夏祭りに狐面

  夏の夜の生暖かい風が、祭りの余韻とともに私の髪を優しく撫でていった。晴れた夜空に浮かぶ月は、まるで見守るかのように明るく輝いている。

  私は祭り好きだ。この時期になると心が躍る。色とりどりの提灯、屋台料理の匂い、賑やかな人々の声、太鼓の響き。全てが私を魅了し、心を躍らせてしまう…。

  そんな私のトレードマークは涼やかな浴衣と、顔の横にちょこんとつけている狐面で、昔おばあちゃんに買ってもらった大切なもので今でも綺麗に手入れをしている。この組み合わせは私にとって夏の風物詩そのものだった。

  「はぁー、楽しかったなぁー」

  祭りの満足感と疲れが入り混じった複雑な表情を覗かせていた。

  帰り道、私は友人たちと別れ一人電車に乗り込んだ。電車の心地よい揺れに身を任せると心がリラックスしていく。窓の外を流れる景色をぼんやりと眺めているうちに次第にまぶたが重くなり、気がつけば私はうたた寝をしてしまった…。

  「うわっ!!…寝てた!!!」

  駅のアナウンスで起き、目を開けると見知らぬ駅名のアナウンスが響いていた。慌てて窓の外を見ると、そこは全く知らない景色だった。パニックに陥った私は反射的に急いで電車を降りてしまう。

  「えっ!?ここどこ!?」

  そこは終点の一つ前の駅でホームを出るとほぼ何もない駅だった。街灯はほとんどなく、月明かりに照らされた田んぼが広がり遠くに山の影が見える。

  「うわぁ...こんなところで降りるんじゃなかったよ…」

  仕方なく私は駅から続く田舎道を歩き始めた。暗く見えづらい道を進んでいく。柔らかな土と砂利の感触が伝わってくる。

  月明かりだけを頼りに歩を進める不安と疲れが押し寄せる中、私はふと道端に小さな祠を見つけた。

  「無事に家に帰れますように…」

  目を閉じて静かに手を合わせる。その瞬間、不思議な風が吹き抜けた気がした。

  横につけていたはずの狐面が、いつの間にか正面を向いていて視界が悪くなっていた。

  「えっ?どうなってるの?」

  驚いて手で触れようとした瞬間、お面の裏側から帯のようなものが次々と現れ始めたのだ。それらは意思を持つかのように私の体を徐々に巻き付いていく。なぜか体が硬直してしまい振りほどこうとしても全く動けない。

  「ちょ、ちょっと!何これ!?…んぐっ!!」

  最終的に外の世界が完全に見えなくなり、暗闇に包まれる。しかし、不思議なことに恐怖は徐々に薄れていった。代わりに懐かしさと安心感が全身を包み込んでいく。まるで母親の胎内にいるような不思議な感覚だった。

  帯が肌に触れる感覚は少し冷たく心地がいい。体を覆うだけでなく浴衣の隙間からも帯が侵入し巻き付くたびに肌が擦れて快感が走る。

  ヒヤリとした帯が巻き付くほど体が火照り、まるで私の体じゃないみたいに敏感に反応してしまっている。

  (な、なにこれ……。気持ち良すぎる……!…あっ!だめっ!)

  心臓が激しく鼓動を打ち息が荒くなる。帯は浴衣の中にも侵入し私のデリケートな部分の胸や下半身にも巻き付き刺激を与えてくる。私もこの快感を受け入れ始めていた…。

  (いやっ、やめっ……!んっ!……んぐぅぅぅっ!!!!!)

  体が大きくびくんと跳ね上がる。

  そして、体に異変が起き始める。指先と足先がピリピリとした感覚に包まれる。それは電気が走るような、しびれるような感覚が徐々に広がり、何かが全身を覆っていく。

  足に違和感を感じつま先立ちをしているような感覚がする。同時にお尻の上が熱くなり、何か生えてくるような違和感を覚える。まるで体の一部が伸びていくような感じだった…。

  特に激しい変化を感じたのは頭だった。ゾワゾワとした感覚に包まれ、耳が上方に移動していくのを感じる。顔の形も少しずつ変化していき、鼻と口が前に突き出してくる。歯の形も変わり、より鋭く尖っていった…。

  (あぅぅ……私どうなって……)

