カーニヴォアを庇ってメイジヴォアを殺した狩人のお話

  【第一章】

  ぼくは獅子獣人のライハ。

  カーニヴォアを狩る狩人だ。

  この世界には、メイジヴォアとカーニヴォア、二種類の獣人が暮らしている。

  メイジヴォアは、植物の放つマナと呼ばれる物質からエネルギーを得ることができて、食べ物を摂取する必要はないんだ。

  だけど、DNAの塩基、シトシンのメチル化が進行すると、植物の放つマナからエネルギーを得られなくなって、他の獣人を食べるしかなくなってしまう。

  そうなってしまった存在がカーニヴォアだ。

  ぼくはそんなカーニヴォアを狩る職業、狩人をしている。

  しかし、ある時のことぼくはオオワシ鳥人に食べられそうになっていた。

  「我が魔法喰らうが良い!《ヴェノムフェザーアロー》」

  オオワシ鳥人は、羽を放つと空気中を漂うバイオマシンに音声認証でコマンドを送った。

  バイオマシンは、オオワシ鳥人の放った羽のケラチン質を即座に変容させ、爪のように硬い鋭利な矢を生み出す。

  そして、さらには毒を生み出し、ケラチン質の矢はそれを身にまとう!

  「しまった!」

  ぼくは、矢を受けて動けなくなってしまう。

  「ふはは!

  「我が血肉となってもらおう」

  その時だった!

  「ぐはっ!」

  蛇の獣人がオオワシの鳥人にかぶりついたのは。

  毒を喰らい、動けなくなったオオワシ鳥人を食べる蛇人。

  彼もまたカーニヴォアだろう。

  ぼくはきっとこの蛇人に喰われるのだろう。

  そう思ったときのこと。

  「大丈夫か?

  「俺、こう見えても解毒薬を売っているんだ。

  「このままだと、お前死ぬぜ?

  「ここは、一つ買わないか?」

  蛇人の言葉に思わず「カーニヴォアなのにぼくを助けるの?」そう尋ねてしまった。

  「助ける? 違うな?

  「単なる商談だぜ?

  「買うか買わないか?

  「それだけだ!」

  それが蛇人との出会いだった。

  ぼくは蛇人から解毒薬を買い、一命を取り留めた。

  その時はことがことで、名前も聞かずにいたものだから、名前を知りたくて、ぼくは蛇人を探すことにしたんだ。

  ぼくは、狩人の立場を使い、聞き込みをして回り、なんとか蛇人のいるという裏路地までたどり着いた。

  「へぇ~、俺様を嗅ぎまわっている奴がいるとは聞いていたが、まさかお前とはな?

  「ここへは仕事で来たのか?」

  「いや、バイオマシンに対して作用する魔法カードも売っていると聞いていてね。

  「キミからカードを買いに来たんだ」

  「へぇ~、狩人の客とは、これまた珍しい」

  「それ、キミが言う?」

  そうして、彼はふふっと笑う。

  いや、その時ぼくもそうしていたかも。

  「ねぇ、キミの名は?」

  「俺様の名は、ヴェルディ・キラカトル」

  ようやく名前を聞けた!

  そうして、彼といる時間が楽しくて、つい何度も足を運んでしまっていた。

  そんなある日のことである。

  「これはどういうことだ?」

  知り合いの狼獣人、ガルー・ノーウィングに写真を撮られていたのだ。

  カーニヴォアと一緒に居る様子を。

  「これはその……えっと、カーニヴォアの情報を得るには、カーニヴォアから情報を得る方が優位だし、なんなら武器も売ってくれるから」

  「相手はカーニヴォアだぞ?

  「狩人の使命を忘れたか?

  「この裏切り者め!」

  ガルーは、ぼくに襲いかかってくる!

