3話 パンツ丸見え兎人ハーフ ピィピ・キャロン パーティを追放(以下略)2
バルティゴ都市国家連邦歴18年5月2日。太陽の日。
イチは大烏の冒険者、ミラ・パルテルラットに呼ばれて冒険者ギルド某支部の第二会議室に集まっていた。
ブリーフィングの為である。
通常、階級の低い冒険者達は冒険者ギルドの共用大テーブルを使うなり適当な喫茶店で話すなりするのだが、大烏の冒険者ともなるとこういう部屋を優先的に借りられる。
「みんな、よく来てくれた。それでは早速ブリーフィングをを始めよう」
そう言ってパルテルラットは集められた仲間を見回した。
この日集められた冒険者達は以下の通り。
ピィピ・キャロン。
ハモン・ホーイッツ。
イチ。
タオ・メイメイ。
この中でイチとタオ・メイメイの人物は既に描写させていただいているので、ピィピとホーイッツの人物を簡単に残しておく。
ピィピ・キャロン。女性、23歳。兎人族と人族のハーフ。狼階級の冒険者。魔法使い。長く伸ばした白髪がまばゆく、兎人族の血が濃い女性で身長は146cmと小柄だがプロポーションは悪くなく、ブラサイズはE60ほどあったと言われている。
非情に温厚な生活だが斥候としての能力に優れており、『印象を良くする魔法』『治癒魔法』『気を逸らさせる魔法』『脚を早くする魔法』などを得意とし、パルテルラットと共に数々の冒険に挑んでいる。
今日はキャメルカラーの貫頭衣を着ており。そのデザインは魔法使いの冒険者が良く好む生地のしっかりとしたポケットの多いものだ。
ハモン・ホーイッツ。男性、22歳。人族。ユーカイの村出身の冒険者で駆け出しのためバッチはない。青い髪をキノコの笠のように揃えており、顔だちは悪くない。身長は165cmほどで、痩せ気味。魔法の能力やパーティを追放されたのは前節に書いた通り。
他、パルテルラットも以前の章で既に登場しているので割愛する。
「まずは依頼の内容について話す。今回は機密性の高い依頼なので機密保持契約が結ばれている。うっかり酒場なんかで話したら違約金を請求されるかもしれないから心してくれ」
パルテルラットは念押ししたうえで続けた。
「依頼主はバルロ・シローキン。シローキンカンパニーの取締役だな。先日、彼の娘が山賊団に誘拐され巨額の身代金を要求されている。今回の依頼の最優先目標は、誘拐されたシローキンの娘、ラクシュ・シローキンの救出。次いで誘拐犯達の捕縛だ」
そういってパルテルラットは黒板に貼られたシローキンの娘、ラクシュの写真を指さした。
近年発達したカラー写真に、可愛らしい金髪の少女が水色のドレスを着て微笑んでいる。
シローキンは高齢なので遅い娘だったのだろう。まだ10歳にもなっていないように見える。
「山賊団についてわかっている事だが、連中はナチュラバウムのユーカイを拠点にして活動している山賊団で、頭領はラッチェという人族の女だ。情報によると“義賊”と呼ばれているらしい」
「義賊?」
イチは無意識に質問を口にしていた。
「うむ。どうやらシローキンカンパニーはユーカイの村の林業を買い取ろうとしており、それが火種となってユーカイと揉めているらしい」
パルテルラットは黒板に貼られた地図を指さした。
「ユーカイは長年林業によって生計を立てている村で、周囲を『黒の森』で囲まれており森林資源が豊富だ。シローキンはそこに目をつけて、彼の会社の支社をそこに開こうとしているが村民の激しい反発にあっているらしい。ラッチェは山賊団そのシローキン達の手の者を誘拐し身代金を獲得し、その身代金を村の人間にバラまいているらしい。これがラッチェが義賊と呼ばれる理由だろう」
「ふむん?」
イチはこのパルテルラットの説明に疑問を抱いたがあまりブリーフィングの進行を妨げたくなかったので一言唸ると口を閉じた。折り畳み椅子に腰かけたまま、無意識に腕を組んでいた。
「続けるぞ。我々はユーカイの村に身分を偽り旅芸人として滞在する。ユーカイの村人はラッチェを英雄視しているらしい。冒険者とわかれば彼らの協力を得るどころか、追い出される危険さえある」
「私、旅芸人の経験なんてないわよ」
そう口を挟んだのはタオ・メイメイ。
