ルゥ編 第十話 試練のアキリィ乳

  X01-010

  ダインとのデートを終えて学院に戻ったルゥは与えられた一室にリレッタと共に過ごしていた、この部屋はかなりの頻度でテガスを訪れているリレッタ用に用意された部屋でも有り、ルゥとしては自分の知らないリレッタをよく感じられる部屋でも有った。

  読み書きをする為に備え付けられた机には、リレッタが翻訳を行っている最中のダインの世界の本が拡げられている。

  ルーフィン 「この文字が解るんですか、元本の内容は解りませんけど、アーグル文字は読めますから」

  リレッタ 「自信は有りませんけど解りますわ、よく解らない固有名詞も有りますけど」

  ルーフィン 「内容から推測するに料理本ですよね」

  リレッタ 「はい、ダイン様達を乗せて来たシーベアーという船はアイヤの父親のものらしく、こういう料理本が多く有る様なんですよ、主に海の魚の料理本らしいですわ」

  ルーフィン 「確かに魚の写真ですけど、ルゥの知らない物ばかりです、ルゥの世界では余り魚料理は有りませんでしたから」

  リレッタ 「でも写真は有ったんですね、リッタは本物にそっくりの写真に驚きましたから」

  ルーフィン 「でも、こんなに凄い本は無かったです、なんか紙がキラキラしてますね」

  リレッタ 「はい、写本といっても写真は無理なのでレシピだけ写させて貰ってます、ダイン様の世界では魚の骨だけ切り落として食べてるんですよ、凄いですよね、テガスの夕食では良く出てますので楽しみにしてください」

  ルーフィン 「骨を切り落とすって、細かくして分けるわけですか?」

  ルーフィンの質問に、リレッタは本のページを捲って解り易い写真を見せてくれる。

  リレッタ 「三枚に下ろすっていう技術らしいです、確かに魚の構造なら出来ますわよね」

  ルーフィン 「なるほど、写真を見れば簡単そうに見えますけど、刃物はこんなによく切れないですよね」

  リレッタ 「それが、アイヤの包丁なら可能なんですよ、実際見せて貰いましたから」

  ルーフィン 「でもリッタが料理に興味が有ったとは、以外でしたね」

  リレッタ 「ダイン様の世界は全然違いますから何を見ても勉強になります、それにこれだけじゃ有りませんよ、もっと凄いのはシーベアーに有りますから、リッタの魔進化はシーベアーで記録されるそうです」

  ルーフィン 「そういえば、ダイン君もシーベアーを見せてくれるって言ってましたね、でも記録ってなんでしょう」

  リレッタ 「マギガントの通信盤の様な物ですね、四角い額縁に今の情景を映すんです、他にも額縁を使って変な遊びとかもしてました、アーグルでは額縁の機能が殆ど使えないと言ってましたけど」

  ルーフィン 「今を映す額縁ですか、よく解りませんが凄く楽しみですね」

  リレッタ 「テガスって、不思議な物だらけですよ」

  リレッタは遊魔の文化を強調する事によって、ルゥへの裏切りの事実を逸そうとしている様だ。

  ルゥとしては余り愛情を注ぐ事が出来なかったリレッタに対して、咎めるつもりなど無いのだが、ルゥ自身も素直に言葉にする事が出来ていないので、他の会話が弾むのは少しありがたかった、そして上手く行かない乳魔のコミュニュケーションは、夕食の呼び出しで終わりを告げる。

  王都にいた頃とはまるで別人の様に変わってしまったプルルは、今では貴族の寵姫の様な妖艶さを纏わせている、そのプルルが以前と同じ様なメイドの振る舞いで食事の用意が出来た事を告げてくれるているのだが、場違い感が半端無い。

