サワ・・・サワ・・・
「んっ・・・」
俺の手が撫でる度に[[rb:玄來 > げんき]]は気持ち良さそうに声を漏らす。
1度撫でるだけでも大量に出てくる。
俺は手に付いたソレをキレイにして、また[[rb:玄來 > げんき]]を撫でる。
「オレ、いつも量が多いから。1人でシてるとキレイにするの結構大変なんだよね」
「・・・」
撫でて、撫でて、キレイにして、また撫でて、撫でて─────。
俺は平静を装いながら、優しく、丁寧に“作業”を繰り返す。
「んっ・・・あぁ〜・・・フー・・・」
「・・・」
俺よりもずっと筋肉質な[[rb:玄來 > げんき]]の身体。テニス部時代よりもっとたくましくなっている。
そんな[[rb:玄來 > げんき]]の身体をこんなに近くで、好きなだけ見れて、好きなだけ触れて・・・。
お酒の匂いに混じって、健やかな汗の匂いと[[rb:玄來 > げんき]]の匂いがする。その匂いがふわりと香る度に、[[rb:玄來 > げんき]]の高めの体温も感じる。
理性は・・・限界に近い・・・。
「気持ちいい・・・スゲー気持ちいいよクロ[[rb:兄 > にぃ]]。1人でするより何倍も」
その言葉に、俺はピタリと手を止めた。
「頼むから・・・」
「ん?」
頼むからいちいちエロく言わないでくれぇぇぇぇ!!!
俺は心の中で絶叫した。
◆◆◇◇◆◆
「あぁ〜・・・はぁ〜・・・」
「・・・」
[[rb:玄來 > げんき]]はパンツ一丁でソファにうつ伏せになり、気持ち良さそうな声を出している。
俺は[[rb:優 > ゆう]]に誕生日プレゼントでもらったグルーミンググローブで[[rb:玄來 > げんき]]をブラッシングしてやっている。
“オレ、もうこんなんなっちゃってるんだよ”
そう言って見せられた上半身とシャツの裏側は抜け毛が目立っていた。
俺の換毛期はほとんど終わったが、[[rb:玄來 > げんき]]は換毛期の真っ最中だった。
柴犬の[[rb:玄來 > げんき]]は換毛期の抜け毛の量が人一倍多く、1人でやるのは苦労していたようだ。
昨年はそのシーズンに(主に俺のせいで)色々あって手伝ってやれてなかった。
「へへへ、やっぱり気持ち良くて静かに出来ないや」
「・・・」
タチが悪い。酔った[[rb:玄來 > げんき]]はマジでタチが悪い。
毛皮の上から触っても筋肉の形が分かる[[rb:玄來 > げんき]]のたくましい身体を、俺はビーチでオイルを塗るかの如く撫で回している。これだけでもヤバいのにエロい声で耳まで責めてくる。
俺はお前に恋しちゃってるんだぞ。それなのに無邪気にこんなことさせるノンケってどうなんだ。
10:0で俺が悪いのは分かってる。でもダメだろ。・・・でもダメだろ!
こっちは“タチ”が良くなり過ぎてたまったもんじゃない。溜まってもいるけどな!!
「クロ[[rb:兄 > にぃ]]」
「なんだよ・・・」
そろそろ終わっても良いだろと思っていたところで、[[rb:玄來 > げんき]]が俺を呼んだ。
「こっちも」
「は?」
そう言って[[rb:玄來 > げんき]]は巻き尻尾をゆっくりとフリフリ動かした。
うつ伏せのまま流し目で俺を見て、妖艶な笑みを浮かべている。
酔った[[rb:玄來 > げんき]]は本当に・・・本当に・・・。
──────────タチが悪い。
[chapter:柴後輩とクロ兄ちゃん]
「・・・二日酔い?」
いつも通り大学の講義室。隣の席の[[rb:優 > ゆう]]が俺に声をかける。
[[rb:優 > ゆう]]は机にベッタリと突っ伏す俺の首の後ろを片手で摘んで、ムニムニして遊んでいる。
そういえば[[rb:優 > ゆう]]がハンマー投げで凄かったって話を聞いた時、“片手で俺を持ち上げられるか?”って聞いた事あったなぁ。
“出来るよ”って言うから、てっきり腕にぶら下がるのを想像してたのに、首の後ろの皮掴まれてぶら〜んってなったの思い出したわ。
あれはさすがに雄の尊厳どっかいった感じしたな・・・。
おもろかったから良いけど。
「[[rb:玄來 > げんき]]が・・・」
「やっとしゃべり出した」
「[[rb:玄來 > げんき]]がギルティーで精神疲労がマッハ・・・」
俺だって酔ってるのに、誘うみたいに尻尾振ってくるし。尻尾のブラッシングしてる最中もエロい声出すし・・・。
それだけだったらまだギリギリ良かったよ。良くないけど。
背中側だけかと思ったら、今度は仰向けになりだして・・・しかも・・・その・・・。
“なっ!! おまっ・・・!!”
