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トレジャーハンターニコと怪しいアルバイト

  (にゃふっ……さい、さいあく……にゃ……ぁッ……っ)

  ニコは声も出せないまま、誰にも聞こえる事のない喘ぎ声を心で漏らしていた。

  石化されたニコはいつもの冒険服ではない。普段の彼女であれば絶対に着ないであろう、セクシーなバニーガール衣装に身を包みながら、裕福そうな男達にその動けない身体を撫で回されていた。

  (ん、ぁ……にゃぅ……っ、先っぽ、くりくり……やめる、にゃ……ッ)

  男たちの手はまるで遠慮がない。

  ニコの健康的な腕や脚ならともかく、お腹や首筋、そしてその豊満な胸までもを艶めかしい手付きで撫でつけてくるのだ。

  何故か驚いた子猫のような可愛らしいポーズで石化しているニコは、その手を払いたくても払うことは出来ない。

  バニーガール衣装の胸。下から膨らみを支える黒。毛が押し込まれているからこそくっきりと浮かんだニコのその先端を男の指が往復する度、与えられる身を捩りたくなる快感にも身じろぎ一つ出来ず、ただ愛撫を受け入れるしか無い。

  (ん、にゃ……ぁッ……き……キモチイイ……にゃ……ッ)

  絶対に発散ができない悦楽に身を炙られながら、しかし徐々に快楽に魅入られていくニコ。そんな彼女の表情の変化は一切見えないだろう男達は、しかし、彼女の像に視線を吸い込まれていくように伸ばされる手が増えていく。

  「おや、お久しぶりですな。ここで出会うのは……おやその子は」

  「いやあ、初めて見る子ですが、素晴らしいですな、どうです。ぜひ触れてみては」

  そして、その手は更にニコの体の秘める場所へと伸ばされていく。

  ◇◇◇

  ニコは、凍りついていた。

  とは言ってもいつものような、石化したり、黄金化したり、ペンキで固まったり、蝋まみれになったり、というようなことではない。

  手渡された『制服』を見て、思わずフリーズしてしまっていたのだ。

  「……制服って、これにゃ……?」

  涼し気な水色の毛並み。片目を金色に輝かせるニコの爛漫な瞳は、その両目ともを困惑の表情に歪めていた。機動性を重視した軽装の冒険服。たわわに実った豊満な胸部やむっちりと太い太もも。そんな魅惑的ながらも無邪気にも見える彼女は、手の中にある服に若干引いていた。

  太くもふもふの尻尾もげんなりと垂れ下がっている。

  だが、そんな様子のニコに、むしろご満悦な笑みを浮かべる目の前の男性は、ニコの問い掛けに肯定するように力強く頷いていた。

  「うん、そうだよ! いやあ……街で見る度きっと良いキャストになってくれると思っていたんだ! まさか、ウチにアルバイトに来てくれるなんてねえ……!」

  「う、うにゃ……」

  テンションの高い店主に対して、ニコのテンションは右肩下がりだ。

  というのも無理はない話。

  トレジャーハンターという生業をしているニコにとって、お宝と一切縁がない労働を進んでしたいと思うことは絶対にありえないことなのだ。

  だが、実際ニコはこの酒場にアルバイトをしにやってきている。

  その理由は……。

  (……ぅう、一番短期間で稼げるバイトがここって、聞いたにゃ……ッ。借金返してお宝探しに行くにはこれが最速なのにゃ……っ)

  借金である。

  トレジャーハントでお宝をがっぽがっぽ稼いでいるのではないか、という疑念もあるかも知れない。ニコというトレジャーハンターは割りといい腕をしている。それこそお宝を持ち帰る事も少なくない——のだが。

  如何せん、冒険に出る度に呪いで固まったり、魔法で固まったり、罠で固まったりをしていると、治療や薬の費用、それにそのせいで街に被害が出た場合の賠償。そういった借金の積み重なりでもはや首が回らない状態になってしまっていたのだ。

