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スリムだった黒豹少年が巨デブ相撲黒豹部員になっていく話
高校二年、春。
「というわけで、地方春、団体戦優勝の大快挙を遂げた話題の高校生力士の日常に迫っていきたいと思います!」
「……、あー、そういえば、校内新聞の取材がどうのって言ってたっけか」
「忘れてたんですか、豪田先生」
メモとペンを手に職員室にやってきた僕を訝しげに見上げていた豪田先生に、新聞部2年である僕はむすっと頬を膨らませてみせた。
僕は、自他ともに認める愛嬌のある顔をしている。可愛いというよりは、朗らかな心地になるとかで、僕が取材をすると皆口が軽くなる。そんな取材上手な僕が最近注目しているのは、わが校の相撲部だ。
強豪選手がいた三年生が引退後、入部者がいなければ廃部寸前だったという相撲部は、その一年という期間で全国大会への切符も夢じゃない所まで成長した。
その立役者とも言うべき、選手が僕が特集を組もうと思っている黒豹の生徒は、昨年入学してきた僕の同級生だった。ぜひ、取材させて欲しい。とアポを取ったのは先週。どうやら、豪田先生はその事をすっかり忘れていたらしい。
がっくしと、肩を下ろしながら、職員室の隅にある応接用スペースのソファに座ってインタビューを始めることにした。中々先行きの怪しいスタートだ、と少し緊張を持って始めた取材だったのだが。
「見るか? アイツ、まわしが恥ずかしいからって、まわしの下にスパッツ履いてやがったんだぜ!」
まあ、スパッツで嵩増ししねえとまわしもずり落ちるくらいには細っこかったんだけどな。と豪田は、いざインタビューが始まれば、まるで我が子を褒めるかのように上機嫌で次々と黒豹力士について語り始めていた。
気付けば、最初に予定していた十五分程度という時間を悠に超えて、もう三十分を越えようとしている。僕もネタが増えるのなら、数回に分けて特集が組めるんじゃないか、と画策し始めていた。そんな時。
「豪田ちゃーん、いつまで自主練してりゃいいんだって……、あれ、来客?」
「おお、噂をすればなんとやらだな!」
そこに現れたのは、噂の張本人だった。黒豹は、まわし一丁でジャージを羽織りもせず、汗ばんだ雄の臭いを漂わせながら職員室に、のしのしと踏み入ってくる。
「お前のインタビューだよ」
「俺の? って……豪田ちゃんッ、何見せてんだ!」
そして、机の上に広げられている物を見て、バフッと音がしそうなほど一気に顔を赤らめた。
それはそうだろう。何を隠そう机の上に広げられていたのは、資料として豪田先生のファイルから取り出された1年前の黒豹の写真だったのだから。
「なんだよ、恥ずかしがるなって。ほれ、お前のスパッツ時代だぞ」
「豪田ちゃんよお!」
我が子を語るような口ぶりは鳴りを潜め、今は仲の良い兄弟のような口論を繰り広げる。もしかしたらこの親密さが部の活力なのかもしれない。とメモを取る僕の前で、貴重な資料であるまわしスパッツの細身の黒豹が映る写真は、見る影もなくなった巨漢黒豹の手に奪われてしまっていた。
◇◇◇
高校一年、春。
「だあぁ……キツすぎ……ッ!」
黒豹は大の字になって転がった。汗ばんだ毛に砂が付こうが気にしない。
名門高校に入学した黒豹は、母との約束通り相撲部に入部してから一ヶ月。黒豹は毎日のシゴキに、もはや限界だった。
律儀に毎日こうやって相撲場にやってきてボロボロになって、いつ辞めようかと考える日々。
「汚れるよ」
「あ、うす……」
そんな倦んでいる黒豹に、茶熊の先輩が手を差し伸べてくれた。
