白山羊半獣ユキシロと茶熊獣人ロワン

  ●

  「しっかしなあ」

  静かな森の中。獣道を広げるようにして草を踏み進む一人の獣人がいた。

  茶毛の『熊獣人』――ともすれば野生の熊とも間違われそうな姿も、しかし、発する声を聞けばそれが理性あるヒトの姿であるのだと理解できるだろう。

  「モンスターが全然いねーな、この森」

  「ですね。魔力の流れも綺麗ですし、近くに魔湧泉でもあるのかもしれませんね」

  弱いモンスターならば裸足で逃げ出しそうな凶悪な人相をする熊獣人も、その声で女性だと分かる。軽戦士の革鎧を身に付け豊かな胸を布の服に押し込んでいる彼女の後ろ。そう言いながらも周囲を警戒するように歩いているのは、人の上半身、その腰から下が山羊の四足の胴体となっている『山羊タウロス』はそう答える。

  ユキシロという名前の通り全身に白い毛を持っている彼は、少年のような幼さを感じさせるが、しかし、れっきとした大人である。

  その童顔な顔立ちには立派な山羊の角が生えていて、同種族であれば彼の年齢を間違えることは無いのだが、故郷を離れてみればその外見で苦労をしたことは数知れない。

  そんな彼とともに依頼を受けている熊獣人の女性――ロワンは、彼をそんな偏見の目で見ない数少ない信頼のおける仲間だ。ともに依頼を受けたのも今回が初ではない。

  「魔湧泉、って……なあ、この辺りの特性なら温泉ってことかっ?」

  とロワンが耳をぴこぴことはためかせて、勢いよくユキシロを振り向いた。輝く瞳には溌剌とした明朗さがこれでもかと散りばめられていて、ユキシロは彼女の歓喜に釣られるように笑みを浮かべては頷いた。

  「そうですね。恐らく近くに温泉が――」

  「あ、なあ! アレじゃねえかっ?」

  と、ユキシロが言い終わるやいなや。ロワンがふとその視線を森の奥へと向けた。その鼻をひくつかせているのを見るに、何かの匂いを感じ取ったのだろう。木々の間、その向こうには、確かに白く立ち上る温泉の湯気が見えていた。

  

  ●

  それは確かに温泉だった。

  魔力の循環地点。淀むことなく流れ続ける魔湧泉は冒険者にとっては貴重な休息の場だ。モンスターは寄り付かず、ならず者であってもよほど食い詰めているか極悪な相手でなければ襲撃もしてこない。時世や指名手配の情報を鑑みれば、ここで休息を取る事に危険は無い。

  「なあ?」

  だからユキシロは、ロワンが温泉に入ろうと提案したそれを快諾した。旅で汗と汚れに辟易していたのだろう。慣れているとは言え、ロワンも女性だ。長旅の依頼は堪えるだろう。そんな彼女が少しでも温泉で休めるように、と背を向けて見張りを開始したユキシロにロワンは不思議そうに声を掛けてきた。

  「ユキシロって服着て温泉に漬かんのか?」

  「え……?」

  衣擦れの音は聞こえていた。だからある程度装備を外して――つまりは衣服を脱いでいる状態だと思っているユキシロは振り返らないままに困惑の声を返した。

  そして、その言葉の意味をもう一度噛み砕いてから、ユキシロは恐る恐る確認する。

  「え、まさか一緒に入るっていう、つもりなんですか?」

  「そりゃそうだろ、近くにモンスターもいないって言ったのユキシロじゃんか」

  「い、いえ。そういう問題ではなくって……ぁぅっ」

  と振り返ったユキシロは、ロワンの脱ぎかけで止まっている姿を見つめて、所在なさげに視線を泳がせる。

  「ロ、ロワンさんの方がいつも前衛を担っていただいてるので、その、疲労も一入でしょうし……」

  と、まさかの混浴という可能性、そして、目に焼き付いてしまった彼女のラフな格好に、邪な想像を浮かべてしまったユキシロは、しどろもどろに混浴から論点を外すように言い訳を口に出す。

