わたしはアンナ。

  わたしの名前はアンナ。

  ある日、悪の組織に拉致されて、動物の力を持った、改造兵士にされてしまった。ただ、脳改造は免れたらしく、わたしの意識は私のままのこった。

  学校に時々襲撃してくる、同じように作られた、改造兵士を日々撃退するのが日課になっている、のだが…

  『誰か!!』

  『助けてくれー!』

  『怪物だー!!』

  「また、現れたみたいね…いつになったら、諦めてくれるのかしら。わたしも失敗作に変わりないのに」

  そう言って、アンナは撃退の準備をはじめる。人気の無い所にに隠れ、いつものように、変身…するはずだった。

  『なに…してるの?アンナ。』

  ギョッとして、アンナは振り返る

  同じクラスの…ええと、誰だっけ?

  『怪物がくるよ!!逃げなきゃ!』

  いや、わたしはその怪物を撃退しに来たんだけど…参ったな。

  そうこうしているうちに、あちこちで悲鳴が。下級の改造兵士とはいえ、それでもただの人間が耐えられるはずもなく、犠牲者は次々と増えていく…

  『グガァァァ!!』

  『見つかった!!やめて!殺さないで!!』

  まずい…このままではこの名前も知らないクラスメイトまでも無駄に犠牲になりかねない…仕方ない

  「あなた…助かりたい?」

  彼女に質問すると

  『なにを言っているの?そりゃあ…』

  「なら、お願いだから、目をつむって、顔を手で覆っておいてくれないかな、危ないから」

  『は?どういうことなの?説明―』

  「時間がない。わたしもこの状態は、普通の人間と変わらないの!!後で説明するから!!」

  怪物が、じりじりと迫ってくる。鋭い爪で引き裂かれれば、わたしも無事ではすまないだろう…この状態では。

  『え?ええ?!』

  「どうするの?助かりたいの?助かりたくないの?」

  『わ…わかった!!助かりたい。目も瞑るわ。顔を手で隠して…これでいいの!?』

  「上出来。ゴメン。ちょっと汚れるよ!!」

  『なにを言って―』

  パァン!!

  瞬間。何か風船が破裂したような音とともに

  『ビチャチャ!!』

  女生徒の全身に何かが飛び散った

  なに、これ…?

  おそるおそる、手をどけて目を開くと

  『きゃああ!!』

  見ると、体中になにかの皮?と大量の血が。よく見ると、ヒトの目や歯、耳のようなものまで周りに飛び散っている。

  『なに!なんなの!これ!!』

  「ゴメン。だから汚れるって言ったんだ…」

  アンナがいたところには、周りに血しぶきや肉片が円状に飛び散り、その中央には血まみれの…人狼?が立っていた。アンナの声はその人狼?から発せられているようだ。

  (変身の仕方が、毎回皮膚や血を飛び散らせて破裂するって…どんな兵士だよ((泣)))

  アンナは改造兵士になり、アンナ『だけ』がこの変身方法だった。他のみんなは体が蠢くようにして変化するのだが、なぜかアンナだけが、もとの人間のカラダを弾き飛ばして、破裂した中から改造兵士の姿が出てくる。もとに戻るときも同じ。

