008-022
混沌大陸北部人類圏での遊魔の拠点となった花園では、急速に各機能の復旧が行われている、花園という構造物自体が巨大な魔導具でも有り、魔力は花園を稼働させるに置いて重要なエネルギーだ、かつては乗員に頼らずに花園自体に魔力を産み出す機能が存在していたが、それが失われた現在では極めて高い魔力を持つ遊魔が事実上の生命線でもある。
そして、遊魔の持つ高い魔力で機能維持だけを行なっていた花園が本格的に目覚め始めている。
ラグム・デム三思考01 『遊魔と共存した事を肯定、現在稼働率62%、想定目標を大幅に短縮』
ラグム・デム三思考03 『不安要素増大、ラグム・デム構造の19%が変質』
ラグム・デム三思考02 『想定内事象、構造変質に伴い更なる稼働率向上見込み、推定87%まで回復』
ラグム・デム三思考03 『87%復旧時、変質率39%、主導権喪失の可能性大』
ラグム・デム三思考01 『87%稼働時のララム・フィ侵攻阻止確立47%、更なる権限委譲を提案』
ラグム・デム三思考02 『許可、ララム・フィへの敗北は容認不可』
ラグム・デム三思考03 『条件付き容認、ラグム・デムバックアップシステムⅣを運用要請』
ラグム・デム三思考01 『現稼働率で承認可』
ラグム・デム三思考02 『承認』
ラグム・デム中枢思考は遊魔の拡大に危惧を抱いていると同時に期待も抱いている、現在の稼働率は推定値の七割増しの速度で上がって来ており、否定的な思考でさえその有益性を認めぬ訳には行かない、それ故に遊魔のラグム・デム侵蝕は刻を追うごとに進んでいる。
一方、遊魔の首魁であるダインは新たに遊魔に加えたオハナⅦとオハナⅨを伴って、花園の探索を行なっていた。
花園産まれである087ユニットではあるが、活動エリアは限定されており、花園自体の隅々まで知って居る訳では無い。
オハナⅢ思念 『ダイン様の現在地より3区角先が怪しいです、外部ドックとの繋がる構造が確認出来ました』
オハナⅢは管制室からダイン達の動きを見守って、バックアップしている、見取り図からダインの求めるモノの手掛かりを見つけるのがオハナⅢの役目で、この役目はより遊魔に馴染んだ者程適任だ。
オハナⅨ 「ラグム・デムがこんなに広いなんて知りませんでした、何故飛んで移動しないんですか?」
充分に成熟していないオハナⅨの身体では、ダインに付いて行くのに困難が有る、だが、ダインは敢えて動かす事で、休息カプセルから出たばかりのオハナⅨに身体の使い方を学習させているのだ。
ダイン 「遊魔が飛べると言っても、人間の姿の時が多いんですよ、遊魔は人類社会に寄生してますからね」
オハナⅦ 「寄生って、邪魔者みたいです」
ダイン 「否定出来ませんが、利益も与えてますから正しくは共生ですか・・・もっとも私的には管理ですが・・・」
オハナⅨ 「ダイン様は欲張りですからね、未熟なⅨも食べちゃうぐらいですから」
ダイン 「花園だけの力では時間が掛かってましたからね、遊花シリーズはその点を大きく改良してますけど・・・オハナⅨの成熟を待つ間に遊花なら三人は産み出せますからね」
オハナⅦ 「私達の存在価値って・・・」
ダイン 「花園だけの技術で産み出された087よりも、遊魔の技術が加わった遊花の方が生産効率で優れているのは当然です、遊魔細胞にはちゃんと人の細胞も含まれてますから、人間を育てるのには人のモノを使うべきですからね、ですが優れた人というのは産まれだけじゃ有りません、特に遊魔は遊魔に成ってからが本番です、最初からの遊魔など居ませんからね」
オハナⅨ 「一つ聞きたいのですが、肉体的に遊魔は成長出来るんでしょうか?」
ダイン 「不可能では有りませんよ、しかし歳を取るよりも若返った方が私に好まれますからね、私は十分に熟した果実よりも爽やかな酸味を好みますから」
オハナⅦ 「それで処女が好きなんですね」
ダイン 「いや、他の男の穢れが受け入れられないだけです、私は遊魔なら何度でも抱いていますから」
オハナⅨ 「穢れですか・・・ラグム・デムに作られた087は穢れていないんですか?」
ダイン 「高度存在の創造物は逆に神々しいとも思います、だから087は遊花には無い強みをちゃんと持ってますよ、後は自分を如何に遊魔の中で確立出来るかですね」
