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姫と騎士

  ※鳥の鳴き声

  ※素振りをする騎士

  やっぱり、ここにいた。

  ……ふふ、どうしてここにって……ここに来れば貴方に会えると思ったの。

  姿が見えないときは、いつもここで剣の稽古をしてるでしょ。

  ※風の音

  いい天気ね。風も気持ちいいし。

  城内は息がつまるから長くはいたくないわ。

  ドレスも。何も予定がないのだったら、もっとラフな格好かズボンがはきたいわ。

  ……ん、どうしたの?随分不服そうね。

  ……ふふ、なんでもない事ないでしょ。どれだけ一緒にいると思ってるの。

  懐かしいね。昔はここでよく、一緒に剣の稽古をしていたわよね。

  あの時は、女性らしさなんてなくて、ドレスなんて貴方の前では一度として着なかったわね。おかげで、あって日が浅かった私のことをずっと男と思っていて……ふふっ……女と分かった時のあの慌てよう……ふふ……

  ごめんなさい。

  そうやって、感情が表情にしっかり出るところ、私好きよ。

  ……それに、羨ましいと思う。

  ……ん?さぁ?昔は私の方が強かったけど、今は貴方の方が強いでしょ。近衛騎士団の団長様。

  ……嫌味じゃないわよ。私たちはもう、小さな子供じゃないんだから。

  責任を問われる大人。自由なんてものは、もうないの。

  ……そうね。窮屈なのは嫌。姫だから、とか。騎士だから、とか……

  私は私。生まれた時に与えられた役職は、私はいらないわ。

  誰も私のことなんて見てない。みんなが見てるのは私の役職。だから、彼も好き勝手にしてるのよ。

  ……いいか悪いかで言われたらよくないわね。

  婚約者様は平民のお姫様に夢中。私は、覚えのない嫌がらせの容疑者にされて、どんなに否定しても聞く耳を持って来れない。

  近いうちに婚約破棄されるわね。

  ……んー?落ち着いてるって?まぁ、別に彼のことが好きだったわけじゃないしね。いわゆる政略結婚だし。

  それに、きっと痛い目見るのは彼の方だしね。

  ……言ったでしょ。私たちは責任を問われる大人。婚約者がいながら他の女性と仲良くし、婚約者をないがしろ。これだけ聞いて、貴方はどっちが悪いと思う?

  ……彼も貴族。私との結婚は家のためのものなのに、彼はそれを分かってない。

  まぁ彼が望むなら婚約破棄するわよ。いや、こっちから願い下げよ。あんな男のために何かをするのはごめんだわ。

  さてと。そろそろお父様にこのことをお話ししないと。私はお城に戻るわね。稽古頑張って。

  ……あ、そうだ。

  ねぇ。私ね、お父様に一つ、人生初めての我儘を言おうと思っているのだけれど、なんだと思う?

  ……ふふ、ちょっとは考えるそぶりを見せてよね。

  ……私ね、結婚相手は貴方がいいって言おうと思うの。

  ふふ。それじゃあ、私は行くわね。

  んー?冗談で言ってると思うのかしら?

  私は、貴方には一度として手加減や嘘なんてついたことないわよ。

  私の行動も言葉も、貴方に対しては全て私の本音よ。

  【完】

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