  リレッタ 「プルルもの凄く変わりましたよね、何処ぞの貴族の妾の様ですわ」

  プルル 「ダイン様に愛されてますから、プルルが愛されていると知らしめる事でティアスの立場も良くなるのでラースの撤退ですね」

  ラースの撤退とは一石二鳥とほぼ同じ意味だ、かつて存在した名将ラースは自分が攻略した砦を放棄する事で対立する二勢力を引き込んで戦わせて、互いの勢力を削がせて最終的にどちらにも勝ったという故事に因んでいる。

  リレッタ 「それだけとは思えませんけど、プルルも心からティアスに尽くしていたわけじゃ無かったという事ですわね」

  プルル 「はい、正直言って嫉妬はしてました、でも今はティアスがプルルに嫉妬してるんですよ」

  ルーフィン 「それが言えるという事は凄く関係が変化してるんですよね」

  プルル 「はい、プルルがお姉ちゃんですから、リレッタさんもそうですよ」

  リレッタ 「プルルはどう見ても妹の姿ですわ」

  プルル 「でも、遊魔へと魔進化するとそうなりますよ、プルルにとってはティアスとリィ以外みんなお姉ちゃんですから」

  ルーフィン 「なるほど、認識を強制的に植え付けて反抗出来なくしてる様ですね」

  プルル 「別に強要されてる感じじゃないですよ、自然と受け入れるんですよ、でもそれが遊魔の中で絶対的なんです、話変わりますけど、ダイン様との食事も最優先ですので早く来て下さい」

  プルルは本題を思い出して乳魔達を急がせる、遊魔のプルルにとってダインとの食事はこの上なく幸福な時でも有るのだ。

  リレッタ 「そうですわね、お食事に行きましょう、今日はお魚の料理は出て来るのですか?」

  プルル 「元々遊魔が集まっての宴席が開かれる予定でしたから、今日のメニューは豪華ですよ、アイヤ姉様が特に張り切って腕を振るってますから、今までアーグルでは作られてない魚料理も作ってましたよ」

  ルーフィン 「それは楽しみです、でも、リエルとアーキアの同席してるんですよね、正直私達は仲良く有りませんので心配です」

  ルーフィンは顔の表情を曇らせて本音を白状した、この世界への召喚前から続くわだかまりは容易には解消出来ないものだ。

  プルル 「ダイン様がルゥ様を歓迎していますので、個人の感情は抑えてくれる筈です、いっその事ルゥ様も遊魔に魔進化してしまえばわだかまりなんて消えて無くなりますけど」

  ルーフィン 「今はそこまで考えられませんね、ルゥにも眷属がいますから」

  リレッタ 「流石のダイン様も乳魔全てを受け入れるには考えてしまうでしょうね、ルゥ様の好みと一致してるかも謎ですから」

  プルル 「まぁアキとリィはいざとなればダイン様が何とかしてくれますよ、席をダイン様の隣にして貰えば二人も何も出来ないでしょう」

  リレッタ 「それは他の遊魔から反感出そうですけど」

  プルル 「ダイン様の決定は絶対ですからね、さぁ早く行きましょう」

  プルルは呼び出しに時間が掛かっている事が気になる様だ、ダインを優先する遊魔にとってダインを待たせる事は多大なストレスを感じてしまうのだ。

  ルーフィン 「その言葉信じますよ、あの二人と食事なんて数ヶ月ぶりですから」

  ルーフィンは期待と不安を胸に遊魔の宴席へと歩みだす、傍らのリレッタが妙に楽しそうなのに若干不快を感じてしまったが、リエルとアーキアの存在が無ければルゥも同様だろうと理解して許してあげる事にする。

