地固め編 第七話 初めての生野菜

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  幸いな事にプルルは愛耶の生野菜の料理に何も手を付けずにいたが、料理だとも思わず別の一品を作り上げていた、ダインの好みに即したその料理で夕食はとても豪華になったが、やはりアーグル人には生野菜は抵抗が有る様だ。

  ダイン 「思ったよりも悪くは無いですが、日本の野菜とは全然違いますね、なんかこう野生的です」

  ダインは愛耶の作ったサラダの感想を口にする。

  愛耶 「生食用に品種改良されてませんから、これでもそこそこ食べられる物を集めたんですが」

  ダイン 「植物は時期も有るでしょうから、気長に行きましょう食べなければ死ぬわけでも有りませんしね」

  プルル 「そうですよ、夏の植物は美味しく無いですね、秋だと食べ易い実もなりますし」

  ダイン 「確かに今は夏でしたね、日本の夏から比べると随分と過ごしやすいですから、代わりに冬が厳しそうです」

  プルル 「そんなに変わりませんけど、ククジアでは雪も山ぐらいにしか積もりませんし」

  ダイン 「そうなんですか、私は冬が苦手なんですよ、まぁ暑い夏も嫌いですけど」

  愛耶 「つまり、四季の変化が少ないって事ですよね、それで植物が堅いのかも」

  ダイン 「冬に枯れないという事ですか、なら新芽を食べた方が良さそうですね」

  プルル 「そもその生じゃ食べませんし、生は果物ぐらいです」

  ダイン 「植物の事はツェリが目覚めてからがいいようですね、とりあえず食べても大丈夫のようでしたが、野菜は販売されている物でも結石の元が含まれていたりしますからね」

  愛耶 「チョット残念です、もっと喜んで貰えると思ったのに」

  ダイン 「男はわざわざサラダを頼んだりしませんからね、野菜を食べなくても生きていけるんですよ」

  七実 「そうですよね、サラダよりもプラモ買ってる方が楽しいですよね、サラダって結構高いし」

  真夏 「そこはお菓子じゃないんですか」

  七実 「それだからマナには肉が付いてるんですよ」

  真夏 「普通の女の子の選択にプラモなんて有りませんから」

  ダイン 「いや、ナナにプラモの選択が有ったからこそ、私達は出会えましたから」

  七実 「そうですよ、遊魔ならプラモは重要です、マギガントの改良もプラモに助けられてますからね、シーベアーに積み込んで良かったです」

  ダイン 「工房の方は順調に進んでますか?」

  七実 「可動部の構造をプラモで説明してますので、工員の飲み込みが早いんですよ、とりあえず殆どの部品は完成しましたが、組み合わせが大変って話しですし」

  ダイン 「まだ、ツェリのマギガントへの熟練が有りますから、時間は有りますよ、エンジンが不完全でも落ちるわけじゃ有りませんから気楽に進めて下さい」

  七実 「でも、ダイン様の構想の入り口ですから、初めから躓きたくは有りません」

  ダイン 「まぁ、最悪、歩いて進軍すればいいだけですから、その頃には民衆も手懐けているでしょうから、柔軟に対応しましょう」

  七実 「解りますけど、ナナのプライドの問題です、折角ダイン様に楽しい仕事を与えられたのに」

  ダイン 「ナナが楽しければ失敗しても構いません、副案も有りますしね」

  フェカト 「でも、新しい土地は早く手に入れるべきだと思います、都市だけでは国は成り立ちませんから、テガスをちゃんと維持する為にはツェーリアの国土ぐらいは欲しいですね」

  真夏 「ツェーリアを手に入れて、大体併合前のポロルグぐらいの国力なんですよね」

  フェカト 「大体それぐらいです、ですがダイン様独自の技術があるのでククジアも強くは出られない筈です、それにティアス王女が誕生すれば全面協力して貰えますし」

  ダイン 「タイムスケジュール的に選定戦より、ツェーリアが先に片付きそうですね」

  フェカト 「既にツェリのムーグワ村の話がツェーリア全土に広がりつつ有ります、ツェーリア民衆に取ってムーグワのやり方は考えの及ばない事だった様で、既に国境周辺の村では動きが有る様ですね」

  ダイン 「テガスではまだ受け入れが可能ですよね」

  フェカト 「はい、旧船の手配を始めています、船としての運用は無理でも、解体すれば良い建材に成りますので、要らない物をテガスに引き取って貰えて、商売の面通しが出来るのでククジア商人には人気の取引になってます、ある程度の荷なら旧船でもテガスに運べますからね」

