004-028
正体不明の魔導具とはいっても、魔力量や接近スピードを考えると飛行するマギガント以外の選択肢は考え難く、遊魔達はダインからの指示によって直ぐに対応して行く。
具体的には不意打ちを受けない為の迎撃体制となるのだが、ダインとティアスはビグ・ユーマに留まって、残りの者達は各々のマギガントの元へと散って行く、そして起動した機体はビグ・ユーマの持つ、長距離通信盤によってリンクし、ダインの指示の元に動く事が可能となる。
一方で、先に離陸したスカイベアーとも魔導通信を通して連絡は行われ、一先ず試合会場へのマギガント搬入を優先する支持が与えられる。
フェカト 「正体不明ではあるがいきなりの襲撃は無いとのお考えなのですね」
ダイン 「高度な知性を持つ者達は基本話合えるというのが私の自論です、まぁ話合えても合意出来るかは分りませんし、最初から話すだけ無駄な連中もいますけど」
七実 「つまり、相手は馬鹿じゃないって事ですね」
ダイン 「でも、気は緩めないで下さい、想定したザキトス戦役時のマギガントにも劣らない戦力はこちらにも有ると思いますが、そもそも相手が銃器を理解していなければ棍棒だと思うかも知れません、圧倒的なら戦闘で解決した方が早い事も有るんですよ」
そうして、迎撃態勢を整えたユーマ駐屯地の上空に謎の勢力が到達する、九機で上手く変態を組んでいるところから、かなり技量の有る者達が乗っている様だ。
真夏の乗るファイディ・ゾッフォは、真夏のイレイサー時の戦闘スタイルを再現する為に作られた機体で、長銃身のガトリングガンと多量の弾薬を備えている、ただ、まだ未完成といえるユーマの射撃武器は地球世界の武器よりも遥かに射撃速度が低いのだが、基本銃器の無いアーグル世界では絶大な効果を発揮するだろう。
だが、銃身を向けられる謎のマギガントに恐れはない、真夏の他にもユーマ騎士団所属のロゥディ・ゾッフォも同じく銃身を向けているが、兵然と宙に浮いている。
真夏 「ただ浮いているだけなんて良い的ですね、許可が有れば何時でも撃てますが」
真夏がダインが伺いを立てたその時、編隊中央に位置していた一機がビグ・ユーマの鼻先へと飛来してくる、そして通信盤の交信範囲に入るとビグ・ユーマの通信盤に謎のマギガントの乗り手の姿が映し出される。
透き通る様な白い肌と金髪の長い髪、青い目を持つ俗に言う白人女性の様な出立の女性なのだが少し幼い、それに長髪から飛び出た長い耳がどうも人間とは思えない、そう彼女はダイン達日本人のオタクにとって馴染み深いエルフの姿なのだ。
謎エルフ 「いきなりの無礼をお赦し頂きたい、我らはリボルト王子の騎士として本日の選定戦に望む者達です」
ダイン 「なるほど、リボルト王子にも隠し玉が有った訳ですね、ですが、貴女方はククジアの国民では無いでしょう」
謎エルフ 「確かに我らはククジアの国民では有りませんが、ダイン王の一党もそうで有りましょう、ですからそこは問わない取り決めとなっています」
謎エルフの解答に、ダインはティアスに視線を送ると、ティアスは言葉を返してくれる。
ティアス 「確かに今回の選定戦の騎士は国籍を問わない事となっています、ですが、人類圏に居住して無い騎士の参戦は規定外だと思われますが、人類圏外から来訪者は人類法の適応外ですから」
謎エルフ 「ティアス様が不審に思われるのはもっともですが、人類法守護者よりの許可は降りて降ります、それにアーグル世界の者の方が異世界来訪者よりも選定戦には相応しい筈ですが」
ダイン 「それを言われてしまうと耳が痛いですね、それに人類法の守護者の許可が有るなら認めない訳には行きませんから、ですが、全ての選定戦をこなすには数が足りないのでは無いですか」
謎エルフ 「リボルト王子も自ら出陣して、武威を示すそうです、我らはあくまでも加勢するだけですので、そういえば名乗り遅れていましたが私はフィセーリアと申します、東方大陸ベゼキアで騎士をしております」
ダイン 「東方大陸ですか、人類圏で言う混沌大陸の事なのですか?」