  そして、昼間に会談が行われた部屋にたどり着くと、プルルがノックして来訪を告げる。

  ダイン 「準備は整ってますので入って下さい、今日の晩餐は豪華ですよ」

  ダインの許しにプルルは扉を開け放つと、円卓の上に様々な料理が並んでいる、座席はちょうどダインの両脇が空いており、そこがルーフィンとリレッタの席の様だ。

  ダイン 「ルゥとリッタは私の両隣りでいいですよね、プルルはアイヤの隣でお願いします」

  リレッタ 「リッタが隣りでよろしいのでしょうか?」

  ダイン 「今日はリッタの特別な日ですからね、思い出は深く盛り上げるべきですから」

  ティアス 「そうですよ、リッタにはその権利が有ります、新しい遊魔は皆に祝福されるモノですから」

  七実 「ティアスはいつの間にか増えてたけどね、でもダイン様の考えは絶対だから大歓迎だよ、お姫様って興味有るしね」

  真夏 「ナナは高貴な存在を味わってみたいだけですよね」

  七実 「うん、本当は人間の頃の味を確かめてみたかったけどね、遊魔に成っちゃうと皆んな甘くなって美味しく成っちゃうから、やっぱり生の人間の味って興味有るから」

  ダイン 「ナナが娘を調達すればいいんですよ、じっくり女体の味を堪能してから、私に献上すればいいと思いますよ」

  七実 「でもダイン様の好みが有るじゃ無いですか、愛されない娘は作りたく有りませんし」

  ダイン 「美形と処女さえ押さえていれば大丈夫ですよ、私は自分の作品を愛せますから」

  ティアス 「プルルとか結構変えちゃいましたからね、何か淫らになってます」

  プルル 「愛の力です、ティアスはまだ本当に愛して貰ってませんから解らないかも知れませんけど、自分の身体をダイン様に合わせているんです」

  ダイン 「プルルは勉強熱心ですからね、私を愉しませる事を凄く理解してくれています、職業柄人の意を読み取る事に長けているんでしょうか」

  プルル 「ダイン様に全身全霊を持ってお仕えしてますから、ダイン様の好みに合わせる事が可愛がられる秘訣ですよ」

  真夏 「みんなそれは解ってるんですけど、何が良いか解らないんですよ、ダイン様の好みで魔進化した筈の遊魔の姿が千差万別ですから、美醜の判定基準は解りますけど」

  フェカト 「根本的なところは接し方じゃないでしょうか、プルルって満足させる事が上手い様に思います、ちょっとした仕草で相手の望む物を出してくれますよね」

  リレッタ 「ティアスが我儘で鍛えられたのですわ」

  ダイン 「それも有るかも知れませんね、ですがお喋りはこの辺にして、食事を始めましょう、冷えてしまっては折角の料理が勿体無いですから、遊魔と違って食事には食べ時が有りますからね」

  愛耶 「そうなんですよ、アイヤはいつでも召し上がって頂いてもいいんですが、料理はそうは行きません、一応魔導保温皿を使っている料理も有りますけど、早く食べて欲しいです」

  ルーフィン 「保温皿って、遊魔の考える事は予測出来ませんね」

  ルーフィンの中では食事が冷えるのは当たり前の事で、温度を保つという発想すら無い。

  ダイン 「私達のいた日本という国は食に対して貪欲だったんですよ、それにエロい事にも貪欲でしたよ、まぁ妄想の表現でお金儲けが出来ましたからね」

  七実 「ナナとダイン様は女体狩り仲間でしたからね、厳密にはエロじゃないんですけど、ダイン様が産み出す遊魔の源流だと思います」

  七実の参戦はダインの話が盛り上がる兆しでもある、だからこそ愛耶は阻止の一手で応戦する、遊魔の料理番としてなるべく美味しく食べて欲しいのだ。

  愛耶 「もう、早く食べて下さい、ダイン様が食べてくれないと皆んな食べれませんから」

  愛耶に怒られた事でダインも潔く食事に手を付け始める、骨付き肉を手にとって齧り付くと妖魔達も各々気になる皿から料理を取り分けて晩餐が始まった。

  それから約一時間後、テーブルの料理はまだ半分近く残ってはいたが、手を延ばす者はいなくなっていた、ほぼ満腹になるまで遊魔達は料理を食べていたのだが、流石に用意された量が多過ぎた様だ。