  アンナの姿は、全身に毛をまとい、鋭いツメ、筋骨隆々、頭部には狼の頭と2m近い身長と、まさに『人狼』のソレだ。

  「近くにロッカーさえあればな…」

  ロッカーの中はおぞましいことになるだろうが。

  『グオオオ!!』

  敵の改造兵士が、鋭いツメを振るってくる。

  「フン…」

  アンナは一瞥すると、腕を振り上げ一瞬で敵の改造兵士を細切れにした。

  「下級兵士が、わたしの相手なんて務まるわけないでしょ。」

  アンナのものとは別の、敵の改造兵士の肉片が散らばったと思うと、ソレはケムリを上げて溶けるように消えてしまった。

  「大丈夫…?なわけないよね…」

  血まみれの女生徒をみて、アンナはひどく申し訳なく思ったが、女生徒にはキズ一つないようだ。変わりにホラー映画顔負けの、真っ赤などえらいことになっているが。

  『う、うん…大丈夫…だけど、シャワー浴びたい…かな。』

  女生徒の切実な思いである。助けてくれたヒトのものとはいえ、肉片や血まみれにされていい思いをするわけがない。

  「ごめん。まだ助けなきゃいけない人たちがいるんだ。もうちょっとだけ、そのままで我慢してくれないかな…?」

  アンナがそう言うと

  『わかった…でも、早めに帰って来てね。こんな姿じゃ、街を歩けないわ…』

  女生徒はイヤイヤそうに返事した

  「本当にゴメン!!」

  2mを超える筋骨隆々の人狼が、血まみれ肉片まみれの制服の女生徒に手を合わせて頭を下げるさまは、さぞ滑稽に見えたことだろう。

  「じゃ、行くから。どこかに隠れておいてほしい。」

  アンナはそう言うと、人外の跳躍力で、校舎の屋上に飛び去っていった…

  『…この鉄の匂い嗅いだまま、どこかに隠れろって…地獄じゃないの』

  女生徒は一人、ガックリとうなだれた。

  一方そのころ、アンナはというと……

  バァン!! またもや、教室のドアが勢いよく開くと、そこには先ほどと同じ、怪物が。

  しかし、今度は複数体いるようで、廊下にも何匹かの怪物が見える。

  どうやら、学校全体を襲っているらしい。

  『グガア!!』

  怪物どもが一斉に襲いかかってくる。

  「……うるさい」

  ボソリと呟いたアンナの一言で、辺りの空気が変わった。

  「……お前たちみたいな雑魚は、わたしの相手にならないよ?」

  アンナの、その言葉を聞いた瞬間。

  ドゴォ!! 一匹の怪物が吹っ飛んだ。

  「……次は誰?」

  その光景を見た他の怪物たちは、本能的に察したのか、じりじりと後退していく。

  「……来ないならこっちからいくよ!!」

  ダッ!っと駆け出すと、アンナは瞬く間に数匹の怪物たちを蹴散らしてしまった。

  『ギャイン!!』

  『ウゴア!!』

  断末魔と共に、床には大量の血しぶきが。

  「……あと少しだな……」

  アンナは、さらにスピードを上げる。

  『グオオオ!!』

  最後の1体が、爪をふるってきた。

  「遅い!」

  アンナはそれを軽くかわすと、カウンターで強烈な蹴りをお見舞いする。

  『グエ!!』

  『グチャ!!』

  敵は血を吐きながら、壁に叩きつけられる。

  「終わり……」

  逃げ遅れたヒトたちのものか、怪物たちのものかわからない血と肉が散乱した教室で、一切の気配を感じなくなったアンナは、変身を解除し、人狼の肉と血を撒き散らしたあと、そこには年頃の高校生の姿が。血まみれだけど。

  「ふぅ……」

  息をつくと、アンナは血まみれの自分の裸を見て、ため息をついた。

  「シャワー浴びたい……」

  ポツリとつぶやいた。

  アンナは、血まみれのまま、ロッカーから着替えを取り出して、シャワー室に向かった。

  「あ~スッキリスッキリ♪」

  血と汗を流してサッパリしたアンナは、鼻歌まじりに女生徒の所に戻ることに。

  「ただいま戻りましたぁーって……」

  アンナが見たものは、誰もいないロッカールームと、おびただしい量の血痕だけだった。

  「あの子、どこ行ったんだろう?隠れてろって言ったんだけど……」

  ロッカーの中を覗いてみるも、中にはなにもない。ロッカーを閉めて、あたりを見回すも、やはり彼女の姿はない。

  「う~ん……」

  アンナはしばらく考え込んでいたが、すぐに結論を出した。

  「ま、いっか。」

  考えるのをやめた。

  と、ゴソゴソと動く段ボールがひとつ。

  「まさか…」

  改造兵士になってからは嗅覚も上がっている。段ボールからは自分の匂い。あ、血と肉だけど。

  それと、女の人の匂いがした。

  「やっぱり……」

  アンナはその箱を開けてみた……すると

  『きゃああ!!見ないでぇ!!』

  中からは、血まみれの制服を着た女生徒が出てきた。

  「なんでそんなところにいるんだよ(笑)」

  女生徒は、ダンボールをかぶって、その中で震えていたのだ。

  『だって……怖いんだもん……』

  女生徒は涙目になりながら答えた。

  「でも、助かったんだね。よかった。」

  アンナは笑顔で女生徒に話しかける。

  『うん……あなたのおかげで。』

  あなた…私たちを襲ったりしないんだよね?

  「…もう一度、目の前で変身してあげようか?」

  アンナはニヤけた顔で女生徒をみつめている。

  『やめて!!もうこんな肉片まみれになるのはイヤよ!!』必死の形相である。そりゃそうだ。

  「冗談だよ。さ、帰ろうか。」

  『う、うん!』

  2人は仲良く手を繋いで、学校を後にした。………………

  「ねぇ君さぁ、名前なんていうの?」

  2人で歩き始めて、女生徒はアンナに声をかけた。

  『私の名前は、星宮アンナっていうの。』

  「へえ……アンナちゃんって言うの……かわいいわね。私は……美空って言うの。よろしくね。アンナちゃん。」

  『こちらこそ。』

  「じゃあさ、これから私のことは"お姉さま"と呼んでくれないかしら……?」

  『……はい?』

  アンナはキョトンとした表情を浮かべるが、次の瞬間には大爆笑していた。

  『あっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!』

  「なっ!なによ!!いいじゃない!!別に!!」

  顔を真っ赤にして反論する。

  『ごめんなさい。あまりにもおもしろくて。わかった。あなたのこと、今から"ミソラ先輩"』

  「せ、せんぱい?」

  今度は、恥ずかしそうにモジモシしている。忙しいヒトだな……。

  「そっか……後輩ができたのかぁ……」…………

  『……ところでさ、ミソラさんはどうしてあんなところにいたんですか?』

  アンナは、ふと疑問に思ったことを尋ねてみる。

  「あ、それはね……そのぉ……ちょっと……いじめられてて……」

  『そうなんだ。それで、学校にも行けなかったと。』

  「そういうわけなの……」

  『なるほど。だから、わたしが助けたときも、教室から出られなかったんだね。』

  「そう。あの時、すごく嬉しかった。ありがとう!」……

  「アンナちゃーん!また明日学校で会おうねー!」

  『はい!さよならー!気をつけて帰ってくださいねー!』

  「わかっているわー!アンナちゃんも、帰り道には十分注意するのよー!それじゃーバイバーイ!!」

  こうして、アンナの、なんでもない1日が終わった。

  いや、トモダチ一人…増えたかな。