「ごめんくださーい。荷物のお届けに参りましたー。」
玄関からドアチャイムが鳴り、威勢のよい配達員の声が聞こえてきた。遂にあれがきたのかと期待感に胸を膨らませながら、住人の大学生は足早に玄関まで駆け寄り、ドアを開けた。
「あっ、こんにちは。おつかれさまです」
「こんにちは。こちらの荷物になります。では、伝票にサインをお願いします」
彼は伝票に自身の名前を書くと、配達員から届け物を受け取った。荷物の大きさは菓子箱程で、大きさの割には少々重かった。箱は白無地の包装紙でラッピングされていた。
「ありがとうございます」
彼はその場で配達員を見送ると、荷物を抱えながらリビングへと移動した。[newpage]彼は早速包装紙を破り開けて、荷物をテーブルの上に置いた。それは黒と黄の二色が柄プリントされた箱であった。それは虎の毛皮をモチーフにしたものに見えた。箱の中央には取扱注意と赤字で書かれており、危険なものであることをうかがわせていた。彼は覚悟を決め、箱に手を掛けた。[newpage]箱を恐る恐る開けると、紐が入っていた。紐は幾重にも束になっていて、相当な長さになることがみてとれた。太さは成人女性の小指程度で、思ったよりも細い印象があった。紐はクリーム色で、橙と黒の虎模様が描かれていた。材質はビニルのような光沢が確認できるもので、極細の糸で編み込まれていることがわかった。[newpage]「へぇ、こんな感じになっているのか。面白そうなものだな」
彼は感心しながら、紐に手に取ろうとした。その瞬間、紐が意思を持ったかのように動き出し、彼の全身に絡み付いてきた。
「なっ、何だ!? 一体どうなっているんだ!」
彼は予想外の反応に戸惑いを隠せず、パニックに陥ってしまった。動く紐を掴もうとすると、紐はするするとかわしていた。その間にも、服の隙間から巧みに侵入し、内側から衣服を裂いた。
「やめろよ! やめてくれよ!」
全裸になり哀願しても、紐の動きが止まることはなかった。[newpage]紐は全裸になった彼に向かって這うと、足元から絡み付いてきた。紐はとぐろを巻くように両足をくっつけるように巻き付いた。彼の両足は拘束され、もはや自由に動き回ることはできなくなった。意外なことに、紐の締め付けはきつくなく、痛みを感じることはなかった。紐はゆっくりと下半身、陰部、腰、胸と両腕、肩、首、顔、頭の順番に巻き付き、確実に彼を拘束していった。彼はもぞもぞと動くことしかできなかった。その姿は端から見れば、巨大な甲虫の幼虫が直立している様子であった。[newpage]完全に拘束されてから30分が経過した。すると、彼に巻き付いた紐に変化が生じた。紐自体が溶け始め、彼の身体にフィットするかのように密着した。溶けた紐は、伸縮性抜群のラバーのように変化し、固定された両脚と両腕はラバーの一部が溶解して自在に動かせるようになった。さらに変化は進行し、頭部は目付きが鋭い虎に変化した。腹部と胸部は紐の色であるクリーム色、その他の部分は橙の色地に黒の縞模様に変質した。彼の臀部付近にはラバーが変質した尻尾が生じた。一通りの変化を終えると、虎の頭を持った怪しい人物が直立していた。股間のイチモツが辛うじて男であることを証明していた。
(すげぇ……素肌に張り付く感じが気持ち良い……こりゃあ病み付きになりそうだ……)
彼は言葉を発すること忘れ、スウツの感触を堪能していた。禁断の感覚に思わず彼の股間が膨らみ始めた。彼は無意識にスウツの上から股間を握り、擦り始めた。
(くっ、気持ちいい……イクッ、イクウゥ!)
普段の自慰では考えられない位の快感が波となって押し寄せ、彼はそれに耐えられる筈もなく呆気ない射精を迎えてしまった。[newpage]突然、彼の陰部がわずかに膨らんだ。このスウツは精液と反応して気体が発生する仕組みとなっていた。その気体は装着者の精神を侵食する成分が含まれていた。気体は彼の口から吸入され、彼は獣の臭気に身も心も酔わせていた。
(虎の匂い、気持ちいい! またチンコがイクゥ……!)
彼は臭気に毒され、射精のことしか考えられなくなっていた。彼の手は自然と勃起したイチモツに伸び、手淫で快楽を得ようと必死になっていた。その様子は自慰に耽る畜生そのものであった。
「グルルゥ……! ウガゥ!」
もはや、彼の思考は獣に成り下がり、人語を発することもできなくなっていた。彼は四つん這いになると、ベランダへ向かい、体当たりで窓ガラスを割って外へと飛び出した。身体能力は数倍にも向上し、素早い身のこなしで人影もない路地を駆け巡った。
(ゴシュジンサマ! ゴシュジンサマノモトヘ!!)
彼は本能の片隅にあるスウツ開発者を思い浮かべ、低い唸り声を上げながら路地裏へと消えていった……