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昔は小柄だった幼馴染オオカミ獣人が巨デブになって俺を誘惑してくる話

  ◇◇◇

  「じゃあさ、おっぱい吸う?」

  再会した幼馴染から唐突に告げられる、そんな誘い文句。

  未開封の段ボールに無造作に乗せたモニターの中で自操作のキャラクターが画面外に吹き飛ばされて派手なエフェクトを散らすのを視界の端で捉えながら、俺はそれを発言した獣人をぽかんと見つめていた。

  「へへ、んで、どうする? おっぱい」

  ソイツは画面に『Winner!!』とリザルト画面が表示されてから俺に悪戯っけのある笑みを見せた。

  クマ獣人やイノシシ獣人かと思うようなでっぷりとした体。ワイシャツの上からでも分かる胸や腹の撓んだ膨らみ、しかもその腹に至ってはゲームに熱中していたからか、裾が腹の上に捲れ上がってヘソまでが見えてしまっている。

  ベッドに座っている俺の尻が傾いているのは、隣に座っているソイツの体重でベッドが沈み込んでしまっているからに他ならない。

  「ねえ」

  ソイツは俺の目をじっと見つめながら唯一オオカミ獣人らしい三角耳を俺の方に向けたかと思えば、おもむろに捲れ上がっていたシャツを首元まで引き上げると、ずしりと重厚感のある片乳を露にしていた。シャツに引っかかった胸肉がぶるんと揺れれば、その胸の先端で膨らむ紅桃色の粟黍のような乳首が俺の視線を釘付けにして、思わずごくりと唾を飲み込んでしまった。

  「おれの……じゃ、ないよね」

  小さく聞こえた声。

  腰の奥にずしりと蟠っていく淫欲のせいで、俺は言葉の途中を聞き逃してしまい、何を言ったのか聞き直そうとした時。俺の体は途端に力強い大木の中に閉じ込められたかのような圧迫感に襲われた。

  ほんの一瞬の隙に、俺は肥太ったオオカミ獣人の腕の中に捕まってしまっていたのだ。

  聞こえた、少し懐かしい、自信なさげな声色が頭の中で反芻される。『おれの勘違いじゃないよね』と、ソイツはそう言っていたように思えた。

  ◇◇◇

  春の穏やかな風に、おれはゆっくりと深呼吸する。

  高校の入学式。そんなアウェイな空間に緊張して凝り固まった肺を、日差しにまったりと温められた空気が膨らませる。真新しい学ランに身を包んだ俺は、式が終わって開放感を満喫していた。

  この春から高校生になる俺は、地元を離れて中高一貫校の途中入学者として入学式に参列していた。

  当然、中学校時代の知り合いなど一人もいない。それどころか、中等部で培われた交友関係のままにグループが明確に作られていて、俺は時折隣の奴と言葉を交わすだけで、行程が過ぎるのを待つだけの退屈な時間だった。

  とはいえ、この高校に入学した事を悔いているわけではない。

  俺が猛勉強してまでこの高校に入学したのには、理由がある。

  いい学校に入って、未来の選択肢を広げたい。なんて思惑もないことはないけれど、実際はもっと目先の欲求に従ってのことでもある。

  この学校は特待生制度が充実していて、全国から生徒を集めている為、希望者は寮に入ることが出来る。希望者が多い場合は用意できない事もあるらしい。だが、生徒の殆どが中等部からの繰り上がりになる以上、電車通学の範囲内か、もしくは家族ごと近くに引っ越している場合が殆どで、大抵部屋は余りがちなんだという。今年もその例に漏れず、俺の入寮申請は、ものの一日で許可が下りた。

  この入寮が――つまりは、俺の一人暮らしが一番の目的だった。

  「新しい生活かぁ……」

  俺は、ベッドと机――後はゲーム機やら娯楽品を配置して力尽き、殆どの段ボールの荷解きも終えていない部屋を思い出しながら呟いた。

  心細さは一切ない。とは言い切れないが、それでも俺にとっては待望の一人暮らしだ。

  両親が小さい頃に離婚していた俺は母子家庭に生まれ育って、そしてほんの一年前、母が再婚した。とはいえ、急に決まった話ではなく五年以上前から付き合っていて、顔合わせも済ましていた。

  母さんと再婚相手――義父さんと一緒に暮らす事になって、中学三年生の一年は義父さんの連れ子も含めて四人で生活をしていた。義父さんも積極的に仲良くしてくれるきさくな人で、新しく出来た弟も人見知り気味だけど嫌なやつじゃなかった。

