きつね色のタイムカプセル

  「いやー、湊斗が成人になるまでタイムカプセルのこと覚えてるなんて意外だったよ」

  「まぁ、俺は大学行くまでずっとこの町にいたしな。中学から転校した誰かさんと違って」

  「ぐっ……。ま、まぁいいじゃん。結局今こうやってタイムカプセル掘り起こしに来れてるんだしさ」

  そう、今日は俺の20歳の誕生日。親友の湊斗と、二人とも成人してから開けようって約束して小6の時に近くの山の中の神社にタイムカプセルを埋めてから、もう8年が経っていた。

  俺が中学2年生で東京に転校してしまっていったんは離れ離れになったけど、湊斗が東京の方の大学に来たことでまた一緒になって、こうして一緒にタイムカプセルを掘り起こしに来ることができたわけだ。

  「それにしても、よくこんな山の中にタイムカプセル埋めようと思ったよな」

  「まぁ、ここなら誰も来ないし、起こられたりだろうって考えた結果だよ。それに、ここの神社、女の子の声がするって言ってあんまり誰も近寄らなかっただろ? 誰かに掘り起こされたりしないかなって」

  俺たちが今向かっている神社は、行こうと思わなければ誰も通らない山道の先。整備とかもされてない獣道だから、大人になった俺たちでも通るとなると結構息が切れるぐらい疲れる。

  まあ、それが「誰にも見つからない秘密基地」みたいで俺たちは喜んで通ってたんだけど。

  それに、この神社は周りの木々のせいで昼間でも暗くて少し不気味な雰囲気がある。そのうえ、ここをたまり場にしていた子供たちが「女の子の声がした!」なんて言ったもんだから、この神社の周りでは誰も遊ばなくなった。

  実際にここに来たことは何度もあるけど、誰かを見たなんて話は一度も聞いたことがないから、そのうわさが本当かはわからずじまいだったんだけど。

  「さて、着いたぞ」

  「おー、こんな感じだったわ。懐かしい……」

  あの頃より小さくなった気がする鳥居に一礼してくぐり抜ける。鳥居をくぐった先には、あの頃とほとんど変わらない光景が広がっていた。

  境内はそこまで広くなく、少し古ぼけた社があるだけ。その社も8年前からほとんど変わっていないように見える。

  社の裏あたりの草が生い茂ってるあたりに埋めたはずだけど……、雑草が多すぎて、探すのは骨が折れそうだった。

  先に挨拶しておかないと、神様に怒られるかな。

  そう思った俺は、雑草をかき分けながら社の前に立つと、手を合わせて目を瞑り、お祈りをする。

  (8年も来れなくてすいません。俺たちようやく成人になったんで、タイムカプセルを掘り起こしに来ました)

  そう心の中で呟いて、ゆっくりと目を開けた。

  目の前の社を見ると、さっきまでは気づかなかったが、社をふさぐように貼られたお札がはがれかけていることに気づいた。

  「なんか、お札剝がれかけてない? こういうのって直していいんだっけ」

  横で俺と同じように拝んでいる湊斗に、そう聞いてみる。別にお札が剝がれてたからって何か悪いことが起こる、なんてのは信じていないけど、なんだか触ってはいけないような、そんな気がしたのだ。

  「別にいいだろ。俺たち以外に来る人いないんだし、誰かが管理してるわけでもないだろ?ここ」

  「まあ、それもそうか」

  確かに湊斗の言う通りだ。こんな山の中にある社なんて誰も管理してないだろうし、俺たち以外の誰かが来るような場所でもないだろう。

  お札が剝がれてること以外は異常がないことを確認した俺は、改めてお札を剝がれかけたところをきれいに貼り直そうとした。

  その時だった。

  「(やっと!やっとじゃ!)」

  「えっ!?」

  どこからともなくそんな声が社の方から聞こえてきた。というより、頭の中に直接音を叩き込まれるように、女の子っぽい甲高い声が響いている。

  「なに、どうしたの」

  その声に驚いて社の方をまじまじと見ていると、俺の様子がおかしいのに気づいた湊斗が声をかけてきた。俺は社の方を指さしながら湊斗に答える。

  「いや……、今女の人みたいな声が聞こえて……」

  「女の声?何も聞こえなかったぞ?」

  「(聞こえておるじゃろ!とりあえずこっちに来い!)」

  また社の方から甲高い声が聞こえる。幽霊?それとも神様?いやそんなことありえない。でも、ここまではっきり聞こえてくるし……。

  俺が必死に考えていると、不意に視界に真っ白な光がカットインした。

  社の扉が開いている。お札は燃え尽きるように、光に包まれてどこかへ消えていく。

  わけがわからないまま、ふわっと身体が浮くような感覚に包まれて、目の前が真っ白になった。

  「う……ん……? ここは……?」

  目を覚ますと、そこはさっきまでいた社の外ではなく、木造のだだっ広い部屋になっていた。一面木張りの部屋の、ど真ん中に寝かされていたらしい。

  でも、なんでこんなところに……。

  俺はゆっくりと体を起こすと、部屋の中を見回した。すると、部屋の奥の方で何か白い影が動いているのが見える。

  「あ、やっと起きたな!まったく、いつまで寝ておるのじゃ」

  「え、あ、あの……」

  その影は俺が起きているのに気づいたのか、こっちへ近づいてくる。しかし、その影は人の形をしていなかった。

  それはどう見ても、白い狐のような動物の形をしていたのだ。見たことがない生物の影に、俺は思わず後ずさりする。

  違う。こんなのおかしい。ここまでどうやって移動したのかわからないし、そもそも動物は喋ったりしない。

  夢?そう思った俺は自分の頬を引っ張ってみた。だけど、鈍い痛みがあるだけで目の前の風景は何も変わらない。

  「ん?なんじゃ。怯えずともよいぞ」

  「いや……、だって、狐……?」

  白い毛並みに赤い模様が入った狐のような生き物は、俺の目の前まで歩いてくると丸っこい尻尾をふりふりと振った。

  ふわふわなその毛に思わず触ってみたくなるが、それをぐっと抑えて後ずさりする。でも俺がいくら下がっても、目の前の狐みたいなやつは近づいてくるだけで、一向に距離を離そうとしない。

