地固め編 第十九話 プルル凱旋

  004-019

  衝撃の会見が終わった後の宴はその趣向が少し変わっていた。

  本来ダインの歓迎を意味で用意されていたのだが、急遽二人の婚姻を祝う物へと変更され、ダインとティアスは二人並んで正面の席を与えられている。

  七実  「やられましたね、流石ティアスです、ダイン様の性格を把握してこう出て来るとは」

  真夏 「結婚とか肩書とか気にしない娘だと思っていましたけど、まさかこんな荒技を使って来るとは意外すぎます」

  七実 「このダイン様との距離がもどかしく感じます、ティアスが意味深に微笑んでますね」

  主賓の二人から離れた位置に席を設けられた七実と真夏が恨めしそうに見つめている、七実自身は肩書など特に気にはしないのだが、法的に認められた関係というモノが人間に対して有効的な事は十分に理解している。

  真夏 「まぁ、マナ達よりあの人達の方が悔しそうですね、あれがティアスの対抗馬のリボルト・ククジアですか、悪く無い見た目ですけど面白く無さそうです」

  真夏の視線の先のリボルトは、この場で最も不機嫌な人間と言っていいだろう、ユーマ共栄国の独立により、選定戦の勝利に近付いたと確信していたのに、またひっくり返されてしまったのだ。

  七実 「まぁ見た目だけはダイン様より上かも知れませんけど、中身は何も無さそうですよね、ダイン様はいかにも何かやりそうですけど」

  真夏 「いや、あれはあれでヤバい気がします、自分の思い通りに行かないのが気に入らないんじゃ無いですか、それはマナ達も同じですけど」

  それが表に出る時点でリボルトは二流と行った感じだ、ティアスなら自分の不機嫌など完全に多い隠してしまうだろうから、もっとも最近のティアスは遊魔の前では全く飾らなくなって来ている様で、プルルがその変化に唖然としていた、そう、本当のティアスはプルルですら見た事が無かったのだ。

  急遽趣旨の変わった宴はその後も続き、交流の時間になるとテガスから来た者の誰にも人が集まって来る、元々関心が高かっただけで無く、スカイベアーがどういうモノなのか尋ねたいのだ。

  急遽王都に来訪する事になった学院生達も人々から質問責めに有っていた、遊魔達と違って基礎知識すら無い彼女達は率直な感想を述べるだけ事しか出来なかったが、それでも人の輪が絶える事は無い。

  だが、宴の中心はティアスとダインで、自己紹介と軽い会話を求める貴族の列は途切れる事は無かった、だが、開始早々に割り込みをした貴族に対してダインが会見を拒絶するというアクシデントなども有り、ユーマ王が公正な人物だという評判も知れ渡った。

  そうして、テガス組にとって忙しい宴は終わりを迎え、各々が宿泊の為に割り当てられた部屋で過ごす事となった。

  七実、真夏、プルルは三人で一室を与えられて過ごしていたが、プルルは王都の元同僚達の事が気になる様で、ティアス部屋の居るダインに許しを貰いに訪れていた。

  プルル 「王宮には友人が大勢居ますので、会いに行ってもいいでしょうか」

  ダイン 「別にわざわざ私に伺いを立てる事も有りませんよ、ナナやマナなら止めますがプルルは王都のしきたりにも詳しいですから変な事は起こらないでしょう」

  ティアス 「確かにナナは何かやりそうですよね、その意味ではダイン様に一番近い感じです」

  ダイン 「ナナは人の頃から、私の生きる楽しみ方を理解してくれてましたから、自分が馬鹿をしないと生きていてつまらないでしょう」

  プルル 「ならプルルはお気に入りの娘を誘ってもいいんですね」

  ダイン 「プルルのお気に入りなら間違い無いでしょう、それに王宮で働く女性は美人揃いですから」

  ティアス 「まぁお父様はそういう人ですからね、でも魔力は普通より上ぐらいなので、モテ無いんですよ、それに比べてダイン様は婚約の披露の宴なのに女性が寄ってきて色目使ってましたよね、ティアスが隣に居るのに」

  プルル 「そういうティアスは籠絡する為にプルルをダイン様の元へと送り込んだじゃ無いですか、今更他の女性を気にするなんておかしいですよ」

  ティアス 「ティアスはちゃんとプルルの事も考えての行動ですよ、今日の女性達が熱望する地位を与えましたから」

  ダイン 「まぁ二人が私の元で幸福を謳歌しているのならば、それに越した事は有りませんが」

  プルル 「だからプルルも色々良くしてくれた娘に何かしてあげたいんです、ダイン様が気に入ってくれないと駄目だとは解ってますが、あの娘ならきっと気に入って貰える筈です」