  もはや、手段を選んでいられない。

  ニコは労働という邪悪に手を染め、ロマンに涙し、資本に迎合するほか道はなかった。そして実入りが良いという、この酒場の戸を叩いたのだ。

  だが。

  だとしても、だ。

  「なんで制服がバニーガールなのにゃ!?」

  「ただのバニーじゃないよ! 一人一人、より魅力的にかわいくなれるようにボクがデザインした、君だけのバニーガールスーツだ!」

  「ニコ、こんなの着たくな……」

  「借金」

  「ぅにゃ……っ」

  冒頭のフリーズした原因。それを手に突っ込んだニコに、しかし店長は満面の笑みでいらない補足を付け足した。

  うさ耳もあるからね、と追加で渡されたニコが思わず反抗しようと口を開いた瞬間、店長の口から今一番聞きたくない言葉が飛び出してきた。

  「大変だねえ……、早く返したいんだったら、ウチが最適だと思うんだよなあ……あ、ウチのナンバーワンの子の日収聞く?」

  とニコの耳元でごにょごにょと数字を囁く店主。その数字を聞いたニコは、垂れていた尻尾と背筋を驚きでビン! と立たせていた。

  「にゃ……にゃ……っ?」

  「でも……ニコくんは、これを着たくないってことなんだよね、それじゃあ残念だけど……」

  「いえ、何でもないですにゃ!! 気の所為ですにゃ!!」

  目をぐるぐるに混乱させたまま、ニコは残念そうに言う店主に縋りつきながらバニーガール衣装を離さないと抱え込むのだった。

  ◇◇◇

  「うう……びっくりするくらいサイズピッタリにゃ……」

  昨日、話をしたばかりのはずの店主がニコのスリーサイズどころか、全身のあらゆる部位のサイズを知り尽くしているという事実に底しれぬ恐怖を感じながら、ニコは酒場の裏手備え付けの更衣室でバニースーツに着替えていた。

  鏡に映して、ニコは自分の姿を眺める。

  ぴっちりとした魔獣のバニースーツは光沢がありながらも軽い着心地。お腹のラインはクロスベルトで水色の体毛が露になっていて、胸部は下から支えられているから良いだろうと言わんばかりに開かれている。

  だが、日頃その豊満な膨らみの揺れを体感しているニコは、胸の付け根から包み込むというどこまでサイズを網羅しているのかと気味が悪くなる造形にドン引きをしながらも、その手で常に支えられているような動きやすさには目を見張った。

  ペンダントの鎖の下に着けられるチョーカーも全く首の動きを阻害しない。燕尾服を羽織ってもその動きやすさには綻びがない。太ももはそのモフモフとした毛なみを阻害しないようにタイツもなく、ありのままの彼女の脚が曝け出されている。

  「うにゃ……」

  装備として見れば、素晴らしい出来だ。

  だが、ニコは鏡に映る自分を見て、恥ずかしげに頬を染める。

  そのバニーの鼠径部、V字になったその先端すらニコのサイズにピッタリなのだ。しかもどうやら、内側に向けて皺が寄るように設計されているらしく、普段は毛に覆われてケモセーフになる筋がくっきりと浮かび上がるようになっている。

  それは、胸においてもそうだった。初めからそこにそれが当たるのだと分かっていると言わんばかりに凸部の余りがあったそこは、その先尖が中身になることによって、そのシルエットを煽情的に演出することに成功していた。

  「ニコくん、そろそろ着替えられたかな?」

  「にゃにゃ……ッ!」

  日頃露出が多い——もとい、運動性を重視するニコではあるが、これには流石に羞じらいを覚えたらしい。もじもじとどうにか誤魔化せないかと服をずらしてみるも、ニコに誂えているその服は、ずらせば逆に猛烈な違和感を与えてくる。