  ただ、どことなく新しい家は窮屈で、始めから狙っていた高校より一つランク上の高校、その特待生制度に俺は飛びついたのだ。

  「……まあ、そのうち慣れるか」

  望んだ事とはいえ、四人暮らしにも慣れ始めた頃の一人暮らし。寮での歓迎会後の最初の一夜は、流石に中々眠りに着けなかった。

  独り言も多くなってしまうのも仕方ないだろう。帰ってそのまま荷解き、という気分にもなれない。とはいえ、校庭で暇つぶしをするつもりもなく、ひとまずゲームでもやっていれば気も紛れるかなと校門から寮へと続く道に足を踏み出した。

  その時。

  「あ、やっぱり『あっちゃん』じゃん!!」

  そんなデカい声に、俺は思わず振り向いた。声量に驚いたのか周囲でも同じように振り向いている生徒がチラホラいる中、その声を発した男子生徒は迷いなく俺の方へと駆け寄ってくる。

  ズシン、ズシン、とアスファルトの地面が揺れるような錯覚さえ起きるほどに、その生徒はずんぐりと肥え太った体躯をしていた。特注サイズなのだろう制服がそれでもパツパツになる程の分厚い体を跳ねさせるその獣人男子は、だが、見覚えはなかった。

  なのに自分に向かってきていると思ったのは、視線が合っていたからだけではない。『あっちゃん』――それは俺『中政 アツト』の小学校時代からのあだ名だったからだ。

  だが、俺のあだ名を知っているその獣人を俺は知らない。

  「久しぶり! えーっ、変わんないね~。入学式で見かけてまさかって思ったけど、さっき先生に聞いてみて、やっぱりって!」

  と、その太った獣人は、近づくなりハグをしたかと思えば、肩に手をおいて俺の体を頭の上からつま先までを眺めながら感慨深そうに言う。

  クマ獣人……いや、この毛色はオオカミのような気がする。と頭の上を見れば、そこには嬉しそうにピン立ちになった三角耳が天を仰いでいた。だが、そこまで分かっても、やっぱり俺の今までの記憶の中でこんな居デブは見たことがない。義父や弟も結構デカい部類だが、それでも、このオオカミには敵わないだろう。

  「あれ、どうしたの?」

  「ご、ごめん……誰?」

  「ええっ!?」

  いくら考えても眼の前の獣人が誰か分からず、とうとう観念した俺は訝しげに首を傾げ始めたオオカミに問いかける。やはり、相手は俺に覚えがあるらしく、明確なショックを受けたような表情で数秒固まったかと思うと、「でもそっかぁ……」と勝手に納得したような声を上げて硬直から回復する。

  「まあ、確かに分かんないか。ユズタカだよー『狼戸 ユズタカ』、覚えてない? 小学校の時よく遊んでたじゃん」

  と、その名前を聞いた瞬間、俺の脳内に電流が走り抜けた。そうだ、この薄灰色の毛色を見た時真っ先に『オオカミ』と浮かんだのは何故か。それは以前その毛色のオオカミと親しかったから。次々と小学生時代の友人の記憶が蘇ってくる。小学一年の時同じクラスでそこからずっと仲の良かったオオカミ獣人の同級生。

  中学に上がる時、親の都合で引っ越していったきり会うこともなかった幼馴染の名前だ。

  「ユズ……? え、ユズなのか!?」

  「まあ、俺、ちょっと変わったもんね」

  「いや、ちょっとじゃねえよ……ウっソだろ……」

  俺はそこまで思い出しても、目の前のソイツが『ユズ』だと理解しきれないでいた。

  なぜなら記憶の中のユズは、俺よりも線が細いような男子だった。俺より少し小さいくらいだったから身長155cmの体重40kgあるかないか位だったろう。

  それが今やその何倍だろうか。見た目からの適正体重も分からない程にデカくなっている。それも特に横方向にだ。

  「嘘じゃないよー、ほら。へそ周りのダイヤ」

  「って、おいおい……ッ分かった、分かった」

  それにどっちかと言うと自信がなさげな控えめな性格だったはずが、そんな気配は今やどこにもない。

  まだ疑う俺に頬を膨らませたかと思えば、女子生徒も周りにいるというのに、ユズは躊躇いもなくズボンからシャツをたくし上げると、その詰まった肉風船のような腹を露にしてみせた。

