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  グレーの瞳は近くで見ても綺麗だった。興奮に色濃くなっているのを感じる。両手を伸ばして耳に触れて、そのまま黒い髪に指を差し込む。リュヌよりも長く肩につく長さの髪は、上半分が括られたハーフアップだ。括っている紐を見えないまま取ろうとすると、意外に繊細な手触りの髪飾りがカシャ、と落ちた。

  「あ、なんかついてた?ごめんなさい」

  「いい。それより……――抱くぞ」

  

  唇を合わせる瞬間、はっきりと告げられて身体が燃えるように熱くなった。初めてのキスもナージに与えてしまったことに気が付いて、まだ見ぬ婚約者にざまあみろといい気分になる。

  二度目のキスは想像していたよりも……身体を高める効果を伴っていた。従順に口内を明け渡すと、分厚く長い舌がリュヌの口の中を余すところなく舐める。

  

  「んっ。……んんぅ……」

  息が苦しい。たまにピクッと反応してしまうくらい気持ちいい場所があって、鼻から甘い声が漏れてしまう。

  特に顎の裏はリュヌを溶かした。ナージの舌が撫でるだけで、知らない快感に腰が震える。

  舌を絡めて吸われると根本がジンと痺れた。身体が発情し始めたのを感じる。ナージの興奮に当てられているのだ。

  「ん、あっ……にゃあっ!?」

  気づけば服がはだけられ、身体の前面が撫ぜられていた。リュヌよりも大きくゴツゴツした手は熱くて、思いのほか気持ちいい。剣を身につけていたので闘う男なのだろう。その無骨そうな指が、器用に小さな乳首を摘む。キスの合間に変な声を出してしまった。

  そこは弱いのだ。自分で触れても気持ちいいのに、初めて他人から与えられる刺激はリュヌをさらに蕩かせる。

  もうスイッチは入っている。完全に発情してしまえば、本来の目的を遂行しようがしまいが分からなくなってしまうと思い、リュヌはくるんと身体を反転させナージの下から抜け出した。

  「っは……綺麗だな……」

  身体を起こしたナージはリュヌを改めて見て思わず言葉を漏らした。ランプより、天窓から差し込む月明かりの方がリュヌには似合う。

  マントが取れたことで月色の耳も尻尾も見えている。その短い髪も同様に輝いてリュヌの美貌を彩っていた。大きな目は吊り目がちで、その勝気な顔立ちでさえもリュヌの美しさを強調するものでしかない。

  ナージが見惚れ呆けているのをいいことに、リュヌはナージを押し倒した。その身体は厚く重くて、後ろ手を付かせることしかできない。

  それでも充分だ。ナージの前を寛げ、半勃ちで重さのあるペニスを取り出す。こっちまで褐色だ。リュヌは前かがみになって顔を近づけた。

  「ん〜……雄の匂いがする……」

  「おいおいおい。嘘だろ……?」

  「だいじょうぶ。僕に任せて!」

  これはたくさん練習したし、及第点も貰えている。挿れる側にはこれが一番効くらしい。道具を使って練習したときより、なんだか大きいけど……これも個人差だろう。

  リュヌはナージと視線を合わせ、見せつけるように口の中へと迎え入れた。色仕掛けのつもりで尻尾をうねらせる。視覚情報が大事と聞いたので、なるべく身体を伏せ顔を起こす。

  全体に唾液をまぶす頃にはペニスは見上げるほどに成長していた。こんなの到底リュヌの小さな口には入らない。先端だけ咥えながら、その幹は唾液の滑りを利用して手で扱くことにする。

  「はぷっ。ん……んちゅ……」

  「絵面……やべー……」

  つるんと丸い亀頭で口の中がいっぱいになる。先ほど舌でくすぐられた場所に当たると、それだけで快感を拾って頭の奥がじんと痺れる。見た目は凶悪なくせに、びくびくとたまに震えるのが可愛らしいとさえ思う。

  

  図らずもこの行為に夢中になりそうだったが、リュヌは目的を忘れてはいない。トラウザーズを下履きごと下ろし、ポケットから取り出した錠剤型の薬を自分の後孔につぷと押し込む。

  王族が使用する浄化兼潤滑剤だ。小さいからそれほど違和感はないが、溶け出すときにしゅわしゅわと広がっていく感覚はちょっと苦手。

  案の定中でしゅわしゅわが始まり、高く上げた腰をくねくねと動かしてしまう。尻尾の先もぴくぴく動いた。

  「な、なにを……?」

  「んゅ、ンび……んっ」

  言葉は怯えるように震えて聞こえるが、口の中のペニスはびくんと跳ね苦い先走りが出てくる。なにに興奮したのだろう?

