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火山地帯のやつら

  1 火山のヌシ様

  夏真っ盛りの火山地帯は、今日もうだるような暑さ。

  純度100%のブルーで塗りつぶして上から適当にグラデーションをかけたような青空の中、1つの影が鷹揚に飛んでいく。

  飛行機ではないだろう。雲が尾を引いていない。

  鳥ではないだろう。影があまりにも大きすぎる。

  神秘的かつ雄壮な艶姿。

  太陽の光を良く反射して輝く乳白色の鱗。

  鳥とも蝙蝠とも付かぬ立派な翼。

  神韻縹渺として精悍たる顔つき。

  間違いなくこれは、あらゆる神話に名を残すドラゴンの姿だった。

  というか我じゃった。

  偉大なる溶岩竜、火山のヌシ様ことリリーちゃんじゃ。

  普段は火山らしく鉄黒や退紅色、金赤と言ったカラーリングの鱗を纏っているが、真夏に限っては、空気を読んで白い鱗にしている。

  だって夏は暑いからな-。

  我ともなれば気分次第で鱗の色を白くしたり黒くしたりすることなど造作も無い。

  なんなら矮小な下等生物に合わせたサイズに身体の大きさを変えることも余裕なのじゃ。

  2 緋鳥騎士ヒエン

  今日は鉄分が不足しているな~。

  舌舐めずりしながら地を見下ろす。

  極北の地方とは言え、この時期に限っては流石に積雪も少ない。

  火山地帯に棲むのは主に爬虫類、蝙蝠、土竜といった種族。

  我のように遙か高みから見下ろしていると豆粒みたいな大きさに見えるし、地味な色合いをした奴らばかりだから、保護色でもないのに荒野や岩石と同化してしまって見付けるのも一苦労だ。

  第一鉄分を発見。

  真っ白な鎧を着たキザそうな鳥頭だ。

  己の身長ほどもある馬鹿でかい槍を杖のように突っつきながら歩いているから、嫌が応にも目立つ。

  だが我の好みではない。

  45点と言ったところか。

  見た目は悪くないのだが、姿勢や歩き方から透けて見える自堕落さが気に食わん。

  たぶん騎士や戦士、傭兵の類だろうが、いかにも退屈そうに目をしぱたたかせているし、槍の矛先を天に向けるなと言う話だ。

  こんな奴を食べても、骨が多すぎて食べづらいだけのフライドチキンのようだという食レポしかできないだろう。

  

  その点、我の拠点にしている火山地下都市に居住し市長邸に勤めている緋鳥騎士のヒエンは良いぞ。

  奴は戦闘能力は雑魚そのもの、鳥類で言えば、ニワトリになれないまま成長してしまったヒヨコのようなものだ。

  外見も中の下~中の中といったところ。

  だが、性格が良い。

  主である地下都市市長赤竜グレンにぞっこんと形容できるほど忠誠を誓っているし、何よりも優しすぎて虫一匹も殺せないくせに、命令されただけで死地に赴き戦ってしまうような責任感の強さが良い。

  緋鳥族は光の魔力により強い回復力、再生力を備える一族だ。

  毎度のように重傷を負って帰ってきては市長グレンに心配と迷惑を掛けているが、ヒエンの方は自分の身体などどうでもいいと言わんばかりの振る舞いを見せている。

  そのようなことだから、良いように使い倒されているというのに。

  本気で心配しているくせに何度も死地に赴かせるグレンもグレンだが。

  ヒエンを何だと思っているのかのー。

  お気に入りの玩具か何かか?

  とはいえ我も一度戦ったことがあるが、ヒエンの奴は最高じゃったな。

  阿呆みたいに礼儀正しく勇敢に立ち向かってくるくせに、阿呆みたいに弱い。

  それより何より、リアクションがそそるんのだよなー。

  一応は反抗的な態度を見せているのだが、自分でも絶対に勝てないと分かっているのか、闘志の中にも絶望や、ややもすれば快楽ともとれるような複雑に好悪入り交じった表情をしおる。

  存分に弄くり回してやってその様子を愉しんだ後、ぐっさー、がぶーとやってやった。

  当然のように悲鳴を上げて悶え苦しんでいたが、有り体に言ってso cuteだった。

  たまらんかったなー。

  奴には将来性がある。

  ワンチャン95点くらいあるぞ。

  3 火山地下都市市長赤竜グレン

  良い奴発見~。

  恰幅が良くて逞しく、頼り甲斐のありそうな格闘家風の竜人族だ。

  角や爪牙は控えめで僧侶のような服装だが、はち切れんばかりに鍛えられた筋肉のせいでかえって艶めかしい。

  ただ、残念なことに、既に今まさに喰われている。

  聖職者特有の御行儀の良い衣服と分厚く力強い翼膜が無残な有様。

  端的に言ってズタズタにされているところだ。

  相手は、この辺りでは散見される敵性生物。

  いちいち雑魚の名前など覚えておらぬが、地面から出てきたトゲトゲ鱗の触手みたいな蛇みたいなのにバリバリ、ムシャムシャとやられておる。

  地面をよく見て耳を澄ませていれば対処は用意なのだが、周囲の景色に気を取られでもしていたのだろうか。

  巡礼の旅か何かの途中だったのだろうか。

  あれでは最早助からない。

  音が聞こえるところまで近づけないのが無念。

  表情も、もっとまじまじと見ていたかった。

  欲を言えば、というだけで、遠目に見ているだけでも充分だけどなー。

  食欲がもりもり湧いてくるぞ。

  

  見ていたら思い出したが、うちの火山地下都市市長赤竜グレンも、同じような体格だ。

  奴も聖職者と言えば聖職者だな。

  あそこで喰われとる竜人に奴を重ねて見るのも悪くない。

  というか、むしろ萌え萌えですなー。

  グレンは良いぞ-。

  120点くらいあるね。

  だが、残念なのは、奴が強いということだ。

  性格も立場に相応しく、存分にして残忍にして狡猾。

  御利口さんのポリ公さんの緋鳥騎士ヒエンとは格が違う。

  何故あんな奴を右腕にしているのかと疑ってしまうこともあるが、正反対の性格だからこそ相性が良いということもなきにしもあらずなのかもしれんなー。

  最強ドラゴンである我ですら勝てないチート的存在なので、扱いに困っている。

  グレンの奴さえいなければヒエンはおろか火山地下都市などとっくに滅亡の憂き目にあっているというのに。

  

  4 赤竜カエデ

  グレンの話をしていたら思い出したが、最近我の棲家である火山頂上の火口付近で同居を始めた赤竜カエデのことも話しておかねばならぬ。

  あやつは面倒くさい。

  だが現段階でも70点くらいはあるな。

  ヒエンと良い勝負ではあるが、カエデは弄りづらいのが悩みどころだ。

  ピュアピュアのピュアだからなー。

  種族が同じ赤竜なので、グレンと見た目は似てないことはないのだが、性格は、ヒエンとはまた別の意味でグレンと正反対だ。

  赤竜カエデは、ここから遙か東の氷雪地帯にある聖王城から刺客として送られてきた。

  もうひとりの刺客とともに、グレン、ヒエンのタッグと死闘を繰り広げたのだが、交通事故みたいな流れで、グレンに重傷を負わせた。

  だがその惨劇を目の当たりにして、戦意を失ってしまったのだ。

  聖王の奴と良い感じだったらしいのだが、刺客の片割れのほうを失っておきながら逃げ帰ったということで、聖王城からは追放されてしまったらしい。

  つらいのー。

  氷河期越えてちゅら期。

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