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あぁ、今日も疲れた。
電車のつり革に掴まりながら僕はため息をついた。
窓の外はすっかり闇。ガラスに映る自分はとても疲れている表情を浮かべていた。
鬣なんかもへにょっとしなびているし。
ここの所残業続きでまともに寝ていないのだから仕方ない。
これがあともうしばらく続くのかと思うと少々うんざりする。
とはいえ。
スマホを胸ポケットから取り出すとスケジュールを開く。
そう、明日は休み。しかも平日に。
ここら辺で忙しくなるだろうなぁとあらかじめ予想していた僕は一ヶ月前に既に有給を入れていたのだ。
木曜日休みだと気分的にすこぶる楽である。
さて、駅に着いたら完全に自由の身だ。何をしようかな。
さっきまで頭をもやもやと覆っていた嫌なものはすっかり影を潜め。
お休みモードに入った頭で何をしようかな、とぼんやり考え始めていた。
「れっつごーせんとう!」
駅に着いた僕はぞろぞろと降りる人の波に呑まれながら時刻を確認した。
現在夜の10時ほど。今から行ける所なんて相当限られている。
カラオケ…に行くほど元気は無い。キャバクラ…無理無理。お金ないし何より女の人苦手だし。
歩きながら腕を組み…そして僕は思い出したように手をぽん、とたたいた。
「そうだ、銭湯行こう。」
行きつけ…というほどでもないけどそれなりの頻度で行っていたいわゆるスーパー銭湯の存在を思い出したのだ。
今はスパリゾート、と言った方が正しいのかな。
まぁそんなことはどうでもいいか。とりあえずそこに行こう。
最近はシャワーばっかりでゆっくり湯船にも浸かっていないし。
幸いそこのスパリゾートは1時ぐらいまで開いていたはずだ。
少し歩く事になるけれど、夜の散歩ってことで丁度いいかな。
鼻歌交じりに僕は少し早歩きでスパリゾートに向かい始めた。
夜の道は満月に照らされているおかげでとても明るい。
しばらく歩いていると…見えてきた。スパリゾート。
駐車場にはほとんど車は止まっていない。それもそうだ。時間も時間だし。
中に入ると人影はほとんどなく、受付では暇そうな店員さんが欠伸を噛み殺しているところだった。
僕の姿を見ると急いで姿勢を正し営業スマイルを浮かべる。
「いらっしゃいませー。お一人様ですか?」
「あ、はい。」
カウンターに近づきながら財布から会員証を取り出し店員さんに差し出す。
「毎度ご利用ありがとうございます。貸しタオルは必要ですか?」
「お願いします。」
手際よく店員さんは貸しタオルを取り出し僕に手渡した。
「それではごゆっくり。」
「どうも。」
受付を済ませ更に中へと進んでいく。
中へ進んで行ってもほぼ人影はゼロ。時々すれ違うのは店員さんばかりだ。
これ、まだ開店中だよね?僕、閉店時に入ったわけじゃないよね?
正直結構不安になってしまう。…特に何も言われていないから大丈夫なんだろうけど。
脱衣所について適当なロッカーを選ぶと僕は服を脱ぎ始めた。
一日中着っ放しだったし、それなりに汗をかいていたのかちょっと臭う。
全裸になると僕はなんとなく視線を鏡に向けてみた。
なんていうか…貧弱な体だ。
獅子の種族の中でもこう貧弱なのはそうそう居ないだろうってぐらい。
胸板なんてほぼ無いし、お腹もちょこっと―いや大分かなこれ―飛び出て、まぁ美しいとは言いがたい。
「ジムとか行こうかなぁ…」
そんなことを考えてみるけど…いやぁ、実際仕事行った後にジムとか絶対無理だ。
はぁ、とため息をつきとぼとぼと歩きながら僕は左手首にロッカーの鍵がついたバンドをつけてガラガラと浴場へのドアを開けた。
かぽーん、と小気味のいい音が聞こえた。…凄い。誰も居ない。
こんなことってあるんだなぁ、と僕は思いながらひとまず体を洗うことにした。
シャンプーを大量に手で受け止めると僕は乱暴に鬣から全身を洗い始めた。
お風呂の時は獅子でよかったなぁ、と思うことはある。シャンプーだけで全身洗えるし。
誰も居ないスパリゾートってのはちょっと不気味だけど…貸切状態でなんだか不気味さを上回って気持ちよくなってきた。
ふふふふん、と鼻歌交じりに僕は全身を洗う。シャンプーの匂いが心地よい。
尻尾も丹念に洗って…よし。全身泡まみれで僕は鏡を見る。
鬣をなんとなくおったてて…モヒカン。
「何してんだよ僕は。」
自分のやったことが余りにも下らなくて思わず笑ってしまう。
シャワーのスイッチを押して全身の泡を流して。全身の毛が濡れてペッタリと皮膚に張り付く。
…さっきも見てたけど、ほんと僕の体って微妙…チンコ小さいし。
もやもやと最近見たAVの男優さんを思い出した。
狼の種族だったけど相当逞しかったしチンコもでかかった。
うーん、羨ましい。それを思い出してなんとなく頭の中がピンク色になってきた。
いかんいかん、ここは公衆の場。誰も居ないとはいえ。
露天風呂に行って頭を冷やしながらあったまろう。そう思って僕は露天に出た。
ぴゅう、と吹く風が少し寒い。うぅ、と声を上げて僕は急いで湯船に浸かる。
「っぁぁぁぁぁあああぁぁ…」
全身を丁度良い暖かさのお湯が包み込んで…なんともいえない気持ちよさ。
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