「……アニス。目を開けろ」
ぐったりと顔をうつむかせていたアニスが顔を上げると、
「……はい、ご主人様」
その瞳にはカイルと同じ黒紫色の光が宿っていた。
アニスの純粋さを写し取ったような、澄み切った青い瞳は、今や主人の意志を映し出すためだけのスクリーンと化していた。
「どうだ? 生まれ変わった気分は」
「……はい、ご主人様……とても気分が良いです」
「くくく、そうか……アニス、質問に答えろ。お前は誰だ?」
「……はい。私はご主人様の僕……ご主人様の目であり、耳であり、端末です」
「お前の仕事は何だ?」
「ご主人様の素晴らしさを、国内全土に広めることです」
カイルの問いかけに淡々と答えるアニス。
その機械的な様子に、カイルも満足そうに微笑む。
(注ぎ込む魔力をコントロールすることで、リンドのように従順な犬にすることも、アニスのように心を持たぬ人形にすることもできる……なるほど)
「アニス。これからお前に仕事を与える。与えられた仕事をしっかりとこなせ。俺に選ばれた、特別な存在であるお前にしかできない仕事だ」
「はい……私はご主人様より与えられた仕事を完ぺきにこなします。これはご主人様が選らんだ特別な私にしかできない仕事です。リンド様でもこの仕事は不可能です。なぜなら私は、特別だから」
抑揚のない声でそう告げるアニスに対し、カイルは不敵な笑みを浮かべる。
「ふふ。随分と言うようになったじゃないか。素直なのは素晴らしいぞ……良い後輩ができて良かったなぁ、リンド」
「……ふんっ!」
不機嫌そうに鼻を鳴らすリンドに対しアニスは容赦なく。
「リンド様がお怒りになるのも無理はありません。なぜなら私は特別な存在。リンド様とは違うのです」
「っ!」
「はははははっ! いいねぇ!」
二人を楽しそうに見つめるカイルの右目には、怒りをあらわにするリンドの表情が写っていた。
アニス……端末を介した視覚の共有、ならびに聴覚の共有に成功したカイルは、
(これで各地の情報取集も可能になった……あとは)
と、次の一手についての思案を巡らせていた。