混沌探索編 第二十八話 天人料理

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  ディセルトの身体が液体から出ると直ぐに乾燥の準備が始まる、液槽上部の開口部が塞がれると内部に温風が巻き起こっている様で、綺麗なディセルトの髪が舞っている。

  そして、上部の皮膜部分が消失して、分娩台の様な遊魔椅子の形状へと変化した時にディセルトが目覚めた。

  ディセルト 「あれ、ルト寝てました、とても頭がスッキリして身体も軽くなってます」

  ディーティル 「ダイン様の配慮ですね、ルトが動ける方がより楽しめますから」

  ディセルト 「えっ・・・二人共その姿は」

  ダイン 「北部の守護者の情報を得る為に先に遊魔へと加わって貰いました、北部の守護者は私が持つ以上の技術を保有している様ですから」

  ディセルト 「頭に響く声が人智を超えているのは確かですが、二人をこうも変えてしまった貴方が恐れるのですか?」

  ダイン 「私は小心者ですからね、北部の守護者が遊魔の根幹を理解している可能性があるのなら慎重にもなりますよ」

  レ・ミュウ 「主は念入りに準備するのが好きですから、未知の北部への探索に大量の保存食作ってましたから、でも人類社会が存在していると解ると最初の村で手放してましたよね?」

  ダイン 「解らない事には慎重に対処してしまいますからね、人相手なら何とかなるんですが・・・」

  ディーティル 「ダイン様の人って、耳長と岩喰いも含まれてますよね、その考えはちょっと違和感有りますけど」

  ダイン 「遊魔に出来る者は皆んな人ですね、そして人を超えたのが遊魔です」

  ディーティエ 「遊魔とは人を超えた存在という認識でいいんですよね?」

  ダイン 「それは今の自分自身がよく解ってますよね、かつての自分を超越していると感じていればそういう事です」

  ディーティエ 「それは勿論です、むしろ耳長の頃のティが哀れですよ、数百年の知識に裏打ちされた存在を自負してましたが、遊魔で得られたモノに比べたら子供の様です」

  ディーティル 「その例えがしっくり来ますね、遊魔にとって人は子供なんですよ」

  ダイン 「耳長の二人がそう感じるなら、遊魔も大したモノですね」

  レ・ミュウ 「魔龍からみても凄いです、叡智と身体、今のミュウなら凶暴魔龍にだって引けを取りません」

  ダイン 「心強い言葉ですが過信は禁物ですよ、現に魔龍レ・ミュウは私に敗北してますからね」

  レ・ミュウ 「空腹は生物最大の弱点だと思います、主も食に力を注いでいるじゃないですか」

  ディーティル 「そういえばお腹が減りました、遊魔でもお腹減るんですね」

  ダイン 「魔力も生体活動から生じていますからね、魔龍は効率的な兵器だと言いましたが食事は必要なんですよ、まぁ現地調達が可能ですけどね、実際ミュウは人を食べてますよね?」

  レ・ミュウ 「耳長は食べてませんよ、岩喰いは食べましたけど、人間は食べた事なかったから、食べてみたかったんですよ」

  ディーティエ 「怖い事言ってますね、岩喰いは美味しそうには見えませんけど」

  レ・ミュウ 「魔龍は丸呑みだから関係ないです、ただ岩喰い食べると魔力回復が早いと思いますけど・・・それに岩喰い食べる魔龍は多かったですよ、至る所に坑道作ってますから」

  ディーティル 「確かにあれは厄介ですね、何処から侵入して来るか解りませんし、目測で数も解りません」

  ダイン 「岩喰いというのはそんなに大勢存在しているんですか?」

  レ・ミュウ 「多分、ミュウの巣の辺りにもたくさん居ました、地下の坑道に籠ってますから解りませんけど、今でも魔族より広い勢力を持っているかも」

  ディーティエ 「耳長が退避した事で、大陸東方も空白地帯になってますからね」

  ダイン 「東方耳長の上空からの偵察でも集落近くに穴があったと言ってましたね、蟻と同じで地下の王国の規模が全く読めませんよ、もしかすると魔族や魔獣よりも脅威なのかも?」

  ディーティエ 「地の王は魔族化した岩喰いというのが私達の予想です、大陸岩喰いの殆どを傘下に収めていて、北部人類圏への侵攻も野心からでしょう」

  ダイン 「岩喰いは北部の魔鋼資源が狙いなんじゃないですか、魔鋼が狙いなると多くの魔導兵器を有している可能性が高いですね」

  レ・ミュウ 「岩喰いは地下で何してるか解りませんから、でも魔族が侵攻して魔獣が放たれた以降生息域が広がっている様に思えます」

  ダイン 「単純に数が増えているという事ですね、地の王が魔族という推測と関係があるのかも知れません・・・」

  ディーティエ 「地の王もダイン様の様な力が有るという事ですか?」

  ダイン 「あ、その可能性も十分有りますね、魔王ザキトスはリッポト湖の遺跡で魔王の力を手に入れた様ですから、同じ事をした岩喰いが居ても不思議じゃ有りませんね、これはディーティエにお礼を言わないと、貴重な意見ありがとうございます」