  「……仕方ないにゃ、これも冒険の為、お宝の為にゃ……っ」

  「おおー! やはりボクの目に狂いはなかった!」

  いつかぶん殴ってやるリストの店主の顔を刻み込みながら脱衣所から出たニコを、店主は盛大な拍手で出迎えていた。

  「うんうん……一気に人気者になるよ、間違いない!!」

  「んにゃー! いいから、早く仕事の話するにゃ! それで、ニコはなにしたらいいにゃ?」

  「ん? そっかそっか。そうだね、もうすぐ開店だし……うん、それじゃあ、可愛いポーズ取ってみて?」

  と鼻息荒く絶賛する店主に先を促すと、彼はニコを部屋の真ん中へと連れてきてそんな事を言う。

  「可愛いポーズって、どんなのにゃ……?」

  「そうだな……こう、にゃんにゃんって子猫っぽくしてみたり、逆にこう女豹のポーズ! とかも……」

  「なんで実演込みで説明するのにゃ……」

  成人男性が全力で可愛いポースだったりをする光景にげんなりしながら、ニコは渋々、両手を上げて可愛いポーズを取った、その時。

  「うんうん、それじゃあスタート!」

  と店主の声とともにニコの足元が光り始める。更に……。

  「にゃ、動けにゃ……っ!?」

  「あれ? 言ってなかったっけ?」

  「にゃにをにゃ!」

  ニコの体がゆっくりと石のように固くなっていく。

  もはや滑舌が回り切っていないニコが店主に食って掛かる。だが、体が動かせなくなっているニコは不慣れな可愛いポーズのまま。それで怒られても、ただ眉尻をだらし無く下げる店主は悪気もなくこう言い放った。

  「ウチ、石化バニーガール専門店だよ」

  「何にゃそれ!? ヘンタイにゃーッ!!」

  そう叫んだ声は、しかし、石化されたが故に喉を震わせることはなく、持ち場へと運搬されていく事になったのだった。

  ◇◇◇

  (んっ、……ソコ、は……ッにゃぁ)

  そうして、店主の見立通り、他のバニーガール達にも劣らぬ盛況ぶりを見せるニコの体は、今や絶えず誰かの指に弄ばれていた。

  少し内股になった膝を撫でた手がゆっくりと裏側へと回り、その太ももを堪能しては、引き締まりながらも女の子らしい丸みを持ったお尻の曲線を確かめるように五指が蠢く。

  それが離れていったかと思えば、胸を撫でる手と同時に腰をとんとんと叩くように触れる手が別々に動き出す。

  そして、その指はやがてニコの衣装に浮き彫りになった縦筋へと宛てがわれていく。

  (あ……にゃ、ぅう……ッ!)

  衣装が食い込んだそこは、その形が明瞭に無数の男たちに暴かれていた。

  くっきりと左右に別れた柔らかな双丘。その中心へと指がゆっくりと這いずっていく。

  「いやあ、毎度の事ながら素晴らしい衣装ですな」

  「ええ。ええ。あのお騒がせなおてんば娘がこんな衣装でかわいらしい筋を見せてくれるとは」

  「おや……この子をご存知で?」

  おっと、ここでは外の話はご法度でしたな。と身なりのいい老紳士が肩を揺らして笑う。そんな平和な一幕。その中に、一言「あれ?」という水面を揺らす一石が投じられた。

  「見てくださいよ、ほら、岩清水です」

  と、男はバニー衣装の革越しに揺れた指を他の男へと向けた。

  そこには確かに、濡れた証である光沢が輝いている。男が指を舐めたりなどはしていない事は確信できた。なぜなら周囲の男達も会話をしながら、男がニコの秘部を指で弄ぶのを眺めていたのだから。

  (にゃ、にゃう……!?)