  「まあそう怯えるでない。わしはお主をここへ呼んだ張本人じゃ」

  「え、それってどういう……」

  そこで気づいた。目の前の狐の身体が透けていて、向こう側にある床がうっすら見えていることに。

  こいつが、俺をここに連れてきた。あんなわけの分からない方法で。

  「まさか……神様か、なにか……?」

  「お!お主、察しがいいな。じゃが、少し違うな。わしは神なんて大したものではない。まあ、お主らの言うところの『妖怪』というやつじゃ」

  「よ、ようかい……」

  妖怪、漫画やゲームでよく見る存在。でも、そんなのはただの空想上の存在だと思っていた。いや、今でもそう思っている。

  でも、この目の前にいる狐みたいなやつはどう見ても普通の生き物じゃないし、俺の心を読んでいるかのように会話している。

  それに、こんな非現実的なことが起こるなんて、もう信じるしかなかった。

  「おっと、すまんがあまり時間はないのでな。本題に入るとしよう」

  妖怪はそう言うと、俺の前にちょこんと座り込み、話を続けた。

  「お主らも気づいておるだろうが、この神社にはお札が貼ってあったじゃろ?あれのせいでわしは長い間ここから出られなかったのじゃ」

  確かに、さっき見たお札は剝がれかけていて今にも取れそうになっていた。でも、それがこの妖怪をここに閉じ込めていた? 俺がその疑問をぶつけると、狐の妖怪は少し悲しそうな声で答えた。

  どうやらあのお札には強力な結界のような力が込められていて、それのせいで長い間ここから出ることができなかったらしい。そして、それを貼った張本人であるここの神社の巫女ももういなくなってしまい、お札の効力だけが残ってしまったとのことだ。

  「それで、なんで俺を?」

  「お札の効力が弱まって、あと一押しで封印が解けるところだったんじゃ。じゃが、その最後の一押しをしてくれたのがお主じゃった、というわけじゃな」

  「は、はぁ」

  いまいちピンとこないが、この透けてる狐の妖怪の封印が解かれたらしい。

  ……ん? それってマズいんじゃない?

  封印された妖怪って、たいてい悪いことしてるわけで。そいつの封印を、俺が解いてしまった、ということは。

  「あ、あの……。もしかして、俺って……」

  俺は恐る恐るそう尋ねる。すると、狐は笑うような声で言った。

  「安心せい!お主を取って食おうなんて考えておらぬわ!それに、封印が解かれたからと言ってわしにできることも限られておるしのう」

  「なら、どうして俺をここに……?」

  そうだ。お札がはがれて封印が解けたなら、勝手に出ていけばいい。それなのにわざわざ俺をここに運んだってことは、何か目的があるはずだ。

  俺がそう聞くと、狐はにやりと笑った。

  「それはな……こういうことじゃよ!」

  狐がそう言うと、その身体がぼやっとした光に包まれ始めた。そして、そのまま俺の体の中に入ろうと言うように、俺に向かって飛びついてきた!

  とっさに腕で振り払おうとしたけど、そいつは俺の中へ消えるようにして入っていってしまった。

  それと同時に、何か温かいものが全身に流れ込んでくるような奇妙な感覚があった。でも、不思議と嫌な感じはしない。むしろ心地よい感じだ。

  熱はどんどん高まって、体の中で暴れまわるように駆け巡る。

  「おい、なんだよこれ! 俺に、なにしたんだ!」

  『なに、お主の中にわしの妖力を流し込んだのじゃ。封印が解けたといっても、この霊体では自由に動けん。お主の肉体を得ることで、わしは自由の身になるんじゃ!』

  狐の声が頭の中に響いてくる。どうやら、こいつは今俺の身体の中にいて、俺の身体を乗っ取るつもりらしい。

  そんなこと、はいそうですかと言って受け入れられるわけがない。

  俺は必死に身体を動かそうとするが、指一本すらまともに動かせない。まるで金縛りにあったように、身体が固まってしまっている。

  それどころじゃない。俺は抵抗しようとしているのに、意思に反して勝手に身体が動きだしたのだ。

  「おい!なんだよこれ!どうして、身体が勝手に……」

  『ふふっ、無駄だぞ。お主は抵抗しているつもりなのかもしれんが、身体の主導権はわしにある。口だけは動かせんと不便じゃから、許してやっておるがの』

  狐の声が聞こえると同時に、俺の腕が勝手に動く。上に着ていたシャツを乱暴に脱いで、ズボンにも手をかける。

  『ん、なんじゃ現代の服は……脱ぎづらいのう……』

  「お、おい!何してんだよ!やめっ……」

  俺の抵抗もむなしく、俺は下着まで脱いで全裸になってしまった。

  そして、そのままその場にあぐらをかいて座り込むと、俺の手が自分の股間をゆっくりと触り始めた。

  『おお……これが人間のオスの生殖器か……。確か、こうするんじゃったか……?』

  狐の妖力によって勝手に動く俺の手は、自分の股間を触っていく。扱い方を忘れてしまったみたいに、おそるおそる。

  やわやわとした刺激でも、刺激には変わりない。見慣れたそれはどんどん固くなっていき、やがて完全に勃起してしまった。

  異常な状態にも関わらず、勝手に動く俺の手がそこをゆっくりとしごき始める。そして同時に頭の中でも快楽が生まれ始める。

  ぐちゅり……くちゃ……

  静かな部屋に水音が響く。俺は今、狐の妖力によって体を操られながらオナニーをさせられているんだ。

  しかも、相手は俺じゃない。妖怪だっていうのに!こんな奴の手で……!