“クロ[[rb:兄 > にぃ]]の手つきがエッチだったから”
唯一布が残っている中央部。ボクサーパンツのゴムからはみ出しそうになるほど元気になった[[rb:玄來 > げんき]]が目の前に現れて・・・。
それを見て固まっている俺にアイツは─────
“見たい?”
“見たい?”じゃねぇぇよ!! ノンケ柴わんこが!! 見たいわ!! 神棚作って脱がしたパンツ[[rb:祀 > まつ]]ってやろうか!! ちくしょうめ!!
諦めてる恋を延々と引きずる覚悟で頑張ってる兄ちゃんに対して、アイツは本当に配慮が足りてない。しなくていいけど。しかし、ギルティーだ。
しかも、ブラッシング終わった途端にソファでそのまま寝るし。布団は掛けてやったけど、風邪引いたらどうするんだ。
・・・その布団どうしたかって?
くるまったよ!! 朝、[[rb:玄來 > げんき]]が帰った後に!! いいだろ? ちょっと添い寝気分味わうくらい!!
「あの後、[[rb:柴 > しば]]くんに何かされたの?」
うつ伏せのまま唸りながらもだもだしているだけの俺に、[[rb:優 > ゆう]]が話しかけてくる。
「別に・・・」
[[rb:玄來 > げんき]]には何もされてない。俺が勝手に何かさせられそうになって、我慢してただけだ。
一般的に見れば、単に[[rb:玄來 > げんき]]が泊まりに来てブラッシングを手伝ったに過ぎない。
本当にギルティーなのは俺のほうだ。
俺はうつ伏せのまま[[rb:優 > ゆう]]の方を向いた。
「お前のプレゼントがちょっと役に立っただけだよ」
[[rb:優 > ゆう]]はそれを聞いて、珍しく目を少しだけ見開き、耳をぴこっと立てた。
「・・・・・・・・・・・・ふーーーん」
比較的長めの沈黙の後、やたらと長い“ふーん”を返して[[rb:優 > ゆう]]は前に向き直り、グミを食べ始めた。
「なんだよ、その長い“ふーん”は」
「別に?」
[[rb:優 > ゆう]]はいつものようにグミを1つ摘んで、そのまま俺の口元に運んだ。
やわらかくて、中にトロリとした果汁エキスが入っているサクランボ味のグミだった。
◆◆◇◇◆◆
「ねぇねぇルキせんぱーい」
「んー?」
今日も今日とてユズがウチに遊びに来ている。
ゲームが一段落して2人でソファに座っているが、ユズは相変わらず俺の片腕を奪ってしがみついている。
ユズはCircleの集まりがある日は必ず遊びに来る。無くても来る。
ついでに言うとユズの教育係も俺になった。新入り3人に対して2年生が2人。ユズの希望で3年生の俺が選ばれた。
名前呼びも本人が直す気ゼロなので諦めてそのままにしている。
「いつになったら俺ん[[rb:家 > ち]]来てくれるの? ご飯もたぶん美味しいよ?」
「んー・・・」
ユズが遊びに来ると、大体2回に1回は自分の家で遊ぼうと誘ってくる。晩飯付きで。
俺も気になるし遊びに行ってみたいのだが・・・。
「泊まってもいいよ? 何日でも」
「それはヤバいから!」
問題は[[rb:玄來 > げんき]]だ。[[rb:玄來 > げんき]]はいつも晩飯を作りに来てくれるが、ユズが遊びに来た日は必ず気付く。部屋に入るなり目の色を変えて鼻をスンスンして部屋の匂いをチェックするのだ。
チェックが終わっても[[rb:玄來 > げんき]]は何も言わない。いつものように晩飯を作ってくれて、いつもの態度で接してくれる。
しかし、いつも目だけが笑ってない。声も笑顔も会話の受け答えも、マジで普段と寸分たがわず同じなのに目の色だけが笑ってない。俺には分かる。
いっその事、不機嫌丸出しにしてくれたほうが100倍マシだと思えるレベルで怖い。
そして、そういう日の飯の後は決まってこう言うんだ。“今日のはあんまり好みじゃなかった?”って・・・。
何でだ!? いつもはそんなこと聞かないのに!