  窮屈だからなのか、ベルトをせずホックまで外しているせいでフロントジッパーが押し開かれてパンツも見え始めている。公然わいせつという単語が脳裏を過って、俺はユズのシャツを押し下げるとため息を吐き出した。慌てる中でも、俺はユズのムチムチとしたお腹を確かに見つめていた。

  白い毛に覆われたお腹、そのヘソの周りには昔見たのと同じような五角形の灰色の毛並みがあった。

  「あ、ごめんごめん。部活でいっつも上裸だしさ、気にならなくなっちゃってるんだよねー」

  「部活?」

  「うん、中学から始めたの」

  ゆるゆるという口調に、俺は確かにユズはこういうヤツだったと思い出していた。表面的な性格は変わっているが、根本的な天然な所は変わっていないらしい。

  ゴソゴソとズボンの中にシャツの裾を押し込めていくユズに、俺は頭を捻っていた。上半身裸の部活動とはなんだろうと。文化部では確実に無いし、運動部でも逆に脱ぐようなものと言えば。

  「……水泳とか?」

  「んなわけないじゃん、相撲だよ、相撲」

  「ああ……そういう」

  と俺は、ユズの体をもう一度見回した。

  なる程、確かにまわしが似合いそうだと。

  ユズとの再会は信じられないことばかりだったが、その言葉だけは妙な納得とともにすんなり信じられたのだった。

  ◇◇◇

  その週末、俺は学校に来ていた。

  始業式も終わり、もう授業が始まっている。元々特待生の途中入学をした俺は当然のように進学クラスに編入となり、日々勉学に勤しんでいる身ではあるが、わざわざ休日にまで学校に勉強を市に来る程熱心な勉強家というわけでもなかった。

  「いざ始めたらハマっちゃって……気付いたら、でっかくなってたんだよね。今は180kgくらいかなー」

  と数日前。少し恥ずかしそうにお腹を撫でるユズは、気付いたらなんてレベルじゃないだろ、という突っ込みを飲み込む俺に「そうだ」と俺の両手を握りしめてこう言った。

  「今週末練習あるから、見に来てよ。部活とかまだ入ってないでしょ?」

  と。

  つまり、俺はユズの練習風景を見る為に散歩がてら、寮から学校へと歩いてきたのだ。学校に隣接している寮なわけで散歩というにも短い距離ではあるが。

  梅雨に入る前の乾いた春風を浴びながら俺はグラウンドへと向かっていた。

  どうやら相撲部としても強豪校らしく敷地内に相撲場が建てられているのだが、今日は野外練習の日らしい。

  「お、いたいた。ホントにまわしでやってんだ……」

  俺はグラウンドに下りる階段に腰掛けて、グラウンドの端で準備運動をしている相撲部部員の中からユズの姿を見つけた。あの丸々とした体も、やっぱりまわしを巻けば立派な力士に見える。

  「あ……あっちゃん!」

  と、俺の存在に気付いたユズが、顧問にひと声かけて駆け足でこちらにやってくる。その巨体で走るものだから、ズシンズシンとわずかに地面が揺れて俺は思わず苦笑いしてしまう。

  「良かった、来てくれた」

  「まあ、近いしな」

  「寮だもんね。あ、練習の後であっちゃんの部屋行って良い?」

  階段を上がってきたユズの被毛はしっとりと汗ばんでいた。不思議と不快ではない汗の香りが穏やかな風に乗って鼻腔を擽る。何故か肌がピリピリと刺激される気がした。

  尻の座りが悪くなって、俺はあまり考える事もなくユズの言葉に頷いて返す。

  「ま、まあ……荷解きしてない段ボールとかあるけど」

  「うん、気にしないから大丈夫! へへ、やったー!」

  「そか、あ。呼ばれてるぞ。始まるんじゃね」

  上級生だろうか。これまた太った獣人がユズの名前を呼んでいた。指摘してやると、ユズは男の部屋に何が嬉しいのか分からないがまわしの上から飛び出した尻尾をフリフリと振りながら、慌てて部員達の元へと戻っていった。