  「くそっ!やめろよ!こんなことして何がしたいんだよ!」

  『言ったじゃろう。お主の身体をいただくとな。わしの妖力が馴染めばじきに身体も変わってくるじゃろう。わしもオスの快楽を味わってみたかったんじゃ』

  「ふざけんな!そんな勝手なことっ……!」

  『まあそう怒るな。お主も気持ちよくなれるように、わしがしっかりサポートしてやるからのう』

  狐のその言葉と同時に、俺の身体がまた勝手に動き始めた。そして、その指がゆっくりと胸の方へと近づいていく。

  「お、おい……まさか……」

  『こっちも弄ってやらんとな。お主はオスじゃからおめこの方はまだないが、胸でも感じられるじゃろ……?』

  次の瞬間、俺の指先が乳首をつまんだ。そのままくにくにと弄ぶように、手慣れた様子で指を動かす。

  「んっ……!」

  思わず変な声が出てしまった。でも、それは仕方がないと思う。だって、こんなところ、普通に生きていて弄るようなところじゃないんだから。

  『ほう、ここが、いいのか……?ならば、もっと可愛がってやろう』

  狐はそう言うと、今度は両方の手で両方の乳首をつまみ上げた。そのままコリコリと転がすように刺激を与えていく。

  「あっ……!や、やめろって!」

  『ほれほれ、気持ちよかろう?』

  「うぁっ!き、気持ちよくなんてっ……!」

  そう言いながらも、俺は確実に快感を感じていた。乳首を触られるたびに腰の奥がきゅんっと疼くような感じになって、股間のモノもビクビクと脈打っているのがわかる。

  このままじゃまずい!なんとかして逃げ出さないと……! そう思った瞬間だった。

  「な……なんだよ、これっ!」

  俺の意志に関係なく身体を弄りまわしていた俺の手から、白い毛のようなものが生えてきていた。異様な光景に目を見開いていると、毛はどんどん面積を増し、腕に、胴体に、全身を覆いつくそうといわんばかりに広がっていく。

  これじゃまるで、さっきまで目の前にいた、狐みたいじゃないか。

  『おお、始まったか。わしの妖力とお主の肉体が馴染んできたんじゃ。ほれ、もっとよく見てみよ』

  手が膨らんでいるような、そんな感覚。手のひらが黒くなって、イヌみたいな肉球ができている。爪が黒く染まりながら伸びて行って、まるで本当に動物の前足みたいだ。

  それに、足も。指先の方がぐっと伸びていって、明らかに人間の足じゃない、異常な形に成型されていく。

  バキ、パキッ、と、骨が折れるみたいな異様な音がしたと思えば、関節が変な方向に曲がって、人間の足から、動物の後ろ足のような形に変形していった。

  俺の身体、どうなってるんだ……?

  『うむ……身体が見えないと不安か?ならば……』

  狐がそう言って俺の目の前の空間がゆらゆらと歪んだと思うと、鏡のようになって今の俺を映し出した。

  「おい、これ……、どうなってんだよっ!」

  そこに映っていたのは、俺の身体のようであって、人間の身体じゃなかった。

  白い毛皮に包まれたその姿は、まさしく狐そのものだ。でも、それは俺が知っているような四足の動物じゃない。その身体は人間の骨格とは全く違っていて、まるで本物の狐がそのまま人になったみたいな姿だった。

  自由の利かない俺の身体が、今の姿を見せつけるように立ち上がる。獣の足は、つま先立ちするような感覚ですごく違和感がある。もはや全身に白と赤の模様が広がろうとしていて、むしろ人間のカタチを保ったままの顔とチンポだけが異様に見えるありさまだ。

  それに、身長もだいぶ縮んだように見える。狐の声の感じから察するに、メスなんだろう。そこそこ鍛えていた俺の手足は、いつの間にか細くしなやかで、ほどよく脂肪がついた、女性らしいものになっていた。

  俺に見せびらかすように、指が勝手に開いたり閉じたり、胃下垂っぽい、こども体型になった腹を撫でたりする。でも、俺に伝わってくる感触は明らかに人間の肌のものではない。動物の毛皮特有の、もふっとした感触が伝わってくるだけだ。