「その点に関しては問題ない。ピィピが上手くやってくれる」
パルテルラットはピィピを見て頷いた。
ピィピもそれに笑顔で応えて立ち上がると、冒険者式の敬礼をして挨拶する。
「どうも~、ピィピ・キャロンです~。私がいれば、多分大丈夫だよ~」
そう言うとピィピは机の上に置かれたペンやノートや筆入れ、マグカップなどを手に持つと宙に放り投げお手玉のように回した。マグカップに入っていた紅茶を一滴もこぼさないまま。
そのままジャグリングしながら部屋を一周すると黒板の前でパルテルラットと並んだ。
「他にもこんな事もできるよ~」
ピィピは宙高くマグカップを飛ばすと、逆立ちしながら両足でマグカップを挟んで落ちるのを防ぐと、どういう身体の仕組みかわからないが逆立ちしたまま足で挟んだマグカップを口元に運んで中の紅茶を飲んだ。
「冒険者の前は旅芸人やってたんだ~」
そう言ってニコニコと穏やかな笑顔を見せている。ついでに小さな尻尾を出す為に尻の部分に切れ込みが入った布面積の少ない桃色の下着がモロに見えた。
イチもメイメイもホーイッツも知らず内にピィピの芸に対して拍手を送っている。
パリテルラット一度咳払いするとピィピは元の席に戻りエヘヘと愛らしく笑った。
「ピィピだけではない。ホーイッツ君はユーカイの出身だ。彼がいれば村人の警戒心も解けるだろう」
なるほど。イチは納得した。
最初パルテルラットに聞いた時は追放された冒険者をパーティに入れる必要性がわからなかったが、ひとまず納得のいく理由はわかった。
だがパーティを追放されたという事実は不安要素しかない。
「ホーイッツだ。まだ山猫だが、信頼してほしい」
ホーイッツは男にしてはキレイな声で挨拶をした。
イチは顔色を観察したが、特別に悪い相は出ていない。
だからこそ気になるのは「何故追放されたか」であるが、この場で聞こうとも思わなかった。
「ラッチェの事は俺もよく知っている。実際、ラッチェは村人から英雄として守られているし、シローキンとの因縁もあって外部の人間への村人の警戒は強い。だが、そのおかげで村に入りさえすれば情報を得るのは簡単なはずだ」
「信用できるの?」
「なに?」
そのホーイッツの言葉に反応したのはタオ・メイメイだった。
「村人たちは俺が上手く警戒を解く」
「違う。あんたよ。あんた、ユーカイ村の人なんでしょ?」
ハーフエルフの彼女は人族で言えば12歳ほどの精神年齢だ。というより思った事が考えるよりも先に出るのは彼女の性分と言えるかもしれない。
あまりにも刺々しい物言いにギクリとしたイチだが、それはイチも同感であった。
メイメイはホーイッツが他のパーティから追放された事を知らない。
「俺は、ラッチェのやり方に疑問がある。例え村の為を思ってたって、山賊になって人を拐うなどと下種のすることだ」
そう言いながらホーイッツは同意を求めるようにパルテルラットを見た。
パルテルラットは「うむ」と頷くと、タオ・メイメイに諭すように言った。
「メイメイ。全てを疑うのは冒険者としての基本だが、これから冒険を共にする仲間にそんな事を言っちゃいかん。君たちは私が集めた仲間だ。私の責任において信用は保証する。わかったね?」
このパルテルラットの言葉は半分、本心であり半分は誤魔化しである。
パルテルラット自身、ホーイッツの素性や経歴に思う所は多い。
しかし、パルテルラットは疑うよりも信じる事を選んだ。
これは無論、ホーイッツを疑いすぎる事で彼との信頼関係に溝が入る事を恐れたからでもあるが、それ以上にパルテルラットが生来英雄型の人物で一度信じると決断したらなんであろうと信じ切る心を持っていたからだろう。
「………ふん」
タオ・メイメイは腕を固く組んで鼻を鳴らした。
態度は最悪で不服そうだが、これでも一応は納得しているらしい。
「では、ブリーフィングを再開するぞ」
その後、想定される脅威や準備する物、ラクシュ救出後の手筈や役割の分担などを話し、最後は翌日早朝06時に冒険者ギルド某支部に集合する事を決めて解散した。
イチは帰る間際、パルテルラットが彼女に「今回の成否は君にかかっている。頼んだぞ」といった声がやけに印象に残った。