  だが、それはむしろ逆効果だったのだろう。ロワンは訝しげに首を傾げていた。

  「何いってんだ? アタシなんかよりアンタの方が疲れてんだろ」

  「え、……いえ。ボクは後ろから魔法を打ってるだけだから……」

  ユキシロがそう言うと、ロワンは街の不良が蜘蛛の子を散らすように去っていくような顰めっ面をユキシロの鼻頭に近づけた。

  一瞬、恐怖に瞳が震える。とはいえ、ロワンがいきなり乱暴を働くような女性ではない事を知っているユキシロは、その野生熊と遜色無いような強面を不思議そうに見つめ返していた。

  そんなユキシロに呆れたようにしてロワンは言った。

  「あの……?」

  「はあ、良いから早く脱げって。まあ――」

  アタシに脱がされたいなら別だけど? と。

  からかうように見つめるその目は、まっすぐにユキシロを見つめている。真剣そのもの。まるで戦闘の最中に時折見せるユキシロが確かに自分の後ろに居ることを確かめるような。

  真剣な眼差し。

  「……」

  そんな彼女に思わず見惚れるユキシロの目の前でロワンはさも、ふとくしゃみをするような気軽さで、そのシャツを捲りあげて脱ぎ去った。

  「ふ、ぇえ!?」

  ユキシロの眼前で、その熊の被毛に覆われた豊かな丘陵が弾力良く弾む。毛量の薄い先端、その毛の隙間から見える桃色の蕾を無意識の内に目で追ってしまったユキシロは、それを自戒するように目を逸した。

  顔が一気に赤く染まリ上がるのが自分でも分かる。

  それはロワンの裸体に淫靡な妄想を働かせてしまったからだけではない。心配かけたくないと疲労が蓄積してしまっている事を隠していたユキシロが、その擬態を見抜かれていたという事への気恥ずかしさでもあった。

  ロワンの気遣いはいわば自分の不徳であり、そして、ロワンの優しさでもあるのだ。

  ユキシロはそんな自省を覚えながら、彼女の優しさに甘えようと少し重い手足を動かして服を脱いでいく。

  ただ、押し弱いだけなのかも。なんて考えからできるだけ目を逸らすようにしながら。

  

  ●

  実際にロワンから見たユキシロは、ロワンの動きに対応しながら常に周囲へ注意を向けている。目の前の敵との戦闘に集中しがちなロワンの死角を埋めるように動いてくれるユキシロは、割りと好き勝手に動くロワンと比較して、一戦闘ごとに累積する疲れは大きいだろう。

  だから、入るのならユキシロが先にと思っていた。だが、この周辺の危険の少なさを考えて、一緒に入っても大丈夫かという判断に至ったのだ。

  その思考をユキシロに伝えたなら、きっと「ロワンさんは女の子なんですよ」とか言ってくるのだろう。それが簡単に想像できてむず痒い心地になる。

  「ったく……大抵のバカはアタシが素っ裸で浴場に乱入したって気にもしないってのに」

  「……? な、何か仰いました?」

  「なんも」

  ロワンは、思わず口を突いて出たひとりごとが聞こえていなかったことに、安堵するように肩を竦めた。体を白む湯に沈めたまま、顔を空に向けるようにしてユキシロに振り仰げば、そこに彼はいた。

  全身が白い毛に覆われた半人半山羊形態のユキシロ。その全身を見上げて、ロワンは素直に綺麗だと思った。度重なる野営で汚れはあるが、それでも、星明りのようなその毛色は美しく、そして少し羨ましくもあった。

  硬い毛質の茶色の毛並み。それがロワンが持つ毛だ。

  それに負い目を感じたことも無いし、不便を感じたことも無い。ただ、ユキシロと比べれば『醜い』となるのだろうとは分かる。比べても意味の無いことなのは知っているし、彼もその容姿で苦労があるという事も知っている。

  なぜなら、ユキシロと初めて出会ったのも、彼がその容姿で他の冒険者に難癖を付けられていた場面だったのだから。ロワンがその雑言に嫌気が差して机を叩き付けるまで震えていたユキシロが男で、成人していると知ったのはその後、居づらくなって適当な依頼に出発した後だった。

  魔法職の装備は男女差があまりなくて分かりづらいのだ。それでも、声を聞けばユキシロの性別を間違えることはなかったが。

  ともかく、彼が男であることは間違えようがない。ロワンは、ゆっくりと恐縮しながら、微かに濁る湯に脚を浸けるユキシロの、その下肢の間にぶら下がる膨らみを横目で見ながらそう思った。