  ディーティエ 「何だかこそばゆいです、たまたまティが口にしただけですよ」

  ダイン 「いや、私にはその考えが失念していましたから、ディーティエ以上に情報を得ていた筈なのに・・・」

  ディーティエ 「ダイン様は地の王に対して強い想いを抱いてないと思いますので、ティは以前から地の王は魔王なのではと思ってましたから・・・実はティ、マギガマイナーの操縦者を二度ほど見た事あるんですよ」

  ダイン 「普通に岩喰いじゃ無いんですか?」

  ディーティエ 「はい、岩喰いは岩喰いなんですけど女性の岩喰いでした、そして二度共同じ姿をした岩喰いの女性だったんですよ一度目で確かに殺した筈なのに、耳長知識だけのティはそれを姉妹だと思ってましたが、遊魔知識を得た事であの二人は複製体じゃ無いかと考えたんです」

  ダイン 「確かに遊魔知識が無いとアーグルの人には出来ない発想ですね、そして姉妹の乗った巨人魔導具をティが撃破する可能性もなかなか低いでしょうね、そして岩喰い勢力の急拡大という状況を考えると有能な操縦者を複製している可能性は高いですね、いや、むしろそうあって欲しいです、女性クローンパイロットは変態達の夢ですからね」

  レ・ミュウ 「主、自分を変態だと認めているんですね」

  ダイン 「もちろんです、凡人として下らない人生を送るより、変態として楽しく生きるべきですよ」

  ディーティル 「ティルには難し過ぎる考えです、普通が一番じゃ無いんですか?」

  ダイン 「同じ花だけの花畑よりも色々咲いてる方が面白く有りませんか、中に毒草が混じっていたとしてもその方が面白いでしょう、確かに均一の美しさや合理性も理解出来ますが遊魔は不揃いな花畑がいいんですよ」

  ディーティエ 「今、岩喰いの複製操縦者が夢だと言ってましたけど・・・」

  ダイン 「私の言葉に整合性なんて有りません、楽しいが一番ですから」

  ディーティル 「ますますダイン様が解らなくなって来ました」

  ダイン 「味が複雑な方が料理として飽きが来ないでしょう」

  ディーティエ 「それっぽい事言ってはぐらかそうとしてます」

  ダイン 「ともかく、遊魔は楽しいが最優先です、余り私を追い詰めると楽しく無い事が待っているかも知れません」

  ディーティル 「そうですよ、ティは細かい事を気にし過ぎです、ダイン様は北部の守護者を調べて、岩喰いの操縦者を捕獲したいんですよね」

  ダイン 「まぁ目下の目的はその二つですね」

  ディーティル 「なら、ディセルトを魔進化させてクフィカールを復活させましょう、一番マシなクフィカールはディセルトが隠してますから」

  ダイン 「確かに北部の守護者の情報を得るにはディセルトの魔進化ですからね、私の防御機構も完成してますから始めますか、ティとティルはどうします、見学しますか?」

  ディーティル 「ティルはダイン様に手料理を振る舞いたいです、料理しながら見てもいいですよね」

  ダイン 「そういえばここは炊事場でしたね、広くて水が使えるからここで魔進化させましたが・・・まぁ私も空腹を感じていますからお願いします、ですが竈門の使用は遠慮して下さい、今の魔力なら魔術を使った加熱も可能ですよね?」

  ディーティル 「はい、初めてですけどやってみます、知識からの情報じゃ良い感じに肉に火を通せるんですよね、ちょうど食べ頃の猪肉が有りますから試してみます、アバラ肉の煮込みがティルの得意料理なんです」

  ディーティエ 「あれを真っ先に出すとはティルも本気ですね、ならばティもパンを焼かないと行けませんね、ティルの煮込みにはティのパンが良く合いますから」

  ディーティル 「煮汁を付けたパンは美味しいですから、是非ともお願いします」

  ダイン 「ですがパンこそ竈門を使うんじゃ無いですか?」

  ディーティエ 「ティのパンは耳長の野戦食の物で竈門なんて使わないんです、薄く伸ばした生地を鉄板で焼くんですよ、クフィカールの部品に良い具合の物があるんですよ」

  ダイン 「そういえば私もゾッフォの部品で鍋料理を作りましたね、大きな部品には意外と調理に使える物も有りますよね」

  レ・ミュウ 「ミュウはそんな変な話初めて聞きましたけど・・・」

  ディーティル 「ティがここで編み出した料理法ですから知らなくて当然ですよ、でも薄いパンって食材包んで食べれたり結構便利なんですよ、肉と野菜の包み巻きなんて新しい料理の可能性を感じます」

