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人の社会に慣れた狼男の話

  別に、何かがあった訳ではない。

  ネクタイを緩め、凝り固まった首をほぐしながら男はふと立ち止まる。

  毎日が楽しい…とまでは行かないが十分満足している。

  住宅地の程近くのバス停。自分以外に降りた人達は様々な表情で各々の帰路へとついていた。

  立ち止まる理由は無い。

  男は立ち止まるとふぅ、と少しだけため息をついた。

  うっすらと雲に覆われた月は半月より少し肥えていて。満月には届き得ない。

  夜空に星が煌めく、漆黒の絨毯。

  肺にするりと侵入するのは少し冷たく、心地よい空気。

  足を止めていた男は、夜空から視線を下ろし、自分の帰路に着く。

  頼りなげに夜に灯る街灯。少し遠くに車の走る音。虫のざわめき。鳥の声。

  男は歩く。

  足がむずむずと疼く。

  男は速く歩く。

  そういえば。

  男は考える。自分が最後に、思いっきり走ったのはいつだろう。

  今走ったらどうなるのだろう。

  忘れかけた感覚。純粋な疑問と好奇心。

  男は走り出す。

  風を切る。心臓が鼓動を早め、全身に血液を行き渡らせる。酸素が足りず、呼吸も早くなる。

  足に鈍く走る痛み。その痛みもどこか心地よい。

  走る。走る。走る。走る。

  どこまでも行ける気がする。景色が早送りで進んでいく。

  どくん、どくん、どくん、と心臓が強く脈打ち、裏返る。

  「ゥ"ゥ"ッ…!」

  男は走りながら。その速度を際限なく高めながら。だんっ、と地面を蹴った。

  重たいはずの体が宙に舞う。その姿を目に捉えられた者は居ない。

  男は空を見上げると。

  「ォ"ォ"ォ"ォ"ンッ!!!」

  吼えた。

  人ならざる声で、吼えた。

  直後。

  ぶぢっ、と全身の筋肉が引きちぎれる音。

  男は両腕を広げ、にぃ、と口角を上げた。

  引きちぎれた筋肉が修復され。再び引きちぎれる。

  ほんの数秒の間に破壊と回復を繰り返された筋肉は、凄まじい勢いで膨張していく。

  身につけていたシャツがパンパンに張り詰め、ボタンが弾け飛ぶ。

  限界まで膨らんだシャツはやがて悲鳴を上げ。

  限界を超えた。

  びりぃっ、と切り裂かれ、ボロボロの布切れになったシャツ。

  その下から外気に晒し出されるのは血管が浮かび上がった、頑強な肉体。

  バットで殴り飛ばされても、むしろ殴りつけたバットを折り曲げてしまうような首。

  荘厳な山脈を連想させる肩。

  谷間が作り上げられ、月明かりで影が出来上がる胸。

  丸太をいくつも束ねたかのような腕。

  一つ一つ陰影が出来上がり、少しの衝撃にはびくともしない腹。

  くびれを作り上げ、鬼の形相が浮かび上がりそうな背中。

  シャツに続き、今度はシャツより遥かに頑丈なはずのズボンが下着共々弾け飛ぶ。

  子供の胴体をゆうに超え、頑強な上半身を支えるにふさわしい太腿。

  握り拳をそのまま押し込めたふくらはぎ。

  男は大きく口を開くと。

  「アォ"ォ"ォ"ォ"ンッ!!!」

  心地よさそうに、高らかに。

  人ならざる声。

  狼の遠吠えを再び上げる。

  新たに作り上げられた筋肉。それを覆う皮膚から、一気に噴き出すのは銀色の獣毛。

  それはあっという間に男の全身を覆った。

  開いた口から骨のひしゃげる音が鳴り響く。

  ごぎゃんっ、ごぎゃんっ、と轟音が数度。男の顎が迫り出し、それに連なり頭蓋が変形するとマズルを作り上げた。

  貧弱な歯を押し退け、牙が並ぶ。

  肉も骨も関係なく切り裂ける筋力を持つ顎。

  づるり、と引き出されるように三角形の耳が頭部から姿を現し。

  爪の下から、新たな爪が生成された。

  それは鉄をも切り裂く、冷たい凶器。

  尾てい骨が臀部を切り裂き、外へ飛び出していく。

  飛び出した骨を筋肉が包み、全身と同じように獣毛が覆って。

  「ォ"ォ"ッ…アォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ンッ!!!」

  男は。

  宙に舞ったほんの数秒の間に。

  人狼へと変貌した。

  [newpage]

