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バレンタインに。

  きゃぴきゃぴとした声がフロアに響く。それを聞きながら、くたびれたスーツを見に纏う初老を少し超えたであろう年頃の狼は大きくはぁぁぁ、とため息を吐いた。

  茶色と桃色にデコレーションされたエキナカ。ふわふわ浮かぶバルーンにリボン。定時を少し過ぎ、お月様が空に浮かび上がっている時間にも関わらず、そのフロアは賑わっている。

  なんと節操のない事か。やれハロウィンだクリスマスだ。バンアレン帯だかバレンタインだか知らんがわちゃわちゃ騒ぎよって。

  そこまで忙しくないがこっちは仕事終わりで疲れてるんだ。チョコだの何だの送ってどうする。自分にご褒美☆じゃないぞ全く。

  大体チョコが苦手っていう奴も少なからず居るんだぞ、苦手な物を好きな人から贈られた時の複雑な感情を察せるのかここにいるきゃぴきゃぴ系若人は。

  「ありがとうございましたー」

  …とかなんとか散々毒付いておきながら狼はその手に立派なラッピングを施されたそこそこ高級なチョコレートを持っていた。というかもう会計も済ませていた。

  恋人への特別なプレゼントに。そんな煽り文句にまぁ見事に釣られてしまったのである。

  「…はぁぁぁぁ…」

  そんでもって狼は大きく大きくため息を吐いた。自分も節操のない奴だったんだな、という情けなさというか、なんというか。そういう感情から自然と溢れ出した。

  使い込まれた鞄にチョコレートを入れて、代わりにスマホを取り出し、昼休みに届いていたメッセージを確認する。

  性欲を解消するための関係から始まった、恋人、と言いたい。重い、と思われたら嫌だな。でもそう思ってしまう、思いたい。

  そんな関係をかれこれ数ヶ月続けている相手からのメッセージだ。

  もし良かったら、今日ヤりませんか?

  最近あまり会えてなかったし、割と溜まっている、という状態。明日は仕事だがヤりたい…というより、会いたい。

  返事はもちろんOK。とはいえ定時過ぎるかもしれないから、家に入ってていいよ。

  そう返信して。今に至る。

  もうそういう歳を超えているはずなのに、彼の顔を思い出すとドキドキと心臓か高鳴る。もちろん発情していない訳でもない。ただ、それとは異なる心地よいような、少し苦しいような。そんな感情。

  狼はもう一度ため息を吐いて。賑やかなフロアをどこか軽い足取りで後にする。

  尻尾がゆら、ゆら、と揺れているのに当人は気付いていない。

  [newpage]

  駅を出て、歩いて数分。立地としては相当良いけれど安いワンルーム。オンボロ…までギリギリ到達していない、それだけのアパート。

  ロフトがついているおかげか結構急な階段を上り、角の部屋。鍵を取り出し、ドアノブに手をかける。試しにドアノブを捻ってみるとガチャ、と音と共にドアが家主の帰宅を出迎えた。