オハナⅦ 「オハナⅢを見習えって事ですね、既にダイン様の厚い信頼を得ていると思います」
ダイン 「オハナⅢは人を読むのが上手いですから、相手の望みを測って求めるモノを提供出来るのは強いですよね、私は読めても自己を優先しますから」
オハナⅢ思念 『お褒め頂いてありがとうございます、次の扉の先が目的地です』
歩を進める三人に対して、管制室のオハナⅢは事前に扉を開けるなどのサポートを万全に行なってくれている、花園の操作に詳しいと言って同行よりも管制室からのサポートを選択してくれたオハナⅢの心遣いこそ、ダインに好まれている資質である。
そして、小さな扉がダイン達の視界に入る、通常花園内部の扉はもっと大きい物だが、目の前の扉はかなり小さい。
ダイン 「この扉は・・・多重構造になっている様ですね、つまりこの先は隔離しやすいという事ですね」
オハナⅦ 「隔離する様な所にダイン様の探し物が有るんですか?」
ダイン 「危険な物という事ですか、実際は判りませんけど、解錠をお願いします」
ダインの言葉が伝えられたので、オハナⅢは扉のロックを解除して、一つ目の扉を開く、隣の区画に行く為には後二つの扉が有り、順々に開いていく必要がある。
オハナⅨ 「狭い部屋ですね、奥にも扉が有りますけど」
ダイン 「全員が中に入ると次に行けるんでしょう、さぁ行きますよ」
ダインは他の二人を導く様に中に入ると二人もそれに倣う、三人が入った所で警告音がなって入って来た扉が閉まると、今度は先の扉が開かれる。
オハナⅦ 「次も同じ様な部屋ですね、何か意味があるんでしょうか?」
ダイン 「開いた扉の厚さを見て下さい、厚いという事はそれだけ中と外を遮断したいという事ですよね」
オハナⅨ 「それだけ危ない物がこの奥にあるんでしょうか?」
ダイン 「それは入ってのお楽しみです、遊魔の身体はそう簡単に死ぬ事はないので気にせず行きましょう」
ダインは嬉々として先の空間へと進んで行く、オハナ達もダインが安全を確保する方法を確立させた事を知っているので、ダインから離れない様に後に続く。
そして、またもや警告音がなって後ろの扉が閉まると、正面の扉が開き始める。
オハナⅦ 「ここが・・・まるで巨人の墓場の様ですね」
オハナⅦの言葉が示す様に大きな部屋の中には多くの巨人魔導具が散乱しており、その多くがちゃんとした原型を保っていない事から、墓場もしくは戦場跡と言ったイメージを連想させる。
ダイン 「まぁ、思ったよりも整ってますがね、クフィカールやマギマイナーが有る事から百五十年前の遺物ですね、そして目的の物はアレですか」
そう言ってダインが指差した先には、四本の脚に長いニ本の角が生えた機械仕掛けの巨獣の姿が有った。
オハナⅨ 「あれ、他の物と違って獣の様ですね」
ダイン 「あれが地の王の一部とも言えるマギガマイナーですよ、マギガマイナーの実力を見極める事が次の戦いでは特に重要ですから」
オハナⅦ 「他のより弱そうに見えますけど、あれじゃ角で突くしか出来ないですよね」
ダイン 「とんでもない、あれは角じゃ無くて砲という武器です、一見しただけで元込め式で自動装填可能な砲だと判別出来ますね、問題は射撃方法ですが、もっと近付いて調べてみましょう」
オハナⅨ 「大丈夫ですよね?」
ダイン 「生きた魔力は有りませんから大丈夫ですよ、あ、このクフィカールは本体を直せばまだ飛べますね、王都の機体と二個一にしましょうか・・・」
ダインは周りの残骸も確認しながら目的のマギガマイナーに近付いて行く、オハナ達は黙ってダインの後に続いて巨人達の姿を珍しそうに見ている。
そして、マギガマイナーの元へと辿り着いたダインはぐるりと一周すると、浮遊魔術を発動させて上からその状態を確認して行く、このマギガマイナーが行動不能に陥った原因は後方部分に有る操宮(コクピット)への槍の貫通で、中の操縦者が絶命した為に動かなくなった様だ。
ダイン 「機体へのダメージは思ったよりも少ないですが、経年劣化で魔動力が干涸びてますね、砲塔部分も魔動力を使用してますので動きませんか・・・」
オハナⅦ 「流石ダイン様、さっと見ただけで色々解るんですね」