その手を掴めば、まるで岩にでも捕まっているような錯覚に陥った。黒豹がわざと後ろに体重を掛けながら体を起こしても、数ミリすら動く気配がないのだ。
巌の如き安定感。寡黙な性格も相まってか、山奥に鎮座する岩のようにすら思える熊は、黒豹が起き上がるのを見守って豪田監督と一緒に職員室へと向かっていった。
それを見送りながら、隠す様子もない尻になんとも言えない心地になる。
「……やっぱ恥ずいよなあ」
黒豹は、まわしを締めるのも恥ずかしく、その下にスパッツを穿いている。
部員は5人。二年の熊と、あとは黒豹と同級の一年生が4人。その中でスパッツ着用は黒豹一人だった。そうなると、むしろ穿いている事が恥ずかしいのでは、とも思ってくるのが不思議なものだ。
「なんだ、まだスパッツ気にしてんの? じゃあ脱げばいいのに」
と、相撲部の中でも特に意気投合している猫が黒豹に話しかけてきた。
そんな事は分かっている。分かって入るが、一人でスパッツを穿いているより、地肌にまわしを締める方が恥ずかしいのだから、仕方がない。
「だって、ケツ出るだろ」
「そりゃそうだろ。てか、別に銭湯とかでも尻出してんじゃん」
「銭湯とかとは、なんか、こう……違うだろ?」
「そうかあ……?」
首をひねる猫は本当に分からないといった様子だ。しかも、ほとんど無意識にまわしを締めた尻を、スパンと平手で打っている。その衝撃で揺れる尻肉と腹肉。力をいれていない緩んだ筋肉は脂肪程ではないが柔らかい。ボヨンと揺れるその肉の塊、その暑苦しさに目が慣れてきてしまったという事に瞑目して、額のしわを伸ばしていた。
中学から相撲をしていた猫は、入学当時から90kgの体重を誇り、十分な肉が付いていた。いや、黒豹から言ってしまえば完全にデブだった。
俺も、コイツくらい太れば気にならなくなるのか。俺はデブになりたいんだろうか。と悶々とした想いを募らせていく黒豹に、変わったやつだなあ、と笑いながら猫は部室棟へと帰っていった。
「どっちが変わってんだって」
「ん、なんだ。まだ残ってたのか?」
一人残った相撲場で、まわしとスパッツに付いた砂を払っていると、豪田監督が戻ってきた。
そして、豪田は黒豹に近づくと、その顔をじっと見つめた後、眉根を寄せて。
「お前、なんだ、最近悩んでるだろ」
そう言った。
意外とよく見られている。という事に驚きながらも、顔を顰めた監督が言うまで帰さないと言うような圧を感じて、黒豹は観念して「相撲続けられる気がしなくて」と心中を吐露した。
その言葉は意外ではなかったのか、監督はその太い腕を組んで、黒豹の言葉を促していく。
「……俺もめちゃくちゃ食うようになったんすよ。二倍は食ってるって母さん言ってるし」
だがそれでも「まだまだ食が細いなあ、頑張って食えよ~」などと猫に誂われる。先輩や猫は、そんな黒豹の二倍は軽く平らげるのだという。
もはや恐怖の胃袋だ。そりゃあ、それだけデカい体になるだろ。という納得。まだ60kgという軽量級と言うにも足りないような自分と比べれば、嫌気も差してくるというものだ。
「でも、俺全然、体デカくなんないんですよ」
「いや、……んなことないぞ」
ため息をつく黒豹に、豪田監督は首を振った。
「自分で気付いてないかもしれんが、確実に肉が付いてきてる。お前は頑張ってるよ」
と豪田が黒豹の頭をトンと叩く。
そんな軽い動作にも重さがあり、ますます自分が非力なんだと思い知らされる。と同時に。
「……そっすか」
褒められた事に擽ったくなる。
まあ、補助金を貰っている事もあるわけだし、もう少し続けてもいいか。と黒豹は撫でられた頭を撫でながら、そう思うのだった。
◇◇◇
高校二年、春。