  「ただいま…?」

  開けたドアの向こうは薄暗い。足元には見慣れた、自分の履いているものより小さな靴。すん、と鼻を動かすと嗅ぎ慣れた家の匂いに、彼の匂い。

  灯りもつけずに何をしているのだろう。キッチンのある廊下を抜け、ドアを開ける。外灯が入り込む室内は、自分が出掛ける前とほぼ変わっていないようにも見える。

  あれ?ドア空いてたし靴あるけど…シャワー、という訳でもない。音がしなかったし。

  ドアの横には、彼の愛用する大きなバッグ。中には泊まれるよう着替えやらタブレット端末やらが入っている…らしい。

  彼の気配を所々に感じるが、肝心の彼は…

  狼は鞄を置くとネクタイを緩め、上着を脱ぎハンガーにかけた。むわ、と汗の臭いが立ち昇り、狼は顔をしかめる。いかんいかん、シャワー浴びないと。

  電灯のスイッチに手をかけようとして。狼の耳は。

  「ん…ぅ…」

  くぐもって、微かにしか聞こえない声を聞き逃さなかった。布団の中。そこから聞こえた声。

  狼は足音を殺し、そっと布団に近づく。そして掛け布団を少しだけ。ほんの少しだけ上げた。

  そこには、彼がいる。

  すらりとした体躯。無駄なく鍛えられた端正な肉体。短めのマズルに丸っこい耳。肉体に違わない、綺麗な顔立ち。

  無邪気な子供のように眠っているのは、真っ黒な毛並みの豹。

  むにゃむにゃ、と。とても心地良さそうに眠っているその姿に狼は頰を緩め…布団を戻す。

  おそらく狼が帰ってくる前に家に入り、そのまま布団にイン。待ってる内に眠ってしまったのだろう。起こすのは忍びない。

  黒豹が自然と起きるまでにシャワー浴びて軽く何か食べよう。仕事中にスナックバーを食べた程度でお腹が空きそうだ。

  緩めたネクタイを外し、シャツを脱ぐ。スラックスを脱いで、下着姿の楽な格好に。

  少し出始めた腹をムニムニと揉んでみる。昔鍛えていたおかげかまだ奥底に筋肉の存在はあるが…柔らかい。

  ダイエットを考えないといけないか…今はゲームでも色々痩せられる、みたいなのあるらしいしな。

  極力音を出さないように用心しながら冷蔵庫を開け、中を確認。シュークリームが二つ。黒豹が買ってきてくれたようだ。

  有難く思いながら一つ取り出し、袋を開ける。カスタードクリームの甘い香りが疲れている頭に心地よく届いてきた。

  さっきのチョコレート、上げたらどんな顔をするんだろう。嫌な顔はまぁしないだろうが…

  むぐむぐとシュークリームを貪りつつ、締めかけた冷蔵庫から麦茶を取り出す。

  耳が痛くなるような静寂。いつまでこの関係が続くのだろうか。続けてくれるのだろうか。

  年下の黒豹はまだまだ若い盛り。一方自分はもう枯れかけてるおっさんだ。浮いた話だっていくらでもあるだろう。

  いつ捨てられても、連絡が取れなくなっても不思議じゃない。

  シュークリームを咀嚼し、飲み込む。甘さに今は、酔いしれていたい。夜の闇は心を安らげることもあれば、そのまた逆に。

  心を忙しなく搔き乱す。言いようのない不安。

  情けない。何もせず、何も出来ない自分自身が嫌になる。

  残ったシュークリームを頬張り。麦茶を流し込む。腹と喉が潤い、ほう、と一つため息。

  「んぁ…お帰り…」

  ドアを開け、少し眠たそうに声をかけてきたのはもちろん黒豹。狼はぼふんっ、と全身の毛並みを逆立て尻尾をびんっ、と立てた。

  「あ、あぁ、ただいま!」

  い、いかん。明るくない考え事をしていた所に声をかけられて声が裏返ってしまった。

  黒豹はん?と首を傾げたが…すぐににんまりと笑みを浮かべる。そして早速、と言わんばかりに。狼の胸に抱き着く。

  いや、今更気が付いたが黒豹…身に付けてるの、布面積がとてつもなく小さいケツワレだけだ。

  既に準備万端。カスタードクリームと違うどこか甘く、しかし青いような、雄を知った雄の香り。

  ケツワレの前面部は持ち上がり、しっとりと先端が濡れている。

  「ちょ、ちょっと、俺まだシャワー浴びてないけど…」

  「ん…いい、ヤろ?俺、我慢出来ない。っていうか、この臭いが良い。好き。」

  好き、という言葉に胸がざわめく。この気持ちは、狼だけ?

