3話 イチ、エッチな衣装に着替える そしてピィピはバイセクシャル パーティを追放(以下略)9

  さて、夜になる前に村の中心にある広場には村の若い衆が中心となって大道芸を見るための簡易劇場を建ててしまった。

  村の広場と言っても、市場や商店が並ぶ中心地に作られたコンパクトな空間でしかない。

  祭りなどを行う際にこの場所を使っているのだろう。

  しかし既に篝火が焚かれており、現代のスポットライトの起源となる筒状のオイルランプが仮設の舞台を照らせるようになっている。

  ユーカイは林業が盛んなだけでなく、ホーイッツの父のような家具職人など木材を扱うのに慣れた人間が多いのだろう。

  村の若い衆は実に能率的に動き、仮設の急造だが楽屋と舞台袖を兼ねた天幕(テント)まで建ててしまっている。

  更には木箱などを持ち寄って即席の観客席まで作ってあり、偏屈な者や動けぬ者を除いて村中の人間が集まった。

  なるほど。確かにこれならばホーイッツの言う情報収集がしやすくなると言うのもわからなくない。

  しかしパルテルラットは今度は彼女にしては刺すように強い口調で彼の単独行動を制した。

  皆が舞台に上がっている間、周囲を警戒し決して1人で動かないように、と。

  その言葉を聞いたホーイッツは何故パルテルラットが強い口調で命じてきたのかわからずキョトンとしたが、「わかった」とそのままキョトンした表情で答えた。

  イチは陰でパルテルラットに、タオ・メイメイか自分がホーイッツの監視につく事を提案したが、パルテルラットは否定した。

  ホーイッツを危険視しながらも、パルテルラット生来の人の良さが、パーティの仲間を仲間同士で監視する状況を作らせたがらなかったのだろう。

  さてさて、慌てたのはイチである。

  何しろ舞台に立った経験などあまりない。

  万一の偽装用に踊り子の服は用意していたがまさか本当に着る事になるなどとは思っていなかったのだ。

  「こ、これで踊るっていうのか?」

  楽屋兼舞台袖でイチは目の前に踊り子の衣装を手で広げて愕然とした。

  ハッキリと布面積が少なく、胸の部分には謎の穴が開いており、一応スカートはあるが大胆なスリットと冒険的な短さのせいで大事な部分を隠す事を考慮していない。

  「大丈夫! イチちゃんならきっと似合うよ〜」

  既に踊り子の服を着たピィピィは元々旅芸人だったのもあるが、むしろそれが天職と言っても良いほど似合っている。

  あちこち露出しているうっすらと白い毛皮に包まれた半獣人特有のワサワサした被毛は滑らかで、エッチさと可愛らしさと美しさを高いバランスで実現している。

  衣装は彼女の体格にピッタリで、ピィピの形の良い胸の谷間が胸の謎の穴から顔を出してハッキリと主張している。まさにラビットホール。

  くるりと回ればエッチな切れ込みから兎の尻尾がプリンと見えて目に入れても痛くないほどに可愛らしい。

  「ピィピに言われても自信が持てないなぁ…」

  苦笑しながらイチは下着姿になった。

  「わぁ〜! イチちゃんのブラ、すっごくかわいいよ〜! どこで買ってるの〜?」

  「これはな、スウィートバウムのヘルメェス・ランジェリーショップだ」

  イチはお気に入りの瑠璃色の下着を褒められて悪い気分はしない。

  そういえばメイメイは大丈夫かと思い目線を向ければ、いつの間にやら踊り子姿になったメイメイが木箱に腰掛け腕を組みムスっとした顔をしていた。

  「ところで、この服はどう着るんだ?」

  「あ〜、これはね〜、水着みたいにスッポンポンになって着るんだよ〜」

  「スッポ………! いやいや、こんな、いちおうパンツもついてるが、こんな、手のひらサイズの、色々ダメだろ!」

  スカートはショーツと一体型になっているのだが、マイクロティーバックとも言うべき驚異的な布面積で、確実に下着としての機能は果たしていない。

  「大丈夫だよ〜、ちゃんと踊れば意外と大事なところは見えないから!」

  そう言うとピィピィはイチの背後に回り込み彼女のブラホックに手をかけた。

  因みにピィピはバイセクシャルである。

  「ちゃんと踊れないんだよこっちは! あ、こら! 勝手に脱がすな…………ちょ待って!」

  そんなこんなでどうにかイチ達が着替え終わると、座長に扮しタキシードを着たパルテルラットがリュートギターを抱えてやってきた。

  「着替え終わったな。みんな中々似合ってるぞ!」

  ピィピィのメイクもあるのでパルテルラットは完全に旅劇団の座長に見える。

  メイメイなどは一瞬知らない人がやってきたと思って驚いた。

  元々背も高く顔立ちも体格も中性的なので、むしろそこいらの男子よりも美男子に見える。

  「ぶっつけ本番だが、やるしかない。段取りはこうだ。私が開演の挨拶をしたらまずはイチとメイメイ君はダンスを披露しながら入場してくれ」

  「だから、踊りなんて踊れないわよわたし」

  自信なさげにメイメイが言うが、それはイチも同感だった。

  「大丈夫。それで良いんだ。2人のギクシャクとしたダンスで観客がどよめいたところで真打ちのピィピィが登場する。そしたら2人は楽屋に戻ってくれていい。出番はそこでお終いだ」

  これではイチとメイメイは道化役である。しかし、段取りとしては悪くない。

  なによりピィピィならひとりででも観客を飽きさせる事なくやり遂げるだろう。

  「しかし、パルテルラット先輩、なんか楽しんでませんか?」

  「あぁ! なし崩しとは言え旅芸人のふりをするなんて貴重な経験だからな! これも冒険者の醍醐味だよ」

  パルテルラットは英雄型の人間であり、なおかつ夢想家でもあった。

  これは彼女が愛読している『ジェイムズ冒険記』に強く影響を受けたからかも知れない。

  彼女はこの時代の大烏階級の中でも“絵に描いたような冒険者”だった。

  「ホーイッツ君。見張りは頼んだからな。いいか? 見張りは頼んだぞ」

  パルテルラットはテントの入り口まで行くと、楽屋の外で待機しているホーイッツに強く念を押した。

  「ああ。わかっている」

  ホーイッツは特に何も思っていないようで事もなげに答えた。

  既に観客席はユーカイ村の村人で埋め尽くされ、立ち見の観客もいる。

  商売上手な者は即席で屋台を作ったり軽食を売ったりして小銭を稼いでいる。

  「これ以上観客を待たせるわけにもいかんな。皆、準備はいいか? 行くぞ!」

  こうしてイチ達の初舞台が幕を開けたのである。