  なんというか『相撲の強豪』と聞いて思い浮かべていた印象とは違う緩い雰囲気に拍子抜けのような感覚で俺は座り直した。

  「……あいつが一際緩いだけか」

  昔のユズと重なる雰囲気に頬を緩める俺の前で、相撲部の練習が始まった。

  ◇◇◇

  狭い寮の一室にカチャカチャとレバーとボタンの音が響く。

  俺とユズは寮の部屋で中身の詰まった段ボール箱に置いたモニターに向かい、ベッドに腰掛けていた。

  「にしても、迫力やばかったな」

  キャラクター同士が戦っている画面に集中しながら呟いた。格闘ゲームの対戦相手はユズの操る重量級のファイターだ。どことなく、そのデカい体をドスドスと力強く走らせる姿は、練習中のユズを彷彿とさせる。

  さっき見た、練習風景だ。

  まわし一丁で、ロープにくくりつけたタイヤを引き摺っていく姿。

  地面を揺らして土埃を上げながら、全身が脂肪と筋肉で出来た塊のように、一歩ごとに躍動する肉体。揺れる肉と溢れる汗を左右に揺らし散らしながら、50kgはあるような大型トラック用のタイヤを重ねて、前へと進んでいく。

  その剛腕っぷりと、直前までの会話していた朗らかな様子から一変した真剣そのものな眼差しは、これだけ肥え太った超がつくようなデブ体型だというのにかっこよく見えるのだから不思議なものだ。

  「ああ、ご飯? ずっと見てたもんね」

  「いや、そっちも凄かったけど、練習の方だよ!」

  と、見当違いな事を言うユズに俺は突っ込みながら、決め技を放って着実にダメージを重ねていく。だが、いまいち集中しきれていないのか、タイミングが微妙にズレてすぐにガードを差し込まれてしまう。

  「すごい見てくるから、食べてるだけなのに緊張しちゃったよー」

  ユズが恥ずかしそうに言うのは、練習の後誘われた昼ご飯でのことだろう。相撲を始めてから一気に太ったのだという事も頷ける位に、ユズは健啖家になっていたのだ。

  テーブルを埋めるようなファミレスのメニューを、軽食をつまむかのように次々平らげていく彼に呆気にとられていると「これも仕事みたいなもんだから〜」と食事の合間に笑っていた。

  よくもそれだけの食事が入るものだと、そのお腹を見てしみじみ思ったものだ。

  「ほら、今も集中出来てない、隙ありー!」

  「あっ、くそ……! 今のはガード出来てたろ!」

  「出来てないから吹っ飛ばされたんだってば。ちらちら見すぎだよ~」

  グウの音も出ない正論だ。

  練習が終わったユズは、流石にまわしのまま食事に行くわけではなかった。短パンに黒のタンクトップ、という真夏のような服装に着替えて食事を取ったあと、そのまま、俺の寮室に来ている。

  練習開始前に感じた、ユズの臭い。

  それが今や強烈に俺の意識をユズへと誘導している。

  「み、見てねえけど」

  こんなにも俺は嘘が下手だっただろうか。

  タンクトップの脇から見える柔らかそうな胸の膨らみ、短パンから押し出されたようなごん太の太腿、今にも布がはち切れそうなお尻。そこまで暑くないのに薄っすらと汗をかいているユズの全身から雄の香りが漂ってくる。

  普通なら男の臭いなんて嫌なはずだ。だが、俺は無性にそれが嗅ぎたくなってしまう。いや、それだけじゃない。彼の脇に束になった毛並み、ぶよぶよとした腹肉。それらに顔を埋めてしまいたいとも思ってしまう。

  ただの興味本位か。

  それとも。

  「じゃあさ、おっぱい吸う?」

  その言葉が、ゲーム画面から俺の意識を完全に奪い去っていた。

  ◇◇◇

  そして、俺はユズの腕の中で、密着した状態で彼の臭いを嗅いでいた――嗅がされていた。

  「動き、はや……」

  「へへ、おれ組み付き得意なんだよね」

  「ちょ、ユズ……!?」

  重量級がスピードも持っているなんて。そんなセリフを思い浮かべる俺は、しかし、それを言葉にすることは出来なかった。

  ユズの手がズボンの上から俺の股座を撫でつけていたのだ。

  微弱な刺激に敏感な雄欲がヒクヒクと震えた。元々半ば勃起していた欲茎は、ユズの体臭と温もりによって瞬く間に硬く漲っていってしまう。

  「あっちゃんの、大きい……」

  「おま、まずいって……男同士だろ……っ!」

  「えー? 勃起してたから触っただけなのに、これ以上の事考えてるんだ?」

  「……っ」

  図星を突かれて俺は思わず目を逸す。

  その先に、タンクトップの胸元から覗くユズの谷間が汗の川を作り蠱惑的に煌めいていた。喉が一気に乾く、心臓の音が激しく打ち鳴らされる。触りたい、そして、その先まで。呑み込む唾のように欲が湧き出てくる。弁解の言葉を探すも見つからない。

