「フー・・・」
「・・・」
──────エロい。
クロ[[rb:兄 > にぃ]]と露天側の風呂を楽しんだ後、オレの提案でサウナに来た。
サウナには先に[[rb:優 > ゆう]]さんと猿が居て、オレたちは2人の向かい側に座った。
クロ[[rb:兄 > にぃ]]のお陰で気持ちも大分落ち着いていた。さっきまでのオレなら猿の顔を見ただけでサウナからUターンしていただろう。もちろんクロ[[rb:兄 > にぃ]]も連れて。
歳下にいちいちイラついてしまうのも情けない話しだけど、こっちはクロ[[rb:兄 > にぃ]]と温泉に入れると思ってすごく楽しみにしていたんだ。それに水を差されたら流石に我慢出来ない。
オレ、ブラコンだし。
でも、ちょっとその・・・ブラコンの限度もわきまえた方がいいのかもしれない。
「ん・・・はぁ〜・・・フー」
「・・・」
さっきからクロ[[rb:兄 > にぃ]]がエロい。なんかもう色々全部。
オレと違って細身で、しなやかなボディライン。それだけでも十分エロいのに、そこにクロ[[rb:兄 > にぃ]]の柔らかくて滑らかな毛が濡れて張り付いて、一層それを際立たせている。
耳を垂れ下げて、表情も火照ったような感じで、暑さに耐えている様子がすごくエロい。
「フー・・・・・・フー・・・」
「・・・・・・」
思えばクロ[[rb:兄 > にぃ]]は昔からじっとしてるのが苦手なタイプだった。
今はもう大人っぽくて頼れる兄ちゃんって感じだけど、小さい時は目を離した瞬間に消えてるような人だった。
最後に一緒にお風呂に入ったのもそのくらい昔だが、湯船に浸かるっていうのがそもそも無理なタイプだった。
100数えてから出なさいって言われて、何言ってるか分からない速度で数えてから跳ねるように風呂から上がるクロ[[rb:兄 > にぃ]]をよく覚えている。
置いて行かれたくなくて必死で数えてたけど、30数える頃には忍者みたいに居なくなってた。
オレはいつもクロ[[rb:兄 > にぃ]]の変わり身の術で残されたアヒルさんと一緒に残りの70を数えていた。
もうそんなクロ[[rb:兄 > にぃ]]の面影はほとんどなく、大人びている。
「ん・・・・・・はぁ〜・・・」
「・・・・・・ッ」
エロいヤバいヤバいエロい!
クロ[[rb:兄 > にぃ]]は男だし、胸も無いけど、この身体と表情と声はエロ過ぎる!!
確かにオレのタイプは猫だけど、兄ちゃんに欲情するのは倫理的に色々ヤバすぎる。
・・・そうは思いつつも、欲の混じった目で隣のクロ[[rb:兄 > にぃ]]をチラチラ見てしまう。
元カノの[[rb:香澄 > かすみ]]も猫だった。
オレより毛が柔らかくて、華奢で、身体も柔らかくて、抱きしめるとすごく気持ちいい。
クロ[[rb:兄 > にぃ]]も毛が柔らかくて、華奢で、身体も柔らかい・・・。
前に抱きついたことあるけど、すごく気持ち良くて、クロ[[rb:兄 > にぃ]]に止められるまで離せなかった。
今、手を伸ばせばクロ[[rb:兄 > にぃ]]の肩を抱ける。
裸で抱いたら、きっともっと柔らかくて、気持ち良くて、クロ[[rb:兄 > にぃ]]は少し驚いて、火照った顔を照れたような背けて・・・。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!
妄想膨らみ過ぎだ。膨らみ過ぎてちょっと膨らんでる。ヤバい。
オレは急いでクロ[[rb:兄 > にぃ]]から目を逸らして、ぎゅっと目を瞑った。
風呂で開放的になって血行がよくなったせいだ。それに昼前でお腹も空いてる。お腹が空いてると性欲が高まるとか言うし、間違いなくそのせいだ。
汗かくのは気持ちいいけど、正直もうサウナから出たい。
でも、自分で誘っておいて、しかも目の前の2人のより後から入ったのに、自分から先に出るなんて恥ずかしくて出来ない。
オレは目を開けて目の前の2人の様子を見た。
・・・[[rb:優 > ゆう]]さん・・・やっぱデカすぎるだろ・・・。
負けた気分になって、ちょっと落ち着いた。
なんか[[rb:優 > ゆう]]さんには事ある毎に敗北してる気がする。[[rb:優 > ゆう]]さんがきっかけで筋トレするようになって、そこそこ筋肉はついたと思うけど、[[rb:優 > ゆう]]さんには遠く及ばない。
ここで[[rb:優 > ゆう]]さんより先にサウナを出たらまた敗北になる。
・・・幸い[[rb:優 > ゆう]]さんのを見て落ち着けるのは分かった。クロ[[rb:兄 > にぃ]]のエロい息遣いがやけに鮮明に耳に響くが、[[rb:優 > ゆう]]さんのがあればいける。
絶対先に出たらダメだ。必ず耐えきってみせる。
オレは決意を固めて、姿勢を正した。
「時間になったから出る。お先に」
そう言って猿が立ち上がると、[[rb:優 > ゆう]]さんもそれに続いて立ち上がった。
よし、勝った!
