなかったけど、お前の親はお前のこと気にかけてくれてるしその大北って後輩だってそんなお前をそれでもって多分今日引き止めて連絡先聞いて、お前も寄こしたわけだろ?」
「…」
「それでも残った関係とか、捨てたつもりでも付いてきたもの大事にすんのにちゃんとした理由なんかなくていいんじゃねぇの?」
「…!」
「少なくともお前はほら、俺の事多少大事に見てくれてるわけだろ。」
「…やっぱすげぇな、お前。」
「ダメだったらダメだったでいいじゃんよ、それで終わりだよ。」
ポコン、とスマホの通知音が鳴って今の今までスマホに触れてなかったことに気づく。
小代チーフからの鬼のような着信とLINE通知を押しのけて、『kanon』という名前の友達申請が来ていた。
「…連絡してやれよ。」
「…じゃあ例えば、ダメだった時は?終わりっつってもその後は?」
「俺とルームシェアする時間が伸びるし、なんなら抱かせてやってもいい。」
あの感じだとそんな心配はいらねぇと思うけどな?
ニヤつきながらタバコを吹かす同居人にほんの少し安心感を覚えた。
「…んだよそれ、気色の悪い。…やってみっかぁ!送信!行けおら!ついでに小代チーフにも謝んねぇと…お、返信はええな。」
「その意気その意気。で?なんて送ってなんて来たんだよ。」
「まぁ待て待て、お、いつですか?だってさ。どうすっかな。」
「…何が?」
「…何がって何が?」
「だから何がいつなんだよ。」
「だからそれを今から決めるんだって」
「だから小車がその子と何をいつするのかって聞いてんだよ」
「いやデートだけど?デートしませんかって送ったんだよ。」
「…は!?なんでよ。ってか交換して一言目にそれってお前…」
「え?大北って俺のこと好きなんでしょ?」
「は!?馬鹿かお前!?馬鹿じゃねぇの!?」
「え!?好きじゃねぇの!?」
「そういう事じゃねえって言ってんだよこのバカ!間抜け!朴念仁!」
「先にレバカツと生2つでーす。空いたグラスお下げしますねー。」
「あ、ども。」
「…おい待て小車それお前今日何杯目だ!?」
「いいじゃんほら、ダメならダメだけどデートのOK出たし。」
「聞けよ!…てか開口一番のデートの誘いに乗るその子もなんなんだよ。」
「あ、生姜混ぜてあってうめぇこのレバー!」
「…もう勝手にしてくれ。」
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