  ティアス 「でもその娘って、ティアスの付きの娘じゃ無いですよね、主人が誰かによっては色々と面倒な事になるかもしれませんよ」

  プルル 「それは有るんですが、そこを上手く利用するのがダイン様だと思うんですよ」

  ダイン 「その言い方だと、リボルト付きのメイドですか?」

  プルル 「はい、でもリボルトのお手付きは無いと思います、派手好みですからね」

  ダイン 「という事は地味メイドという事ですね、地味だが脱ぐとエロいは私の大好物ですからね」

  ティアス 「ダイン様は自分にだけ特別ってのが好きですよね」

  ダイン 「そういうのが男のロマンです、遊魔は全てこのダイン専用ですからね」

  プルル 「ならその娘を誘いに行って来ますね、本当はプルルが楽しみたいって気持ちが強いんですが、お尻ならいいですよね」

  ダイン 「構いませんよ、プルルはプルルで楽しんで下さい、私とティアスは今後の計画を話し合うと思います、こういう時に専制権力者は便利ですね、私達の一存で話が纏まりますから」

  ティアス 「はい、ダイン様からの譲歩が引き出せると思ってティアスの結婚も大歓迎されてます、王都にユーマの工房を作るって話ですよね」

  ダイン 「はい、プルルは直ぐにお友達に会いに行って下さい、聞いても面白く無い話でしょうから」

  プルル 「ダイン様のお側に居られるのは最高の時間ですよ、ですが喜んで貰えるのがもっと大切ですから」

  ダイン 「期待していますよ、メイド遊魔の有効性はプルルが存分に示してくれていますからね」

  プルル 「お褒め頂いてありがとうございます、では行ってまいります」

  プルルは深々とお辞儀して退室すると、ティアスがダインにうな垂れてくる。

  ティアス 「もう誰も来ませんよね、それに言葉で語り合うよりも尻尾を繋げた方がより話が通じると思います」

  ティアスは熱い眼差しで、ダインの首に手を回して口付けをせがむ、ダインとしても久々のティアスの息使いと体温に肉欲が刺激されて、肉槍が競り勃ってくる。

  ダイン 「尻尾より先ずこちらを鎮めないといけませんね、尾ナホ手コキで搾り取って下さい」

  ダインの命令にティアスは着衣のまま遊魔へと変容すると、部屋全体に遮断魔術を施してから尻尾に肉槍に挿入させて扱き始める、牝が奉仕する事がダインの好みである事を重々と承知しているティアスは、両手を使って尾ナホの中の肉槍を扱き上げてダインの滾りを鎮めようと奉仕し始める。

  一方、ティアスの部屋を出たプルルは厳重な警備の王族の階層から三層降りて、使用人達の私室の有る階層へとやって来ていた、この階層の使用人達の殆どは使える王族達の関係など余り気にせずに皆仲が良い。

  使用人の立場から、王族の寵姫に成った者は過去にも存在していたが、女性垂涎のダインの寵姫に成ったプルルは別格で、姿を認められて直ぐにかつての同僚達の人集りが出来てしまっている。

  プルル 「皆さんお久しぶりです、急に王宮を離れる事になってお別れを言え無かったのが心残りでした」

  年配の女性 「そんな事は気にしないで下さい、今やプルル様は隣国ユーマのお妃様ですから」

  プルル 「もう、セティナさん怒りますよ、今まで通りのプルルって言って下さい、今の環境は眩過ぎてプルルには荷が重いですから、本当にここの暮らしを懐かしんで来たんですよ」

  セティナ 「確かにプルル嬢ちゃんは変わっていないねぇ、宴で見た時は異国の姫様かと思ったよ」

  そう言ってセティナはプルルを熱く抱擁する、実の娘と同じ年頃のプルルを一番可愛がってくれたのはこのセティナなのだ。

  プルル 「実の母よりも、セティナさんにはお世話になってますから、本当に王宮のお母さんです」

  セティナ 「嬉しい事言ってくれるねぇ、プルルの部屋はそのままにしてあるから寄って行きなよ、持って行きたい物も有るだろう」

  プルル 「お気遣いありがとうございます、今日此処に来たのはディアーナの事が気になっていたんですよ、何も告げられず急にお別れしちゃったので」

  セティナ 「ああ、さすがプルルだよ、ディアーナはプルルが居なくなって以来仕事以外は部屋に籠っているんだよ、私達も気には掛けているんだけど、プルルの顔が一番だよ」

  プルルの意図を知った女達は通路を開けて、ディアーナの部屋までプルルが通り易い様に道を開けてくれる、プルルもその気持ちに応じて歩み出すと、気を利かせた女性達はプルルの姿を見送ってくれる。