  別に何かがあったわけではない。

  人として暮らしていくのは楽しい。悪くない。

  今日が満月という訳でもない。

  満月であれば否が応でも変身してしまう。己の獣をなだめすかしやり過ごす。

  ただ。

  ただ時折、唐突に。この衝動と獣欲が暴走する時がある。

  それが今日なだけだ。

  どくんどくんと鼓動が強く速く激しく脈打つ。

  全身が熱い。

  人狼は住宅地から遥かに離れた山に着地する。

  「ハァッ…ハァッ…ハァァァァッ…!!!」

  人狼は大きく呼吸を繰り返す。

  そして四つ脚で。山の中を駆け巡る。

  走る。走る。走る。

  風を切り裂いていく。太い木の枝も関係なく走る。

  走るだけで良い。全身に駆け巡る力を、走る事だけに使う。

  心地良い。熱に浮かされ、思うままに無尽蔵の体力を使う。

  地面を蹴り、宙に舞い、空の匂いを確かめる。

  着地し、土の匂いを確かめる。

  「ォ"ォ"ォ"ォ"ンッ!!」

  「ォ"ォ"ォ"ォ"ッ!ォ"ォ"ンッ!!」

  誇らしく高らかに遠吠えする人狼の耳に、自分以外の遠吠えが聞こえた。

  珍しい事ではない。

  自分と同じように人に紛れ、人として暮らし…そして時折、こうして人狼として衝動を解き放つものも居る。

  …人を餌として認識しているものも少なく無いが…

  それはともかく。

  人狼は耳をピクピクと動かすと、にぃ、と笑い声の方へ向かう。

  全身を駆け巡っていた熱が一箇所に集まっていく。

  街灯よりも遥かに明るい月明かりの下。

  づ、る、り、と。

  股間から鎌首をもたげるのは禍々しく、悍ましい肉の竿。

  スラリとした先端に、上腕以上の太さと長さ。根元には睾丸とは異なる瘤が鎮座しており、その肉の竿の禍々しさをより際立たせる。

  見る者が見れば美しいと感じる醜い肉の竿。どくんっ、どくんっ、と脈打ち、その度に人狼自身の胸を叩く。

  先走りが溢れ出し、地面にぽたりと垂れるとそれだけで強いフェロモンを解き放ち、人狼の存在を強く指し示す。

  唸り声と肉の音。爽やかで冷ややかな風に混ざる熱い吐息と獣の臭い。

  近付いてく。近付いてくる。

  茂みを掻き分け突き進んでいくと、視界が急に開ける。

  そびえ立つ壁の様な崖。月明かりが作り上げる陰に、紅い瞳。

  むわぁ、と汗と獣の臭い。蒸れた雄の臭い。熟れた雌の臭い。

  銀色の人狼に相対するは、金色の人狼。

  あぁ、美しい。

  心臓が裏返りそうな感覚を覚える。尻尾が思わずゆら、ゆら、と揺れる。

  金狼も恐らく、同じ考えなのだろう。喉を鳴らし、尻尾を揺らし、耳をパタパタとはためかせる。

  胸元近くにまでそそり立った逸物は銀狼と同じ。禍々しく、悍ましく、凶悪で、精悍で、美しい。

  言葉など不要。お互いに何を求め、何をしようとしているのか。分かっている。知っている。

  四つ足を突き、喉を鳴らし、近付く。

  吐息が触れあう程の距離にまで近付き、黒く濡れた鼻先を擦り合わせる。

  熱い、肉の感覚。触れあう吐息は期待に濡れていた。

  「アォ”ッ…ォ”ンッ…」

  「ォ”ォ”ッ、ォ”ォ”ン…」

  マズルを絡ませあう。瞳を見つめあう。熱に蕩けていく。

  くしゅくしゅとマズルを我武者羅に動かし合って。擦れあう。

