11月に入って高校のブレザーだけだと、寒さを凌ぐのが少し困難になってきて学生の中にはマフラーを巻き、またブレザーの上にコートを羽織ったりする生徒もいる。
そんな中、赤野友紀は寒そうにズボンのポケットに手を入れながらも、マフラーもせずコートを羽織ることもせずに登校していた。
「赤野君、おはよう!」
「あ、先生・・・おはようございます」
俺の好きな白虎、一条大河。
体育教師で昔は柔道をやっていて、その名残か胸板は厚く、とても温かい人だ。
「ポケットに手を入れっぱなしにすると転んだ時に危ないよ」
「いやぁ寒くて・・・」
「そんな格好だからだよ。マフラーぐらいしなよ」
「マフラーって苦手なんだよな」
暑がりでも寒がりでもない友紀は人並みの体感温度を持っているが、頑としてマフラーはつけたことがなかった。
「なんかマフラーって肩が凝るんだよ。首元も凄く苦しくなるし。手袋とかコートならいいんだけど・・・」
「じゃぁそれつけてくればいいのに!今の時期だってもうコート着てる人は居るよ?」
「そうなんだけど、まだちょっと暑い。コートも手袋も俺には早すぎる」
「そうかーじゃぁ今週末辺りかなり寒くなるらしいから、その時ぐらいからつけはじめるんだね」
やれ暖房機が、やれ風邪っぴきが、などの他愛もない話を学校に着くまでする。それが俺と一条先生との小さな日課だ。登校時間が合わずたまに朝の会話ができない日もあるが、その時は帰りに一緒に帰るなどして他愛もない話をするのだ。
生徒と教師。
体育教師である一条と中々合わない上に違う学年の教師との交流など、そうそうあるはずがない。それなのにいつも話している。
それが友紀にとってはこの上ない幸せなのだ。
そうして二人が話していると二人は学校の校門をくぐり、職員入口と生徒用玄関の分かれ場所に来る。
「じゃぁね!今日はお昼に職員同士での話し合いがあるからご飯一緒に食べれないけど帰りは一緒に行こう!」
「はい!待ってます」
そう元気よく答えると先生は嬉しそうに職員玄関へと向かった。その後姿をちょっとだけ見て自分も教室へと向かうが、表情は少し暗い。
まさかお昼に職員同士での何かがあるとは思わなかった。完全な誤算だった。
「はぁ・・・仕方がないか」
昼に一緒に食べれないとわかって落ち込む友紀。しかし、そんなことは今に始まったことではないし何度も経験したことだ。それでも
「やっぱ残念」
放課後へと思いを馳せながら教室に向かう。
受験間近ということもあり、友紀のクラスも、友紀自身も勉強に熱を入れ、授業中はピリピリとした緊張感と焦燥感、未来への不安が入り混じり気持ち悪くなるほど淀んだ空気が漂っていた。しかし、それも4限の授業が終わりを告げるチャイムが鳴り響き廊下が騒がしくなると、淀んだ空気は消え去り皆が昼ご飯を楽しむほのぼのとした空気になる。
友紀は凝り固まった体を伸ばして解し、昼ご飯を友人と共に食べて済ます。楽しくないわけではないが、いつもとは少々味気のない食事だった。久々に友人と食べたのに味気ないって言うのは少し薄情なのかな?っと、少し自己嫌悪に陥りながらも教室へと戻る。
「あれ?まだこんな時間?」
時間を見れば昼休みはまだ30分もある。勉強をしててもいいが、少々それも疲れた。
どうしようかと思案しながら校内を歩いている内に図書室の前に来てしまっていた。まだ30分近くもあるからと、何の気もなしに図書室に入る。
この学校入りたての頃は結構通っていた図書室だが、高校2年になり勉強が忙しかったりと本に構う時間がなくなりそれ以来全く来ていなかった。
図書室内は外の喧騒と相まってか、ものすごく静かで空調と暖房機の機械音が耳障りだ。
「何か面白いもんないかな?」
なんの目的もなく図書室に入ってきたものだから、棚から棚をただただ見て探して行くしかなく、少し退屈だ。