  『どうじゃ?これが、これからのお主の姿じゃよ』

  「お、俺の、身体っ……!? そ、そんなわけ……。俺は、人間でっ!」

  『言ったじゃろう。わしの妖力とお主の肉体が馴染めばじきに変わってくる、とな。ほれ、まだまだ行くぞ』

  「え……、ちょ、ちょっと待っ……」

  狐は俺を無視して、俺の身体を弄び続ける。

  今度は手が勝手に動き出して、自分の胸の方に伸びていく。そしてそのまま、マッサージでもするかのように、すりすりと胸を揉み始めた。

  何も揉むものがない硬い胸板だったはずの場所が、まるで女性の乳房のように柔らかくなっていき、次第に乳首がぷっくりと勃ってくる。

  「んっ……!」

  乳首が指先でつままれるたびに、全身に電流が走ったような感覚に襲われる。胸はどんどん大きくなって、Bカップぐらいの、女性のおっぱいと言うべきものに育っていく。

  くにっ……くりくり……すりすり……。

  狐の妖力で動かされた俺の手が、俺の意思に反して胸を揉んでいく。その度に体に甘い快感が走り、口から熱い吐息が漏れ出してしまう。

  「な、なんだよこれっ……!」

  『ふふ、いい体つきになったのう……。メスとして、いい身体に育っておる……』

  そう言った狐の手が、再び俺の股間まで伸びていく。そしてそのまま、ゆっくりと握り込むと上下に動かし始める。

  「あっ……!や、やめ……!」

  俺は必死に抵抗しようとするけど、腕は勝手に動いていくし、足も動かなくて逃げられない。

  「だ、だめだって!これ以上されたらっ!」

  『それ見てみろ、尻尾が生えるぞ』

  「そ、そんなっ……」

  俺の身体が、俺に見せつけるように鏡に背中側を向けると、背中の下、尾てい骨のあたりから、小さな肉の芽が顔を出したところだった。

  それは見る見るうちににょきにょきと伸びていき、白い獣毛をまといながら、俺の意思とは関係なくふりふりと動き始める。

  そして……、狐の尻尾が完成した。人間の俺にはないはずの、もふもふとした毛に覆われた狐のしっぽが、そこに生えていた。

  「はぁ……っ、うそ……」

  『さて、最後の仕上げじゃな。わしもそろそろ限界じゃ。オスの絶頂、とくと味わうとするかの……』

  狐がそう言うと、俺の手がモノを扱く速度が跳ねあがる。人間の手のひらとは違う、肉球の柔らかい感触で扱かれて、乳首まで弄られて。

  自分でしているのに、他人にされているみたいな感覚で、しかもそれがすごく気持ちよくて……、俺はもう何も考えられなくなっていた。

  狐の妖力と、俺の肉体が馴染んできたからなのか、それともこの異常な状況によるものなのか。とにかく今の俺には考える余裕なんてなかった。

  ただただ、快楽を求めて手を動かし続ける。

  「あっ、ああっ!やば……いっ……!」

  『うっ、わしも、イくのじゃ……。人間ちんぽでオスイキ、するのじゃぁっ……!』

  その言葉と同時に、俺は絶頂を迎えた。

  びゅるっ!どぴゅっ!!びゅーっ!!! 今までに経験がないぐらい勢いよく出た精液は、鏡にびちゃびちゃと音を立てて飛び散っていく。

  精子を送り出そうと、手が勝手にしこしことモノを扱く。ずるん、と滑るような感触に驚いてモノを見ると、そこも身体に合わせて形を変えていた。

  滑った感覚は、皮が剥けるように無くなって、赤黒いグロテスクな獣のペニスが露出したから。亀頭と竿の境目がなくなって、先が細い、少し反り返ったペニスになっている。最後に根本のところがぷくっと腫れるように膨らんで、図鑑で見たことのあるイヌ科のペニスができあがっていた。

  10秒ほど経っても全く収まらない射精と息を合わせるように、口が前から見えない手に引っ張られるように伸びていく。見えるはずのない鼻の頭が視界に入って、口元といっしょくたになって。

  そして、俺の口と鼻は一つになってしまった。まるで狐のマズルみたいに。鼻先の黒くなった部分から白い毛が生え揃って、身体の時と同じ、痒いような、気持ちいいような感覚が顔を覆いつくしていく。

  きぃん、という耳鳴りを残して、耳が頭の上の方に移動していくのがわかる。目の前の鏡に映る俺の姿は、もう元の俺と言える箇所をひとつも残していなかった。

  「はぁ、はぁ……」

  俺は肩で息をしながら、鏡に映っている自分の姿をただ見つめていた。そこにはもう、俺の姿はなかった。

  白い毛皮に包まれた、もふもふとした狐のマズル。そして、その頭には三角の大きな耳が生えていた。それは紛れもなくキツネの顔で、俺は今、本当に狐になってしまったんだということを実感する。

  口を開けてみれば、その口元からは長い舌と鋭い犬歯が伸びていて、まるで本物の獣みたいだ。

  ……ってあれ?身体が動かせる?

  『ん……?身体が動かん……? しかも、メスにもなりきっておらんではないか……』

  「え?あ、ほんとだ……」

  なんでだろう。さっきまで狐の妖力に完全に支配されていたはずなのに……。もしかして、狐が弱っているから……? でもなんで?

  俺は疑問に思いながらも、とりあえず自分の腕や胸を触ってみる。うん、やっぱり俺の手だ。姿は違うけど、ちゃんと動くし、それに……。おっぱいの柔らかい感触とか、毛に包まれたマズルの感じとかはしっかり伝わってくる。

  『うーむ、まだ完全に馴染まんか……。まあよい。わしは元から外に出たかっただけじゃからな。』

  「は?何言ってるんだよ。こんな姿で、どうやって外に出ろって言うんだよ!」

  俺は思わずそう叫ぶ。口から出るのは、男の俺の声じゃない。

  さっきから脳内に響いている、甲高い、かわいらしい女の子の声。

  今の状態で外に出たらどうなることか……。それに、もし誰かに見つかったりしたら……。

  そう考えるだけでゾッとする。こんな姿、誰にも見せられないじゃないか!

  『安心せい。お主の"本質"はもう狐になってしまっとるが、人間に、元のお主の姿に化けることは可能じゃろ』

  「み、見た目だけってこと……?」

  『うむ。わしにはできるがお主では無理じゃ。ま、今はお主に身体の主導権があるみたいじゃから、難しいだろうが……』

  「ふざけるな!人間に、俺を人間に戻せよ!」

  俺は必死にそう訴える。そうだ、俺の身体が狐になってしまったっていうなら、最悪それはそれ。でもせめて、元の姿に戻してもらわないと困る!

  でも、狐はそんな俺の気持ちなんて全く気にも留めず、話を続ける。

  『そうは言ってものう……。そうじゃ。もう一度イってみればよい。絶頂が、入れ替わりのトリガーになっとるかもしれんぞ?』

  「な、なんでだよ!そんなので戻るわけないだろ!」

  『やってみなければわからんじゃろ?ほれ、イかないと人間の姿に戻れんぞ~?』

  ……くそ、こんなことなら身体を乗っ取られたままの方がマシだった。こんな身体にされて、自分の意思でオナニーしろだなんて……。

  でも、それで元に戻るっていうなら……。

  鏡の中にいる、白狐の女の子を見つめる。……いや、俺は男だ。こんな姿になっても男なんだ。

  イヌみたいに勝手に舌が出て、はっ、はっ、と荒い息を漏らしてしまう。動物の身体になったからか、自分の発しているメスの匂いが、床に散らばった精子のオスの匂いが、ケモノ臭い自分の身体の匂いが鮮明に脳裏を刺激して、強制的に発情させられてしまうような錯覚に陥る。