  唾液が心地よく、つんと鼻の奥を突いた。

  重ね合わせたマズルを少しだけ離して。

  その場へとどちらともなく膝をついた。

  見知らぬ相手。見知らぬ人狼。初めて出会うはずの人狼。

  この熱を発散するためだけの逢瀬のはずなのに。

  銀狼と金狼は恋人同士がそうするように、自然と。

  「アンッ…」

  「ん”ッ…ン”ゥ”ッ…」

  唇を貪りあう。

  人と異なる形状でありながら自然と。首を傾げ、相手を出迎える。

  ぴちゃ、ぴちゃ、と最初は触れあう程度に。

  舌を絡ませあい、雄の味を確かめる。

  それが終わればじゅぶ、じゅぶ、と。絡めた舌を近付け、マズルをマズルを重ね合う。

  常人であれば砕けてしまいそうな力を両腕に込めて、抱きしめあう。

  胸板と胸板が擦れあい、鼓動が混ざり合う。

  肉の竿がぶつかり合うと、絡みついていた血管が目に見えるほど浮かび上がり、金狼と銀狼に快楽を与え始めた。

  腰をカクカクと動かす。舌を絡ませあい、口腔内の粘膜をまさぐる。

  自分と異なる熱と肉。そして口いっぱいに広がる雄の臭いと味は濃密で。頭を蕩けさせる。

  先走りが絡み合い、肉の竿と擦りあうと泡立ち、二匹の腹や太腿を淫猥に濡らした。

  肉の竿と別の性器。

  正しく言えば性器ではないのだが…性器として快楽を得られるまでに熟れた雄穴がひくひくと蠢く。

  それはお互いに感じあっているだろう。なんとなく、そう思う。

  このまま雄の味を堪能していたい。だがそのままではこの熱は終われない。

  唾液の橋が架かる。

  先程よりもいっそう膨れ上がった肉の竿は唾液と先走りに濡れていた。

  ごきゅん、と唾を飲み込む音が同時に響く。

  挿入するのは。挿入されるのは。

  どちらも。どちらの快楽も欲しい。

  なれば順番は些末。

  銀狼は金狼に背を向けると両膝を地面につき、両脚を拡げると尻と尻尾を持ち上げた。

  ぐぱぁ♥

  月光に晒し出される雄穴は、触れられてもいないのに汁を垂らし、既にそこでの行為の準備が整っているようだ。

  「ォ”ォ”ッ、ォ”ォ”ンッ♥」

  銀狼は喉の奥から低く、太い。それなのに愛玩動物の様な愛いらしさを思わせるような、甘えた声を上げ、尻を上下左右に動かす。

  その度にぶるんっ、ぶるんっ、と肉の竿が暴れ、時折地面を擦り上げた。

  「グルルゥッ…ゥ”ゥ”ッ…!」

  金狼は雄としての欲望をたっぷりと込めた唸り声を上げ。

  銀狼に覆いかぶさる。

  そして待ちきれないとばかりに腰をカクカクと動かし、銀狼の尻を叩いた。

  その硬い肉竿の先端が尻の谷間をぶち、期待を高めていく。

  尻尾を絡める。カチカチと牙を鳴らし、唾液を垂らし。

  肉竿の先端が、己の行くべき場所を捕らえると。

  「アォ”ォ”ォ”ンッ!!」

  「ォ”ッ、ォ”ォ”ッ♥」

  ずぶんっ♥

  「ォ”ォ”ォ”ォ”ンッ♥アォ”ッ、アォ”ォ”ッ♥ぉ”っ、ォ”ォ”ォ”ッ♥」

  竿の根元。瘤の始まりまで挿入されると、銀狼は肉の割り拡げられる感覚と肉を満たす肉の熱に快楽を濡れた遠吠えを上げた。

  きゅんっ、きゅんっ、と疼きが逸物からは得られない快楽へと変わり、銀狼の全身を支配していく。