  彼は男だ。種族も違えば性別も違う。そもそも、自分と比べる事変な話なんだという事はわかっているが、それはそれとして、彼のような『綺麗』な毛に憧れる事も事実なのだ。

  「ふう……、気持ちいいですねえ」

  と、体を沈めて気の抜けた声を発するユキシロにロワンは手を伸ばしてその腕を取る。唐突な行動に無警戒な疑念を表情に浮かべたユキシロが説明を求めるような沈黙を齎した。だが。

  「あー、っと」

  ロワンは答えに窮していた。なんとなくその手を取ってみたかった、というのが正直なところだ。とはいえ、ただ手を取っただけ。というのはまるで幼子のようで恥ずかしさが残る。

  「……、ほら、来なって」

  「え、わ、ちょ……っ」

  そこでロワンは、その腕を引き寄せると後ろから抱きつくようにしてユキシロを引き寄せていた。

  細い体。戦士として鍛えたロワンとは全く違う体だ。

  「ロワン、さん……? ぁ、う」

  柔らかな毛並み。剣や弓を持つタウロス種も知っているが、ユキシロのような矮躯なタウロス種は殆ど知らない。まあ、そんな手合は基本的に冒険者なんて職に飛び込んだりはしないのだろう。

  その肉体の触り心地を堪能するロワン。

  少しずつユキシロの反応が変わっていく事に、彼女は未だ気づいてはいなかった。

  

  ●

  「……ん、ぅ」

  ユキシロは状況を呑み込めきれていなかった。急に抱き寄せられたかと思えば、ロワンの手指が自分の体を柔く這いずっているのだ。

  しかも、ロワンの腕の中ということは、必然的に彼女の豊かな双房を背中に感じると言うことだ。直で感じる彼女のそれは、温泉の中にあっては僅かに冷たさを感じさせるようで。きっとその触れ合った部分が温泉以上に発熱しているのだろうと感じてしまう。

  「あ、の……っ」

  当たってます。なんてことが言えるはずもなく言葉に詰まる。

  「なんだよ、良いじゃん。減るもんじゃないんだし」

  毛並みの事を言っているのは分かる。そうじゃないのだ。ユキシロの脳内に、さっき見た揺れるロワンの張りの良い胸丘がありありと浮かび上がる。それが自分の背中に押し付けられている。感触でその微かに見えた先端の肉芯がどこにあるのかすら感じ取れてしまうような圧力。

  程よい筋肉による弾力と、圧倒的な柔らかさがロワンの腕が動く度に流動的に離れて、ひっついてを繰り返す。

  「……っ、ぁ」

  ユキシロはれっきとした男だ。ひ弱で頼りなく見えるだろうが、それでも、魅力的な女性と交わる事を夢想しながら雄欲を慰める事も珍しくないような淫欲を知る男だ。

  (おっぱい、……ロワン、さんの……)

  そんな健全な雄としての欲情をロワンに向けた事も一度や二度だけではない。夢にまで見たような彼女の乳房の感触に、山羊の胴体の下で伸び上がる細長い陰茎がひくひくと漲っている。

  キュウ、と温か水の浮力に揺蕩う肉袋が胴体に吸い付くように上っていく。ユキシロの体は開放の時を今か今かと待ちわびてその時を急かしてくる。

  (……っ、出る、……我慢、でも、出ちゃ……っ)

  勃起に気付かれていなくても、それを水中に発射してしまえば流石に気付かれるだろう。ユキシロが必死に射精感を押さえつけている、その時。

  「ひゃ!?」

  ロワンの指先がユキシロの胴体の一部分を弾くように過ぎ去った。途端、不意の魔法を受けたように全身を硬直させてユキシロは甲高い声を発していた。

  「お、乳首発見。なんだよ、何固くしちゃってんの?」

  「ふあ、ッ、や、だめ……っ」

  そんな反応が面白いのか、ロワンはその両胸の先端を指で刺激していく。緩急と強弱をつけて、どの程度が一番反応がいいのかと。ゆるゆると首を振るユキシロに、しかしロワンはそれを止めはしない。

  「なんだよ、さっきアタシのガン見してたろ? おあいこだって」

  「いや、ちが……っ、ぁ、あっ……ん、ぅ……ッ!」

  その、小さな突起をつまみ上げた瞬間。ロワンの体が一際大きく跳ねた、かと思えば、全身で二、三度震え、そして。

  ユキシロは蹄が削れるような青白い閃光と共に、無力感と開放感に包まれた。

  「え、……イッたの?」

  「……ッ」

  純粋な疑問。ユキシロはそれに深く胸を貫かれたような錯覚を覚える。まるで雄としての矜持を嘲られたような気がしたのだ。まだ未熟な少年のような姿をしていてもユキシロとて立派な成人した男だ。