「おい、もう教室戻ろう?いい時間だし」
近くに座っていた女子の会話が聞こえ、自分もつられて腕時計を見ると昼休み終了5分前になっていた。これは確かに戻って次の授業の準備をしなければならない。
「次、移動教室じゃん!すぐ行く!」
催促された子は急いで戻る準備をしてそそくさと図書室を出ていく。しかし、テーブルに一冊の本を残して・・・
「本忘れるなよな」
そう小声で呟いて友紀は忘れた本を図書のカウンターに届けようと手を伸ばすが、その手を止める。
『恋愛育成論~円満の基盤を作る~』というタイトルが友紀の心を揺さぶった。
周りを見渡して本を手に取る。さっきの女子の持ち物ではなく、貸出図書らしく裏には学校のシールが貼ってあった。
それを確かめると友紀は本を開き、目次を読み気になる項目を見つける。
・飽きさせない為には―イベント活用術―
少し震える手でページを捲っていく。
「イベントを一緒にすると絆が深まる・・・」
段々と内容が気になり始めるとチャイムが鳴る。
気にはなるが、授業もある。しかし・・・
「昼休み終了のチャイムが鳴りました!残っている人は速やかに教室に戻ってください!」
図書の先生の声が図書室に響いた。
授業が終わり、帰りのHPが終わるとそそくさと学校の屋上に人に見られないように背を丸めて現れた熊人。周りに人が居ないことを確認すると、バッグを床に置き本を取り出す。
「先生を驚かせてやろう」
そう言って友紀は図書室で偶然見つけた恋愛育成論の本を開くと無我夢中で中を読み漁る。
表紙が赤色の丸い文字のフォントで書かれたタイトル。いかにも女性に読まれそうな本。そんな本を、鼻息荒く、ニヤニヤしながら、太った熊獣人が股間を膨らませながら読むのは実に気持ち悪い。そんなこと百も承知で友紀はフムフムと読んでいく。
「いつもアタックしてはいけない・・・・・・間を読むことが大事・・・・・・イベントだからと押し付けない・・・・・・」
300Pはあろう本を一時間足らずで読んで急ぎ足で図書室に返却すると、また屋上に戻り大河が来るまで空で読んだ内容を思い出す。
がちゃ・・・
校舎に生徒がほとんど居なくなった頃、息を切らせた一条先生がやってきた。
「ごめんごめん、遅くなっちゃた。雑務が多くて・・・」
「いいんですよ先生!」
そう言って近づくと先生の手をさりげなく握る。
「う、うぇ!?あ、ああ、赤野くん・・・」
「どうしたんですか?」
「君、いつそんな積極的になったっけ?」
「そうですか?」
そう言って手を強く握りながら下駄箱まで向かう。明日は明日で大変なのだ。
次の日、友紀はいつもより早く登校してその道中にコンビニで買い物をすると、大河にお昼を一緒に食べようとメールを送る。ニヤニヤしながら今日のお昼休みを心待ちにする。
しかし期待はあっさりと裏切られる。
三時限目授業終了後に先生からのメールで今日も昼ご飯を一緒に食えないと言うことが分かった。何でもまた教員同士での会議だそうだ。
仕方がないとはいえ、今日に準備したのが無意味になってしまったのが残念でしかたがなかった。
「はぁ・・」
ため息をついて我慢しようとしたが、理不尽な用事で計画が破綻させられたことへの怒りとぶつけられない怒り、先生に怒りたくないのに怒りたくなる悲しい気分。
それぞれが入り混じって泣き出しそうになる友紀は、何とか泣かないように我慢しながら授業を受ける。
全ての授業が終わって、友紀は大河に今日は用事があるから一緒には帰れないとメールを入れてすぐに家に帰った。
残念な気持ち過ぎて会いたくないって言う気持ちもあったが、塾で行われるテストのせいですぐに帰らなければならなかったのだ。
今日は会えなかった・・・
