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智哉におぶられ、ホテル近くまで来ていた。
特に人目を気にすることなく、智哉とホテルへ入り5,6m程歩くと、受付が無いかわりに、部屋の大よその写真がライトに照らされていた。
様々な雰囲気の部屋だ、どれも装飾が凝っている。
もっと良く見ようと智哉から降りようとしたが。足を支えてくれて
いた手が僕を拘束してそれを許さなかった。
「んっ、俺が出すから、俺に選ばせてくれよ」
「いや……部屋は選んでいいけど、僕だって出すよ」
ホテル一泊は、せいぜい五,六〇〇〇円ぐらいだが、智哉に全部出させるのは気が引けた。
「ん………そか、分かった、じゃ、やっぱ一緒に選ぶか?」
そういって智哉はゆっくりと解放してくれた。
4×4の部屋の写真の下には、それぞれボタンがある。
疎らにライトがついてない部屋の写真があるが、どうやら使用中の部屋らしい。
どれもそれなりに良い部屋で、何度か来ることがあれば、それなりに色々な部屋を堪能したい。そうは思った。
「別にマニアックなプレイする訳じゃないし、これかこれか……これでどうだ?」
マニアック?と言われちょっと想像した。
そうか、別に遊びや泊まるだけに来たんじゃないんだ。
智哉が刺さなかった部屋には、観葉植物が多い部屋や、監獄風の部屋があった。
(そうか……皆その……そういうことする人もいるんだ?)
一瞬、監獄風の部屋が良いなと思った自分が居たが、思いっきり首を振った。
(最初なんだから……普通で良いのだ。)
今智哉が言ったように。
そして、智哉が候補をあげた中から、薄いピンク色の部屋をチョイスした。
「これが良いかな……」
何故だろう、ピンクを選んだのは、心がピンク色になってるからかな?
そう言えば、赤を見て興奮する牛は、ピンク色を見たら逆に穏やかになると聞いたことがあった。
そして、ピンクから感じる暖かくも柔らかいイメージがなんとなく良かった。
「ん? それか、分かった」
そして、智哉は下のボタンを押した。
すると、何かが落ちる物音がした。
物音がした方を見るとへその高さぐらいの所に、鍵があった。
どうやら今出たらしい。
「へぇー、なんか面白いね、楽しみだなぁ、これから」
童心に帰ったみたいになんかわくわくしていた。
そして、智哉の顔を見た僕は……。
少し時間が戻って。
4×4の部屋の写真がはられた場所には、上級者、中級者、初心者向け、様々な部屋があった。
監獄風の部屋もあるが、今はそういう気分で京介を抱けない。
どうせなら純粋に、今までの距離を埋めるみたいに、京介を抱きたい。
いじめたいという欲求とは別のものだ。というより今は無い。
「別にマニアックなプレイする訳じゃないし、これかこれか……これでどうだ?」
数秒考える間もなく京介は指を刺した。
「これが良いかな……」
刺した先は、柔らかく暖かそうな薄いピンクを主体にした、俺の今の感情にも似た部屋だった。
「ん? それか、分かった」
平然を装っているが、良いなと思った部屋が一緒だったのが何故か嬉しい。
今すぐ京介を抱きしめたいぐらいだ。
そして、鍵が取り出し口に排出された。
それを手に取ろうとする時だった。
「へぇー、なんか面白いね、楽しみだなぁ、これから」
無邪気な笑みのお前が……可愛くて……可愛くて
それなのに、なんで今まで手放したんだろう、もう手放したくない。
そんな気持ちがふつふつと沸いていた。
そんな感情に気づく間もなく
「……んっ……」
「んんっ!!んーっ!!……んっ……」
両手で京介の顔を固定して、それから口づけ、固定して身動き出来ない訳だから、その状態でさらに舌をねじ込んだ。
始めの数秒は抵抗したが、すぐに京介は無防備になった。
卑猥な音が互いの耳に響く。それでも行為はやめない……
正確には自制が効かずやめれなかった。