「いやあ、あん時はお前が辞めたらどうしようかって、本気で焦ったんだよなあ」
「……黒歴史だっての」
と豪田先生の隣に座って撃沈している黒豹に、僕は苦笑いを浮かべた。まさか相撲をそもそも続けていなかったかもしれない、という話に記事を頭で練り上げながら、ふと僕は黒豹のまわしに目をやった。
今は、スパッツを穿いていない。というより、彼はスパッツを穿いているどころかジャージを羽織ってもいる所すら見たことがない気がする。
「いつからスパッツは履かなくなったんですか?」
「ん、ああ……夏前だったか。合宿の時はもうスパッツも持ってきてなかったよな?」
と話を振る豪田に、撃沈から浮上して顔を上げた黒豹は不貞腐れたような顔を見せる。どうにも本当に記事にはされたくない過去だったらしい。
「なんで、豪田ちゃんが答えんだよ。……サイズ合わなくなってきたし、買い替えるのも面倒だったから止めたってだけ」
「まあ、体も出来上がってきてたしな」
と豪田先生は、合宿場らしき場所で稽古をしている黒豹や部員達の写真を取り出していた。
◇◇◇
高校一年、夏。
黒豹達相撲部は、山間にある合宿場にやってきていた。豪田監督の知り合いが経営しているという合宿場に、雄々しい声が木霊する。
「おら、もう一丁!! 押せ、押せ!」
「ぉおオオオ、ぉ゛オオッ!!」
蝉時雨が辺りを覆っている、夏の蒸し暑さの中。筋肉と脂肪の鎧を身に纏った高校生達が激しくぶつかり合っていた。
元大学生力士だったという豪田監督に、黒豹はその体重をすべてぶつけるようにして、腰を掴み突進する。
黒豹の体は、他の部員達と並んでも『細い』という印象はなくなっていた。80kgの壁を超え、筋肉で体が膨らんでいる黒豹は、前まではびくともしなかった監督の体を押しやれるようになっていた。
スパッツを穿くことを止めた黒豹は、黒い毛に生える白いまわしを汚れさせながら、筋肉に盛り上がる尻に力をぐっと込める。
「もっと、腰入れろ! ケツ沈めて、足腰使うんだ!」
「おすッ!! ぬぉ、ああ!!」
喝を入れ、全身全霊で監督を押すも、しかし土俵際まで引き下げさせることは出来なかった。土俵の中心から少し奥へと進んだ所で監督の足が止まる。そのまま、首を押しやられた黒豹は、その押す力に抵抗せず土の上に転がっては受け身を取っていた。
このぶつかり稽古の動作にも、もう慣れたものだ。土俵際まで監督を押しやることはまだ出来ていないのだけれども。
「良いぞ」
だが、そんな黒豹を監督は褒めていた。
「足腰が上手く動いてる、タッパがある奴は軽視しがちだからな、今のうちに立ち回りを身につけておくといい。体も出来上がってくるだろうからな」
「あざます……!」
「試合も勝てるようになってきただろ? 上手く立ち回るには、腰が何より重要だ。技術も付いてきてる」
体も出来てきてる、だからこそ、小回りの聞く相撲は黒豹の武器になる。監督は『期待してるぞ』という言葉と共に、黒豹を土俵の外に出して、次の部員へと向き合っていった。
「へへ、体出来てきたってよ」
練習が終わり、夜。黒豹はニヤニヤと監督に褒められた言葉を反芻しながら、ぐっと胸を張って膨らんできた体をトイレの鏡に映す。
お椀のように丸く中身の詰まってきた胸は、重力の通りに脇腹から胸のラインに八の字型の溝を作っていく。腹はジャージの腰ゴムの上に乗っかるようになっていた。脂肪だけじゃない筋肉が、じっとりと自分の体を包み込んでいく。
相撲漬けの合宿で更に体が大きくなっていっている実感があった。監督や友人には言わないが、それが少し楽しくなってきていた。
なんとなく、どう力を加えれば相手を崩せるかも分かり始めてきたのだ。