フィセーリア 「違いますね、東方大陸はここでいう混沌大陸の更に東に位置しています、実は東方大陸と言っても、ここから西に向かうと到達出来るんですよ」
ダイン 「やはりこの世界も球状の惑星だったという事でしょうか、南北でも同じ様に一周出来ますよね?」
フィセーリア 「そこまでは存じていませんね、東方大陸の南は凍てついた不毛の大地ですから、夏でも氷に覆われているそうです」
ダイン 「確かに不毛な土地ならば調べる価値は低いでしょうから、もっとお話ししたいですが今はそうは行きませんしね、この付近では五対五と二対二の戦いが行われますが、予備に二機有るという事でしょうか」
フィセーリア 「いえ、二機は個人戦で使う機体です」
ダイン 「なら早急に向かわせるべきでしょう、選定戦の時刻も迫ってますし」
フィセーリア 「ご忠告ありがとうございます、では、後ほど戦場で」
フィセーリアのマギガントは軽く会釈をしてからリボルト陣地へと降下していく、残ったマギガント達も六機は後に続いて、他の二機は王都方面へと飛び去って行く。
ティアス 「東方大陸なんて初めて聞きましたよ、確かに西側への航海は全く行われていませんでしたし、混沌大陸を越える事も出来ていなかったので」
ダイン 「思わぬところでこの世界の真実が見えて来ましたね、出来れば一人ぐらい欲しいですね」
ダインは心底嬉しそうな顔をして語っている、敵に属する勢力なのだが飛行装備を見る限り天翔る処女と同様の装置で飛行している様であり、フィセーリア達九名が全員処女で有る可能性が高いのだ、その上、フィセーリアは絶世の美少女と言える容姿でも有った。
ティアス 「種族としては混沌大陸に居たという耳長だと思います、美形揃いで長命ですが子供を殆ど産む事が無いとも言われてましたが」
ダイン 「あの九人の乗り手は処女で間違いないんでしょうね?」
ティアス 「断言は出来ませんよ、そもそも耳長は魔力も優れているという話ですから、遊魔も個体の純粋魔力を抽出して使えば天翔る処女が使えると解りましたしね」
ダイン 「ですが、純粋魔力として使えるのは一割程度ですよ、あのマギガント達から感じられたのは多くても四万、魔力四千では天翔る処女は使えませんよね」
ティアス 「もう、ティアスの大切な日なのに、他の牝の事ばかり言わないで下さい、それにユーマが勝てばリボルトから情報も引き出せるんですよ」
ダイン 「確かに、先ずは勝利ですか、ユーマ騎士団のロゥディ達もいい動きをしてましたから、大丈夫でしょう」
ティアス 「ですが、飛行の動きと地上の動きは大分違いますよ、ポーカがいい例です」
ダイン 「どの道、もう家族を信じるしか有りませんね、まぁ負ければユーマを軸に立て直して行きましょう」
ティアス 「そうなるとただのティアスになっちゃいますよ」
ダイン 「居てくれるだけで十分です、まぁ私達遊魔は戦いを楽しめば良いだけです」
そう言って笑ったダインの顔に偽りは無かった、苦境が予想されても楽しむのが遊魔という生き物で、命ある限りなんとでも出来そうなのが遊魔なのだ。
それから約二時間後、リボルトとティアスのククジア王選定戦が始まろうとしていた、便宜上、個人戦三戦がそれぞれ第一から第三会場と呼ばれ王宮内の闘技場で行われ、大規模な戦いが予想される、二対二と五対五の戦いが王都郊外に特設された、第四、第五会場で行われる事になる。
第一会場にはリボルト王子自らが出場して、ティアス側のラファメとの勝負になる、リボルトはこの日の為にムゥディ・ゾッフォを持ち出して改修し、王としての威厳を見せつけるつもりだ。
対するラファメはテガスで開発された新型のジノ・ジーカでの出場となっている、ジノ・ジーカはジーカの系譜のマギガントでは有るが、実質はポロルグ・ジーカの普及型を意図して開発された機体で、当然、遊魔の設計思想が導入されている、魔鋼練度がポロルグよりも高くなり、関節部が太くなって更に強度を増し、頑強さと繊細さを兼ね備えた既存の機体を上回る上級機だ。