なんかもう色々合わさって[[rb:玄來 > げんき]]が怖い。
例えるなら嫁への浮気バレに怯える旦那みたいな心境だ。俺ホモだけど。
ユズの家で遊んだら間違いなく[[rb:玄來 > げんき]]の匂いチェックに引っかかる。
部屋にユズの匂いがほとんど無いのに俺からその匂いがプンプンするんだから一発でバレる。
晩飯いらないって言ってその日会わなくても、理由とか何処で食べたとか[[rb:玄來 > げんき]]は絶対聞いてくる。最近他店の味も勉強しなきゃとか言って日曜日に外食することも増えたし尋問は不可避だ。嘘もつきたくない。
「やっぱあの虎さんカレシ? お泊まり禁止?」
「だからちがーう! 何で[[rb:優 > ゆう]]がカレシなんだよ! つかカレシってなんだよ!」
ちょくちょくバレンタインのネタ引っ張って来るんだよなぁ・・・こいつ。
「大体アレはお前が仕組んだんだろうが」
「じゃあカノジョは?」
だから俺はホモなんだってば!
なんて言えるわけないので適当に誤魔化す。
「うちの大学の男女比率分かってるだろ? あんなに頑張ってる[[rb:豹一 > ひょういち]]だって彼女いないんだから」
ホントにアイツはなんで彼女出来ないんだろう。
男だらけの工業大学とはいえ、ウチのクラスでも付き合ってるやつはそれなりに居る。
[[rb:豹一 > ひょういち]]は顔も悪く無いし、元野球部で身体もそれなりに良い感じだと思う。性格だって優しくて絡みやすいし、俺はかなり好きだ。
「[[rb:豹一 > ひょういち]]先輩はカノジョ居なくても不思議じゃないでしょ」
「なんで?」
「んー、なんて言うの? イイ人っていうか、どうでもイイ人? みたいな? あと女見る目もなさそう」
「・・・お前すごいな」
「何が?」
[[rb:豹一 > ひょういち]]が過去に言われてきたこと全部言い当てている。
やっぱり世間一般の評価では[[rb:豹一 > ひょういち]]ってダメなのか?
俺はホモだから感覚がズレているんだろうか。
もし俺が[[rb:玄來 > げんき]]に恋してなくて、[[rb:豹一 > ひょういち]]が実はホモで、付き合ってくれって言われたら100%落ちてると思う。
良い奴なんだけどなぁ・・・。
「それよりさぁ、ルキ先輩にカノジョいない方がおかしいと思うんだよねー」
「なんで」
「なんでって、どう考えてもモテるでしょ。その容姿と性格で何言ってんの?」
「はあ!?」
ちょっと嬉しい。
「今どき小学生でも付き合ってるヤツがほとんどだと思うよ。それなのにカノジョ居たことないとか異常でしょ。今まで何人泣かせてきたわけ?」
告白されたことは何度かある。
でも、応えることは出来なかった。
それに、高3になってからは卒業まで一回も告白されなかった。
だからこっちに来て[[rb:玄來 > げんき]]から結構モテてたと教えてもらっても実感はそこまでなかった。
後々[[rb:玄來 > げんき]]から聞いた話だが、“ガードが固い”“絶対好きな人いる”ということでアイドルっぽい感じで見守られていたらしい。
「ミケ先輩とかさぁ〜、たぶんルキ先輩のこと好きだと思うよ〜?」
「あー・・・それは気のせいだ。別の意味で気に入られてる自覚はあるけど」
これは自信ある。ミケ先輩は俺の教育係だったし、信頼もあって頼みやすいっていのもあるからよく絡んでくれるんだろう。
無茶振りの回数だけ減らして欲しいが・・・。
少なくとも俺が知ってる好きな人への態度とは違う。
「そうかなー」
「そうだって。それにミケ先輩は肉食系女子って感じだし、もっと雄っぽい感じの人の方が好みなんじゃないか?」
「俺は純情乙女系女子だと思うけどなー」
「そうかぁ?」