  焦りと欲望が膨らんで身動きが出来ない。そんな中、俺の体は驚くほど呆気なく解放されていた。

  「ぁ……え」

  「おれのお腹とかおっぱいとか、やらしい目で見てるんだもん」

  「ユ、ユズ?」

  俺を開放したユズはタンクトップを脱ぎ去っていた。そして、すっくと立ち上がると短パンすらも膝まで下ろし、自由落下させる。

  ユズはいきなり裸になり始めたのだ。俺は何をしようとしたのか自分でも分からないが立ち上がろうとして、足を縺れさせて床に膝を突いてしまった。衝撃と毛の感触が顔面に広がったかと思うと、俺はその正体を瞬時に見抜いて慌てて顔を離す。

  「わ、悪い……っ」

  目の前に、ユズの垂れる腹がある。そこに顔を埋めていたのだと再確認しながらも、ユズの体から俺は目を離せなかった。

  練習が終わった時から下着は穿いていなかったらしい。こんもりと盛り上がった土手肉の下に、そこだけが昔のままのようなちょこんと小ぶりな包茎が揺れている。驚くことに、人差し指ほどの長さしかないそれはそれでも勃起しているらしく、先端だけに顔を出した鈴口から透明な雫を滲ませていた。

  ちんまりとした雄の象徴。本来それはみすぼらしい対象なのだろうが、欲に漲るそれは何故か女性器よりも淫猥に満ちている。

  数秒で全裸になったユズは、俺の眼前に座る。ユズが体を支えるようにベッドに手を着くとぎしりと歪む音が聞こえるが、ユズの体に夢中になっている俺がベッドの安否を気にすることなんてなかった。

  「いいよ? あっちゃんだったら、えっちなことしても」

  「ぁ……え?」

  思わず問い返した俺に、ユズはもう一度少し恥ずかしそうに呟いた。

  あまりの事態に頭が追いつかない。そんな俺を誑かすように、ユズの手が俺の熱り立つ勃起を撫でる。

  「あっちゃんならいいよ。あっちゃんは、いやじゃないよね。ここ……こんなにしちゃってるんだから」

  「……んぁ……っ、ユズ……」

  その言葉に、自分でも驚くほどすんなりと、それでもいいかと思ってしまった。何故かは分からない。ただ性欲に流されただけと言われればそうかも知れない。

  だが。

  「俺も、ユズなら……」

  「ん、……くすぐったい……ぁっ」

  そう思えば抵抗なんてなかった。相手が男だと言っても幼馴染のユズだ。ユズなら、良い。

  ムチムチとした胸、その先芯に吸い付くとユズの体はびくびくと震え上がる。

  感じている。感じさせている、と思うと俺はじくじくと優越感に苛まれていくのを感じていた。あのほわほわしたユズが俺の舌で喘いでいる。あの真剣な表情をしていた高校生力士が快感に蕩けた笑みを晒している。

  ユズの胸を食みながら、ユズの指で屹立を撫でられる。

  「ふふ、……ん、あっちゃん……おっぱいちゅうちゅうして、赤ちゃんみたい」

  「な……っ、馬鹿にして……」

  「えへへ、可愛いなって思っただけだよー」

  悦に入っていた俺はその言葉で今の自分を客観視して、顔から火が出るような思いに襲われる。確かに、それはまるで授乳を受ける赤ちゃんのような格好だっただろう。

  思わず乳房から口を離した俺を、ユズは後ろへと寝かせた。仰向けになった俺に、ユズの声が降ってくる。

  「ね。おれも、ちゅうちゅうさせて」

  「俺、……こんなに胸ないけど?」

  「んう、……っもぅ……おっぱいじゃなくて、ね。――こっち」

  ユズの申し出。それに俺は寝そべったまま首を傾げる。

  お前ほどの胸は無いし、吸っても楽しいのか。と言外に問いかけるようにユズの乳首を指先で抓ってやると、ユズは面白いように肩を跳ね上げさせながら、非難めいた視線を俺に向けてきた。

  そして、そのままユズは俺の足の間に体を割り込ませる。俺の視線上で、ズボンに張ったテントの頂点とユズのマズルの鼻先が交わる。

  