  帯は体を完全に覆い、まるで繭のようになっていた。しばらくして冷たい空気を放っていた繭がパリンと砕け散る。私の目には月明かりと周囲の景色が見えて視界が戻ってきた。

  「いったいなんだったの……?」

  自分の体を見下ろすと、そこにあったのは人間の姿ではなく、雪のように白い毛並みに覆われたいた。しなやかな尻尾が後ろで優雅に揺れている。

  「なんか……狐っぽくになってるっ!!」

  水たまりで顔を確認すると、狐のような顔が映っていた。そして、狐面は横に付けた状態に戻っている。

  驚きと戸惑いで頭が真っ白になりながらも好奇心には抗いきれず肉球や尻尾を触る。

  耳を動かすと遠くの虫の音まで聞こえてくる。嗅覚も驚くほど敏感になり空気中の微細な匂いの変化まで感じ取れる。柔らかな毛並みもひんやりして気持ちいい。

  特に嗅覚が驚くほど敏感になり周囲の匂いが鮮明に感じ取れるようになる。土の匂い、草の香り、そして遠くの水の匂いまでもが、はっきりと識別できるようになっていた。

  しかし、その興奮と同時に現実の問題が頭をよぎる。この姿でどうやって家に帰ればいいのか。人々に見つかったらどうなるのか。そもそもどうすれば元の姿に戻れるのか。

  「うーん、どうしよう……この姿じゃ、電車にも乗れないし…歩いて帰るのも人目が付きそうだし…」

  私は水たまりで自分の姿を見ながら悩んでいると水たまりに映る景色が変化し始めたのに気づいた。

  「えっ?何これ?…どうして、私の部屋が映ってるの?」

  水面にはうっすらと自分の部屋が映し出されており、まるで窓から覗いているかのようだった。

  思わずケモノの手になったを伸ばし、爪先が水面に触れた途端、氷のような薄い膜が一瞬で広がった。水たまり全体が鏡のような薄氷で覆われ、そこには依然として私の部屋の姿が映し出されていた。

  「凍っちゃった………あれっ、バランスが……ああっ!」

  驚きとつま先立ちに慣れていなかったこともあり、思わずバランスを崩してしまう。

  薄氷の張った水たまりに倒れこむとガラスを割るような感覚を感じ重力に引かれるよう落ちていったのだった…。

  [newpage]

  一瞬の浮遊感。そして次の瞬間、私は柔らかい感触と共に着地した。

  目を開けるとそこは間違いなく自分の部屋だった。ベッドに頭から突っ込む形で落ちてきたようで、体勢を立て直すのに少し手間取る。

  「えっ!なんで?私、さっきまで外にいたはずなのに……」

  私は慌てて立ち上がり周囲を見回す。そこは間違いなく自分の部屋だった。

  自分の部屋に突然現れたことへの驚きは、言葉では表現できないほどだった。喜びよりも混乱が先に立ち、頭の中は疑問で一杯になる。

  「いったいどうなってるのよ……」

  自分の置かれた状況を整理するために、とりあえず部屋にある鏡の前に立ってみることにする。

  鏡に映る白い狐獣人の姿。その姿は確かに美しく神秘的だった。私は同時に違和感も感じずにはいられなかった。

  気になったのは身に纏っている衣装だった。

  白と紺色を基調とした着物に袴、そして頭の後ろには大きな赤リボン。どこか古風で現代的なセンスからはかけ離れている。大正ロマンのようでかわいいとは思ったが…。

  (かわいいけど………なんか、センスが古臭いなぁ…)

  その瞬間、頭に横からポカッと叩かれたような感覚が走った。

  「いたっ!」

  突然のことに理解が追い付かずオロオロと困惑してしまう。周りを見回しても誰もいないし、何かが触れた形跡もない。何が起きたのかわからなかった…。

  その時、突然頭の中に声が響いた。まるで天の声のようなその声は、しかし不思議と親しみを感じさせるものだった。

  狐面は大切に使ってくれたおかげで付喪神になったらしく、困っていた私を助けてくれたのだという。しかし、服のセンスの文句は狐面の気に障ったらしい。なので、私は心の中で慌てて謝罪する。