  ガルーがぼくの喉笛を引き裂かんとしたから、つい本能から、爪を振りかざしてしまった。

  そうしてしばしの静寂。

  ぼくが目を開けると、首を引き裂かれたガルーの姿があった。

  「が、ガルー?」

  そう問いかけるも、息はない。

  ぼくは初めてカーニヴォアではない獣人を、メイジヴォアを殺してしまった。

  ぼくは、はじめは自首をしようとした。

  けれど、ヴェルディの存在がバレるのを恐れたぼくは証拠隠滅を図ろうと、メイジヴォアでありながら、ガルーの肉を喰らった。

  バイオマシンに伝令を送り、その場に飛び散った血液の分解を図る。

  ルミノール反応が決して出ないように。

  そうして、何事もなかったかのように。

  ヴェルディと会わないこと以外は、いつものごとく……そんな日々を送っていた。

  そんなある日のことである。

  あの狐獣人がやってきたのは……。

  「やーや、ライハさん。

  「私は探偵のレイナルドス、ルージュ・レイナルドスという者です」

  「えっと……、今日は何しに来たの?」

  「ガルー・ノーウィングの件でお伺いしたく」

  心臓が止まるかと思った。

  「えっと……そういえば、最近見てないけど、どうしているんだろう?

  「カーニヴォアにでも喰われたのかな?

  「いや、ガルーのことだしきっとまだどこかで生きているかも?」

  「おや、友達が行方不明というのに随分ドライですね?」

  「……まぁ……ね?」

  「ガルーが以前話していたんですよ。

  「友達がカーニヴォアと密会しているとね……。

  「友達というのは、ライハさん?

  「あなたのことでは?」

  「……つまり、キミはこう言いたいってこと?

  「ぼくがカーニヴォアと密会していて、口封じのためにガルーを殺したと?」

  「えぇ、私はそう睨んでます」

  「随分と直球だね……。

  「どうしてキミはそう思うんだい?

  「どこかで生きているだとか、カーニヴォアに喰われた確率の方が高いというのに」

  「あなたは私とどこか似ている気がしましたから」

  「似ているってどういう?」

  「それでは」

  【第二章】

  「オラッ、俺の子を孕めよ!!」

  私は狐獣人のレイナルドス。

  私はあの日、ガルー・ノーウィングに犯されていました。

  私たちはいつも賭けをしていたのです。

  どちらがカーニヴォアをより多く捕まえることができるかを。

  そして、負けた方はいつもこのように犯されます。

  「くっ////

  「次は負けませんよっ////」

  「へへっ、次も必ず勝ってやるぜぃ!」

  「イクっ!」

  私がイキそうになると、ガルーはその腰遣いを緩めます。

  「オラッ、イキたいなら、なんか言うことあるだろう?」

  「くっ//// イカせてくださいごしゅじんさまっ////」

  「へへっ、いいぜ?