だが、何より自分の変化として顕著だったのは。
「ああ、やべ……昨日も抜いたのになぁ」
性欲だ。
そうして、変わりつつある自分の体を見ていると、妙に股間がムズムズとする。と思えば、ジャージの中で黒豹の雄根はビンと立派なテントを張っているのだ。
性欲が明らかに増している。
しかも、デカくなっていく自分の体が監督や部員に褒められるのを思い出して、胸が熱くなると同時にこうして興奮してしまう。こうしてトイレの鏡に自分の体を映している所すら、他の部員や合宿場の職員が通りかかってくれないかと期待してしまう程。
ゴクリと喉を鳴らした黒豹は、誰も来ないことを確認して少しだけ残念な心地になりながら、トイレの個室へとひょこひょこと入っていく。
前までは週に二、三回抜くか抜かないかだったというのに、今では毎日、日によっては朝と夜の二回。合宿に来ても、こうしてコソコソとトイレに抜け出しては自らを慰めていた。
「ん……ッぁ、は……ぁ」
くちゅ、くちゅと粘着く音が個室に響く。和室便器に跨りジャージとパンツを脱いで全裸になった黒豹は、最近肉に埋もれて包茎気味になっている雄根を、指の輪でぐちゅぐちゅと扱き上げる。
根本が自分の下っ腹で隠れている、だが、手の感覚を頼りに一番根本まで押し下げた手を先端まで絞り上げる動作を繰り返す。その度、びりびりと全身に走る快感がたまらなかった。
「は、あ……ッ、たまんね……ぇ」
稽古で限界まで扱かれた後は、食堂で大量の夕食を食わされる。
野菜と肉を中心に、栄養面を考慮された大量のおかずと、業務用炊飯器をパンパンにするほど炊かれた白米。しかも、その釜すら平らげて、更に追加で炊くほどの量だ。
春頃であれば、確実に吐き戻していただろう大量の食事を、しかし黒豹は他の部員に負けじとかっ食らっていく。
「食うようになったよなぁ、お前も」
「へへ……ッ、お前らに負けてらんねえからな!」
「お、そうかそうか。ならおかわりだな?」
そう言って腹を撫でれば、豪田監督が耳ざとくそれを聞きつけて、丼のようなお椀に白米を更に盛っていた。それに文句を言いながらも腹に押し込み切った後、少し休んでから風呂に入る。そんなルーティンの中で、消灯時間を待たずして、睡魔が襲い来るのも当然だろう。
そんな眠気まなこの中で、黒豹はオナニーするのだ。この快感に目覚めてからは、もうこれ無しでは一日を締めくくれない。
「……ッぉ、お、あ……はぁあ!」
黒豹は全裸のまま個室の中で己の体から立ち上る、その雄の臭いに顔を蕩けさせていた。勃起した雄根は痛いくらいにそそり立ち、先走りを溢れさせる。そしてそれを塗りたくるように手淫を激しくしていく。
そしてそのまま、毎日吐き出しているというのにも関わらず、大量の白濁を便器へとぶち撒けていく。
「お、ッ……おォ……っ!」
ずんぐりと肉の付いてきた体をぶるぶると震わせながら、蹲踞の姿勢のまま自らの銃口を下に押し下げる代わりに、背を仰け反らせ、ビュク、ビュクと脈動する迸りを白磁の壁に叩きつける。
はあ、はあ、と肩で息をしながら、黒豹は指についた白濁をトイレットペーパーで拭うと、パンツとジャージを穿いて、トイレを後にする。
「おかえりー、あれ。また大きくなったんじゃない?」
そんな合宿のルーティンをこなして、久々に帰宅した黒豹を迎えたのはそんな母の言葉だった。
合宿終わりと言うことで、黒豹の好物を作ってくれているのだろう。ハンバーグの焼ける臭いが鼻をくすぐる。昼間、最後の送別と言うことでたらふく食べたはずの腹がぐう、と空腹の音を上げる。
「へへ、そうかな? 結構、監督にも期待されてっからなあ」