  黒豹は狼の胸に顔を埋め、何度も大きく、深呼吸を繰り返す。吐き出す息は、甘く揺れ、狼の胸元の毛並みを撫でた。

  今は、いいか。

  「分かった。ん…」

  狼はこくり、と頷くと黒豹の肩に腕を回し、ぎゅっ、と抱きしめる。黒豹の体は熱く火照って。

  良い香りがする。すん、すん、と。黒豹の頭に鼻を当てて、同じように香りを楽しむ。

  互いの吐息が互いの欲望を高めあって。どくん、どくん、と鼓動が強くなる。

  股間が熱い。腹の奥が、腰の奥が疼く。ムクムクと膨らむ狼の逸物が黒豹の太腿に擦り付けられると黒豹ははぁっ、と。

  うっとりとため息を吐く。

  黒豹が顔を上げるとその頬は毛並みの上からでも分かる程紅潮し…瞳は、狼の瞳を捉えて離さない。

  だから狼も真っ直ぐに見つめ返す。見つめ合ったままマズルを寄せて。マズル同士を擦り合わせる。

  触れあったマズルから伝わるぬくもりが、心地よい。

  狼は黒豹の尻へと手を伸ばし、尻たぶを軽く掴んだ。程よい弾力、締まった肉体。

  重ね合わせたマズルを少し離して、唇を重ね合わせる。舌を絡ませあう。

  「んぅっ…」

  「んっ、んっ♡」

  粘液の音。粘膜の擦れ合わさる音。溢れる熱い吐息。甘く漏れる声。胸板を密着させる。肉体を押し付け合う。

  蕩けてしまいそうな心地よさの中、狼は黒豹の尻たぶを揉みながら、その指先を尻の谷間へ伸ばした。

  軽く谷間を拡げると雄の香りはより強く二人を包み込んでいく。濡れている。

  雄穴から滴る腸液を指先で掬い、戻すように雄穴へ。

  「んぁ”っ、ぁ”っ、ん”っ…♡」

  「俺が帰ってくるまで何かしてた?凄い濡れてるけど。」

  「ん”っ、ぁ”っ、ぁ”ぅ”っ…んっ、してっ、たっ…♡だって、帰ってくるの遅いし、俺、あの臭い嗅いでたら…ぁ”っ、ぁ”っ♡」

  狼の問いかけに黒豹は素直に言葉を返す。そしてその言葉は途中で快楽の色に染まった。

  雄穴に指を突き入れ、中をかき混ぜる。雄穴を、腸壁の襞を、前立腺を。

  大きな音が鳴る様に、わざと大きく動かす。腸液はあっという間に狼の指をコーティングし、潤滑油の変わりになった。

  「嗅いでたら?どうなっちゃった?」

  「やんっ、ぁ”っ、そこっ、ぁ”っ♡」

  「教えて欲しいな、おじさん察しが悪いからさ。君の口から、どうなったか。」

  きっと黒豹が望む言葉。望む行動。それらを取りながら、狼は。黒豹に快楽を与える。

  離れたマズルを耳に近付け、囁き、舌を突き入れる。粘液の音を立てながら、雄穴をかき混ぜる。

  だが明確に感じているであろう場所をわざと避け、前立腺の真横を押し上げ、もどかしい快楽を与える。

  腰を押し付け、ジョックストラップ越しに逸物を太腿で擦る。

  「ぁ”っ、ぅ”っ、ぁ”ぁ”っ♡いじわっ、るっ♡らっ、やぁっ♡」

  「教えてくれないと分かんない。どうして濡れてたの?何してたの?どうして欲しい?」

  言葉を引き出すように。ぱんぱんに張り詰めた逸物を押し付け、耳を犯し、雄穴をかき混ぜる。

  体を抱き寄せ、黒豹のマズルを自らの脇に押し当てる。シャワーを浴びていない体は、さぞや酷い臭いがするだろう。

  だが黒豹は嫌な顔をしない。いや、むしろ悦んでさえいる。すー、はー、と大きく呼吸を繰り返し、喘ぎ声を漏らす。

  びくびくと小刻みに震える体が、とろとろと蕩けていく瞳が、具合を良くしていく雄穴が。

  狼の劣情を煽り、発情を促す。あぁ、限界だ。もうねじ込みたい。

  この極上の雄穴に逸物を突き入れかき混ぜ、果てたい。注ぎ込みたい。けれど、まだ、駄目だ。

  「ぁ”っ、ぁ”っ♡お、れっ♡おじさんのっ、おふとんでッ♡アナニーしてましたっ、ぐちゅぐちゅって♡いっぱいっ、シましたっ♡おじさんの良い臭い嗅いでるとッ♡発情しちゃ、ぁ”ぁ”んっ♡」