  ダイン 「無粋かも知れませんが私の来て世界に同じ様な料理が有りましたね。ケバブやブリトーといった料理は具材を生地で包んで食べてました、私の国には巻き寿司というもっと変わった料理も有りましたね、寒い時期の行事で丸齧りするんですよ」

  レ・ミュウ 「主に料理で挑むのは難しいですよ、次から次へと変な料理作るけど美味しいんですよ、そして遊魔料理の真髄は乳菓子ですから・・・二人はミュウより乳量多いので羨ましいです」

  ダイン 「私は料理はメリハリが大事だと思ってます、確かに遊魔の乳菓子は美味ですが、甘い物は食事では無くデザートですから」

  ディーティル 「そうですよね、幾ら美味しくても甘い物ばかりじゃキツイですから、ティルの煮込みは自慢の味ですから楽しみにしていて下さい」

  レ・ミュウ 「ミュウは魔龍が長過ぎて得意料理とか覚えて無いので羨ましいです」

  ダイン 「ミュウって料理していたんですか、料理感が全く感じられませんでしたけど」

  ミュウ 「そういえば、耳長の時に作った事無かったかも、でも主の手伝いで今はなかなかのものだと思う、メファティには負けるけど」

  ダイン 「食材への慣れというモノが有りますからね、調理に慣れた食材の方が美味しさをより引き出せるモノですよ、魚料理などがその典型ですね、あれはどう魚臭さを抑えるかが重要ですから、遊魔は鼻が良いので解りますよね」

  レ・ミュウ 「メファティが自分の料理に驚いてました、普通に調理したのに臭うって」

  ダイン 「アレは遊魔と人の違いを表す良い例ですね、人の時のメファティが普通に作っていた料理では遊魔の鼻には辛いんですよ、まだ間に合う段階なので私が丁寧に処理をして匂いを消しましたが、魚の旨みはだいぶ失われてしまいました」

  ディーティエ 「そんな話をされては、今から作る料理に不安感じます」

  ダイン 「遊魔の鼻に忠実に作れば良いだけです、臭みを感じたならば私に言って下さい、匂いを消す方法は色々知ってますから、ですが敢えて言うとすれば、食材に丁寧な処理を行う事です、血の塊は取り除いて丁寧に洗うとかで臭みかなり減ります、手間を掛ける事でより美味しい物が作れるんですよ」

  ディーティエ 「それってティのパンとは真逆なんですけど、戦場で手早く作れて手早く食べれるのが強みなんですけど・・・」

  ダイン 「いや、肉や魚の下処理の話ですからパンには余り関係ないですね、発酵されて焼く物では無い様ですし、生地は膨らませているんですか?」

  ディーティエ 「ちゃんと膨らませる調理液が有るんですよ、果実の汁を発酵させて作るんですけど、それで生地を捏ねるとすぐ膨らむんです」

  ダイン 「ディーティエ秘伝の調味液という訳ですか、それは興味有りますね、早速準備に掛かって下さい、私とミュウでディセルトを料理しますので」

  ディーティル 「え、ディセルト食べるんですか?」

  ダイン 「ある意味では食べちゃいますけど、遊魔へと仕上げるという事ですね」

  ディーティエ 「異世界では料理にそんな言葉もあるんですね」

  妙に納得したディーティエを後目にダインはディセルトに向かい合う、未知の北部の守護者に付いての情報を得るには、実際に遭遇したと思われるディセルトの知識を知った方が多くを得られると感じたからだ。

  一抹の不安は感じるものの、ダインには高度知性体同士では話が通じると考えており、守護者の利益を損ね無ければ十分に交渉が可能という目算もある。

  そう、先に話し合いを設けて折り合いを付ける事が大切なのだ。

  おまけ

  地の王 混沌大陸に存在する岩喰い勢力を統率する存在、ダインがその存在を知るのは北部人類との接触後であり、レブナン島で魔進化させたトルポは地の王の存在を知らなかった、その事から地の王はザキトス侵攻後出現した存在だとも思われる。

  対空型マギガマイナーの実用化を行っている事から、人類大陸より優れた技術を有している事は間違い無い様で、撤退から百五十年経った現在、どの様に進歩しているかダインを悩ましている。

  地の王はその名の示す通り、地下に王国を築いており、その王国の全容は全く不明である、ダインは耳長達が損害を与えた巨人魔導具の数から当時の保有戦力をマギガントクラス(マギガマイナー、マギガメイル)大体三百機程度と予測しているが、百五十年経った現在の戦力はその数倍に膨れ上がっているだろう。

  ディーラル各所から伝わる兆候から、地の王の北部侵攻が間近に迫っている事は間違い無く、ダインは北部の守護者と接触する事で対抗可能では無いかと思案している。