  ダイン 「さすが商人は抜け目無いですね」

  フェカト 「はい、お陰で当初の予定以上の物資が集まりつつあります、これなら正面からツェーリアを落とせるかもしれません」

  ダイン 「でも、頭を潰した方が早いんですよね」

  フェカト 「それは勿論です、正直、今の戦力でもツェーリア王都の陥落は可能でしょうけど」

  ダイン 「問題は勝利では無く戦後ですよ、民衆を魅き付ける勝利でないと、統治が難しくなります」

  フェカト 「考え過ぎだとも思えますけど、万全を期すのがダイン様流ですからね、それにダイン様自身が赴けばきっと領民も大歓迎です」

  ダイン 「それも新兵器を携えてですからね、最先端の息吹でツェーリアの民衆に新時代をアピールします」

  フェカト 「はい、それはツェーリア国民にとって抑圧の時代の終わりに見えるでしょうね」

  七実 「やっぱり、ナナの仕事は重大じゃ無いですか」

  ダイン 「ナナがメインでやってますが、私も関わってますのでナナの責任では有りませんよ、むしろ無理な仕事を与えた私の責任ですよ」

  七実 「確かにダイン様は遊魔達の司令塔ですから、ナナだけに構って貰う訳にはいけませんから」

  ダイン 「まぁ一人で無理なら他の者を頼って下さい、ポーカはマギガントに長けてますし、工員達も使ってみて下さい」

  七実 「え、遊魔じゃ無くても使ってもいいんですか」

  ダイン 「むしろこっちの人間と共同作業をした方がいいかもしれません、そこでナナが才能を見出したのならば、遊魔の良い人材となってくれるかもしれませんし」

  七実 「そんなところまでナナが踏み込んでも良いんですか、魔進化の人選はダイン様だけの特権ですよね」

  ダイン 「確かに最終決定は私が行いますが、プルルはティアスの推薦ですよ、まぁ元々私を籠絡する為ですが、プルルの献身は魔進化で報いる程の価値が有りました」

  プルル 「ティアスはここぞという男の人の為にプルルを仕込んでいたんですよ、でも今はその事を十分に感謝しています」

  愛耶 「本当に助かってますよ、アーグル文化の根底をプルルに教わってますから、日本で当たり前の事でもアーグルじゃ常識外れみたいですし、生野菜がいい例ですね」

  プルル 「確かに食べてみると有りかもしれませんけど、チョット変に感じますね、野菜って煮て柔らかくする物ですから」

  ダイン 「アーグルでは野菜といえば根菜料理ですからね、葉物野菜はやはり薬草イメージなんでしょうか、カレーを食べた中国人が薬だと言った話は聞いた事が有りますが」

  プルル 「確かに植物の葉は薬として使う事が多いです、お茶も薬から始まったと言いますから」

  ダイン 「なるほど、地球と同じ感覚なんですね、地球のお茶も薬として飲まれていたとの話もありますからね、実際カテキンとか抗酸化作用の有る成分も含まれている様ですし」

  七実 「なんだかよく解らないけど、効きそうなやつですね、まぁ苦い葉っぱって効きそうな気はしますけど」

  ダイン 「まぁそのあたりはツェリの得意分野でしょう、そろそろ準備も整っていそうですね」

  愛耶 「ならダイン様達は早く地下へ行って上げて下さい、ニアも一人で寂しがっていると思います」

  七実 「アイヤは気に掛けてますけど、あの猫は多分寝てますよ」

  ダイン 「そこもニアらしくていいでしょう、私としてはツェリの知識を早くモノにしたいですね」

  プルル 「アーグル食材の種類が増えるのは楽しみです、やっぱりダイン様には楽しんでもらいたいですから、プルルはアイヤと残って片付けが終わってから下に降ります」

  ダイン 「では私達は下に降ります、後の事は頼みましたよ」

  そうしてダイン一行は地下へと降りて行く、残されたアイヤとプルルは後片付けを始めて、早くダイン達に合流しようと急いでいる。

  既に遊魔以外の居ない国賓屋敷では変に気を使わずに正体を晒してもいいのだが、テガス学生の侵入事件が何度も起こっている為に完全な隠匿が出来ている地下室以外では遊魔の姿はお預けになっている。

  真夏 「今日は誰も来ていない様ですね、放った犬が効いているんでしょうか」

  フェカト 「警備の衛士も付けていますからね、でも学生って禁を犯す事を楽しんだりしますよね」

  ダイン 「まぁ、無事に地下へと辿り着いた者にはご褒美を授けましょう、間者として有能な事は明らかでしょうから」

  七実 「テガスって懐深いですよね、スパイを容認してるなんて」

  フェカト 「隠すと変に疑われるだけですから、ですが遊魔の事は隠す必要があるので大変です、まぁ間者はダイン様の作るマギガントに夢中みたいですけど、その辺りはさすがダイン様です、敢えて間者の餌を用意するなんて」