  「うんうん、分かってきた。嬉しいな、俺で発情してくれるなんて。で、どうして欲しい?」

  切羽詰まった黒豹を更に追い立てるように。今度は前立腺をしっかりと穿ち、突き上げ。耳の奥へ舌を突き入れる。

  黒豹の細く締まった体が狼にうずもれていく。声がくぐもり、声が上ずって。

  「ぁ”っ、ぁ”っ♡おれっ、おまんこっ、して欲しいッ♡おじさんのッ、チンポッ♡捻じ込んでッ♡いっぱいっ、たねっ、注いでッ♡ぁ”っ、ぁ”っ♡」

  我慢出来ない。布団でヤろうと思ったが、そこまですら遠い。

  だから。狼はにゅぽっ、と大きな音を立てながら雄穴から指を抜き取ると。黒豹の体を持ち上げた。

  決して軽くない。むしろ、この肉体には重いと言える。だが、それでも。

  「分かった。じゃあちゃんとどうして欲しいか言えた子にはご褒美上げないと。パンツ脱がしてもらってもいいかな?」

  「ぁ”っ、ぁ”っ♡」

  尻たぶに両手を食い込ませ、谷間を拡げる。黒豹は慣れたように、足先で狼の下着を。ゆっくりとずらす。

  ぼろんっ、と零れだした逸物は外気に触れると蒸れ、凝縮された雄の香りを放つ。

  「はぁ”っ、はぁ”っ…ぁ”ぁ”んっ♡」

  尻の谷間に竿を擦り付け、軽く跨らせる。黒豹の逸物がケツワレ越しに見えた。熱い。熱くパンパンに張り詰め、滾っている。

  ごぽり、と腸液が溢れ出し、竿もコーティングされていく。

  「早くッ、はやくぅっ♡おれ、俺ッ、おかしくなっちゃう♡」

  「ん。まぁ俺も限界だし…一気にいくね。」

  「ぁ”っ、はぁ”ぁ”んっ♡」

  強く肩を抱きしめられる。少々痛いが、その痛みも心地よい。耳元で聞こえる黒豹の甘い吐息。期待に震える声。痙攣する体。

  唾液が滴り、肩を灼く。

  黒豹の雄穴に逸物を宛がう。狼の逸物の存在に気が付けば雄穴は激しく収縮を繰り返し、切なげに蠢き引くついた。

  「ぁ”っ、ぁ”っ♡」

  「挿入れるよ。」

  欲望に塗れた吐息。自分でも驚くほどぎらついた言葉。穿つ先をしっかりと定めて。

  ずんっ、ずぶぅっ。

  「ぉ”っ…ぉ”ぉ”ぉ”っ♡」

  肉の擦れる音、粘液が滴り落ちる音。黒豹の喘ぎ声に狼の呼気が混ざる。雄穴の中は十分に濡れており、熱く心地よい。

  挿入した瞬間から雄膣は狼の逸物に絡みつき吸い付き扱き上げる。腸液があっという間に狼の逸物を根元まで濡らし、睾丸にまで伝って落ちていく。

  「ぅっ…ぅぅっ…あぁ…気持ちいい。中あったかくて、気持ちいいよ。もうイっちゃいそう。そっちは?」

  「ぁ”っ、ん”っ、ぅ”っぅ”ぅ”っ♡ぅ”ぁ”ぅ”ぅ”っ♡」

  応える余裕はない、といったような返答。濡れ切った声。荒くなる呼吸に鼓動。互いの腹に挟まれた逸物がビクビクと震え、先走りの量を増しているのが伝わる。

  感じている。相当に感じている。それが狼には嬉しく、心地よい。背筋がゾクゾクと痺れる。

  「動くから。」

  「ぁ”っ、まっ…ぁ”っ、ぁ”んっ♡」

  黒豹の僅かな制止を無視し。狼は腰を振り始める。

  腰を引き、打ち付ける。逸物を半分ほど抜き取り、前立腺へ真っ直ぐに逸物を叩きつける。そして抉る。

  腸壁をなぞり、捲り上げる。