  絡めた尻尾をより強く絡め、がくがくと全身が痙攣を繰り返し、目は上を向く。

  毛並みの上からでもうっすらと分かるほど頬が紅潮し、はみ出た舌は垂れて来ていた金狼の唾液を旨そうに掬い上げた。

  快楽を感じているのは当然銀狼だけではない。

  「グゥゥ”ゥ”ッ、ゥ”ッ、ゥ”ゥ”ゥ”ッ…!ォ”ッ、ォ”ォ”ッ…!」

  濡れた肉の塊は強く、しかしそれでいて心地よく肉の竿を締め付ける。

  伝わる熱。ぐるぐると絡みつく腸壁の襞に擦り上げられ、手では得られない肉感。

  少し腰を動かそうとするだけで絡みついた腸壁や雄穴が肉竿全体を扱き上げ、吸い付いて、吸い上げる。

  ずろろろぉ…

  ずんっ♥

  「ォ”ッ、ォ”ォ”ッ♥ォ”ッ、ォ”ォ”ォ”ッ♥」

  「グゥ”ゥ”ッ!ゥ”ォ”ォ”ッ!!」

  腰を引き、肉竿を抜き取り、再び根元近くまで挿入する。

  肉竿の先端がごりゅごりゅと前立腺を穿ち、銀狼はゾクゾクと全身を痙攣させながら肉の竿から多量の先走りを溢れさせた。

  絡まった尻尾が、より一層複雑に絡みつく。

  雄と雌の情欲を発散するだけの交尾が、始まった。

  全体重を上半身に乗せ、銀狼を圧し潰しながら金狼は腰を振り、肉竿の抽送を繰り返す。

  両手を強く握りしめ、胸板を背中に押し付け。

  ずんっ、ばぢゅんっ、どぢゅっ、ずぱんっ、ずぱんっ♥

  単調で、乱雑で。己が快楽を見出すためだけの動き。

  だがそれでも的確に、肉竿は銀狼の前立腺を穿ち、腸壁を撫で上げ、擦り。

  「ォ”ォ”ッ、ォ”ッ、ォ”ォ”ッ~~~ッ♥ォ”ッ、ォ”ォ”ッ♥♥」

  腰を揺らし、雄穴を締め付け、時折肉竿を排泄しようと腸壁を蠢かせる。

  粘液と肉の抵抗感が竿に刺激を与え、金狼の肉竿は膨らみ、先走りをどぷどぷと銀狼の中へと注ぎ込んでいく。

  先走りと腸液が混ざり合い、泡立った液体が結合部から溢れ、太腿や腹を彩り。

  腰の動きはどんどんと小刻みに。

  「ォ”ォ”ォ”ッ、ォ”ッ、ォ”ォ”ッ!」

  づんづんづんっ、どぢゅんっ♥

  尻肉と腹筋がぶつかり合い。

  汗が飛び散り、欲望が満たされていく。

  どくんっ、どくんっ、と瘤が膨らみ、肉竿の先端の方へと進み始めた。

  「ォ”ォ”~~~ッ♥ォ”~~~ッ♥」

  ごりゅごりゅごりゅぅっ♥

  体内で肉が捲れ上がる様な音。目の前を駆け抜ける快楽の稲妻。

  口をあんぐりと開け、涎と鼻水を垂らし、そして幸福に蕩けた目。

  頭の耳と耳の間にマズルを押し付け、金狼は腰を振る。

  「フーッ、フーッ、フーッ!!!ォ”ォ”ォ”ッ!ぉ”ぉ”っ、ォ”ォ”ッ!!」

  銀狼の濡れた雌の吐息に、金狼は昂りを隠せない。

  下半身にどんどんとマグマが溜まっていく。

  解き放ちたい。この欲望を、マグマを。余すことなく肉体の下で情欲に溺れる雌に解き放ちたい。

  そしてまた、自分も彼に。同じように。

  マグマを注ぎ込まれたい。

  そう思いながら。

  「アォ”ォ”ッ、ォ”ォ”ォ”ッ!!!」

  「ォ”ォ”ッ~~~ッ♥ォ”ッ、ォ”ォ”ォ”~~~ッ♥」

  切羽詰まった遠吠え。期待と淫蕩に耽り、溺れた遠吠え。

  ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずぱんっ、ずぱんっ!