  愛耶 「そろそろこちらはお下げしますね、明日の朝早起きした学生は随分とお得ですね、また食べたい人は朝早く食堂に行って下さいね」

  ダイン 「好みの分かれる料理も有りましたが大満足です、次はデザートの時間ですが、ルーフィンもまだまだ行けますよね」

  ルーフィン 「いや、流石に無理ですよ、遊魔はまだ食べるんですか」

  ダイン 「はい、デザートは学生には出せませんから、主に遊魔母乳を使ってますので、人間が食べると大変な事になるんですよ」

  ルーフィン 「乳魔より、よっぽど母乳活用してますよね」

  ダイン 「甘味を得るには最も容易な手段ですからね、係の者は用意を頼みます」

  ダインの言葉に従って、愛耶とプルルが席を立つと、テーブルの料理を片付け始める、アーキアとリエルは席を離れて別室に移動すると、愛耶とプルルが料理を下げた後に、デザートを乗せたワゴンを押して部屋に戻ってくる。

  ダイン 「今日の担当はアーキアとリエルですか、リエル乳の調理は初めてですので楽しみですね」

  リエル 「ダイン様に喜んで頂ける様にアイヤ姉様から手解きを受けました、ちょっと予想外の来客もいますけど」

  ダイン 「乳吸って仲深まるというのが遊魔です、ルゥも当然食べてくれますよね」

  この事態はルゥにも予想出来なかった、まさかあれほど毛嫌いしていたリエルとアーキアの母乳を食する時が来るとは思ってもみなかったのだ、だが、遊魔との関係を考えるならここで拒む事は出来ず、提供されたプルプルと震えるデザートから逃れる事は無理そうだ。

  ルーフィン 「むしろ二人がルゥに食べられるのが嫌じゃないんですか?」

  アーキア 「別にそうでもないよ、アキの母乳スィーツを美味しいって思ってくれるのは嬉しいから、ルーフィンにはこういう事出来ないよね」

  アーキアは指で母乳ババロアを乗せた皿を弾いて揺らして見せる、そうデザートに含まれるのは確かにリエルとアーキアの母乳だが、母乳はルーフィンを拒んでいないのだ。

  そして、最初にスプーンですくってその味を堪能したダインが感想を漏らす。

  ダイン 「いい香りですね、アーキア乳は味が濃かったですが、リエル乳と混ぜる事によってちょうど良い味へと昇華しています、単体の味も個性があって良いモノですが、合わさる事で産まれるバランスは実に見事です」

  リエル 「やっぱりリィとアキは最高の相性なんですよ、そして二人から生み出された幸せは皆んなに味わって欲しいです」

  リエルは皆んなと言ったが、その視線はルーフィンを捉えている、実のところリエルは母乳の美味しさをルーフィンに認めさせる事で、優位に立ちたいと思っているのだ、その意味ではリエルはまだルーフィンに対抗意識を抱いている。

  おまけ

  テガス開発計画美食編 人類圏社会の最大の娯楽は食事である、全ての人類圏住民には食事が保障されており、もし、餓死者を出す様な国家運営をすれば即刻その国家は他の人類圏国家全ての敵となって滅亡は免れない、だが、人類法成立以後その様な国家は存在しておらず、人類圏住民は一部を除いて日々美食を探求しているといってもいい。

  そこで注目度が高いのが、テガスで拡がっている異世界料理である。

  最大の娯楽を得る為に食材の流通は幅広く行われており、運河の輸送物資の殆どが食材でもある、ダインはその事に注目して、異世界料理の見本市としてのテガスをアピールし、アーグル食材を使ったレシピを普及させる事によって収入の拡大を企んでいるのだ。

  この試みは単にレシピの普及だけで無く、調味料の独占も視野に入れた物で、材料を生産する為の耕地の確保を進めている、そして白羽の矢が立ったのが隣国ツェーリア王国なのだ。