黒豹は腹を撫でながら、母の言葉に満更でもないように返してから、そんな気持ちになった自分に少し驚いていた。
数ヶ月前であれば、体が大きくなったなんて言われれば、嫌がっただろう。なにせ今までの服は着れなくなる。形だけだったはずの相撲に変えられているような気分にもなる。それに、デブになれば彼女なんて出来っこない。
だが、今はそんなことは微塵も思わない。
黒豹は相撲部内ではまだ小さい方でデブだなんて到底言えやしない。体が出来れば他の部員に引けを取らない勝負が出来る。そんな意識や常識の変化もあってか、黒豹は体の変化を前向きに捉えられる様になっていた。
◇◇◇
高校二年、春。
「なるほど、そこからどんどんと成長を重ねていったわけですね……!」
僕は興奮気味に頷きながら、メモにペンを走らせる。合宿での黒豹の変化、それは豪田先生からも目を瞠るものがあったらしい。
「ああ、コイツには素養がある。俺はそう思ってたんだけどな……でも、それを確信したのは合宿の時じゃないぞ」
「……というと?」
「秋口だったか? チーム5人で出場できる大会があってな。そこに出場したんだが……」
「豪田ちゃ~ん?」
と、豪田先生が口走った瞬間、黒豹は豪田先生に身を乗り出して顔面を肉薄させた。ヒクヒクと明らかに怒りを抑えた笑みを浮かべて、まるでキスをするような距離にまで近づいて豪田先生に威嚇する。
よほど、知られたくない話なんだろう。そう考えると、むしろ僕としては興味津津になってしまう。どうにかそれを聞き出せないか。そう考えていると豪田先生は困ったように頬を掻いて、肩を竦めた。
「まあ、なんだ。相撲にのめり込むきっかけがあってな、そこから、コイツが本気になったんだよ」
「そのきっかけ、とは?」
「はは、まあ……うちの大将がいない所でな」
「俺がいない所でも言ったら千本張り手するからな、豪田ちゃん」
「……ということだ、諦めてくれ」
隣から放たれる威圧に苦笑する豪田先生は、そのきっかけについては口にしない約束を交わしたのだった。
◇◇◇
高校一年、秋。
「……っ、ひぐ、ぅ……く、そ……ッ、なん、なんだよ……ッ」
黒豹は、嗚咽を漏らして泣いていた。
彼にとって初の大会。合同練習などでの試合はしていたが、こうしてちゃんとした大会に出場すること自体は初だった。
それまでは、控え選手として登録はしていたものの、実際に土俵に上がることはなかった。そんな彼の正しく初舞台、黒豹は――。
「……惜しかったよな、でもあのガタイ相手にあそこまで粘れたんだ。十分すげえよ」
「ぅ、……ッ、は、ッぁ……」
持ち帰れたのは黒星一つだけだった。
猫の慰めに頷きながらも、嗚咽で喉が震えて言葉が出てこない。
自分でも不思議だった。「ああ、負けたんだな。相手、デカかったしな」と納得しているのに、涙が溢れてどうしようもない。勝手に喉が震えて、情けない声が溢れてくる。
頭でどれだけ考えても、涙は止まってくれなかった。
悔しかったのだ。
相手は120kgにも届くだろうという巨体の熊獣人だった。体重差はあれど、それでも黒豹は負けるとは思っていなかった。自分より体重の重い相手は慣れている。
手を抜きもしなかった。むしろ、全力でぶつかって、そして、全力で負けた。
どこかで、簡単に勝てる自分を想像していたのだろう。そんな甘い自分が、悔しかった。
「う……ッぁ、ふ……」
「落ち着いたか?」
「は……ッ、ぃ……」
涙を拭いながら、息を整える。まだ、喉がキツく締め上げられている。それでも、ゆっくりと呼吸をする。豪田監督が黒豹を慮った、その声に頷いた。
「監督、俺……強くなりたい」
「……ああ」
「俺、本気で相撲する……だから、俺を鍛えてくれよ、監督」