  銀狼は思いついたように。一瞬だけ雄穴から力を抜いて。

  ぎゅぅっんっ♥

  強く、強く。今までより一層強く。激しく締め付けた。

  達する。

  雌の欲望に。絶頂に。

  「ォ"ォ"ォ"ッ~~~~~♥~~~ッ、ッ♥♥ッ、ッッ♥♥」

  声にも遠吠えにもならない音を喉から絞り出し。

  銀狼は圧し潰されながら背筋を仰け反らせ、全身を激しく強直させた。

  爪を地面が抉る。

  途方もない快楽。快感に頭に靄がかかった。

  そして銀狼が絶頂に達した事によって。銀狼の肉体は反応を示す。

  腸壁がぎゅるぎゅると動き回り、肉竿全体をあらゆる方向から扱き上げて。

  肉の壁が、金狼を。

  「ォ"ォ"ォ"ッ~~~~!!!!~~~ッ!!!!」

  どっぶっ…

  ぼぶぶびゅるぅぅっ♥どぶびゅるぅっ♥ぶびゅっ、ぶりゅぶびゅぅぅっ♥どぼぼぶびゅるぅっ♥ぶびゅるぅぅっ♥

  絶頂に導いていく。

  注ぎ込む。注ぎ込まれる。

  精液は濃く、熱く、勢いよく。銀狼の下腹部をぽっこりと膨らませるほど注ぎ込んでいく。

  勢いあまって結合部から飛び出した精液は地面にぼどり、と落ちると塊のまま転がり、その場に立ち上がった。

  ゼリーや、ムース。それらよりもずっと濃く、もはや固体と称しても差し支えないだろう。

  それを一身に受け止め。

  「~~~ッ♥♥ッ、ッ♥ッ♥」

  銀狼はガクガクと腰を震わせた。

  …だが人狼の交尾はここからが本番である。

  「グゥゥッ、ゥ"ゥ"ッ、ォ"ォ"ッ、ォ"ッ、ォ"ッ♡」

  金狼は声を僅かに裏返すと、がっちりと銀狼を抱き込む。

  ご…りゅっ…ぅ”♥

  「ァ"ッ、ォ"ッ♥♥」

  せり上がった瘤が、雄穴を無理矢理割り拡げ。突き進んでいく。

  ごりゅぅっ、ごりゅっ、ごりゅっ、ごりゅっ♥

  体内に瘤の根元まで入り込むと。

  むくっ、ぷくっ、むくぅっ…!

  「ァ"ォ"ッ、ォ"ッ♥ォ"ッ、ォ"ッ♥」

  体内で、瘤が膨らみ上がる。

  先程まで僅かに逆流していたはずの精液と腸液。

  完璧に瘤が蓋をして。一滴も溢れ出す事は無い。

  「ォ"ォ"ォ"ッ、ォ"ッ、ォ"ォ"ッ♡」

  しっかりと結合したのを確認しながら。金狼はぶるぶると全身の毛並みを震わせながら。

  銀狼の額を舐め。少し体勢を変えながら首筋や肩をかぷかぷと甘く噛む。

  牙の痕をつけながら。マーキングをしながら。

  ぶびゅるぅっ♥びゅうぅっ♥びゅっ、びゅるっ、びゅるるぅっ♥びゅるっ、びゅるぅぅっ♥

  際限なくどこまでも。

  天上に居るかのような表情で。注ぎ込む。

  下腹部を満たし、腹にまでせり上がる精液。その熱と濃さに。

  「~~~ッ♥ッ、ッ♥ッ♥」

  銀狼もまた、恍惚の表情で。目を上に向かせながら。

  溺れる。

  快楽に、情欲に。

  溺れ、耽る。

  二匹の夜は、始まったばかりだ。

  [newpage]

  「すいません、今日はちょっと体調が…えぇ、はい、急ぎの用事は特に…」

  と、男は部屋の中で腹を押さえながら、見えていないと分かりながらも頭をぺこぺこと動かし、電話の先に謝罪する。

  結局交尾は明け方近くまで続き。

  注ぎ込まれた分だけ注ぎ込んで。膨満感と疲労によって普通に動く事すら困難になってしまったのである。

  全く、情けない話だ。

  とはいえ。

  電話の電源を切って。男は連絡先一覧をモニターに浮かび上がらせる。

  仕事。家族。友人。

  『昨日はすいません、どうもありがとうございました。今度はアレ以外で話したいですね。』

  「こちらこそありがとうございました…と。」

  ついつい口走ってしまう。

  男はメッセージを送る。

  人狼仲間。

  人の社会も、悪くはない。

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