  シないと、いけないのか……。

  俺は、心なしか人間のときより大きくなったように感じる自分のモノに手を伸ばして、ゆっくりと手を上下に動かし始めた。

  さっき出したばっかりなのにもうガチガチに勃起した獣のペニスは、手を動かす度にビクビクと震える。

  胸に手を伸ばしかけて……、辞めた。俺は男だ。オナニーするときに、胸なんか弄らない。

  手持ち無沙汰になった左手をなんとはなしに玉の方に持っていこうとしたとき、全身に電流が走ったかのような感覚に襲われた。

  「――――、!?」

  目の前に星が飛ぶような快楽と共に、ぴゅっ、と軽く精子がケモノのペニスから漏れ出す。

  違う、そんなはずない。だって、俺は男で、チンポもしっかりあって、だから、そんなはず……。

  でも、この狐の妖怪はメスで、そいつに憑りつかれた俺は……。

  "その部分"が見えるように、寝転がるような形になって尻を向ける。そして、だらりと垂れ下がった金玉を持ち上げて……。

  「あ、あぁ……」

  そこにあったのは、赤く充血して、とろとろと汁を漏らす、女の身体の象徴。

  それはどう見ても、女の性器そのものだった。こんなの、俺の身体じゃない。

  でも……っ! 俺は頭をぶんぶんと振って理性を保とうとする。だけど、だめだ。目の前にあるメスの穴がどうしようもなく魅力的に見えてしまって、お腹の奥が、きゅんと切なくなって。

  『ほほう、おめこもできておったのか。ふたなり、というやつじゃな?』

  狐の声が脳に刺さる。だめだ……そんなの、認められるわけがない。俺は男なんだから。でも……っ!

  「あ……、ああ……」

  俺はゆっくりと、その穴に手を伸ばす。そして……。くちゅり、と指先が触れた瞬間、全身に快楽が駆け巡った。

  「んぁっ!」

  思わず口から声が漏れる。でも、それは狐の声だ。俺の声じゃない。だって、俺は男で……っ!

  『ほれほれ、イかねば戻れんと言っておるじゃろ……? それとも、ずっとその姿のままでよいのかの?』

  「う……うるさいっ!わかってるよ……!」

  そう思うともう止まらなくて、俺は自分の膣口に右手を這わせた。指でその蜜壷を掻き混ぜるように動かすと、ぐちゅぐちゅと水音が鳴る。そのたびに、俺の身体には男のオナニーとは全然違う、甘い、じんわりとした快感が走り抜けていく。

  左手で自分のチンポを扱き、右手では膣内を責め立てる。

  「んっ!んぁっ!」

  俺は、女の子の快感に夢中になっていた。狐の妖力に抵抗なんてできないし、そもそも抵抗する気すら起きなくなっていた。

  だって、こんなに気持ちいいんだから。

  『ふふ、いいのう……。ほれ、イってしまえ……っ!』

  狐の声が脳内に響くと同時に、俺の両手が本能に任せて一層激しく動く。そして……。

  「んあぁっ!イく、イッちゃ……!!」

  全身が激しく痙攣し、俺は絶頂を迎えた。目の前が真っ白になり、意識を失いそうになるほどの快感に襲われる。

  単純計算で2倍の快楽なんだ。人の身で耐えられるものじゃない。

  ぶしゃあっ、と、まるでお漏らしでもしたみたいにおまんこから潮が吹き出して、チンポからは顔までびちゃびちゃと精子がかかる勢いの射精。

  こんな快感、初めてだった。全身が喜びに打ち震えるような心地よさがいつまでも続いて、もうずっとこのままでいたいと思えるほどだった。

  「はーっ、はーっ……」

  俺は床に倒れ込んで、肩で息をしながら、快楽の余韻に浸っていた。こんなに気持ちいいオナニーは初めてだったし、それに……。

  「ふふ、気持ちよかったかのう?」

  今度は、口まで勝手に動く。そして、ゆっくりと、勝手に身体が起き上がる。

  どうやら、イけば身体の主導権が入れ替わるというのは本当のようだった。

  「それにしても、いい具合に、馴染んだようじゃな……」

  何かを言う余裕すらない俺を無視して、狐が全身を確かめるように撫でていく。俺にも、狐の妖力が俺の身体の中で渦巻いているのがわかる。さっきまではただ漠然としていたその感覚も、今ははっきりと感じ取ることができた。

  狐の妖力と、俺の肉体が馴染んだことで、俺は完全な狐になったのだ。そして……。

  その身体で感じる快楽に、俺の心は完全に屈服してしまっていた。

  「これでお主も、立派な狐の妖怪じゃ。さて、そろそろ外に出るか。お主の友人が待っておるじゃろ。適当に言い訳でも考えておけよ」

  狐がそう言うと、身体にぐっと力をこめる。これが人間に化けるための準備だということを、俺の身体はもう理解していた。そして、狐の姿がぐにゃり、と歪むように、CGで巻き戻しするように、俺の身体に変化しようとして……。

  ギーーーッ、バタンッ!

  突然、古びた金属の音とともに、勢いよく本殿の扉が開いた。そこに立っていたのは……湊斗だった。

  「おい凪、大丈夫か!?お前、急に消えて……」

  湊斗はそこまで言うと、言葉を失った。当然だ。目の前に、ファンタジーでしか見たことのないはずの獣人が立っているんだから。

  変身は、大きな音にびっくりしたせいで止まってしまっていた。俺の姿は、白い狐のバケモノ。しかも全裸。獣のペニスが丸見え。

  終わった、と思った。言い訳なんてできるわけがないし、それに何より……。こんな姿じゃ、男だって、俺だって言っても絶対に信じてくれない。

  「お前、凪をどこへやった!凪はどこだ!」

  湊斗が叫ぶ。やっぱり、そう見えるよな。でも、俺が、この狐が凪なんだよ。

  そう言いたいけど、言葉が出てこない。よりによって、今身体の主導権を握っているのはこの狐の方なのだ。

  「ふふ、お主が湊斗、か? こいつの記憶の中にあったぞ。確かに、こいつの友人のようじゃな。だが悪いのう、こいつはもうわしと一心同体なのじゃ……」

  狐が、いや、俺の口から勝手に言葉が発せられる。言い訳する余地もない、事実を。

  俺は、もう人間じゃない。この狐に乗っ取られたんだ。

  「一心同体、って……。まさかお前、凪に憑りついた、ってことか!?」

  「そうじゃよ。こいつはもうわしのものじゃ。まあ、こいつの意思はあるし、身体の主導権を譲ることもできる、がの」

  「なっ……」

  狐の言葉に、湊斗が絶句する。俺にはもう、絶望しかなかった。いくら事情を説明したところで信じてもらえるわけがないし、かといって逃げだすことも無理だろう。さっきみたいにイかない限り、俺が身体を動かすこともできないんだから。

