成人男性くんがケモロリサキュバスちゃんに同族化されるだけ

  窓の外が淡く橙色に染まりはじめた頃、街の喧噪は少しずつ別の音に変わっていた。

  どこからともなく聞こえる笑い声や、軽快な電子音、ポリ袋を擦る音。

  仮装姿の子供たちが駅前で駄菓子を交換しているところを、さっきコンビニの帰りに見かけた。

  俺はといえば、レポートのワードファイルを開いたまま、未だに冒頭の三行に悩み続けている。

  右手には安かったコンビニのチキン。左手にはエナドリ。

  「……うーん。やっぱ、もうちょい導入で読ませたいんだよな」

  モニターに映る真っ白な文書とにらめっこしながら、エナドリを一口。

  ガスの刺激が喉を叩く。ふと横目にテレビが目に入る。ニュース番組はいつの間にか、しょうもないバラエティに切り替わっていた。

  『ハロウィンの由来って、そもそも“死者が現世に戻ってくる日”らしいですよ?』

  『でも今の日本じゃ、ゾンビよりJKの魔女の方が多いですけどね〜!』

  『サキュバスとかも人気らしいよ、最近!』

  チャンネルを変えるつもりで手に取ったリモコンを止めた。

  画面には露出度高めのサキュバス衣装の女の子たちが、くるくる回りながら笑っている。

  尻尾、翼、猫耳、ぴったりとしたレオタードの質感——

  「……」

  目を背けて、無言で電源を切った。

  なんか、こう、な?

  俺の趣味をテレビがピンポイントで突いてくるの、やめてくれませんかね……。

  いや、わかってる。

  俺はずっとロリコンだ。

  それも多分、普通じゃないやつ。

  なんというか、単純に“可愛い子が好き”とかじゃなくて、“小さい身体のくせに性的な雰囲気を漂わせてる”とか、そういう歪んだ嗜好が自分の中にあるのを、もう中学生くらいから自覚してた。

  でも、だからこそ、現実で手を出すことなんて絶対にしないと決めてた。

  法律以前の話で、人としてアウトだと、自分でわかってる。

  だからこうして一人、大学の課題と戦ってる。俺は健全なオタク大学生、のはず。

  「……はぁ」

  だが、自分で抑圧しているぶんだけ、時々、夢の中で妙な記憶が滲むことがある。

  金色の髪。大きなケモミミ。鈴のような声。

  小さな手と、柔らかな笑み。

  何かを抱きしめていたような感触——

  「…………なに思い出してんだ、俺……」

  気を逸らすようにPCのカーソルを動かしかけたその瞬間だった。

  ピンポーン、とチャイムが鳴った。

  思わず肩が跳ねる。

  「……誰だよ」

  宅配の予定はない。訪ねてくる友達なんているわけがない。

  どうでもいいセールスか。そう思って玄関モニターの画面を点けると、映っていたのは、小さな女の子、だった。

  狐耳、腰のあたりから小さい翼、赤い瞳。

  ハロウィンの仮装、にしてはクオリティが異常に高い。

  画面越しに「トリック・オア・トリート!」と笑顔で言っているのが見える。

  「……え? は? え?」

  脳が一瞬フリーズした。

  近所の子? いや、こんな子いたっけ?

  ってか、なんで俺んち? どう見ても俺ピンポイントで訪ねてきてるよな、これ。

  ……まさか、押し入り系? でも、どう見ても子供だぞ?

  ……コスプレ? ドッキリ? いや、この耳と尻尾、CGか?

  ……ってか全身もふもふだし、現実にそんな子いるわけないよな?

  混乱のまま、俺はインターホンのボタンを押してしまっていた。

  「……ど、どちらさま?」

  『わたし、リュミナだよ』

  画面の向こうの少女はそう名乗り、にぱっと笑った。

  その名前を聞いた瞬間、胸の奥がぞわりとする。

  リュミナ。

  どこかで、聞いたことがあるような。

  でも、誰だったかは、思い出せない。

  「……え、あの~。俺のこと知ってる感じ、ですか? 覚えがない、というか……」

  『知ってるよ〜。ずーっと前から、夢で遊んでたじゃん。ほら、悠人のお部屋、ここでしょ?』

  「っ……!」

  名乗ってない。俺はまだ名前を言ってないのに。

  これは、ドッキリとかじゃない。そんなの仕掛けられる人生じゃない。

  完全に、俺のことを知られてる。そのうえで、俺めがけて訪ねてきている。

  ……意味わかんない恰好の、女の子が?

