鉄塔から月を眺めるヘビ系リザードマン。
彼は、いう。
「ったく、これから月夜で一杯やろうってのに、来客かい?」
電線に降り立ったカラス系獣人に気づいたのだ。
「ヘビ系リザードマンがここいらでよく狩りをしていると聞いてな?」
「へぇ、慎重に万全を期してたつもりなんだけどなァ……?
「……もうそろ場所を変えにゃいかんかァ?」
「その必要はないわ。
「代わりにワシがお前を狩ってやるのだから」
「いやいや、むしろ俺様がお前を狩ってやんよ」
お互い笑みを浮かべてから、戦いがはじまるまでそう時間はかからなかった。
カラスは羽ばたきと共に、羽を鋭い矢のようにして、放つ。
鉄塔から飛び降りると、パルクール、或いは鉄棒のように、鉄塔を巧みに掴んではくるりとひるがえしてを繰り返し、それを軽々と避けるヘビ系リザードマン。
ヘビ系リザードマンはヘビ獣人でありながら、トカゲ系獣人でもあるため、手足もある。
が、手足だけでなく、尻尾も器用に使い、バランスを取ったり、むしろ尻尾で鉄塔を掴んだりしながら、鉄塔を降りて行く。
そうして、重力を活かして、助走を付け、カラスに飛び掛かった。
彼の爪には、牙から分泌される毒がべっとりと塗りたくられており、それはカラスを抉った。
しびれたカラスは、思うように飛ぶことができず、カラスとヘビ系リザードマンは二人、鉄塔の下へ落ちていく。
幸い下は木々が生い茂り、重力を殺す余裕は充分あった。
ヘビは勿論、カラスもなんとかしびれに耐えて、どうにか着地する。
しかしそれもむなしいこの状況、逆転の余地などあるものか。
ヘビはいとも簡単にカラスを押し倒すと、爪を喉元に突き立てる。
そう逆転の余地はなかった。
だが、結論から言えば、カラスが狩られることもなかった。
まるで蜘蛛の糸のように、首の皮一枚繋がる出来事、それはヘビ系リザードマンの口から語られた。
「……アンタ、以前は……に住んでいただろう?」
ヘビ系リザードマンの発する地名に心当たりはあった。
しかし、何故それを知っているのか、カラス獣人は全く覚えがない。
「全く思い出せないって顔だな?
「俺が小さいころ助けてくれただろ?
「路地裏、俺がヒョウ系の獣人に襲われてたとき!!」
それを聞いてようやく思い出した。
それと同時に無性に悔しくなるカラス獣人。
何せ、あの時の弱そうなヘビ系リザードマンが今、自分自身を追い詰めているのだから。
「あっ、今絶対思い出して、『あの時は弱そうだったのに』って思っただろ!!
「覚えておけよ!
「いつか本当に狩ってやるからな!!」
そういいつつも、解毒剤をカラス獣人の胸元に放り投げて、そそくさと去っていくヘビ系リザードマン。
その姿にカラス系獣人は、借りを返すことを決意した。
ある新月の夜、その日は彼らのいる銀河系が川の様に見え、月夜とはまた違った明るさに満ちていた。
「爺さん、また来たのかよ?
「折角命拾いしたってのに……もう今度は容赦しないぜ?」
「よう聞えんなァ?
「もう一度言うてくれるかの?」
ヘビ系リザードマンは呆れた様子でもう一度言わんとするが、今度巧く呂律が回らない。
そして、ふと、脇腹の痛みに気づき、そこを見やれば黒い羽が刺さっていた。
しかも毒が塗られていたようだ。
そのまま、ヘビ系リザードマンは眠ってしまい、目覚めた時にはカラス獣人に爪を突き立てられていた。
「いい夢見れたか?」
「寝起きは最悪だけどな?」
しばしの静寂の後、カラス系獣人は告げる。
「さて、お主に朗報じゃ。
「ワシの弟子になれば、命だけは取らんでやろう。
「どうする?」
そして再度の静寂……。
「……はぁ?
「お前、俺を狩りに来たんじゃねぇの?
「お仲間さんに怒られても知らねぇぞ?」
「それがお主に、借りを返すことばかり考えていたら、いつの間にか地位も立場も捨ててしまっていたわい」
「……どんだけ根に持ってるんだよ……」
「そんなワシに根に持たれたお前さんもとうとう運の尽き、観念せい」
「……あぁわかったよ、そこまでいうんなら弟子になってやるよ」
「命乞いする立場の言い方じゃないな……?」
「ぐぬぬ、弟子にしてください!」
「良い子じゃ!」