  準備って言ったつもりだけど、伝わっていないかもしれない。薬剤が溶けきったのを感じて、右手を自分の尻に向けて伸ばす。瞬きもせずリュヌの行動を見ているナージの目は、もはや血走っているように見えた。

  汗でしっとりとした双丘のあわいに指を差し込むと、発情のおかげか練習時より柔らかい。蕾の中心に中指をあて少し力を込めるだけで、熱い肉壁に吸い込まれた。

  「あっ。んーーー…………」

  中は粘性のある潤滑剤のお陰で潤っている。いつもより断然気持ちよくて、口が疎かになってしまいそうだ。リュヌは快感を追わないよう意識しながら指を増やし、そこを広げていった。

  受け入れる側の閨教育はそういうものだ。自分ですべて準備し、夫に手間を取らせず満足してもらうよう何度も言われた。

  実践は思っていたよりも大変だが、思っていたよりも興奮を煽った。目の前のペニスが如実に反応を返してくれるし、口淫も、自分で解す行為さえも逐一見られている。

  リュヌが一生懸命教えられたことを実践していると、ナージがリュヌの頭にそっと手を置いた。

  「触っても、いいか……?」

  「ん」

  返事の代わりにこくんと頷く。――耳の間に置かれた手はおそるおそる左右に動いた。耳を潰さないようそっと、髪の流れに沿って撫でられる動きは優しい。

  この手は好きだ。うっとりと目を閉じ、耳も撫でやすいよう寝かせてしまう。リュヌの反応にナージも要領を得たようで、何度も頭を撫でてくれた。

  猫族の耳が珍しいのか、そこだけそろそろと確認するように触れる。皮膚の薄いところは敏感で、ちょっと身構えてしまう。逆に根本の部分は気持ちよくて喉を鳴らしてしまいそうだった。

  そのままゴロゴロと甘えてしまいそうになり、リュヌはハッとした。次の段階へ進もう。ついに交尾だ。

  リュヌの前腕ほど大きいペニスは準備万端に見える。エラが張ってカッチカチに硬いが、猫科の獣人のようにトゲもないし、痛くはないだろう。……たぶん。

  リュヌはドキドキしながらナージに尻を向け、四つ這いで「ど、どうぞ」と告げた。もう入れて出すだけだ。処女を失って、自分は人間の国へと嫁に行く。

  ナージはなかなか来なかった。ただ、身を焼くような視線は振り返らずとも感じる。

  いつの間にか全身を緊張が包んでいた。ナージがリュヌの白い尻に手を置く。いくら待っても貫かれることはない。

  「……リュヌ」

  「ナージ、はやくっ」

  「リュヌ、こっちを向け」

  リュヌが振り返ると、ナージの姿はゆらゆらと揺れた。目に涙の幕が張っているのだ。

  ころ、と横に転がされ長い尻尾を両手でぎゅうと抱きしめる。ちゃんと息をしろと言われて、浅くなっていた呼吸を意識して深めた。

  緊張と未知への恐怖がナージに伝わってしまったのだろう。邪魔にならないよう立てていた尻尾も、いつの間にか足の間をくぐって胸に抱えていた。これじゃ挿れられなくて当然だ。

  情けない……。最後の悪あがきだと意気込んできたのに。

  「ご、ごめん」

  「大丈夫だ。落ち着け」

  「……ははっ、こんなのじゃ婚約者にも呆れられちゃうな」

  ナージはリュヌの正面に身体を横たえ、その大きな身体で包み込むように抱きしめてきた。緊張で冷えていた身体に、熱が伝わる。

  「大丈夫だ。見目だけじゃなくてこんなにも可愛い性格をしていたとはな。誰だって夢中になるだろう」

  「どこが……。閨でさえ満足させられなかったら、僕はただの置き物だ。今までも、これからも」

  「無鉄砲で予測がつかなくておもしろい。閨でこれだけ動けたら大したもんだ。最後まで一方的に完遂されたらどうしようかと思ったぞ」

  リュヌは嫌だと誤魔化しつつ、不安だったのだ。人間の国で獣人の自分が受け入れられるか。もし受け入れられたとしても、見た目しか評価されたことのない自分が、このさき一生置き物として生きていくのか――

  

  ナージの手がリュヌの背を撫で下ろす。尾の根元に辿り着くと、その境目をなぞるようにくすぐった。

  「んなぁっ」

  「怖がっていたのも……目が眩むくらい可愛いらしかった」

  「……ほんと?」

  慣れた男の余裕というものか。ナージがそう言うのならこれでよかったのかもしれない。嬉しくて心臓がトクトクと高鳴った。リュヌは目の前の男に好かれたいと本能的に思っている。

  ナージの胸から顔を上げると、グレーの瞳と目が合う。まるで愛おしいものをそこに映しているみたいにフッと目を細めるものだから、顔に熱が上る。

  近づいてくる顔を感じ、素直に目を閉じた。どうしよう……この男が好きだ。

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