第二会場は東方勢力の騎士対アーキアのフーティアで、全容の掴めない東方マギガント対人類圏マギガントの傑作機の戦いだ。
第三会場も東方勢力の騎士対リエルのフーティア、リエルのフーティアも大した改修こそ行われていないが、リエルやアーキアが乗りこなした機体は魔鋼練度が上昇しており元機以上のポテンシャルを持つ機体へと昇華している。
第四会場は東方勢力の二機と真夏とファービのイレイサーコンビの対決だ、真夏のファイディ・ゾッフォは射撃戦特化のゾッフォで、ビグ・ユーマで実用化された魔導レーダーの小型版も搭載しており、レーダー射撃も可能な現代兵器の要素が大きい専用ゾッフォだ。
もう片方のファービの機体はジノ・ジーカの接近戦特化型で、遊魔の高い魔力と相まって、スピード、パワー共に最上級の機体で、ファービの高い近接戦闘技術を再現出来る機体でもある。
第五会場は東方勢力五機の中にはリーダーと思われるフィセーリアの機体が含まれており、東方側も一番力を入れていると思われる、東方マギガントは基本同じフレーム構造を持つ様で、ジーカとフーティアの中間ぐらいの細身の機体である、個々の機体の鎧の形状は余り変化は無いが、頭部の衣裳はそれぞれ凝った物で、特にフィセーリアの機体は一番大きく派手でもある。
対するティアス側は幅の大きな構成で、ダインの乗機のビグ・ユーマだけが極めて巨大で有る、格納庫を外したビグ・ユーマは四つ脚の巨大マギガントとも言えなく無く参戦が認められたのだが、始めから浮遊状態での参戦となる様だ。
残る四機の内一機はティアスのポナリア・ジーカで、見た目こそ以前から変化は無いが、遊魔化したティアスの影響で魔鋼練度が上がっており、基本性能が大きく向上している様だ。
そして、残りの三機がユーマ騎士団所属のロゥディ・ゾッフォ三機である、ゾッフォをユーマ仕様に改修した機体で、陸戦仕様に改装された機体は近距離戦から遠距離戦までをこなせる汎用性の高い機体で有る、銃身を切り詰めたガドリングガンを左の大盾にマウントして、右手の手持ち武器は乗り手の好みに合わせている、騎士はイーヴィエ、スルームのテガス学院からの採用組と、以前ラファメと戦ったエディケス出身のエルルリーカだ。
イーヴィエ、スルームは念願叶ってユーマ騎士団の初期団員として採用され、エルルリーカはエディケスを出奔して在野に埋もれていたところをダインに発掘されて、ユーマ騎士団の団員としての地位を与えられた、因みにムジカは新工房の上級工員として働いており、ダインや七実をアーグル視点からよく支えている。
ユーマ騎士団団員や新工房の上級工員は例外無くダインと交わって魔進化した遊魔で、ユーマ騎士団団長をポーカが学長と兼任している、騎士団の構成員はまだ数名では有るが、他の騎士団よりも団員の魔力が桁違いに高く、今回の選定戦が本格的なデビュー戦でもある、つまり今回の選定戦はユーマ共栄国にとってはその武威を見せ付ける最高の舞台となったのだ。
おまけ
ジノ・ジーカ 七実が中心となって開発したジーカ型の改良機、複雑な機構を持つ決闘機ジーカの発展型では無く、上級機ポナリア・ジーカの廉価版という位置付けの機体。
製造コストでは確かに廉価版だが、性能的にはポナリアを上回っており、今後魔鋼の確保が順調に進めば本格的生産される予定だ。
具体的に改善されたのは製造方法で、魔鋼を削り出してフレームを作り上げていたポナリアに比べて、溶接を多用している。
魔鋼溶接はスカイベアー建造時に確立された工法で、ユーマの生産技術の高さを支える技術の一つだ、クラフト・ゾッフォなどにも設備は搭載可能だが、ジノ・ジーカは新たにフレーム専用の溶接設備が組み上げられており、その設備は日々改良が続けられている。
未だフレームはテスト段階にある為に、今回の選定戦に投入される二機は同一機種とは言い難い程の違いが有るが、見た目はほぼ同じに見える。
これはポナリア仕様で作られた外装を纏っている為で、本格的な仕様が決定されるには運用実績の蓄積がまだまだ必要となるだろう。