その涙が、一人の高校生を力士へと変えたのだ。
◇◇◇
高校二年、春。
「豪田ちゃん、基礎練してっからな!」
こんな所いつまでもいられるかよ。と立ち上がった黒豹が、のしのしと職員室を出ていく。そんな彼を見送った後、豪田先生はそんなエピソードを話してくれた。
「……オフレコな」
「大人って嫌な生き物ですね」
数分前、喋らないと約束したのに速攻で裏切ったのだ。この先生を信用していいのかどうか、正直迷う所だ。まあ、それはそれとして、もしかすると何かで使えるネタかも知れないとメモには残さず、心に書きとめるのだけど。
「それで、秋頃から本格的に、部を引っ張っていく力士に育っていったってことなんですね」
「おお。稽古も食事も、それから結構口出しを求めてきてな」
元々、勉学が得意で機転も効く生徒だった黒豹は、それから更に体の増量を始めた。普通であれば伸び悩む所を助言を積極的に取り入れ、自分のペースに落とし込んでいくことで着実に成長していった。
「気付けば100kgの王台突破だ。いや、流石に驚いたぜ。えっと……その時の写真もあるはず。っとこれこれ」
と取り出したファイルには、確かに少しずつだが明らかに肉付きが増えていく黒豹の姿が映し出されていた。
体は厚くなり、胸は乳房と言っても差し支えない程に膨らんでいる。腹もでっぷりと飛び出してはまわしを今にも引き裂きそうな程に詰まっているのが分かる。
その中には、全裸にタオルという出で立ちで、校庭で涼んでいる黒豹の姿なんかもあって、僕としては刺激の強い資料の数々に、ゴクリと生唾を呑まざるを得なかった。
そんな僕に監督は、むしろ次々と写真を見せてくる。
タオル姿で明らかに腰のあたりから何かがタオルを突っ張っている写真、黒豹の胸をアップに撮影されている写真など。
「このあたりで、まわしのサイズ変えたんだっけか。いや、今思えばここからまだ増えるとはなあ」
「そうですね、今と比べるとまだ……?」
と、その写真を見ている間にふと疑問に思ったことがあった。まわし姿の黒豹を見ていると、体が大きくなっていくと同時に、胸の先端の膨らみも次第に大きくなっている気がする。
始めは、乳首は埋没していたのに、次第にその陥没が頭を出すようになっていき、そして、冬の直前にはぷっくりとその存在を主張していた。
ただ成長によってなのだろうけれど、まるで女性の乳首のように色艶めいていくそれを指で弄べば、あの黒豹が可愛らしく喘ぎ泣くような気がする。
僕はごくりと、そんな変化に淫猥な妄想を抱きながら、反応してしまった股間を隠すようにメモをゆっくりと下ろしたのだった。
◇◇◇
高校一年、秋。
「ぉお、っ、……ぁ、ん゛ん……ッ」
夜は更け、10時を回った頃。黒豹はこんもりと育ちに育った胸の先端を摘みながら、雄々しい声を上げていた。
カーテンは開けられていて、夜闇に慣れた目であれば近所の住民に見られるかもしれない、というのにも関わらず黒豹はその身に何も纏っていなかった。
その脂肪がたっぷりと付いた全裸を惜しげもなく晒している。胸も尻も贅肉がたっぷりとつき、黒豹が上半身を上げると、全身がでぷんっと重たげに揺れて存在を主張する。
どこを取っても巨漢といって差し支えない黒豹は、胸の先には乳輪の膨らんだ乳首を摘み上げて、舌を垂らしながらだらしない表情で婬悦を叫んでいる。
「ん、ぉお……ッ……、乳首も、ケツも、やべえ……ッ」
黒豹の体は、特訓と更に増やした食事によって100kgを超えていた。そんな重厚な体が動く度、ぐちゅ、ぐちゅりと粘着く水音が部屋に響き渡っていく。