  そうしてディアーナの部屋の前に立ったプルルは何時も様に部屋をノックする、プルルとディアーナの間にはノックの暗号が存在していて、回数でお互いの来訪が伝わるのだ。

  プルルのノックの後に反応は直ぐに現れる、部屋の中から慌しい音がすると扉が開かれて中から、寝巻きの少女が姿を表してプルルを抱擁する。

  ディアーナ 「ああ、本当にプルルです、少し変わってますけどプルルに間違いありません会いに来てくれたんですね」

  プルル 「当然ですよ、お別れが言えなくてプルルも辛かったんですよ」

  プルルを抱擁するディアーナの身体は別れた時よりも少し痩せてしまった様だ、だが、この少し痩せてしまったディアーナの身体とふわっと香る汗の匂いはダインの好む牝に間違い無く、魔力も穢れ無い純粋魔力のままだ。

  プルル思考 『これは思った以上に良くなってますよ、少し癖の強い方がダイン様は悦ぶんですよね、初めから完全な者とか弄っても面白く無いとも言ってましたし』

  ディアーナの汗の香る寝巻きにプルルは満足していた、飾り立てるだけが牝の魅力を引き出す事で無い事をプルルは十分に理解している。

  ディアーナ 「時間有りますよね、また二人でお茶しましょう、あの特別な茶葉を淹れますね、次の機会は分かりませんから」

  プルル 「それはどうでしょう、ディアーナさえ良ければユーマで働きませんか、プルルがお願いすればダインは絶対に叶えてくれますから」

  ディアーナ 「でも、私はクガト出身ですよ、ポロルグとは仲悪いですから」

  プルル 「プルルとディアーナは関係無いですよ、それにユーマの情報が得られると言えばリボルト派も絶対に許してくれます」

  ディアーナ 「そんな事をすればプルルの立場が悪くなります」

  プルル 「大丈夫です、それにこんな話は表でするのは迂闊でした、中に入りましょう」

  ディアーナ 「え、今、全然片付けて無くて、でも私が誘っちゃったんでしたね」

  招き入れられたディアーナの部屋は確かに散らかっていた、仕事着だけはしっかりとハンガーに掛けられていたが、床には物が散乱しており、お茶を飲むスペースも容易には作れそうに無い。

  ディアーナ 「場所が無いのでベッドに座って下さい、テーブル動かしてお茶淹れますね」

  ディアーナは小さなテーブルを移動させて、水差しと魔導具を用意するとお茶の用意を始める。

  プルル 「お湯はプルルに任せて下さい、ディアーナはカップを頼みます」

  ディアーナ 「でもプルルって魔導具無理でしたよね」

  プルル 「プルルも進歩するんですよ」

  そう言ってプルルは魔導具に水を入れると魔力を込め始める、すると直ぐに蒸気が漏れ出して、その余りにも早い変化にディアーナの表情が驚きに変わる。

  ディアーナ 「凄いですよ、騎士様だってもっと時間が掛かるのに」

  プルル 「全てダイン様のお陰なんです、ダイン様には自分の魔力で他の娘の魔力を引き上げる事が出来るんですよ、だから殆ど魔力の無かったプルルでも魔導具が使いこなせるんです」

  ディアーナ 「それってプルルは完璧なメイドって事ですよね、あ、今はお妃様ですか」

  プルル 「ユーマは出来たばかりの国で人材が乏しいので、プルルもメイドをやってますよ、今日はククジアの王都で見栄を張る為におめかししてますけどね」

  プルルは屈託無い笑顔でディアーナの認識を否定する、だが、その真の意図はユーマには人手が足りていなくて待遇が良いとのイメージをディアーナに植え付ける為でも有る。

  おまけ

  人類圏の成人 人類圏での成人年齢は男女共に十五歳である、人類圏での成人とは母親の財産では無くなり、独立した個として認められる事であり、人生の選択がこの時より始まると言っても過言では無い。

  成人を迎えた者は先ず、労働か自己研鑽を迫られる、この際、誰でも自己研鑽を選択する事は可能で有るが、自己研鑽の道は労働よりも厳しい物である、誰にでも門戸は開かれているが、道のり途中には関門が多く存在しており、一つの分野の最終過程に進める者は百人に一人いればいい方である。

  なお、人気の騎士や工員は労働に分類されている為に比較的門戸は広いが、適性無しとして弾かれる事が多いのは自己研鑽とよく似ている。

  成人と同時に婚姻も可能では有るが、成人と同時に婚姻する者はかなり稀である、人生経験の乏しさから生じる財産の少なさが一つの要因でも有るが、相手を見極める事の重要性が幼少期より培われている事も婚姻が遅れる要因となっている。