  「まあよい。この身体の持ち主……、凪とやらか。こいつを完全に支配するつもりは、わしにはない。わしは外に出たかっただけじゃしな。今の世の勝手がわからんから、こいつの身体に間借りさせてもらうだけじゃ」

  「は……?じゃあ、凪に危害を加えるつもりは無いってことか?」

  狐の言葉に、湊斗が一瞬ほっとしたような顔をする。でも、狐はニヤリと笑って続ける。

  「凪に身体を返す手段はひとつだけじゃ。……この身体を絶頂させることで、な」

  そう言うと同時に、身体に変な感覚があった。さっき変身しかけたように、身体にぐっと力が入って、まるで何かの術を使うみたいな感覚。

  ……あれ、俺、今何を……?

  思わず湊斗の方を見ると、少し離れたところで床にぺたんと座りこんだところだった。目が虚ろで、何も話さない。まるで催眠術にでもかかったみたいだ。

  『な、なにをしたんだよ……!?』

  「なに、ちょっと術を掛けただけじゃ。眷属化の術、じゃな」

  『眷属化、って……。まさか、湊斗を!?』

  「ああ、そうじゃよ。この姿を見られてしまった以上、ただで返すわけにもいかんからな。庇ってくれる奴が一人ぐらい居たほうが、外でも過ごしやすいじゃろ」

  狐はそう言うと、湊斗にゆっくりと近づいていく。

  まずい……!このままじゃ……っ! 俺が何とかしないと!そう思ったのと同時に、俺の口は勝手に喋り始める。

  「安心しろ、湊斗とやら。お主も、すぐに仲間にしてやる。ほれ、服を脱ぐがよい……」

  狐はそう言うと、湊斗の頬を優しく、つーっと撫でた。その瞬間、湊斗の身体がビクンッと跳ねる。

  そしてゆっくりと立ち上がると、焦点の合わない虚な瞳のまま、着ていたシャツを、ズボンを、次々と脱いでいく。

  ダメだ、このままじゃ湊斗まで……。そう思って止めようとするけど、俺の意思に反して身体は全く動いてくれない。

  そしてとうとう、湊斗はパンツ一枚になった。

  湊斗の身体は、俺なんかよりもずっと引き締まっていた。部活で鍛えているし、日頃からトレーニングを欠かしていないのがよくわかる。俺とは大違いだ。

  ごくり、と自分の体が息を呑むのを、他人事のように感じた。俺とは違う”オス”に対して、狐も感じるものがあったのだろう。

  お腹が勝手にキュンと切なくなって、さっきあれだけイきまくったというのに、チンポがまたむくむくと、熱を増していく。狐の妖力に完全に屈してしまった俺にとって、目の前の湊斗は、もはや性の対象以外の何物でもなかった。

  「ふむ、なかなかいい身体をしておるではないか……。下着は脱ぐなよ、おあずけじゃ」

  狐はそう言うと、湊斗の身体をまじまじと眺めながら、手を伸ばして肩や腕に触れる。湊斗は、されるがままだ。

  「ほう、まだ若いのに、ずいぶん鍛えてあるのう。それに、肌は綺麗じゃし、毛も薄い。ふふっ、可愛い顔をしておるというのに、隅に置けんのぅ……」

  「んっ、ぁっ……」

  狐の手が触れるたび、湊斗はぴくんっ、と小さく反応する。こんなことしたくないのに、湊斗が無性にエロく見えてしまって、興奮が止まらない。

  湊斗は、俺の大事な友達なのに……。こんなの嫌だ……。

  しばらくすると、俺の身体は再び寝転がるようにして、仰向けになる。そして、湊斗を誘うように、足を広げて見せた。

  さながら、ベッドの上で男を受け入れる時のように。

  「さあ、湊斗よ……。こっちへ来てよいぞ。お主も、狐の仲間入りじゃ」

  俺の口がそう言うと、湊斗はゆっくりとこちらへ向かってくる。そして……。俺の上に覆いかぶさると、いきなり唇を重ねてきた。

  「ちゅっ、れる、じゅぷ……」

  『んむっ!?んうっ……』

  俺の狐のマズルには、湊斗の口の形は合わない。それでも、ねじ込むように、湊斗の舌が入り込んできて、俺の口内を犯そうとしてくる。初めて味わうディープキスの感触に、俺は戸惑うしかなかった。

  初めてのキスが、湊斗となんて。しかも、こんな、化け物の姿でなんて。そんな風に思いながらも、メスのそれになった俺の身体は正直に反応してしまう。俺の身体は、俺の心を裏切って、もっと深い快楽を求めてしまっていた。