体を動かすたびに全身から汗が噴き出るような重さが身に染みる。相撲部員らしいムチムチとした太ましい体を前後に動かしながら、黒豹は壁に取り付けたオナホに向かって腰をヘコヘコと振っているのだ。
母親が夜のシフトで家を空ける夜は、黒豹にとっては絶好のオナニー日和だった。部屋中に雄臭い汗の香りが充満していく。
「……ッんぉ、っぁ、……あッ! ちんぽ、たまんね……ッ、ぁあ……!」
胴回りの肉で自分の性器を触れる事すらも一苦労になってきた黒豹は、直接ペニスを扱き上げるのではなく、体中の性感帯を刺激する事に目覚めていた。
ブルンブルンと揺れる胸の先端の硬く尖った芯をつまみ上げながら、自らの脇に顔を寄せて立ち上る濃厚な汗の香りに頬を震わせるのだ。
それだけじゃない。まるで丸めた絨毯のような分厚い尻肉の間には、生身の物ではない突起が見え隠れしている。黒豹の尻穴から入り込んで、腸内から黒豹の前立腺を締め上げるエネマグラ。そんな大人の玩具に貫かれながら黒豹は、固定したオナホに屹立したペニスを突っ込むことも少なくなってきていた。
「いぐ……ッ、くう、ォお……ッ! オオっ、イク……ッ!!」
いや、むしろオナホだけを使っていた頃よりも強い快楽に酔いしれながら、獣そのものの雄叫びを上げながら黒豹はオナホの中に大量の白濁を吐き出した。
どびゅッ!! と重苦しい音を響かせた直後、彼のペニスから迸った大量の精液がオナホの中を逆流して、巨大な腹に溢れかえっていった。
まるで黒糖の饅頭に白蜜がかかっているような自らの体に、黒豹はゾクゾクと恍惚の笑みを浮かべて、手の平で自らの精液をデブッ腹に伸ばしていく。
「……は、ぁ……ッはは」
そうしている内に再び膨らみ始めた雄茎を握りしめ、二度目のオナニーを始めるのだった。
◇◇◇
高校一年、冬。
秋に冬眠に備えて食いだめをするのが野生動物だ。なら、冬も冬眠せず同じように食べ続けたのならどうなるのか。
その答えは、今黒豹が正しく体現していた。
「ついに120kgも超えたのか、化けるもんだな、おい」
「なんだよ、素直に褒めてくれよな、豪田ちゃん」
あれだけデカい重い、と思っていた豪田監督を追い越し、もはや部で一番の大巨漢となった黒豹は、その性格も自信に満ち溢れるものになっていた。
めきめきと実力も付けた黒豹は、もはや部長である熊にすら引けを取らない立派な力士だ。
「俺よりデカいしなあ。うちの大黒柱だな!」
「へへ、照れるって豪田ちゃん。あんまり褒めるからトイレ行きたくなってきちまったじゃんか」
「関係ないだろ。土俵で漏らす前に言ってこい」
「ん、ぉ……う、ういすっ」
黒豹は、まわしの上から尿意を表すように前袋をぎゅうと握る。その上から豪田がふざけてトンと叩けば、黒豹は妙に上ずった声を上げていた。
「あん、どうした?」
「な、何でも無いっすよ!」
思わず、眉をひそめる豪田に、慌てているのを誤魔化すように笑うと、ひょこひょこと体の印象とは裏腹に身軽な足取りで相撲場を抜けていった。
冬の寒い風が、まわし一丁の黒豹を撫でる。だが、黒豹はジャージ一枚すら羽織に戻ることはなく、半裸のままで外に飛び出していく。
「お、力士じゃん。またでかくなったか?」
「おう、1kgな!」
「誤差じゃねえかーっ」
外に出ると、すぐ傍に他の部と並んだ部室棟がある。その前を通りながら校舎内のトイレへと向かう途中。野球部の同級生から野次が飛んできた。秋の初め頃まではそんな野次も嫌なものだったが、今ではむしろ誇らしいほどだ。
自分は力士なんだと、胸を張れる。相撲部であることは、黒豹のアイデンティティとして確立されきっていた。
「外トイレ行かねえの?」
「普通のトイレ狭いからよ~、職員室横の多目的が良いんだわ」
「デブは大変だな、漏らすなよ」