  「ぁ……」

  何をしたいのか。それが分かった瞬間、俺のズボンは下着ごと奪いさられてしまっていた。バチン、と恐らく最大にまで勃起した熱茎がゴムに弾き出されて腹を打つ。ムワリと籠もっていた空気が俺の鼻にまで届いていた。間近に鼻を置いていたユズは俺以上にこの臭いを肺に送り込んでいるのだろう。

  嫌がらないだろうか。そう思い見下ろしたユズの顔は、――むしろ艶然とした恍惚に緩みきっていた。発情というのは、今まさに目の前にいるオオカミの状態を差すのだろう。

  「あっちゃんの、チンポ……っ」

  ひくついている鼻先をゆっくりと臭いすら味わい尽くすように、俺の頂点へと動かしていく。半ばに剥けた剛直が今か今かとその時を待っている。ユズの鼻息に触れて、だらだらと溢れる精嚢腺液が乾いて亀頭に張り付いていく感覚がもどかしい。

  そして漸く。かぱりとユズのマズルが開いて、俺の雄欲を受け入れてくれる、その直前。ユズがこんな事を言いだした。

  「エッチなこといっぱいしていいけど、……あとで、おれのお願いもきいてね」

  「は、……え? 何だよお願いって」

  「あとで教えてあげるね」

  「いや、そういうのは先に……ぁ、ふぁっ……!」

  俺がユズの一方的な約束を咎める前に、マズルが俺の剛直を丸呑みにしていた。

  熱い、ねっとりとした口腔内に、俺は思わず声を上げてしまう。我慢汁をだらだらと垂れ流していたそこは唾液と混ざり合って滑りがよくなっている。長い舌先が巧みに包皮を捲りあげていき、包み隠さない雄となった屹立を自分だけのもののように深い喉奥へとしまい込んでいく。

  生まれて初めてのフェラチオの快感に、言葉すら忘れてしまっていた。

  「ん、ぉ……っひぁ……!?」

  舌のざらりとした感触が敏感な雁首を集中的に撫でると腰ががくがく震える程の悦楽が迸ってくる。吸い上げるように狭まる頬袋に締め上げられながら、舌が俺の根本から先端までを嬲っていく。

  これは、ユズの食事によって得られた器用さなのか。それとも、ユズが元々こういう事が好きだったからなのか。

  「あ……っん、ぁ……」

  じゅぷ、じゅるり、と分厚い頬肉を通して唾液を啜る音が響いてくる。俺の先走りが混じったそれはきっと彼の胃の中へと落ちていくのだろう。

  擦り上げられる度溢れる先走りを尿道ごと吸いつくされるような快感に、俺はもう我慢の限界だった。腰の奥底から今にも外へと弾け飛んで入ってしまいそうなジンジンとした蟠りが内圧を高め続けている。

  「ゆぅ、ず……っ」

  「……んぅ?」

  俺が名前を呼ぶとユズは一旦口を離す。その舌先からは銀糸のように粘ついた俺の先走りが垂れて、ユズのふくよかな口周りを汚していた。肉がついて段になっている顎に、唾液と先走りの混合液が滴り落ちていく。

  「その、……お、俺、もう」

  「ん……いーよ、いっぱい出して。けど……もうちょっと、我慢してね」

  「ユ、ズ……? ま、さか……」

  限界を告げれば、ユズは鷹揚に頷く。

  だが、彼が取った行動は、もう一度その喉奥まで飲み込んで快感を与えて欲しいという俺の願いとは違ったものだった。

  床に座っていたユズは、俺の腰を跨ぐようにして立ったかと思えば、そのむっちりとしたどデカい尻肉を割り開くように俺の屹立へと下ろしていくのだ。先端がユズの尻肉に触れる。強靭な筋肉が折り重なっている尻肉は異物がその奥の窄みへと到達するのを拒むかのように硬く閉ざされている。だが、更にユズが腰を下ろせば、渋々とでも言うように肉門を開いていく。

  「ユズ……っ」

  「ん、ぁ……っ、……へへ、挿入っちゃう、よ……あっちゃんのチンポ、おれの、まんこに……」

  「ぁ……っくう」

  ユズの窄みに先端が触れる。その瞬間、亀頭から弾けた快感に全身が震え上がった。その震えがユズの雄膣に伝わったのか、ユズのこぢんまりとした屹立の先から、コポリと先走りの大きな雫が湧いて俺の腹へと糸梯子が掛かっていた。