ダイン 「砂漠で干涸びたマギマイナーを調査しましたからね、ダメージが有る分こちらの方が手間が掛かりそうです」
オハナⅨ 「もしかしてこれ動かすつもり何ですか、魔力が完全に尽きてるみたいですけど」
ダイン 「マギガントの魔力は魔動力から発せられてますからね、魔動力が干涸びたこの機体に魔力が無いのは当然です、ですが魔動力の再生は私の得意分野なんですよ、魔動力も魔法生物ですからね」
オハナⅦ 「遊魔の尻尾と同じという事ですよね、でも干肉状態なんですよね?」
ダイン 「干肉ならば食べて成長させれば良いだけです」
オハナⅨ 「こんなの食べるんですか?」
ダイン 「私が食べるんじゃ有りませんよ、尻尾が食べて解析して復元させるんです、人間の魔進化と似た様なモノですね」
オハナⅦ 「全然違うと思いますが、後、中から別の臭いもしてます」
ダイン 「操縦者も干涸びているんでしょうね、再生する事は出来ませんが遊花のシステムに組み込みましょう」
オハナⅨ 「それもここに来た理由ですよね」
ダイン 「はい、中の操縦者も地の王の一部ですから、上手く遊魔として再生出来れば有利に働いてくれる筈です」
オハナⅦ 「087も上手く利用されてますからね、まぁ087の頃より遥かに幸せですけど」
ダイン 「取り敢えず尻尾を使いましょうか、丸呑みにするので離れていて下さい」
ダインの言葉に呼応して、ダインの尻尾が急速に巨大化して行くと、先端が開いて中から出て触手にマギガマイナーが絡み着かれて行く、その後、尻尾の皮は更に拡がって頭に見える砲塔部分から徐々に飲み込み始める。
その光景はラグム・デムすら驚愕させて、ダインという存在が常識で測れ無い事を再認識させる。
数分後、マギガマイナーの存在していた場所には巨大な肉繭が現れて所々蠢いている、人間用の尻尾カプセルと違って中の様子が解る様にはなっていないので、何が行われているのかは不明だ。
オハナⅦ 「まだ尻尾ですよね、このままじゃダイン様も動けないんじゃ?」
ダイン 「調べ物が終わるまでですよ、後少しで終わりますが、この機体は早い時期の複製機の様ですね、岩喰いの方の複製はオリジナルの機体にしか出来ない様です、遊花に比べて生産性が低いのが救いですね」
オハナⅨ 「つまりオリジナルの岩喰いの生産速度が分かれば、どれぐらいの地の王が存在するのか予測し易くなったという事ですか」
ダイン 「そもそも地の王がどれぐらいの複製体を持つのかが解りませんけどね、私は自分の複製体など欲しく有りませんから」
オハナⅦ 「遊魔の男はダイン様以外必要有りませんから、遊魔の男は一人だからこそ、全ての牝を抱く権利が有ります」
オハナⅨ 「それが遊魔の当たり前ですからね、男が複数いたら社会が成り立ちませんよ」
ダインは自分の作った遊魔の社会規範がちゃんと機能している事に改めて満足している、守るべき遊魔の法が守られている事こそ、ダインにとって望ましい状態で今の遊魔社会はダインの理想が実現された社会であるのだ。
その上でダインが求めるモノは遊魔の完全なる生存圏で、それを実現させる戦いはまだ始まってもいない。
おまけ
マギメイル 戦闘用マギマイナーとも言える巨人魔導具(魔導機)で、リデウム階層国の主力とも言える。
マギマイナーは主に作業に使われるが、このマギマイナーは純粋な戦闘用である、だが、歩行移動が基本な為に展開能力は低い、現在ではマギホイールの機構を組み込んだ可変型も登場しているが、まだまだ少数である。
見た目は小さなゾッフォといった感じで骨太な機体だが、白兵戦を主眼に開発されている為に丈夫さを追求した結果である。
フレームに強靭な鎧を纏う事で耐久性を向上させており、特に纏う鎧は岩喰い職人によって惜しみ無く労力を費やされている。
リデウムではマギメイル品評会が盛んに開催されており、より芸術性の高い鎧を付けたマギメイルを持つ事は一族の誇りでもある。
主に白兵武器を装備するが、近年リデウムでは魔導式単発銃の開発に成功しており、銃を装備する機体も若干数存在するが、その威力はユーマ共栄国の同種の武器に比べて大幅に劣っている、だが、整備不完全なクフィカールにとってはかなり脅威となる武器である。