「うるせ、漏らさねえよ!」
軽口を返しながら、黒豹は野球部員と分かれて校舎に入る。1階にある来客用にもなっているトイレの多目的トイレ。そこに転がり込むようにして扉を締めた黒豹は、鍵を掛けた事を確認してから「ふう」と息を吐いた。
「漏らすなってか……へへ」
意味深に笑いながら、黒豹はまわしを外していく。
実のところ、まわし姿で校舎まで走るなんて行為をしている間に既に少し『漏らし』てはしまっていたのだ。まわしを外して、前袋と股を引き剥がせば途端に溢れ返る汗の香りに混ざって、栗の花の香りが舞い上がる。
ぬち、と淫猥な音をかすかに鳴らして、前袋と半ば下っ腹の肉に埋もれたペニスの先端とで、漏れた精液の糸が伝っているのだ。
ひくひくと震えるそのペニスは、明らかに欲に膨れ上がっている。
「……ぁあ、朝抜いてきたのになあ」
と言いながら、黒豹は両乳首を指先でクリクリと弄んでいく。
太った体を見られると興奮する。
まわし姿でいるところをみられると興奮する。
雄の汗の匂いを嗅ぐと興奮する。
「ぁ……っ、は、先生達がすぐ近くにいるのに……ッ、チクニー、すんの……たまんね、ェ、なあ……ッ」
高校では彼女を作って、華々しい青春を謳歌する。
そんな目標を持っていたはずの黒豹は、そんな夢があったこともうすっかり忘れて、息を殺して多目的トイレの便器に向かって、ビンビンに熱り立つペニスを突き出している。
1年前は、自分で触れる事もしなかった乳首をコリコリと爪で引っかきながら、その屹立の先端からだらだらと先走りを漏らす様は、雄豚そのもの。
誰がどう見ても、黒豹は変態だ。何処へ出そうと恥ずかしい淫猥なデブ豹は、それでも満足げに乳首を摘み、抓っている。
「ぉ……ッ、ぁ……、っ、ぁ!」
小さく、響かないように小声で吠えながら黒豹は、腰を便器へと突き出した。ペニスなんてものは触ってすらいない黒豹は、どぴゅ、どぴゅとまるで数週間溜めたかのような量の精液を、便器のそこに溜まった水へと吹き出させていく。
もはや、乳首だけですら絶頂に至ってしまう。
「は……変態じゃん、笑う」
そんな自分のだらしない姿に、黒豹はくつくつと肩を震わせて笑っていた。
相撲を始めたのがすべての原因だ。
こんなに体がデカくなったのも。汗が雄臭くなったのも、風呂の湯の大半を排水溝に押し出してしまうのも、人に見られて興奮するようになったのも、性欲が有り余るようになったのも、全部相撲部に入ったからだ。
だが、黒豹はそれを全く後悔はしていなかった。
「……変態になっちまったけど、まあ、相撲楽しいしな」
萎えたちんこをトイレットペーパーで拭いてから、まわしを締め直す黒豹はもうすぐ、自分が二年になるという事を考えていた。
どうやら、中学で相撲部だった後輩が入って来ることを豪田伝手で聞いている。つまり、黒豹も晴れて相撲の先輩になるのだ。
「来年も頑張るかぁ」
後輩に追い越されるなんてことを心配もしない。もし、後輩に負けるのなら、その時はまくり返してやるだけ。確かな闘志を瞳に燃やしながら、黒豹は相撲場へと戻っていくのだった。
◇◇◇
高校一年、冬。
そして、そんな背中を僕は見送っていた。
鼻をくすぐる栗の鼻と汗の香り。苦しげな声が聞こえ滝がすると、多目的トイレに耳を寄せた僕の耳に飛び込んできた、男らしくも甘甘しい喘ぎ声。
「相撲部の……」
僕は、彼が通った道の残り香を吸いながら、いつの間にか勃起していたペニスを抑え込みながら、彼が出ていった後の多目的トイレへと、吸い込まれていった。
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