  『んぶっ、あ、あっ……!』

  「あ、凪……っ!」

  湊斗はようやく口を離すと、俺の身体に手を這わせてくる。本物の女を抱くように、優しく、丁寧に愛撫されて、身体がどんどん高まっていく。

  だめだ、気持ち良すぎる……っ! 胸を優しく舐られて、乳首を弄られて、毛皮の匂いを嗅がれて。それだけで、俺は軽く達してしまいそうになっていた。

  「あ、凪……っ、凪ぃ……っ」

  湊斗はそう呟きながら、さらに強く抱きしめてくる。その腕から、汗ばんだ肌から、褐色の毛が生えてきていることにも、湊斗は気づいていないようだった。

  湊斗の身体からはもう、人間の匂いがほとんどしなくなっていた。ひと足先に狐になってしまった俺にはわかる。俺の鼻腔を満たすのは、獣臭いオスのフェロモンだけだった。

  それがたまらなく心地よくて、身体中をぞくりと快感が駆け巡る。

  ああ、この身体が、湊斗のものになれば……。

  「お主も湊斗も、すっかりその気じゃな……。うむ、湊斗も立派な狐になっておるようじゃぞ」

  狐の言葉通り、湊斗の身体も変化していた。

  赤褐色の体毛はもう全身に広がっていて、俺の手と結ばれた湊斗の手にも、黒い肉球の感触が生まれていて。

  頭から伸びる耳はピンと伸び、鼻先は黒く染まり始めている。

  「あ、ああ……っ、おれ、なんで……っ」

  湊斗は困惑している様子だったけど、俺を求める手は全く止まらず、むしろもっと激しく、動物的になっていく。

  先が尖って狐のマズルになっていく鼻先を俺の毛皮に突っ込んで、確かめるように匂いを嗅いで。

  「ここまでっ、染まりきるとはのう……。お主ら、よっぽど仲が良いようじゃ。処女は譲ってやるとするかの……」

  そう言って、俺の身体を操る狐はとん、と俺と湊斗を引き剥がすように湊斗の身体を押した。すると、湊斗は素直に、でも残念そうに、ゆっくりと俺から離れていく。

  湊斗の身体は完全に狐になりかけていた。ひらひらと揺れる太い尻尾が見えて、湊斗まで人間ではなくなってしまったことを実感する。

  「湊斗、一人で楽しんでいないで、ご主人様のチンポにご奉仕せい」

  狐はそう言うと、俺の身体を動かして、仰向けの体勢のまま脚を開く。そして、湊斗に見せつけるようにして、股間のモノをひくつかせた。

  それは、今まで見たこともないくらいに膨張していて、血管が何本も浮き出て、赤黒くなっている。先端からは、挿入を心待ちにするように、とろとろと透明な液体が流れ出ていた。

  湊斗は、ごくり、と生唾を飲み込むと、そっとそれに手を伸ばす。そして、躊躇いがちにちろちろと舌を伸ばした後、意を決したように口に含んだ。

  『ん、や、あっ……!』

  「んっ、ふ、んむっ……」

  湊斗の口の中は温かくて、柔らかくて……、気持ちよかった。さっきまでの優しい手つきとは打って変わって、激しい動きで俺自身が責め立てられる。

  喉の奥深くまで飲み込まれて、舌を絡ませて、吸い付いて。フェラなんて初めてのはずなのに、精液を搾り取ろうとするように、一心不乱に俺のチンポを責め立てる。

  ダメだ、このままじゃすぐイっちゃいそうだ……。

  「ふふっ、良い子じゃ。そのまま続けよ……。ほれ、もっと奥まで……」

  『やめっ、あっ、あっ……!』

  狐に操られるまま、俺は湊斗の頭を掴んで引き寄せる。湊斗の口の中に、俺のチンポが根元まで入っていく。

  湊斗の口からは、唾液なのか、俺の我慢汁かわからないものが垂れて、顔は真っ赤に染まって。俺の我慢は、もう限界に達しようとしていた。

  『や、だめっ、出るっ……!』

  「ふぁ、んぅっ……」

  俺が届かない声をあげても、湊斗は口を離してくれない。熱いものが腹の奥から上がってきて、俺自身を上り詰めて……。

  びゅくんっ、と勢い良く飛び出した大量の白濁が、湊斗の口内に叩き込まれる。それでも、湊斗は俺の腰にしがみついて離れようとしない。

  湊斗は俺のお腹の上に顔を埋めたまま、最後の一滴までも残さないように、ちゅうっ、と俺のペニスを吸っていた。

  長い、長い射精が終わると、湊斗はやっと俺の身体から離れた。そして肩を上下させながら、舌を出して荒くなった息を整えていた。

  『うむ、なかなか、良かったぞ……。さて、次はお主の番じゃな』

  「えっ……? あっ……」

  そうだ。今、イったんだ。

  身体が動かせる。俺の意思で。

  逃げるとか、俺と湊斗を元に戻すとか、数分前の俺ならそう考えていただろう。

  でも、湊斗にこんなことされて、それでこんなに発情させられて。もう、逃げようなんて考えは浮かんでこなかった。それよりもずっと強く、狐の本能に支配されたいと思ってしまった。

  「湊斗、俺、ダメなんだ。こんなことされて、どうしようもなく発情しちゃうメスにされちゃった」

  「凪……?」

  「もう、我慢できない。早く、俺を犯せよ」

  俺は仰向けになったまま、自分の秘所を広げて見せた。そこはもう、ぐしょ濡れになっていて。湊斗の視線を感じて、さらに興奮が高まってしまう。

  湊斗も俺の身体の変化に気づいているみたいだった。戸惑っているような、そんな感じが伝わってくる。

  だけど、すぐに覚悟を決めたように真剣な表情になると、湊斗は俺に覆いかぶさってきた。

  お互い、もう立派な狐なんだ。発情しきった異性の匂いを嗅がされて、我慢なんてできるわけないもんな。

  「凪……っ」

  湊斗は俺の顔の横に手をつくと、俺の目を真っ直ぐ見つめてきた。その目は、完全に獣の目だった。

  ああ、喰われる。俺の身体は、湊斗にめちゃくちゃにされるんだ。

  期待で心臓が激しく脈打っていて、呼吸はどんどん荒くなって。

  「んっ……」

  湊斗はゆっくりと顔を近づけてきて、優しく鼻先を合わせてくる。鋭くなった嗅覚が、お互いに、後戻りできないくらい発情してることを教えてくれる。湊斗はそのまま、俺の唇にキスをした。俺もそれに応えるように舌を出すと、お互いの舌を絡め合う。