  俺はそれをじっと見つめ、そしてその細い糸が切れた瞬間。

  「……っぁ……ッ」

  喉を締め上げられるような強烈な快感に、意識を白く染め上げられる。

  一気に熱が屹立を包みこんでいた。幾重にも重なる腸壁の襞が蠢き蠕動し、俺の剛直を余すところなく愛撫し、吸い付いてくる。

  「一気に……っ、中、あつ……ッ」

  「ぉ……ッふ、……ぁ……すご……あっちゃんのチンポ、全部……全部、挿入ったよ……ッ」

  あろうことか、ユズは剛直の根本までを一気に飲み込んでいたのだ。己の体重と力を抜ききった蜜門で一気に咥えこまれ、分厚い尻肉と被毛が俺の腰を圧迫する。普段であれば強烈過ぎる刺激に萎えてすらしまいそうだと言うのに、絶えず与えられる微細な愛撫に萎える事すら許されない。

  いや、それだけじゃない。蹲踞の姿勢で俺にまたがる、この巨デブオオカミが自らの胸肉を揉みながら俺の全部を味わおうとしている。そんな強欲に中てられてしまっている。

  「ん、ぁ……あっちゃんのチンポ、はぅ……、中でゴリゴリ、してる……ッ」

  「待っ……ッ、ユズ……そんなに動いたら……っ」

  「いいよ……って言ったじゃん、いっぱい出して……ッ、おれのまんこに、ザーメンいっぱい……っ」

  ユズの体に入った俺の屹立はもはや感覚器としての機能を放棄している。ただ、温度も触感も何もかもが、快楽になって返ってくる。

  そんな状態で、ユズは腰を引き上げていく。かと思えば、根本までを一気に咥え込み、更に引き抜いていく。容赦のない抽挿に、俺の淫雄は無数の襞に吸い付かれたまま、ユズの雄膣を抉り続けることを強要されているのだ。

  俺の体は無重力にでもいるかのような錯覚のままに、絶頂の感覚だけが一際まばゆく、快感の海の中で瞬いている。迫ってくる。急激な速度で、それを抑えようとする俺の手を容易くすり抜けて。

  「ユズ……っ、俺、もぅ……ッ」

  「うん、いいよ……っ、あっちゃんの、中……奥に……っ」

  「イク、……っ、イク……!! ユズ……っ」

  俺の悲鳴に呼応するように、ユズは腰を深く落とし込む。そしてそのまま最奥までを一気に貫かせた。重い衝撃、打ち震える膣壁、俺はその衝撃に堪えきれずに精を放っていた。

  どくん、と脈打つ度に雄の欲望がユズの雄膣を満たしていく。勢いよく溢れ出していく迸りが搾り取られる蜜肉の襞の隙間一つ一つに広がっていくのが目に見えるようだった。

  「あ、っ……熱いの、いっぱい……へへ、凄かったねー、あっちゃ――ん、ぇっ?」

  俺の腰を潰さないようにか、ユズが後ろに手を着いた。その瞬間、俺は軽くなった体を起こす勢いを利用して、そのままユズの体を仰向けに転ばせると、太い足を両肩に乗せるように上げさせる。

  「ぁ……」

  驚いたようにユズは俺の顔を見上げている。そんなユズに俺は、その先走りしか零していない肉茎を摘んでやった。手の中でビクビクと震えるそれは、まだユズが満足していない証拠だ。

  それに、それは俺も同じだった。

  「好き勝手しやがって……俺だって、男なんだからな……ッ、イカせ、てやる……!」

  「……っ、あっちゃん、の……また、おっきく」

  これだけ昂らされたのだ。たった一回射精した所で、まだ足りない。それに、いつまでも受け身のままでいれる程、おとなしい質でもないのだ。

  汗の香りを吸い込む。運動後の健康的な刺激臭に淫猥な香りが混じっている。これだけ性欲を刺激して止まない存在が目の前にいる。こうして繋がっている。劣情の望むままに犯してやる。

  「へへ、おれも背中着かされちゃった……ぁ……っ」

  俺が腰を揺らして抽挿を開始する。それと同時に、ユズは嬉しそうに鼻をひくつかせると自分の乳首を摘み上げて快感の吐息を吐き出した。

  「ん、ぁ……っ」

  「ふっ、……く……」

  一度射精したおかげか、腰の動きはさっきよりスムーズになっている。それでもまだユズの肉門は俺の剛直に吸い付いてきて離そうとしない。その状態で腰を回し、襞を掻き分けていく度に強烈な快楽が脳天へと突き抜ける。