  狐面の機嫌が少し和らいだのを感じ、ホッとする。

  「あ、ありがとうございます…」

  私も今日はいろいろあったせいが私もお風呂を入って早く寝たかった。なので、急いで元の姿に戻る方法を尋ねた。

  狐面は丁寧に説明してくれいくつか方法があるが、狐面を外せば獣化は解除されるとのこと。

  急激な変化は体に負担がかかるのでゆっくりと人に戻りながら狐面を外す方法をおすすめされた。

  その助言を聞いて私は少し考え込んだ。明日は用事があるし何より人間の姿に戻れるることへの安心感が欲しかった。それに、お風呂に入って疲れを癒したい気持ちもあった。

  結局、私はアドバイスを聞かずに狐面の紐に手をかけた。

  「ごめんね…でも、早く元に戻ってお風呂入りたいから…」

  紐を解くと同時に体の中に異変が起き始めた。まるでマグマのような熱い何かが、全身の一点に集まっていく。息が荒くなり、思わずベッドに横たわる。

  「はぁ…はぁ……なんだか、体が熱い……」

  次第に体全体が熱を帯び始める。体の変化は止まるどころか加速していく。体温はさらに高まり、全身が汗ばんでいく。

  「はぁ……はぁ……んっ!」

  体がビクンと跳ね上がる。同時に全身に電気のような刺激が走る。

  まるで線香花火の火花が散り始めたように、体のいたるところでパチパチとした感覚が発生し、小さく爆ぜていく。

  「あぅ……んっ!何これぇ……」

  今まで体験したことのない快感に頭が混乱する。全身に走る甘い痺れに思わず悶えてしまう。

  全身に汗をかき、呼吸が激しくなる中で私は必死で意識を保つ。すぐに元の姿に戻るはずと思いそれまではなんとか耐えないと……。

  「はっ!…ふぅ…ふぅ……ま、まだ大丈夫…」

  私は必死に呼吸を整えようと試みる。しかし、全く収まる様子はない。むしろ悪化しているようだった。

  汗の量も増えていき、体温がさらに上昇していく。視界がぼやけて意識が飛びそうになるが必死で耐える。

  突然、バチンと強い快感が弾ける。

  「ん!!!……ああぁぁぁっ!!」

  私は叫び声と共に大きく跳ね上がる。腰がガクガクと震え、意識を失いそうになる。全身が痙攣し尻尾も毛も逆立つ。強い快感が加速し、バチバチと断続して弾け始めていく。

  荒い息を必死に抑えながら無意識に下半身に腕が向かってしまう。割れ目に肉球をを沿わせればまた絶頂がすぐにこみ上げる。

  「お゛ぉ!……んぐぅ…イ゙ッ…!!」

  今までとは比べ物にならないほどの大きな快感の衝撃が連続で押し寄せシーツを強く握ってしまう。快感でもがくほどビリビリと爪で破いてしまう。これ以上気持ちよくなっちゃおかしくなる…。そんな考えが先走りとっさにぎゅっと下半身を抑える。

  爪先が私の一番敏感な部分にダイレクトに当たってしまう。それがさらに追い打ちをかけることとなった。

  「イグッ!……お゛っ!……イぐぅううう!」

  私の絶叫と共にバチンとバチンと連続して激しい快感の花火が弾ける。私は腰をガクガクと震えながら絶頂を続ける…。

  あそこからはだらだらと愛液が垂れ、まるでお漏らししているようだ。同時に柔らかな毛が抜け落ち、その下から人間の肌が露出していく。

  「あ゛っ!……イグッ!……またすぐ…イグゥゥ!!!!」

  予測不能で不規則な連続絶頂を感じながら枕を鋭い歯で嚙みながら快楽の渦に飲み込まれ気を失いそうになっている。

  頭部も変化が起こり耳の位置が移動し、顔の形が人間らしい輪郭を取り戻していく。

  「お゛っ!……ア゙ッ!!……ヴゥゥッ!!!!!!」

  もはや言葉にならない嬌声を上げながら私は絶頂を繰り返す。

  絶頂しながら尻尾が短くなり消失していく。燃え尽きていくように、体の一部が徐々に溶けていくようであった。尻尾が短くなっていくにつれ、背骨の構造が人間のものに戻っていき変化していきながらイキ続ける。

  「ンンンンンンンッッッ!!!!!!」

  最後に全身を駆け巡っていた熱が一点に集中し、大輪の花火が夜空に咲き誇るように、パンと弾けるような壮絶な絶頂を迎える。

  そして、全身に溜まった快楽の火花が燃え尽きたかのように、大きな余韻と共に激しい疲労感が襲ってくる。ポトリと落ちるようにベットに倒れこむ。そしてそのまま視界が暗転していく……。

  『だからオススメしませんっていいましたのに……』

  狐面から発せられた言葉を朦朧な意識で聞きながら深い眠りの中へと沈んでいったのだった……。