  「ッ♡ッ♡ぉ”っ♡ぃ”っ♡ぁ”っ、ぁ”んっ♡」

  狼の腰の動きに合わせ黒豹は声を上げ、ぎゅうっ、と狼に更に強く抱き着いた。

  野太く、だがしかし上ずっていく声が狼の快楽を後押しする。もっと、もっと。

  狼は腰を振りながら。黒豹の耳を軽く舐める。

  「顔上げて?」

  囁くと素直に黒豹は顔を肩から上げた。端正に整った顔立ちは涙と鼻水で濡れ、目尻は下がり瞳はとろんと蕩けている。

  快楽に溺れ切った顔は、とても淫らで美しい。

  「可愛い。一杯イってる?トロ顔、可愛いな。」

  「やっ、ぁ”っ♡ぁ”っ♡んぅ”っ、ぅ”っ♡」

  言葉を紡げない。それほど黒豹は感じているのだろう。びゅるっ、びゅるっ、と先走りが更に溢れ、腹が濡れる。

  濡れた毛並みは雄の臭いをより強く放ち、まるで密度があるかのように感じた。

  狼は黒豹のマズルに自らのマズルを重ねて。貪るように唇を奪う。先程のキスよりもより強く深く。

  唾液が滴り落ちる事もいとわず、舌を絡ませあい、口腔内の粘膜を、上あごを、舌の内側を。我武者羅に貪りあう。

  その間も腰の動きは止まらない。太腿や脹脛が軋むような痛みに襲われても。この動きを止める事は出来ない。

  逸物の抽送はより強く、激しくなっていく。

  じゅぶ、ぢゅぶ、と湿った音がマズルから鳴り響き。どづっ、ばづんっ、ごぢゅんっ、どぢゅんっ、と。肉と骨の軋む音が下半身から全身へ。

  一突きする度に。

  「ぁ”んっ、ぁ”っ♡ぁ”っ♡いっ、イっ♡ぃ”っ♡ぉ”っ♡」

  黒豹の声は切なさを増していく。目は上を向きかけ、両脚は狼の腰に強く激しく絡みつく。伸びた尻尾は行き先を見失い、狼の腰や尻を撫でまわした。

  狼はその尻尾を導くように、自らの尻尾を絡みつけた。そうすれば黒豹の尻尾は狼の尻尾に絡みついて、嬉しそうにビクビクと震える。

  腰の奥が、腹の奥がグラグラと煮立っていく。欲望が滾っていく。熱い。心地よい。ぶちまけたい。

  「ぶはっ…んっ、ふぅぅぅっ…!射精して、いいっ…かなっ…?!」

  快楽に唸り声を上げながら狼は腰を振る。黒豹の雄膣は逸物を突けば突くほど具合を良くし狼の逸物へと繰り返し繰り返し奉仕する。

  黒豹はこくこくと何度も頷いた。

  「らひっ、れぇっ♡なかっ、いっぱっ、い”っ♡ほしっ、い”っ♡」

  「じゃあっ…射精すよっ…!」

  返答に狼は一度動きを止めると…

  「グゥゥゥッ!!ォォォォッ!!」

  大きく唸り声を上げ。スパートをかける。泡立った腸液と先走りの混ざった液体がぶちまけられ、周囲の壁や床へと飛び散っていく。

  前立腺を激しく何度も短期間に小突き上げると…

  「ぁ”っ、ぁ”ぁ”っ…♡ぁ”っ…~~~~ッ♡♡」

  ぶしゅうっ♡ぶしゅぅぶしゅぅっ♡

  黒豹は果てる。だが逸物から噴き出すのは精液ではなく、透明な液体。

  メスの絶頂を迎えた様である。それが狼には、嬉しく、心地よく。支配欲と雄の本能から来る優越感。

  最後の壁を、超えて。

  「アォォォォォンッ!!!」

  狼は先祖返りしたかのような遠吠えを上げた。

  びゅるっ…ごぶぅっ♡どぶぐびゅるぅっ♡どぶっ、ごぶっ、ごぶぶびゅるぅぅっ♡

  「~~~ッ♡♡」