  だがそれはユズも同じようで、俺の一挙手一投足ごとに体をくねらせながら甘い吐息を零し、そして既に限界だったのだろう。俺の律動に合わせてユズの剛直も悦びの涙を溢れさせていた。

  室内にズパン、ズパンとくぐもった殴打音が響く。肉厚なユズの体は、汗ばんだ被毛と地肌の触れ合いで小気味の良い音を立てていく。

  「あっちゃ、あっちゃん……ッ! はげしっ、ぁんっ」

  「……やられっぱなしじゃ、ないん、だからな……ッ」

  「んひっ!? あ゛っ、そごぉ……っ! だめ……っグリグリ、しちゃ……ぁ゛……っ!」

  周囲の部屋にこの音も聞かれているだろうか。在室なら確実に聞こえているだろう。

  腰を打ち付ける度にユズの体が跳ね上がり、その衝撃でユズの屹立から白濁交じりの先走りが散っていく。それを指で掬い取って塗りこんでやれば、ユズは舌をマズルから垂らして口を半開きにさせたまま、顎を持ち上げる。

  その瞬間、ビュク! と握りしめた小さな屹立から、勢いよく白濁が飛び出してはユズの被毛を汚していった。

  「ぁ……ん、ぅ」

  絶頂に酔い痴れるユズ。

  だがまだ終わりはしなかった。ユズも、俺も、それを望んでいる。俺を締め付ける腸壁がまだ足りないと誘っているのだ。

  俺は、ゆっくりと肉壺を穿つように、ストロークを再開していく。

  ◇◇◇

  それから数日後。

  俺は、校内の相撲場にいた。

  「えー、というわけで新しくマネージャーになってくれた中政くんです。なんでもかんでも押し付けないように」

  外部コーチだというイノシシ獣人に紹介され、俺はジャージ姿でペコリと頭を下げた。その挨拶が終わった後、真っ先に俺に歩み寄ってきたのは、当然というかなんというか、ユズだった。

  「……マネージャーが欲しいなら普通に言えよな」

  「引き換えのお願いって言った方が、あっちゃん素直に頷いてくれるでしょ? 素直じゃないんだもんなー」

  「はあ、ったく」

  先週末。ユズとの雄交尾後に聞かされた『お願い』は、相撲部のマネージャーになって欲しいという事だった。正直、もっと吹っ掛けられる事をしていたと思うのだが、ユズがそれで良いと言うのなら良いのだろう。と考えるようにした。

  マネージャーと言っても、選手の管理はコーチや顧問の仕事で、どちらかと言えば雑用係だ。他にもマネージャーがいるらしいので、勉強を優先でいいともコーチは言ってくれているので、そこそこでやろう。

  と思っていると、ユズの後ろからぬ、っと何かが突き出されてきた。

  「うわ」

  「可愛い子が入ってきたじゃんよー。なんだ狼戸、独り占めか~?」

  なにかと思えば、他の部員が俺の周りに集まりだしていたのだ。一人だけではなく、様々な獣人巨漢が詰め寄ってきて、肉の檻のような有り様だ。

  取って食われるのだろうか。なんて風に思っていると、周囲から次々に質問が浴びせかけられた。

  「あ、この前見学に来てたよな。どうだった、俺のタイヤ引き。筋肉が躍動してたろ?」

  「中政くん、下の名前なんていうの? 同級生だし、名前呼びしようぜ」

  「あ~、もう! ダメ、あっちゃんは俺の彼氏なんだから! 手ぇ出しちゃダメですから、ぜったい!」

  「なんだよ、吊れねえなあ。……ちょっとだけ」

  「ダメですってばッ!! もう、あっちゃんはいつもこうだ……」

  と、ユズにその檻から救出されて、取って食われることはなかった。のだが。

  「……ん?」

  「どうしたの?」

  「え、ああ、いや……」

  ユズの言葉に初耳の情報があった。

  俺はいつの間にやらユズの彼氏になっていたらしい。当事者である俺がその自覚がなかったわけで、どうにか訂正した方が良いんじゃないか。と思うこともあるが、まあ。

  「なんでもないよ」

  嫌な気はしない。

  いや、正直嬉しい。そう思えたから、そういう事にしよう。

  俺を庇ってくれるボフボフのデブ狼力士の腕の中で、彼の肉感を満喫することにしたのだった。

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