30秒ぐらい俺は心を奪われていた。我に返る間もなく、
1組の人影がホテルに入ってくる気配を感じた。口づけをやめ、京介の手を引く
「…………智哉ぁ……」
主人を求める犬みたいなか甘えた声、人気が無ければ今すぐにでもやりたかった。
ただ、京介を引っ張る身として、その辺はコントロールしないといけない。
「ん?……どした? あ、誰か来るから、話は、歩きながらか、部屋に入ってからな」
「んっ……」
京介は頷くと同時に、俺の腕に体重を少し預けた。
「どした? 嫌になったか?」
「ち、違う、そんなんじゃない」
「うん?……お、ここかな、さっきの部屋は」
京介は、落ち着かない様子でもじもじしている。
今すぐ、あんなことやこんなこと(前戯)したいのを堪え
鍵で部屋のロックを解き、京介を先に入れ、俺も部屋に入った。
そして、ゆっくりと部屋の出入り口の戸が閉まった。
「どした?……お腹痛いのか?」
数秒だけ沈黙があった。
「ぅ……ぅぅ……」
「ん?……」
「智哉ぁ……智哉ぁ…………寂しかった……寂しかった……」
「……そかぁ、ごめんなぁ」
じわりじわりと京介の目から涙が溢れた。
それを可愛いと思うと同時に、哀れでしょうがなかった。
どうすれば良いのか、その場に居合わせてないなら分からなかったかもしれないが。
俺は自然と、京介を抱きしめ。胸を貸した。
「もー……やだからぁ……絶対やだからぁ……離れたくない……」
「……おぅ……俺もだ」
まるで母親を求める子供のように京介は、泣きながら甘えてきた。
ふと、昔、「友達じゃ無くなるかもな」と言った時のことを思い出した。
京介が泣きだしたのは。辛かったのもあるだろうし、現時点の自分に、俺が欠けることを考えられなかったのかもしれない。
だから今泣いてるのは、本当に、俺と離れたくない。
そういう意味なんだろう。
京介は、わがままじゃない、多分いつだって正直なんだ。
こいつは、嘘をつけるほど器用な人間じゃないだろうし。
俺が支えていこう。こいつの泣き顔は、俺だけのもんだ。
そして、俺は何度も京介の背中を優しく撫でた。
京介視点
ようやく、ゆっくりと部屋の出入り口の戸が閉まった。
「どした?……お腹痛いのか?」
いつでも気遣ってくれる、本当に良いダチだった。
そんな気遣いの言葉が、昔、智哉がかけてくれた気遣いの言葉を思い出させてくれた。
『むちゃすんなよ?』
『おいおい、大丈夫か?』
『大丈夫! 俺がついてるからよ!』
『お前の泣き顔は俺だけのもんだからな?』
一つ一つ思い出すたびに、涙が溢れてくる。
「ぅ……ぅぅ……」
「ん?……」
視界は涙でぼやけている。多分智哉は心配そうに僕の顔を見ている。
そんな智哉が……好きで……好きで……たまらない。
「智哉ぁ……智哉ぁ…………寂しかった……寂しかった……」
そして、そんな本心をぶつけながら気づいた。
全力でさらけ出せるのは、やっぱり智哉だけなんだ。
愚痴も弱音も、智哉にしか僕は吐けないんだ……っと。
「……そかぁ、ごめんなぁ」
やがて、ゆっくりと抱きしめられた。
暖かい、智哉の匂い、汗や泥の匂いもするけど、この匂いが大好きだ。
「もー……やだからぁ……絶対やだからぁ……離れたくないからぁ!……」
女々しいかもしれない、でも智哉は、智哉だけは笑わずに全部真剣に受け止めてくれる。いつだって、そうだったから。
「……おぅ……俺もだ」
結局、言葉にならない言葉を愚痴りながら、ラブホテルの部屋の入ったところで僕は、ずっと智哉に励まされていた。
時間が経てばたつほど、智哉も僕のことが真剣に好き(Hをしたいだけじゃない)ということがわかり、胸がほっこり暖かくなっていった。
智哉がいれば……辛い日常も耐えれるし、どんなことも頑張れる気がした。
いつか来るかな?智哉が僕の前で泣いてくれる日。
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