  黒豹は言葉にならない声を上げながら狼に抱き着き、全身を何度も何度も痙攣させた。

  絶頂に達する表情も、その声も、仕草も、何もかもが、愛らしい。

  狼は腰を震わせ、黒豹を絶頂へと導けたという充実感に酔いしれ。脳へと叩きつけられる快楽を享受し。欲望をぶちまけていく。

  [newpage]

  「いて、いててて…」

  さぁ第二ラウンド、と洒落込みたかったのだがそうは問屋が卸さない。立った状態で黒豹の肉体を持ち上げ腰を振っていたのだ、肉体へのダメージは計り知れない。

  「大丈夫?」

  狼の横に座り、黒豹は心配そうに狼へと声をかけてくれた。

  行為をしている最中は脳内麻薬だとかそういうので気にならなかったというかノーダメージだったが、その分ツケは一挙に押し寄せ…

  狼は布団で横になっていた。情けない話である。年は取りたくないもんだと今改めて狼は思っている。

  「な、なんとか…い、いや、無理かも…ごめん、一回しか出来なかった…」

  「あ、いや、うん、大丈夫。その…凄い、良かったから…」

  嬉しそうに。黒豹は慈しむように自らの腹を撫で、うっとりとした声を上げた。

  尻尾もゆらり、ゆらり、と揺らめいて。

  どき、としてしまう。先程までの淫らで蕩けた顔も、仕草も。今の無邪気な笑顔も、声も。狼の心を縛り付けていく。

  あぁ、駄目だ。欲を満たすための関係。それだけの関係。それ以上は、踏み込んではいけない。望んではいけない。

  だけど。

  「あの、さ。」

  「ん?」

  「俺の鞄、見てもらっていい?」

  言葉が自然と、溢れ出してしまう。崩れてしまう、壊れてしまう。けれど、もう、止められない。

  思い浮かぶのは、帰ってくる前の光景。きゃぴきゃぴとした声、賑やかなフロア、楽しそうな笑顔。

  そこにいる、自分と、黒豹。

  都合のいい想像だ。妄想と言ってもいい。その場にいて。楽しそうにお互いへ送る物を選んで。送りあって。

  黒豹は疑問府を浮かべながら立ち上がり、狼の鞄を手に取った。そして広げる。

  酷くゆっくりと時間が流れるような気がした。鞄に手を入れて。黒豹は首を傾げた。

  「箱?」

  「…ん。その…えぇっと…」

  続け、続け、言葉。

  賽は投げられたのだから。

  時は

  戻せないのだから。

  「ば、バレンタイン、だから…プレ、ゼン…ト…」

  消え入りそうな声。かすれる声。強くなる鼓動。荒くなる呼吸。苦しい。苦しい。

  箱を取り出し。掌の上に持って。メッセージカード。それは狼が書いたものではない。

  添付された、プリンターの簡素な文字。

  『For My Dear』

  黒豹は…

  「え、あ…」

  戸惑い。そして。

  「…ありがとう。」

  一言。感謝の言葉を述べる。

  満面の笑みを浮かべ。尻尾を振りたくり。狼へと、飛びついて。

  きゃぴきゃぴとした声がフロアに響く。それを聞きながら、くたびれたスーツを見に纏う初老を少し超えたであろう年頃の狼は。

  薄く微笑むと、尻尾を大きく揺らした。

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