オレたちの方が後から来たから別に勝ちでは無いが、これでやっと出れる。
オレは自分の右隣にあるドアから出ていこうとする2人に耳だけ傾けて、ほっとした気持ちで見送った。
しかし、猿が出た後、[[rb:優 > ゆう]]さんの気配がドアの前で止まった。
「・・・[[rb:柴 > しば]]くんのエッチ」
「えっ!?」
ビクッとしてドアの方を向くと、[[rb:優 > ゆう]]さんの尻尾だけがオレに別れを告げてするりと出て行った。
[chapter:柴後輩とクロ兄ちゃん]
「ふぅんにゃは〜気持ち良かったぁ〜」
「そうだね」
ベンチが並ぶ休憩スペースで、足を広げて座る上機嫌の俺に[[rb:優 > ゆう]]が相槌を打ってくれる。
「サウナってあんな風に楽しむもんだったんだな。今まで全然知らなかったよ」
「気持ち良かったでしょ?」
「おう!」
今までサウナは汗をかくことを楽しむもんだと思っていたが、それはサウナの楽しみ方のほんの一部だった。
[[rb:優 > ゆう]]たちが出てすぐに俺と[[rb:玄來 > げんき]]もサウナ出たのだが、サウナの隣の水風呂に先に出た2人が浸かっていた。
水風呂に入らないといけないほど長くサウナに入っていたのかと問うと、サウナに入ったタイミングは俺たちとほとんど同じだったらしい。
疑問符が消えない俺と[[rb:玄來 > げんき]]を見かねた様子でユズが説明してくれたのが水風呂から“ととのう”に至るまでのプロセスだった。
[[rb:優 > ゆう]]に手招きされて[[rb:玄來 > げんき]]は入ったのだが、俺はなかなか入る気になれず、[[rb:優 > ゆう]]にお姫様抱っこされて無理矢理入れられた。不純な思考など消し飛ぶような冷たさで、思わず[[rb:優 > ゆう]]にしがみついてしまった。
[[rb:玄來 > げんき]]にとっても相当冷たかったのか、口を開けて固まった表情でこっちを見ていた。
・・・もしかして[[rb:優 > ゆう]]にしがみついた俺を見て引いてたとかじゃないよな。
そうだとしたら兄ちゃん的にかなりアウトだが、あのヘヴン状態を体験したら[[rb:玄來 > げんき]]の頭からもそんな記憶消し飛んでいるだろう。
そのくらい“ととのう”を知った瞬間はヤバかった。
露天のベンチに座り、外の心地よい空気に身をさらしていたあの時間は、全身浄化されて天に召されるような心地だった。
俺、サウナーになっちゃったかもしれない。
「ねえ、このワン公どうしたの。ここの椅子ってこういう使い方していいわけ?」
3人並んで座っている1つ前のベンチで、[[rb:玄來 > げんき]]が1人、前を向いて横になっている。
風呂場でも思ったが、[[rb:玄來 > げんき]]は普段こんなお行儀悪いことはしない。
別にこういう使い方は想定されていると思うのだが、[[rb:玄來 > げんき]]の性格ならしないと思う。
まだユズのことで何か思うことがあるのだろうか。
耳も尻尾も重力に負けて力無く垂れ下がっている。
「[[rb:玄來 > げんき]]〜、どうかしたのか?」
「ううん、のぼせただけ。大丈夫だよ」
うん。これきっとめんどくさいやつだ。
耳が垂れ下がってる状態で“大丈夫”っていう[[rb:玄來 > げんき]]は大体頭の中がめんどくさい事になっている。
本人にとっては大事だったりするのだろうが、俺からしたら悩む程のものでは無い事がほとんどだ。
外見は陽キャのノンケだが、昔から繊細なヤツだから、そういう所は変わってないらしい。
「お、そうだ[[rb:玄來 > げんき]]! 牛乳飲もうぜ! 風呂上がりに飲もうって言ってだろ?」
俺がそう言うと[[rb:玄來 > げんき]]の耳がピクリと動いた。
「何種類かあるよ。自販機はあっち」
[[rb:優 > ゆう]]が自販機の方向を指差して教えてくれる。
「そうか! じゃあ皆で一緒に行って選ぼうぜ! ユズも好きなの選んでいいからな!」
「え、別に俺は・・・」
「俺、いちご牛乳」
「お前は自分で買えよ!?」
俺たちは[[rb:玄來 > げんき]]を起こして4人で自販機に向かった。