  「ちゅっ、れる、じゅぷっ……」

  「んぶっ、ん、あ……っ!」

  ケモノ臭い互いの口内を味わい尽くすように、貪るように舌を絡ませる。それだけで、軽く絶頂を迎えてしまいそうなくらいに気持ちよくて。

  もっと、もっと欲しい……。湊斗の身体が、欲しくてたまらない。

  「ね、湊斗、欲しいよ……。はやく、っ……」

  限界だった。女の部分が切なくて、身体が熱くてたまらなくて、1秒でも早く、湊斗が欲しかった。

  湊斗はこくりと小さくうなずくと、俺の脚の間に身体を割り込ませた。そして、硬く勃起したチンポを、俺の膣口にぴたりとあてがってくる。

  来る。とうとう、湊斗と一つになるんだ。そう思った瞬間、ぞくりとした快感が背筋を駆け抜けた。

  「凪っ、挿れる、ぞ……っ!」

  湊斗は短くそれだけ言うと、腰を前に突き出した。

  「んっ……! あっ、入って、きたぁ……っ!」

  ずぶ、と音を立てて、湊斗のものが入ってくる。自分の指とは比べ物にならない圧迫感が襲ってきて、思わず声が出てしまった。

  痛いのかと思ったけど、全然違う。中を擦られて、体の奥まで入られて。快楽の波が押し寄せて、頭の中で弾ける。

  「あっ、あっ、んんっ……!」

  「はぁっ、凪っ……!」

  湊斗は腰を振り始めた。最初はゆっくりだった動きも、だんだん激しくなっていく。

  とん、とんっ、と、毛皮同士がぶつかり合って、ぐちゃ、ぱちゅっ、と水音が響く。結合部からはとめどなく愛液が流れ出ていて、それが潤滑油になっていた。

  「やっ、すごっ、あっ、んぅっ……!」

  「凪っ、凪ぃっ!」

  湊斗は俺の名前を呼びながら、ひたすらに俺の中を突き上げてくる。その動きに合わせて、俺も気持ちいいところに当たるように自分から動いてしまう。

  もっと奥まで突いて欲しい。もっと激しくして欲しい。もっと、もっと……。

  もう何も考えられない。ただ、目の前にいる湊斗のことしか考えられなくなっていた。

  俺は無意識のうちに、湊斗の首に腕を巻きつけていた。

  もっと深くまで繋がりたくて、身体が勝手に動いたんだと思う。でも、それは間違いじゃなかった。湊斗も同じことを考えてくれているみたいで、俺が引き寄せると、湊斗も俺を抱き寄せてくれた。

  「湊斗、おれっ、もう……」

  「うんっ、俺も、そろそろっ……」

  「一緒に、イこうっ……」

  「っ、わかったっ、んっ、んぅっ……!!」

  湊斗は腰の動きを早める。奥まで突き上げるようにして、何度もピストンを繰り返して。

  俺もそれに合わせるように腰を揺らす。一番深いところで、湊斗の精を受け止めるために。

  そして……。

  「あっ、イクっ、イッちゃうううううう!!」

  「うっ、出るっ、んんっ……!! うあっ……」

  びゅくんっ、と熱いものが注ぎ込まれる。それと同時に、俺の身体にも今までで一番強い刺激が走って……。

  視界が真っ白になって、全身が痙攣する。頭の中がスパークして、意識が飛びそうになる。

  だけど、それを繋ぎ止めるように湊斗が俺のことを抱きしめてくれる。湊斗の匂い、湊斗の体温。それで、なんとか正気に戻ることができた。

  俺の膣内で、湊斗のペニスはまだビクビクと脈打っている。俺のチンポもまた、だくだくと精を吐き出し続けていた。

  まだ射精が止まっていないみたいだ。そのせいか、身体に力が入らない。

  しばらくすると、湊斗は俺の中から自分のものを引き抜いた。その途端、どろっとしたものが秘所から溢れ出す。

  ああ、これが……湊斗の子種なんだ。そう思うと、愛おしくてたまらなくなった。

  湊斗は俺の隣で仰向けになると、大きく息を吐いた。その顔には、満足げな笑みが浮かんでいて。

  俺もつられるようにして、笑顔を浮かべてしまう。

  『お主ら、本当に相性が良いのう。まさかここまで上手くいくとは思わなんだ。身体が馴染んだおかげで、主導権の切り替えも好きな時にできるようになったみたいじゃな』

  そういえば、確かに。あれだけ激しいセックスの後でも、俺の身体は自由に動いていた。

  たぶん、完全に狐と俺が一体になった、ってことなんだろう。そしてそれは、俺がもう人間に戻れない、ってことを意味していた。

  まあ、それでもいい。今の俺ならわかる。身体は狐になっても、人間の姿に化けられることも、それで全く問題なく過ごせる、ということも。

  「湊斗、化け方わかる? ……いや、一応俺がご主人様って感じなら、俺が"化けさせる"方がいいのかな」

  「いや、なんか……、自分でできる気がする。身体が覚えてるっていうのかな。ちょっと待ってくれよ……」

  湊斗は目を閉じて集中し始めた。すぐに変化が現れる。さっき俺の身体がやりかけたみたいに、狐の湊斗がぐにゃり、と歪んで、元の人間の身体に戻っていく。

  そして、数秒後にはまた、元通りの湊斗がそこに立っていた。

  「……どう?」

  「すごい。完全に元通り。俺には匂いでわかるけど、多分誰にもバレない、と思う」

  「よかった……」

  

  湊斗はほっと胸を撫で下ろした。当然だ。俺にも、湊斗にも、自分の人生がある。

  もう「人生」じゃなくなってしまったけど、それを失わないで済むのは嬉しいことだった。

  「そんな場合じゃなくなっちゃったけど……、タイムカプセル、掘り起こしに行く?」

  「……確かに。すっかり忘れてたわ。本当の用事」

  湊斗が苦笑いしながら言った言葉を聞いて、俺も思わず吹き出してしまった。そうだった。元々の目的はそれだったんだ。

  何やってんだよ、俺たち。こんな夢中になって交尾しまくって。

  俺も起き上がると、自分の身体を見下ろした。毛むくじゃらで、ちんちくりんの、メスの狐の体。でも、不思議と嫌悪感はなかった。

  俺はもう、人じゃない。湊も、そう。そのことを改めて実感したけど、怖くはない。むしろ、湊斗と一緒になれたことが嬉しかった。

  人の姿に戻って、どちらからともなく手を繋ぐ。

  「行こうぜ。凪」

  「うん、湊斗」

  二人で手を繋いで、社の外へ踏み出す。この神社のどこかにタイムカプセルが埋まってて、その中には、ヒトだった俺と湊斗の大事な思い出が入っている。

  それを早く取り出して、懐かしさに思いを馳せたいと思った。

  湊斗も同じ気持ちなのか、その足どりはとても軽やかだった。