しょんぼりした顔で友紀は家に帰ると怠い塾を済ませる為に急いで着替えてまた出かけるのであった。
「では、今日の授業はおしまいです。家での復習をしっかりやってください。では!」
そう塾講師が言うと颯爽と教室を出ていき、その後を様々な生徒が出口に殺到する中、俺はノートに黒板の文字を書き留め、言われたことの重要な部分を書いていく。
なんとか終わらせ、追い出されるように教室を出ると自習室に向かうが、そこも満席で他のベンチやらもいっぱいで帰るしかなくなってしまった。
親に勧められ、つい最近入った塾だが、授業が早すぎて話にならない上に皆が殺気立ってて息苦しい。週に一回のテストの日で余計に塾内は殺気立っていて、胸やけのような気持ち悪さがこみ上げる。
「ここの塾すごいよな~毎年一流大学に沢山の子を送ってるんだもん」
「へぇ~私塾行ったことがないからわかんないな」
塾の玄関を出ると男女のカップルが楽しそうに話しながら前を通り過ぎる。大学生だろうか
「ちぇ・・・良いもんだよな・・・」
堂々と手が繋げて
そう言葉を繋げたかったが、悔しさがなぜだかこみ上げてきて言えなかった。
羨ましかった。何も縛られずに、好きに恋愛して、好きな人とちょっとだけでも長く居る。
大学生にも大学生の大変さがあるのは知っているが、それでもちょっと先輩なカップルがとても羨ましく、今の自分の境遇とを比較すると妬ましいのだ。
そこまで考えると、自然と友紀の目頭が熱くなる。
「せ、せんせぇ・・・」
小さく呟く。通行人が少ない道だが人は居る。だから控えめに言う。誰も聞いていない。この苦しみを誰かに癒してほしい。
宙を見ながら歩いていたせいか、何かに躓き鞄の中をぶちまけてしまう。学校帰りの鞄のままだから中身が多く、拾うのが大変でそのことで余計に惨めに感じてしまう。
先生に渡す為にこしらえたラッピングされた袋が少し破けてしまっていた。その上、ポツリポツリと雨まで降り始めた。
「くっ・・・泣くもんか・・・」
自分に言い訳するように熱くなった目頭を無視しながら、散らばった私物をかき集める。雨は徐々に強くなっていき道行く人々は走って雨宿りを探して行く。その光景は友紀の惨めな気持ちを更に強めていく。
「赤野くん」
拾い終わった時に愛しい人の声と肩に乗る温かい手が急にやってきた。それだけなのになぜかねぎらいの言葉をかけてもらったような、深く優しい気持ちになった。
「せ・・・先生!」
なぜか後ろには一条先生が居た。
「な、なんでこんなところに!?」
「ん?前に塾行き出したって言ったろ?だから迎えに来たんだ。この時間までは塾に居るとも言っていたし・・・」
そこまで言うとなぜか視線を逸らす。
「ほんとは・・・まぁいいや、早く行こう。体が冷えてしまうよ」
そう言う先生にさっきまで堪えていた涙が溢れてきてしまった。
いきなり泣き出す友紀に大河は狼狽するも、雨で濡れないようにと宥めながら急いで自分の車が停めてある立体駐車場まで連れていく。
「も、もう泣き止もうよ」
「な、泣き・・・止んだよ」
駐車場の5階まで上がって人気のない立体駐車場の中を二人は歩く。
いつの間にか繋いだ手を引きながら大河は自分の車へと連れていく。大河の車は4WDで体のデカい二人が入ってもまだスペースがあるほど大きな車で、友紀を後部座席に座らせると自分も後部座席へと乗り込む。
「え、運転は?」
「運転していて欲しいのかい?」
大河は質問には答えず、質問で返すと友紀は小さく首を振る。
すると先生は静かにタオルを取り出すと、濡れた俺の顔や腕を拭いてくれる。車内に沈黙がなぜか心に響いた。長く続くのかと思ったが意外と短く、一条先生から話し出した。
「今日さ・・・お昼に何かしようとしてくれてたの?」