この辺の感覚はユズと俺とで少し違うみたいだ。
[[rb:豹一 > ひょういち]]とは結構意見合うんだけどな。
「ミケ先輩はタイプじゃないわけ?」
「うーん・・・違うかなぁ・・・」
そもそも女の子に対する好みていうのが不鮮明だ。
強いて言うならミケ先輩と逆の人かもしれない。
ミケ先輩は姉の[[rb:琉愛 > るな]]とちょっと似ている。当然ミケ先輩の方が100億倍好きだが、系統は同じだと思う。
[[rb:琉愛 > るな]]が彼女になったらと思うと想像する手前で既に身震いする。
「そういうお前は彼女作らないのか? 俺の後輩は去年の今頃、大学で恋人作ってたぞ」
[[rb:玄來 > げんき]]が初めて晩飯作りに来てくれた時、元カノに恋人出来たーって言ってたし。[[rb:瀬名 > せな]]さんはテニス部でも1番可愛かったし、割と例外なのかもしれないけど。
「俺は今失恋引きずってる真っ最中だから無理かもなー」
そう言ってユズは俺の膝を枕にして、ソファに横になった。
「それに告白なんてするもんじゃないなーって最近思ってる」
「でも言わなきゃ伝わらないだろ? 当たって砕けてみてナンボのもんじゃないのか?」
「砕ける以前に当たったことない人に言われたくないんですけど?」
「ぐはぁ!!」
ごもっともです。
俺に先輩[[rb:面 > づら]]する資格ありませんでした。
「それに、今まで仲が良くても、そのせいで悪くなることだってある。人が人を嫌いになるのってね、ホント一瞬なんだよ。今までの積み重ねなんか何もなかったみたいに」
「そ、そうなのか・・・?」
ユズはいつものふざけた態度ではなく、初めて会った時みたいな雰囲気で淡々と話す。
「人間関係を築くっていうのはトランプタワーを作るのと同じなんだよ。積み上げてる時は夢中になって、ある程度までいったら崩れることに恐怖し出すんだ。そのままにしておきたいから、当たり障りない感じで現状維持。だったら最初からずっと1人でいいじゃんって思う」
初めて会った時も、ユズは失恋中だったんだろうか。
今のユズはその時と全く同じに見える。
俺は大学で初めて[[rb:禅孫 > ゆずひこ]]と会話したような気分になった。
「寂しいこと言うなって、俺はユズのこと好きだよ」
俺は自分の膝に乗っているユズの頭を撫でた。
「・・・あんたってそういうとこあるよね。気安く好きとか言っちゃってさ。無神経っていうのかな、こういうの。それともバカ?」
「お前メッキ剥がれると一瞬だなマジで・・・」
知ってたから良いけど。
「あんたも結局俺のこと一瞬で嫌いになるもんなんだよ。そういうもんなの」
「ならないって。嫌われるのが怖くなる気持ちは分かるけどさ」
「そう? じゃあ試してみる?」
ユズが感情のこもってない真顔で俺を見上げた。
「俺、ホモなんだよね」
[chapter:柴後輩とクロ兄ちゃん]
酔った[[rb:玄來 > げんき]]はイケナイですね・・・。
R18な展開を期待した方すみません。
[[rb:琉貴 > るき]]のせいで今度は[[rb:優 > ゆう]]が同じ勘違いをしてるかもしれませんね・・・。
[[rb:玄來 > げんき]]の料理の評価基準の大部分は[[rb:琉貴 > るき]]が「ふんにゃ〜」するかどうかです。
[[rb:琉貴 > るき]]は美味しいものを食べると大体「ふんにゃ〜」しますが、リラックス状態じゃないとしません。(小ネタかどこかの後書きで書いたと思います)
【定期】Twitter(X)で #柴クロ小ネタ と検索すると過去の小ネタが全部見れるようにしてあります。
物語をより楽しめるように頑張ります。
いつも柴クロをお読み頂きありがとうございます。
蒼空ゆうぎ