第3話 パーティを追放された俺が美少女揃いのハーレムパーティにスカウトされ山賊団の美人頭領と意気投合し悪徳金持ちを成敗し成りあがるってマジですか

  その日、ホーイッツはスウィートバウムの高級喫茶『ドーヴ』に呼び出されていた。

  ホーイッツは最近、某支部を拠点にしている人族の冒険者で山猫階級にとどまっている冒険者である。

  多少魔法の心得があり、『マナアローの魔法』『身体を軽くする魔法』『水を冷やす魔法』などが使えたという。

  呼び出した男は狼階級の冒険者でデギンという人族の男で、彼はホーイッツがよく参加しているパーティのリーダー的な存在だった。

  この時デギンは31歳。そろそろ冒険者として前線から退いても良い歳ではあるが、功績に恵まれず狼の階級にとどまっている。

  対して22歳のホーイッツはまだ若い。苦心し、どうにか山猫のバッチを手に入れたが周囲の評価が芳しくないのか昇級の機会に恵まれていない。

  内心でホーイッツが憤り感じていた頃でもあった。

  [例えばイチは年齢不詳にせよ18歳そこらで狼の階級である]

  喫茶ドーヴは半個室の喫茶店で、席が簡単な仕切りで目隠しされている。

  なので某支部の冒険者が内内に相談事などをする際によく利用されていた。

  このドーヴにホーイッツが招かれたのは初めてである。

  ホーイッツは一杯で1日の飯代にも成り得る金額のコーヒーに最初驚いたが、その感情を見せずあくまで平然を装った。

  「どうだ。良いコーヒーだろう」

  デギンはコーヒーカップを片手にホーイッツに聞いた。

  「そうだな。故郷で飲んでいたコーヒーに良く似ている」

  「そうか。よかったな」

  そのホーイッツの言葉にデギンは意味ありげに笑うと、コーヒーカップをソーサーに置いた。

  店内では鳥人族のバイオリンの演奏をしており、優しく穏やかな音色が店内に流れていた。

  「今日は、大切な話があって呼んだんだ」

  デギンは先ほどの笑みを消し、突然真面目な顔になってホーイッツの目を見つめている。

  ホーイッツはコーヒーカップを同じくソーサーに戻して言葉を待った。

  ____なんだ? 新しい冒険の話か?

  ホーイッツはまだ若い。

  彼はデギンが今日、他の冒険者たちの目に触れないようにわざわざこの高級喫茶ドーヴを選んだ理由がわからない。

  なのでデギンが続けた言葉に驚いた。

  「ホーイッツ、悪いがもう君を我々のパーティに組み入れる事はできない」

  「なんだって?」

  「すまんが冗談じゃない。皆で話し合った結論だ」

  「何故だ? 理由を聞きたい」

  ホーイッツは表情にこそ表さないが動揺し、激しい怒りを感じている。

  ホーイッツの心情を慮れば無理もないだろう。ある日、突然なんの予告もなしにパーティからの追放を宣告されたのだ。

  「俺の魔法が役に立たなかったとでも言いたいのか?」

  「『水を冷たくする魔法』か? そうだな、あれは確かに便利だった」

  デギンはホーイッツの言葉に思わず苦笑してしまった。

  実際、ホーイッツが自分が飲む水筒の水を冷やしてくれて喉を心地よく潤せた事を思い出したのだろう。

  その苦笑は見ようによっては嘲りの笑顔に見える。

  「納得できん。理由を聞かせてほしい」

  「納得できないなら、どうするんだ」

  デギンは冷たい眼差しでホーイッツを見つめている。

  そもそもパーティ、パーティとは言うがパーティとは単に冒険者たちが必要に応じて集まって出来るものである。

  デギンとホーイッツ達はたまたま冒険に出る際に固定で同じメンツが集まる事が多かっただけであり、名称のある組織ですらないのだ。

  デギンからすればそのパーティから追放するしないの議論すら前提からしておかしいと思っている。

  「納得できないなら、どうするんだ」

  デギンは同じ質問を繰り返した。

  納得ができないとしても、ホーイッツに出来る事などなにもないし、非道を訴える相手も機関も存在しない。

  ホーイッツは何も言わず眼力だけでデギンに抗議を伝えようとしたが、デギンに効果はないようだった。

  「言いたいことがあるなら、言ってくれ」

  デギンとて好き好んでこのような事を伝えに来たわけではない。だが、デギンもパーティのリーダー的な立場である以上、他の仲間の事を考えると決断せざるを得なかったのだろう。

  ホーイッツは少しだけ何かを言いたそうに口を動かしたが、最早言葉が何かを解決する助けにならない事を悟ったのだろうか。結局、何も言えずデギンを睨むだけだった。

  「お前さんは、冒険者に向いてないよ。ユーカイの村だったか? 帰って実家の仕事を手伝ったほうがいい」

  「なんだと?」

  「ここの代金は俺が払っておく。何か言いたいことを思い出したら俺のところに来い。話くらいなら聞いてやる。じゃあな」

  デギンがそう告げて席を立つとホーイッツはひとり残された。

  優雅なバイオリンの演奏が響く店内でホーイッツは顔に出さず頭を抱えた。

  コーヒーカップの中のコーヒーはまだたっぷり残っていた。

  ____どうしたらいいんだ…。

  ホーイッツはまだ実績のない冒険者である。

  デギンが言ったように、元はユーカイの村から状況してきた青年で、将来有名な冒険者になり彼自身のパーティを作るのが夢だった。

  デギンのパーティをその足掛かりにし、実績をつけて出世しやがて大烏の冒険者となり確固たる地位を手に入れる絵を描いていた。

  が、現実は非常である。

  なによりパーティを追放された理由が解らない。

  前に魔物を討伐した冒険に出た時も得意の魔法でパーティを助けた自負があるし、水を冷たくする魔法はデギンも喜んでいたではないか。

  戸惑いがだんだん怒りに変わり、その為に彼の拳は怒りに震えていた。

  そんな時である。

  「突然、失礼します。君はユーカイの村から来たのかい?」

  隣の席でコーヒーを楽しんでいた紳士風の男が目の前に現れ、突然声をかけて来たのである。

  「座ってもよいかな?」

  どうぞ、と言うよりも先に紳士はホーイッツの目の前の、先ほどまでデギンがいた椅子に腰かけた。

  「すまないが話が聞こえてしまってね。私はミノン。シローキンカンパニーの相談役だ」

  ミノンと名乗った人族の紳士は歳は40手前だろうか。確かに身なりが良く、茶色い頭髪を最近ミドルエイジで流行っているオールバックにし、皺ひとつないグレーのスーツ上下はそれだけで下手な冒険者の1か月分の生活費になりそうなほどである。

  シローキンカンパニーと言えば、近年のバルティゴでも名高い大企業で、林業を中心に都市バルティゴの西部でビジネスを広げている。

  「吸うかい?」

  「いや、結構だ」

  ミノンは懐からシガレットケースを取り出した。そのケースも間違いなく高級品で、こういった小物にまで金を賭けられる上流階級の人間である事を示唆していた。

  「何か、困っているようだね。私で良ければ話を聞かせてもらうよ」

  ミノンは上品な笑顔を浮かべて煙草に火を灯した。

  ホーイッツはその笑顔に警戒心を解かれたのか、自身の身の上からデギンにパーティを追放されるまでを語った。

  これが、イチ達が立ち向かう事になるシローキン家令嬢誘拐誘拐事件の始まりであった。