  濁る湯の中で一際白い塊が漂う湯。それをロワンの大きな掌で掬い上げられて、ニュチ、クチュと、その感触を確かめるように弄ばれる音に、しかしユキシロの情欲は萎縮するどころかますますその昂りを増していく。

  「ふうん……まあ、いいや」

  とロワンは、大して気にした様子もないままに脱力するユキシロをお湯から引き上げていた。これ以上何をするのかと、もはや傍観するような心地でユキシロは次の彼女の言葉を聞く。

  「体、洗ったげるね」

  それじゃ、と前置きをしたロワンはそう言った。それを断る事は、ユキシロにはできなかった。

  

  ●

  その洗い方というのは酷いものだった。

  常にその豊満な胸をユキシロに押し付けるような距離でユキシロの体を擦るのだ。その腹や首、脚を優しく洗い上げながら、悪戯に時折下肢に伸びたままの山羊らしく細長く飛び出た雄茎を滑らかに撫で付ける。

  「ぁ、う……」

  その度震えるような声を上げるユキシロに、ロワンは次第に自分の欲が高まっていくのも感じ取っていた。湯ではない湿り気が、秘部の割れ目から染み出してきている。微かな疼きに指を添えれば、その蜜肉は敏感にロワンの自覚を歓迎してみせる。

  さっき、ユキシロの体を弄っていたときも、本当はこの展開を考えていたのだ。紛れもなく彼を欲していた。予想外の内に、湯の中に放たれた子種を掬い上げたとき湧き出した衝動にロワンは素直に従う事に決めた。

  「なあ、……ユキシロ、アンタ。女と寝たことあるか?」

  「ふえ!? 急に、な、何を言うんですか!?」

  「はは、いいよ。答えなくても」

  今の反応で大体分かるさ。と言ってから、ロワンは尻を地面につけてしなだれかかるようにユキシロの耳元に口を寄せる。後ろに手を突き、その熊獣人の太く豊かな体を隠しもせず、ロワンはユキシロの雄の象徴を愛撫しながら息を吸った。

  「今度は、ユキシロが洗ってくれる番だろ」

  地面に横たわりながら、ロワンは己の秘部に軽く指を這わせる。男女の営みを深く知らないユキシロにとってもそれが明らかな挑発であることは分かる。

  乾いた喉に押し流した唾液がギュルリと粘っこい音を立てる。ゆっくりとユキシロは迷いなくロワンの体に跨っていく。

  「は、っ……、はっ」

  焦れるような声がユキシロの喉から漏れる。

  そこからの行動に関してロワンに許しを請うような野暮はなかった。ユキシロは必然、そうあるような流れでそのレイピアのごとき山羊杭をロワンの秘裂へと宛てがった。

  

  ●

  ロワンは押さえつけられ半ば犯されるようにユキシロの雄茎を受け入れながらも、確かに悦びと感嘆を覚えていた。

  細長い山羊の男根。それが自分の中に押し入ってくる。見上げれば、潤んだ目で睨みつけてくる雄の姿。その目はロワンを慮りながらも男が女を求める熱烈を宿していた。

  アタシを女として見てくれている。そんな悦びと、仲間として信頼はしていたユキシロという青年がれっきとした雄であるのだという感嘆。

  全身を暖かな粗い布で包まれるようなくすぐったさ。そして暖かさ。

  「はあ、はあ……ッ」

  荒い息が振りかけられる。温泉で温められたユキシロの吐息。熱ぼったく揺らいで、ぎらぎらした光でロワンを見つめるその瞳に、ただ愛しさが募っていく。体内を暴かれる違和感。冒険者のバカな男達と夜をともにしたことは何度もある。何の感慨も無い、互いの欲とメリットを満たすだけのベッドだ。互いの目を見たような覚えもない、その意識の矛先をはっきりと感じたこともない。

  「ぁ……ッ、……ぅ、ん」

  機械的に声が漏れる。だが、そうして漏れる声にも今は感情が宿っている気がした。ロワンの胎の奥。そこに宿る熱が挿し込まれるユキシロの熱と繋がろうとして腕を伸ばすように広がっていく。

