“死のCommand” 前編

  「っぅ……げほっけほ……はぁ…」

  …頭が痛い。

  身体がだるい。

  Sub dropを起こすと、大抵は風邪のような症状を引き起こす。

  俺の場合は、不安定な状態だと長引いてしまう。

  今日も、仕方ないから学校を休んだ。

  千秋さんは仕事を休めず、午前中だけ出てくるらしい。

  本当はそばにいて欲しいけど…

  「本当にごめん!すぐ帰るからね!お昼、食べてね。」

  朝バタバタしながらも俺にCollarを付けるのを忘れなかった千秋さんは本当に優しいと思う。

  ベッドに横になりながら、ぼーっとスマホをいじっていると、千秋さんからLINEが来た。

  すぐさま開く。

  『おはよう。朝ご飯は食べれたらでいいけど、お昼は必ず食べる事。無理しないで寝てなさい。』

  なんか、、お母さんみたい笑。

  せっかく学校を休んだんだから、ゆっくりさせてもらおう。

  スタンプだけ返して、俺は痛む頭を擦りながら目を閉じた。

  …ポーン。ピンポーン。ピーン、ポーン。

  「っん……ぅ……」

  チャイムの音で目が覚める。

  千秋さんが帰って来たんだろうか。

  でも、だとしたら鍵で入ってくるはずだ。

  「……ぅう…」

  重い身体を起こして、フラフラと玄関に向かう。

  「…っはい、どなた……っ!?」

  扉を開けた瞬間、相手が素早くドアの間に足を入れ、蹴り倒された。

  その時思い出す。

  『ドアの向こうにいつも私がいると思わないで。』

  千秋さんの言葉を。

  「っな…」ガッ

  抗議の間もなく殴られる。

  強いGlareに身体が強ばる。

  まだAランク。

  耐えられる。

  けど、ずっとはまずいっ。

  僅かに震えながら相手を仰ぐ。

  相手は静かに俺の傍にしゃがんだ。

  「っ!!」

  「…久しぶり〜、タカ。」

  顔を上げた先にいたのは、前のパートナーだった。

  「…何で、、貴方が」

  「あぁ、一昨日くらいに、たまたま見かけたんだよ。ここに入ってったから、ちょっと調べさせてもらってさ。」

  そう言えば、コネがいるんだって、自慢してたっけ…。

  「新しいパートナーいるんだ?ウザイねぇ笑」

  そう言いながら前のDom、優さんは俺のお腹を蹴った。

  「っぐ…」

  ガス!ガス!

  「俺はお前がいなくなってからまともにパートナー作れなくなったのに、お前は呑気にDomと暮らしてんのか。本当うぜぇ。」

  その口調も、態度も、全てが、俺と居た頃とは変わっていて。

  何故だか、笑みがこぼれる。

  「…はは」

  「何、笑ってんだクソガキ!」

  ガッ!

  人は簡単に変われるもんなんだな。

  あんたみたいに。

  手の平返せんだ。

  くだんねぇ、嫉妬じゃん。

  「く…っげほ」

  「ムカつくんだよ!俺は不幸なのにお前だけ幸せになりやがって!!大体お前が他のDomといたからパートナー解消したんだろうが!」

  優さんは、俺を蹴り続ける。

  足が止まる気配はない。

  それもそうか。

  あんたの言う通りだよ。

  俺が浮気なんてしなけりゃ、俺は今もあんたといた。

  だけど、そしたらあんたはあのままだったか?

  俺といたら、こんなに変わることもなかったのかな。

  「……っ次会ったら言ってやろうと思ってたんだ。俺を怒らせんのが悪いんだぞ?」

  優さんは、肩で息をしながら、僅かに口角を上げた。

  「“Die”」

  「っ……!?」

  ドクン。

  途端、胸の痛みに前屈みになる。

  苦しい。痛い。

  何処が?

  …胸が。

  「っひゃはははは!いい気味だ!お前だけが幸せになれる訳ねぇだろ!!」

  「ぁ、ぅ………ぃた……ゃ……ちぁ……」

  「…ぁ?」

  「ちぁ……さ……ちぁき…さ」

  「千秋?お前のDomって、千秋っつーのか。面白ぇな笑」

  胸が痛い。

  苦しいよ。

  怖い。千秋さん。

  「た、すけ…て……」

  どこともなく手を伸ばすと、乱暴に引っ張られた。

  「はーい千秋さんですよ〜笑笑」

  「っぁ…?…ち、ぁ……??」

  「はいはい、もう大丈夫でーす笑」

  千秋さん、来てくれたんだ…。

  「ご、め、なさ…お仕事……なの、…」

  「へぇーお前のDom仕事なの?お前がこんなんなってんのに、随分鈍いねぇ笑笑」

  視界の端で、何かが光った気がした。

  「…取り敢えず、、死んどけ。」

  ドス。

  鈍い衝撃。

  ……?

  ぃ、たい。いた、い。

  痛い。痛い。痛い。痛い!

  何?千秋さんなの?

  本当に?

  ぼやぼやして、全然見えない…。

  ぁ、くらくらする……。

  い、しき…とぶかなぁ…………。

  ……To be continued