唐突なことで固まる友紀。その友紀に紙を渡す。ルーズリーフに書かれていたのは、友紀がまとめた恋愛育成論の重要な項目だ。
「あ、それ!」
「さっき転んだ拍子に落ちてたよ」
「あ、あ!」と焦る友紀を抱きしめる。片手で器用に後部座席の背もたれを倒すと押し倒すように友紀を寝かせる。
「せ、先生・・・」
「ごめんね。私のことを思って何かしてくれたんでしょう?ごめんね」
「だ、だってしょうがないじゃないですか。用事があったわけだし・・・」
そう言われて胸が痛む大河。友紀はそれを感じ取る。
「実はね、今日の昼休みは早くに用事が終わったんだ。30分程余裕はあったんだ・・・」
「ど、どうして」
あまり嘘は言わない先生だから衝撃を受けた。しかし、よくよく考えると疑問にも思う。どうしてそんなことを今言う気になったのか・・・
「ごめん!でも・・・どうしても・・・自信なかったんだ!」
俺に負い被さるようにしてみる先生はみるみる元気がなくなっていく。いつものほんわかとした笑顔からは考えられない寂しい顔だった。
「いつも私に屈託ない、真正面に向き合ってくれる赤野君の思いに応えられるのか。私なんかと付き合うより他の人がいいんじゃないかと思ってたんだ。だから君の元へ行くのが気が引けたんだ。応えられなかったらって思うと嫌だったんだ」
「先生・・・」
「でも、決めたんだよ。君と付き合おうって・・・初めての恋愛だし、男同士だからどうすればいいのかわからない。でも付き合っていきたい!」
少し潤んだ先生の目と合う。すると強引にキスをされる。
いつもの先生ならあり得ない強引さと力強さ。舌が入ってきて、舌と舌がくちゃくちゃと音を立てながら絡む。
初めてのことに慌てながらも、興奮していく友紀に大河は空いてる手で体をまさぐる。別にどこを攻めようとは考えずに、ただ撫でる様に触る。幼稚な愛撫でも友紀にとっては快感に変わり、ズボンの股間部分がきつく張り詰める。
息苦しくなってきた頃に長いキスを終え、俺と先生との間にできた唾液の橋が切れるのを眺める。
「赤野君、大きくなっちゃったね」
そう言いながら俺のチンコを服の上から握ってくる先生。その先生も硬くしているようで、俺の膝に当たっている。
「先生も大きくしてるじゃん///」
先生の胸に顔を埋めながら、恐る恐る先生のチンコを触る。
初めての先生のチンコは、固く、熱く、太って贅肉で少し埋もれてるのに大きい。ビクビクと鼓動と共に震える感覚に気持ちが昂る。が
「さて、今の私にできることはこれくらいだな」
「そ、そんな!」
「ほんとはね・・・君が在学中は一線超えるつもりはなかったんだが・・・」
そう言ってまたキスしてくる。キスの時点で一線は超えているような気がするが、そんな野暮なことは勿論言わない。
「く、咥えるとかは・・・まだ無理だから手で抜いてあげるだけだからね」
顔を赤らめながらも俺のズボンを脱がして、ギンギンにそそり勃つチンコを優しく握るとゆっくりと上下に扱く。
「ん、先生・・・」
「大丈夫、かな?気持ちいい?」
「はい」
好きな人にされて気持ちよくないわけがない。
快楽で余裕のない友紀は喘ぐだけで余裕がなくなっていく。大河が手を上下に動かす度に、友紀の腰が動き鈴口からはコンコンと先走りが流れ手を汚し、車内に粘着質の音を響かせる。友紀の荒い息と熱気に中てられて大河の股間もきつく張り詰め、先走りでズボンとパンツを濡らす。
「んぅ!?で、出ちゃう!」
「うん、大丈夫だよー」
唐突に友紀が叫ぶように言うと、待ってましたと言わんばかりに大河は手を動かすのを早める。
「い、イクッ!せんせぇ・・・!」
そう言うとプクッと亀頭が膨れると濃い精子を腹、足、顔に飛ばし、座席にも垂れる。
「沢山出したねーしかも顔まで飛ぶほどなんて、若いって羨ましいなぁ」
顔まで飛ぶのが若いってことなのか?