  そして、それに最も驚いていたのはニコ自身だろう。

  石化しているからこそ、どれだけ弄ばれその快感に苛まれようと体に変化は起こらない。と、そう思っていたのにも関わらず、ニコの体はその固まった身体から染み出させるように愛液を滲ませていたのだ。

  「おやおや、これは……紛れもないですね」

  (は、ぅ、にゃふ……っ)

  と男たちが次々と、出来立てのソースを品評するように、濡れるその膨らみへと指を伸ばす。

  「どんどんと染み出してきますよ、なんて反応がいいんでしょうね」

  その度、濡れて摩擦が少なくなった蜜肉を擦られるニコの秘奥は、その快楽に続きを求めて更にその恥ずかしい液体の分泌を促していく。

  男達はそれをすくい取っては、ニコの胸や臍、耳の滑りを良くするようにして愛撫を激しくする。

  (にゃあ……ッ、にゃ、……ぅう、にゃ……気持ちい、いのにゃ……でも……ッ)

  とろとろとバニー衣装の上からでも分かるほどに愛液を漏らす、淫猥な石像。そんな姿になってしまった自分自身を名前も知らない男たちに見られてしまっているニコは、全身を燃えたぎるような羞恥で満たしながらも、しかし、それとは違う熱い感情に悶えさせられていた。

  (気持ちいい、だけで、んにゃ、……イけない、のにゃあ……ッ!)

  胸の先の敏感な場所を抓られても、頬をぬるぬると撫でられても、その奥の疼きには絶対に触れてもらえない入口を擦られても、石化したニコは絶頂に至ることは絶対にできないのだ。

  石化以外、何の術も掛けられていないはずのニコは、これまでの執拗な愛撫にすっかりとその身体に快楽を刻みつけられ、自ら催淫を受けたような獣欲を漲らせている。

  黒い革の隙間から溢れた低粘度の液体がもっともっとと強請るように雫を作り出して、つう、と台座に滴っていく。

  「おっと」

  とそれを見た男達は、欲しがりなニコの自己主張に鷹揚に応じるようにして、その太い指を滴る雫をすくい取っては、それを潤滑剤にニコの身体を満喫していく。

  (にゃぁ……ッ! ん、ぁ……ッそうだけど、そうじゃ、ないにゃあ……ッ、ん……ッでも……)

  満足は出来ない。身悶えする程に敏感になったニコは、快感を与えられる度、もっと強い刺激を寄越せと身体中が悲鳴を上げていくのを感じていた。石化した脳まで、真っ白なスパークが瞬きながらも、最後の一線のギリギリで動いてくれない身体に。

  (きもち……いい、にゃあ……ッ)

  それでも、ニコはその快楽に酔いしれているのだった。

  ◇◇◇

  「いやあ、すごい売り上げでしたよー!」

  と店主はホクホク顔でニコにそう言った。

  初出勤祝いというのもあったのだろう、ニコに支払われたサービス代は、ニコの借金を一発で完済できるほどの額に膨れ上がっていた。

  聞けば、その額で個人的に館に招き入れる時のために覚えを良くしておきたいとかいう思惑もあるのだとか、一日同僚となっていた他のバニーガールに聞かされたのだが、ニコはそのお誘いに乗るつもりは一切ない。

  お宝の情報があるなら別だが。

  「それで、どうだった?」

  と店主がニコに問いかける。

  「ぅ、うにゃ……?」

  まだ全身が火照っているニコに、店主は今回の報酬を手渡しながら満面の笑みでこう聞いてきた。

  「もっと稼ぎたいなら、ボクの個人的な衣装の——」

  「儲かったけど、もうイヤにゃー!」

  純粋無垢な笑みが逆に怖すぎて、ニコはその手から報酬の入った袋を奪い去ると、振り向きがてら店主の頬にシッポビンタをかまして、店を飛び出していく。

  バニー衣装のままで。

  「んまあ、衣装は元々上げるつもりだったからいいけど……」

  吹き飛ばされた店主は、打たれた頬を撫でながら起き上がり、ニコの出ていった扉を見送った。

  「また借金漬けになって働きに来てほしいなあ」

  と、ニコが聞けば一発では足りないだろう事を呟きながら。

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