◆◆◇◇◆◆
「いいの?」
「この銭湯に連れてきてくれたの[[rb:優 > ゆう]]だしな。これくらいはおごってやるよ」
「ありがと」
俺は[[rb:優 > ゆう]]にいちご牛乳を手渡した後、最後に自分の牛乳を買った。
牛乳ビンはよく冷えていて、表面はすぐに結露した。
ちなみに[[rb:玄來 > げんき]]が選んだのはコーヒー牛乳、ユズはフルーツ牛乳だ。
俺もフレーバー付きの牛乳になびきかけたが、やっぱりここはプレーン牛乳で“ぷはー”したい。
「よーし飲むぞお前らー!」
俺の号令で皆ビンのフタを開けた。
この紙のフタも趣があってワクワクする。
俺はフタの裏をペロリと舐めて自販機よ横のゴミ箱に捨てた。
「・・・あんたそのフタ舐めんの?」
「え!?」
ユズがジト目でこちらを見ている。
[[rb:玄來 > げんき]]もなんかちょっと気まずそうにこちらを見ている。
「な・・・舐めちゃ・・・ダメ?」
「ダメじゃないけど美しくないんじゃないかなー。人として」
「んなっ!?」
紙のフタの裏をペロリするのもビンの牛乳の醍醐味じゃないのか? 俺が間違っているのか?
様子からして[[rb:玄來 > げんき]]も舐めない派らしい。
[[rb:玄來 > げんき]]は人がやることには基本寛容だが、自分が恥ずかしいと思ったらやらないみたいなスタンスのやつだ。だからユズみたいなことは思っていないだろうが、[[rb:玄來 > げんき]]にとっては恥ずかしいカテゴリーのことであるというのは間違いない。
・・・ダメ・・・なのか?
絶望した俺は願うように[[rb:優 > ゆう]]の方を向いた。
「ん?」
そこにはいちご牛乳のフタをペロペロするジト目のデカい虎さんがいた。
俺はマジで[[rb:優 > ゆう]]が天使に見えた。
◆◆◇◇◆◆
「スーパー銭湯ってなんでもあるんだな。本当に旅館の1階と2階だけを切り取ったみたいだ」
俺たちはスーパー銭湯の中の食堂で料理が来るのを待っていた。
最初からこの食堂で昼飯を食べて帰ろうということになっていたので、昼前に来たというわけだ。
朝風呂と言うには少し遅いが、人もそれほど多くなく快適だった。
「チケット買えば岩盤浴とかもあるよ」
「マジかよ、旅館よりすごいかも」
スーパー銭湯は少し見回しただけでも目移りするくらい色んなものがあった。
今居る食堂はもちろん。売店に本格的なマッサージコーナー、少しレトロな雰囲気のゲームコーナーに畳張りの広いフリースペース・・・。
100円で出来るマッサージ機のコーナーもあって、ユズ以外は全員利用した。
マッサージチェアの方は俺には刺激がくすぐったくて始終変な声が出てしまった。[[rb:優 > ゆう]]も[[rb:玄來 > げんき]]も普通に気持ち良さそうに座っていたので筋肉量とか関係あるのかもしれない。
ちなみに、ユズがニヤニヤしながらマッサージ機に翻弄される俺を動画に撮っていたので全力でスマホ奪って消した。
足ツボマッサージ機だけは気持ち良かった。
「なんかお酒飲みたくなっちゃうな」
「いいんじゃない? 俺はバイクだから飲まないけど」
「い、いいと思うよクロ[[rb:兄 > にぃ]]! クロ[[rb:兄 > にぃ]]が飲むならオレも付き合うし!」
何故か[[rb:玄來 > げんき]]は急に目をキラキラさせて俺にお酒を勧めてくる。
「俺らだけ飲んでも楽しくないしな。また今度にするよ」
「そっか・・・」
[[rb:玄來 > げんき]]は分かりやすくシュンとして耳を垂れ下げた。
「[[rb:玄來 > げんき]]が飲みたいなら飲んでもいいんだぞ?」
「い、いや! 大丈夫! 今度にするよ!」
飲みたいなら我慢しなくてもいいのに。
[[rb:玄來 > げんき]]は必要以上に空気を読むヤツだから俺が進んで付き合ってやったほうが良かったのかもしれない。
銀で飲んでから自分でお酒を飲むことは無かったが、今度晩酌にでも誘ってみようか。
「ユズも18だからあと2年は我慢だしなー。あ、いや、あと1年とちょっとくらいか?」
「俺今19ですけど?」
──────ん?