疑問に思いながらも初めて抜いてもらったことが恥ずかしく顔が火照る。その間にも先生は、ティッシュで後片付けをしてくれる。
「ごめんなさい、沢山飛ばしてよごしちゃった・・・」
「全然いいんだよ!私がしたくてしたんだから///」
照れながら必死で言い訳する先生はなんだか可愛かった。ひとしきり処理を終えると、先生はまたキスをしてくれた。
「疲れただろうから送ろうか」
「い、いや、そのままで帰れますよ!」
「でも結構遅い時間だから送るよ。折角の車なんだから!」
さっきから珍しく先生が積極的なので好意に甘えて家の近くまで送ってもらうことにした。
帰りはとても楽しかった。今日話せなかったこと、どうしてあの本に出合ったのか、昨日観たテレビの話、入試問題のどうしても解けない問題の話。
いつもより長い帰り道。話さなくても、一緒に帰っていることが何よりも嬉しく、幸福を感じる。なにより、先生が俺の話を聞いて笑ったり、難しそうな顔をしたりしてくれるのが嬉しい。そしてお返しとばかりに楽しい話や知らなかった話をしてくれる。一つ一つに真面目に答えてくれる。そのことがすごく嬉しいのだ。
「さて、この辺かな?」
「え!?もうですか!?」
気が付けばもう家の近くのスーパー前まで来ていて、雨はすっかり止んでいた。
「あ、もうこの辺でいいです・・・家まではちょっと狭い道が多いので・・・」
そう説明するが、ここで別れたくはない。時間はもう遅い時間だが、明日も学校があるから会えないわけじゃない。
「歩きなら駐車場探して車止めてくるよ?」
そう言う先生だが、スーパーは閉店間際で駐車場に入れないし、コンビニはここからもうちょっと遠くにある。そこまでしてもらうのも気が引ける。
「いいよ!ここから歩いて帰る。それに明日だって会えるし」
「そうだな」
軽そうに言う先生の顔は少し影が差していた。
少しの間、二人は見つめ合い短くキスをした。名残惜しさを紛らわせるためのキス。
「じゃぁ先生、また明日!」
「またね」
帰りづらくなったら困ると思い、友紀はドアを勢いよく開け放つ。すると冷たい外気が一気に車内に吹き込み、今の季節では少々薄着の友紀は車内のとの寒暖の差で身震いとくしゃみをする。
「はい」
無理して車から降りようとすると先生は茶色のマフラーを渡してきた。先生のお気に入りのマフラーだ。
「え、でも先生・・・いらないよ。先生の大切なマフラーでしょう?それにマフラー苦手だし、家もそこまで遠くないし・・・」
「とは言っても寒いし、風邪引いたら大変な時期なんだからしていきなさい!」
そう強く言う先生に逆らえず、渋々マフラーを首に巻いて車の外に出る。ドアを閉めると先生が窓を開けてこっちに手を振る。
確かにマフラーをすると非常に暖かい。しかし、やはり窮屈だ。
「じゃぁ気を付けて帰るんだよ!」
「はーい」
「あ」
帰ろうとすると先生が言葉を漏らす。どうしたのかと振り返ると、オドオドする先生がこっちを見ていた。そして決心した様に目をキッとさせて俺を見る。
「大好きだからね!」
少し大きめの声でそう言われる。
「僕も大好きです!あ、それと!」
俺はカバンの中に入ってる先生に渡しそびれたものを渡す。
「これなに?」
「去年の11月11日から俺、変わったと思うんだ!今年の11月11日は終わっちゃったけど、そのこと言うの忘れてたし、あのことがあってからいろいろあったと思うんだ。だから俺の感謝の印のポッキー!」
「そうか・・・」
ぶきっちょにラッピングされた透明の袋の中にはポッキーと小さいカードが入っており、カードには少し滲んだボールペンで「いつもありがとう」と書かれていた。
「ありがとうね!美味しくいただくよ」
「うん・・・・・・大好きだから!」
最高の笑顔で友紀がそう答えると、大河は顔がにやけるのを感じながら、恥ずかしさから急いで窓を閉めて車を発進させる。
「さて、俺も帰るか」
友紀は大河が曲がり角を曲がり姿が見えなくなるまで見届けると、そっと呟いてマフラーの匂いを嗅ぐ。
先生の香りだ
歩きながら空を見上げると、ふと恋愛育成論の一節を思い出す。
―簡単な洋服類を借りれるのは信頼の証―
昼の予定が狂って、ドッキリ兼プレゼントが台無しになるところだったが、一日の終わりの方で最高の挽回ができた。それどころか、マフラーを借りることも出来てしまったのだ。
「借りれちゃった♪」
それが嬉しくて家までの間、友紀は大河のマフラーを大事そうに首に巻いた。
その日
少しだけマフラーが好きになった。
完