  「ロワン……さん……」

  痛みは感じない。勃起しても細長いままの山羊の陰茎はほぼ抵抗なくロワンの蜜肉の中へと飲み込まれていく。だが、その熱はこれまで感じたことのない程に熱く燃えていた。いやもしかしたら、ロワン自身が熱を発していて、それをユキシロが受けているだけなのかもしれない。

  むしろ、そうであってほしい。

  そう思うほどに、ユキシロに名前を呼ばれることでロワンの体は脈打っていた。ロワンは、潤むユキシロの目を慈しむように、その頬を撫でた。

  「なあ、ユキシロ……。アタシを……アンタの、好きにしてくれよ」

  山羊の前肢がロワンの胴体の横に、そして人の腕がロワンの肩の両脇に添えられている。ロワンには見えていた。ユキシロが時折視線を

  向けるその先を。

  ゆっくりと彼の端正な口がロワンの胸へと落ちていく。重力で胸骨に広がった水ようかんのような豊かな胸、その先端へと白い歯がゆっくりと閉ざされる。

  「は、ぁ……っ」

  瞬間。電流が奔るように全身の血管が縮み上がる。満たされるような快感が体を包み、思わずロワンは拒絶感を与えないようにと弛緩させていた膣肉をも締め上げた、その途端。明瞭に感じるユキシロの獣欲が激しく脈打つ。

  パパ、と花火が散るような一瞬。

  「あ、ぁ……ッ!」

  天を仰ぐような声とともに、ドュプンッ! とそれが跳ねては熱い迸りが駆け、体壁にぶちまけられる感触が全身に響き渡る。先程湯の中にあれだけ放出したというのに、はっきりと粘液の塊が感じられるような量が柔襞の中へと注ぎ込まれていくのを体感していた。

  ユキシロの体を抱くように、その余韻を噛み締めていたロワンは、膣内の変化に気がついた。

  ぐぐ。と一瞬、緩んだと感じたその雄杭の感触が復活する。相当量を吐き出したはず。なのに、ユキシロはまだまだ足りないとばかりにすぐさま元気を取り戻していたのだ。

  「……すみません、ロワン……さん、っ」

  謝罪するユキシロ。そんな彼の頭を撫でてから、その豊満な胸を弄る小さな手に掌を重ねる。

  「アタシも、もっと欲しいからさ」

  上気した頬。興奮を隠しきれないその瞳にロワンは、紛れもない雄を見出す。

  女のようだと絡んでいた酒場のバカな男達も、可愛らしいと頬を緩める斡旋所の女達にも、教えてやりたい。

  「いいよ。全部、アタシの中に頂戴」

  ユキシロは立派な雄だ。紛れもなく今、彼は優しくも激しい雄になったのだと。

  

  

  ●

  「無事に依頼達成っと。はー、暫く長旅の依頼は勘弁だね」

  とロワンは、肩をグングンと回しながら体を伸ばす。依頼達成の手続きが終わり、一先ずの生活資金が手に入った。これをどう動かすかは、明日から考えれば良いだろう。

  「あの、ロワンさん」

  「ん、なんだ?」

  おずおずとユキシロは、去ろうとするロワンを呼び止めていた。

  酒場で適当に食事を済ませて、行きつけの宿にでも行くかと考えていた矢先。今までなら、そんなタイミングで話しかけてくることはなかった。

  せいぜい「お疲れ様でした」だの「またよろしくお願いします」だのといった社交辞令的な言葉だけだったのだが、今回はどうにも違うようだった。

  「今日は、あの……」

  言い淀む中で、ユキシロの目がキッと強い光を帯びる。

  「一緒の宿に泊まってくれませんか?」

  白い毛髪に色白の肌。そんな薄い色素に浮かぶ朱色が綺麗に映えている。

  そういえば、あれから旅の途中は何もなかった。あの森を抜ければ再びモンスターが襲い来る道のりだ。忘れていた訳では無いが、時間を置いたせいでむしろ冷静に始終を思い出してしまい、顔から火が出るような感覚がある。

  それでも、ロワンは頷いてユキシロの赤くなった頬を撫でる。

  「……いいよ」

  ああ、こういう時は便利だな、と。

  ロワンは心のなかで、自分の毛色が赤色を透かすことがない事に感謝を述べていた。