  ダイン 「意図してやった事じゃ有りませんよ、ですがマギガントが技術の象徴で有る限りは遊魔よりも工房に注意が集まるでしょうね」

  七実 「デカいだけで脅威ですからね、でも本当に怖いのは内なる敵なんですよ、その点遊魔には絶対に裏切りなんて有りませんから」

  フェカト 「そうですよね、遊魔は遊魔が楽しむという目的に従って生きてますからね、それがダイン様の望みでも有りますから、裏切りなんて考えられませんよ」

  ダイン 「私は小心者ですから、裏切りを許せないんですよ、馬鹿は許せますけどね」

  真夏 「その馬鹿って難しい馬鹿ですよね、基本ネタに出来る馬鹿じゃないと」

  七実 「ダイン様の生き方ですよね、気に入った娘堕としてハーレム作るとか、でも最近は世界征服考えてませんか」

  ダイン 「そんな面倒な事考えてませんよ、遊魔が楽しく暮らせる世界で安寧が保証されればいいだけです、ですがその為には征服して我々の法を徹底した方が楽ですよね」

  フェカト 「既に五戦の協定戦で遊魔に勝てる勢力なんて存在してませんけどね、遊魔の次に戦力が出せるクガトでもフーティア三機ですから、対して遊魔はポナリア三機にフーティアが二機です、その上、騎士は全員遊魔ですし勇者も二人確保してます」

  ダイン 「まぁ飛べる遊魔はティアスとリレッタしか居ませんが、あくまでテガス防衛の戦力ですね」

  フェカト 「ですがツェリは処女のまま手を付けないんですよね、それで三機確保出来ますけど」

  ダイン 「ティアスは公に使えませんから、私でも使える飛翔型ゾッフォは重要です、それにアレは良い目眩しになってくれてますからね」

  七実 「近日中に浮遊テストを行う予定です、それが成功すれば魔導エンジンの組み込みを始めます、ですけど不安あるんですよダイン様の設計通りですけどいまいち原理に自信無くて」

  ダイン 「重魔鋼の反発に関してはアレで大丈夫な筈です、テスト機は操縦席を分離させてシェルターで覆ってますから、本体が直撃しても魔力を送る騎士に危険は無い筈です、なんなら私がテストを行いますよ」

  真夏 「周りを不安にさせるのは止めて下さい、その役目はポーカがやる予定です、今後増えて行くアーグル人遊魔への適応を考えるならポーカが最も適任ですから」

  ダイン 「残酷な様ですが理には叶ってますからね、ツェリを加えてアーグル人遊魔は六名、地球人は四人ですが今後暫くは増える予定は有りませんからね」

  フェカト 「ポーカは騎士としても逸材ですから任せて大丈夫だと思います、フェカトは所詮二流騎士ですし、ティアスは立場的に無理ですよね」

  ダイン 「テスト用に新しい遊魔を産み出す事も可能ですが、それを前提とした眷属は可哀想ですね」

  七実 「はい、それにポーカにとっては名誉な事ですから役目を奪うのもどうかと思います」

  ダイン達は今後の展開を話し合いながら地下への入り口へとやって来た、遊魔以外の侵入を防ぐ二重の扉を抜け中に入ると、地下室内は静けさに満ちておりニアの気配すら感じられない、だが、ダインは動じる事はないニアはやる事はちゃんとこなす遊魔なのだ。

  おまけ

  人類圏の植物料理 基本的に食事で生の植物を食べる事はない(果実は別で人類圏の甘味はほぼ果物しかない)、生食自体は行われているがそれはもっぱら医療行為であり、ダインが食用植物の開拓にツェリを頼ったのはそういった事情が有ったからだ。

  では、どの様に植物が食されて食されているかというと、茹でる、蒸す、煮るが主な食べ方で有る、他に生地と絡めて焼くという調理法も有るが、これは日本のお好み焼きに近い食べ方だ。

  基本煮る以外の調理した植物はシチューを付けて食べる事が多く、醤油やソースといった長期保存が可能な液体調味料は存在しない、だが、瓶詰めのシチューは存在しており、それがソースだという見方も出来ない事は無い。

  人類圏食事文化では穀物と野菜は区別されておらず、纏めて植物料理という分類になっているのだが、果実は植物料理には含まれず、果実として食べられている。