「・・・お前高校ダブってたのか?」
「ちっがーう!!! なんでそうなるわけ!? もう誕生日きてんの!! 一昨日!!」
「はぁぁぁああ!?」
はぁぁぁぁぁあああ!?!?
「なんで言わないんだよ!!」
「なんで言う必要があるわけ」
「言えよ!!」
「聞いてよ」
「うぐッ・・・!?」
なんか1年生の時にも[[rb:優 > ゆう]]と似たような会話した気がする。
[[rb:優 > ゆう]]だけ何故か俺の誕生日把握しててプレゼントもらって、ちょっと悔しい思いをした。
対面に座る[[rb:優 > ゆう]]を見ると思いっきり顔を横に逸らしている。
こいつ今絶対笑ってるな・・・。
覚えたヤツの誕生日は絶対忘れないのに、いつも自分から誕生日を聞くという思考に至らない。ちくしょう。
俺が苦虫を噛み潰していると、その様子を見かねて横から[[rb:玄來 > げんき]]のフォローが入る。
「気にすることないってクロ[[rb:兄 > にぃ]]。ほら、クロ[[rb:兄 > にぃ]]って自分の誕生日あんまり好きじゃなかったしさ、しょうがないって」
事実だがフォローにはなってない。
「それに名前呼び嫌いな原因だって、そ・・・」
「げ〜ん〜き〜?」
「は、はい! ごめんなさい!」
俺は[[rb:玄來 > げんき]]の言葉を圧で制したが、それを聞いていた[[rb:優 > ゆう]]がスッとこちらに向き直った。
「何それ気になる」
「気にならんでいい」
「教えくれたら気にならなくなるよ」
「教えません」
「[[rb:琉貴 > るき]]のケチ」
「名前コラ」
[[rb:優 > ゆう]]が少しムッとしてるような気がするがほっとこう。今は可愛い後輩の誕生日をすっぽかした穴埋めをしなければ。
去年教育担当した[[rb:奏磨 > そうま]]にはプレゼントをあげたのにユズだけ無しなんてそれこそ無しだ。
しかし、誕生日を過ぎてプレゼントを渡すのも野暮ったい・・・。
かくなる上は・・・。
「よし、代わりに今日一日ユズのお願いを聞いてやる。それが誕生日祝いな」
「えっ!?」
「お?」
何故か[[rb:玄來 > げんき]]がいの一番に反応する。
「もちろん常識の範囲でだぞ。全裸で大学内走り回れとか言われても無理からな」
「なんだガッカリ」
「鬼かお前は!」
「猿ですけど?」
なんか既視感あるなこのやり取り。
「お待たせいたしました」
羊のおばちゃんが料理を持ってきてくれて、テーブルにそれぞれ注文した料理が並ぶ。
俺は山かけ丼セット、[[rb:玄來 > げんき]]が天ぷらそば、ユズが松花堂だ。
[[rb:優 > ゆう]]のはよく分からん。なんだそれは。島か。
「じゃあ、このあと予定無いでしょ? ちょっと付き合ってよ」
「おう、いいぞ。どこ行くんだ?」
ユズは不敵な笑みを浮かべながら、少し待って口を開いた。
「俺んち」
[chapter:柴後輩とクロ兄ちゃん]
兄や父と魔界の覇権争いしたり、相棒ポジション狙ってくるコソ泥や弟を心の中でぶっ飛ばしたり、モンスター配合したりしてて遅くなりました。
所々で[[rb:玄來 > げんき]]が何を考えていたかは過去作から想像して頂けるとm(_ _)m
【定期】
Twitter(X)にて #柴クロ小ネタ 更新中です。
物語と合わせてお楽しみ頂けると嬉しいです。
「執筆中」やら「〜次のお話しUPします」みたいなことも呟いてるので、生存確認されたい場合は覗いてみてください。
いつも柴クロをお読み頂きありがとうございます。
蒼空ゆうぎ