  「イっちまえ!!」

  降伏の白濁を放つ私。

  まさか、あれが最期のセックスになるなんて。

  私とガルーははたから見れば、不倶戴天の敵。

  ルナールとイザングラン、セトとホルス、ケツァルコアトルとテスカポリトカ、まるでそのように振る舞っていました。

  しかし実際は、私はひそかにガルーに思いを寄せていたのです。

  ガルーに勝って犯したり、負けて犯されたりする日々、そんな日が続けば良いなぁ。

  そんな風に思っていました。

  ガルーは一体どんな風に思っていたのでしょうか。

  性豪であったので、私のことは単なる一夜の相手くらいにしか思っていないのかもしれません。

  ガルーの気持ちを知りたい、知りたかった。

  ですがある時彼は、こう打ち明けます。

  「俺の友達がカーニヴォアと密会しているみたいなんだ」

  「えぇっ?」

  密会という言葉に、私とガルーの関係を思わず重ね合わせます。

  「俺たちは狩人。

  「カーニヴォアと関係を持つわけにはいかない。

  「どうにかしてぶん殴ってでも止めてやりたいが……」

  それからすぐのことでした。

  ガルーがいなくなったのは。

  私は、ガルーの友達と呼べる人物を徹底的に洗い出しました。

  どの獣人もみなアリバイがありました。

  そこに1人だけアリバイのない獣人がいたのです。

  「ライハ・スターウォッチャー」

  私は、彼を尾行しました。

  残念ながら、その時は何事もなく家に帰っていましたが、彼の目は何処か私に似ていました。

  愛する者に会えない寂しさに駆られる目。

  私は彼がカーニヴォアの誰かを愛しているのだ。

  ガルーの言う密会の相手を。そう悟りました。

  もし、ガルーがそれを突き付けてしまったのなら、私が同じ立場だったら、もしもガルーがカーニヴォアで、密会しているのを突きつけられたらどうするか。

  それを想像し、確信に至ります。

  きっとライハが、ガルーを殺したのだと。

  証拠は決して足りません。

  ですが、絶対に絞首台に送ってやるのだと私は誓いました。

  しかし、いっこうに証拠は出て来ません。

  そこで私は彼の家にひそかに侵入しました。

  そこで、見たこともない魔法カードを見つけたのです。

  空気中のバイオマシンにコマンドを送る魔法カードを。

  私はこれを頼りに蛇人の商人まで辿り着きました。

  「素直に情報を吐けば、あなたのことは黙っておいてあげましょう」

  「へぇ~……そいつは穏便に済ませたいところだな」

  「獅子獣人のライハは、ここに来てましたか?」

  「力になりたいところだが、残念ながら知らねぇな?」

  「それは、おかしいですねぇ。

  「この、魔法カード……ここにしか置いていないと思うのですが……」

  「くっ……」

  情報を吐いてもらいましょうか?

  【第三章】

  ぼくは帰ろうとする狐獣人を、後ろから刺した……。

  「ぐっ……」

  しかし、彼は……。

  「くくくっ、ふははははははっ!

  「かかりましたね!?」

  「それは、一体どういう意味だい?」

  「ここに来ることは、予め吹聴してきました!

  「あなたが疑われることも時間の問題でしょう!」

  「そ、そんな」

  「ふははっ……やっぱり、あなたあの蛇人のことが好きなのですね?」

  「どうして、それを!?」

  「あなたの家にこっそり忍び込んで魔法カードを発見しました。

  「それで、魔法カードを売っているカーニヴォアを探して問い詰めたのです。

  「あなたはあの蛇人に惚れていた!

  「だから、あなたはガルーを食べて、証拠隠滅を図ったんですね?

  「蛇人が他のカーニヴォアに追われないように。

  「違いますか?」

  「……なんでそこまでわかるの?」

  「わかりますよ!

  「だって、私とあなたは似てますから!」

  「まさか、ガルーのことを!?」

  「ですが、残念でしたね!

  「あの蛇人は、あなたのことをしゃべったんです。

  「あの蛇人に、あなたを愛する気持ちなんて、なかったんですよ」

  「それは違うな?」

  そこにはあの、ヴェルディの姿があった。

  「ヴェルディ!?」

  蛇人は狐獣人に喰らいつく。

  「なっ!?」

  「筋書きはこうだ……。

  「顧客を奪われそうになった俺が、まず、ガルーを殺し、そしてレイナルドスも殺した。

  「そこをお前が、俺を捕まえた。

  「いいな?」

  ヴェルディはバイオマシンに伝令を送り、エクソソームを伝搬して、ぼくに暗号化通信を送る。

  「ダメだよ!それじゃヴェルディが殺されちゃう!」

  「元々俺はカーニヴォアだ。

  「いくつもの獣人を狩って来た。

  「だが、お前はまだメイジヴォアだろう?」

  「ぼくだって、ガルーを殺してしまった。

  「そしてその恋人も。

  「レイナルドスは、恋人の為に自分の命を賭けてここまで来たんだ。

  「ぼくだって、恋人のために命を賭けなきゃ!」

  ぼくは、レイナルドスからヴェルディを引きはがすと、監視ドローンに映る位置へ移動し……、レイナルドスを刺した。

  ヴェルディに罪をなすり着けるくらいならと、そして命を張ったレイナルドスへの共感から、自ら罪を認めたんだ。

  「ライハ……」

  「ヴェルディ……逃げて!」

  ぼくの最期のお願いに従い、ヴェルディは逃げていく。

  そして、ぼくは、自身の首にナイフを突き立てた。