  一瞬で警戒心が跳ね上がる。

  「……何者なんだ、お前……!」

  そう言った瞬間だった。

  モニターの中のリュミナが、片足を一歩踏み出す。

  そして、ドアの向こうから、ぴたりと物音が止まる。

  呼吸すら聞こえない静寂の中、ノブがゆっくりと回る気配。

  「え、待って、カギしたはず……!」

  言い終わるより早く、ドアが軽い音を立てて開いた。

  そこには、先ほどのモニターで見たままの少女が、まるで自分の家にでも帰ってきたかのような足取りで、すたすたと部屋に入ってくるところだった。

  「は、はあああああああああ!?」

  俺の脳が悲鳴を上げた。

  「……ちょ、おい、まじで入ってくんなって!!」

  俺は慌てて立ち上がり、玄関に駆け寄る。

  だがその子——リュミナは、まるで何の悪気もない様子で、俺の横をすり抜け、リビングの端っこにおいてあるベッドにちょこんと座り込んだ。

  普段寝ているベッドの、白いシーツの上で、もふもふの狐の尻尾がゆらゆらと揺れる。

  耳はぴくぴくと動いていて、どう見てもつけ耳とかじゃない。

  小さな翼、赤い瞳、そして動物っぽい毛皮に覆われた全身。

  ていうか、ほとんど何も着てない。創作の中にしかないはずの、マイクロビキニみたいな細い布で、上と下を少し、隠しているだけ。

  この世界に存在するわけがない、獣人。そんなことを、ぼんやりと考える。

  しかし、彼女の容姿を構成するどれもが妙に生々しく、どこからどう見ても“本物”にしか見えなかった。

  「え、ええ……。マジで、なにこれ……」

  思わず額を押さえる。

  現実感がどんどん薄れていく。

  え、全部夢ですか? リアルが充実してる人たちへの嫉妬で、こんな光景を夢に見てる、ってこと……?

  だとしたら、今すぐ死にたいぐらい恥ずかしいやつじゃないか、俺。

  「えへへー、久しぶりだね、悠人」

  「久しぶりも何も、お前誰なんだよ……。いや、さっき名乗ったか……? でもそれじゃなくて、何だよその格好! その耳と尻尾どうなってんだよ! あと玄関の鍵開けた記憶ないんだけど!? てか俺んち来た理由は!?!?」

  「ぜーんぶまとめて、あとで説明するね」

  リュミナはケロッとした顔でそう言うと、俺の枕に顔を埋めてごろごろ転がった。

  「わ、これ悠人の匂いする〜。ん〜、おふとんのにおいとおんなじ〜」

  「嗅ぐな!!」

  俺は咄嗟にクッションを引っ張り上げるが、リュミナはその手をふわっと掴んで、俺の手首に頬を寄せてくる。

  「こっちの方がすきかも。悠人の手、あったかい」

  「やめろ、マジでやめろって! 俺、通報されるやつだからそれ!」

  「なんで?」

  「なんでってお前、見た目が、完全に……。いや、そもそもなんで小学生ぐらいの女の子が俺の部屋でベタベタしてんだよ!」

  「わたし、サキュバスだよ? だから大丈夫だよ」

  リュミナはまるで、常識クイズの答えを言うぐらいのノリでそう言った。

  サキュバス。獣人。何を言われているか、字面ではわかるけど理解ができない。

  「いや、納得できねえよ……!」

  「ふふっ、でも悠人、ほんとはわかってるでしょ?」

  至近距離まで近づいてきた彼女の丸い瞳が、俺の顔をまっすぐ見つめる。

  ——その目。

  赤い瞳。大きく、澄んでいて、月の光をまるごと吸い込んだみたいな。

  見たことがある。俺は、この目を……。

  思案に沈みかけた次の瞬間、不意に、唇が何かに塞がれた。

  「ん゛っ……!?」

  一瞬、頭の中が真っ白になった。

  目の前の少女の顔が、ほんの数センチ先にあって。

  俺の唇に触れているのは──

  (……いや、待て)

  普通の唇じゃない。

  それは明らかに、“獣”の形状だった。

  

  柔らかくて温かい口内、微かに湿った息遣いが混ざり合う。

  リュミナの細長い口が、甘噛みするかのように俺の唇全体を包もうとしている。

  「……っ!?」

  思わず身を引こうとした瞬間、リュミナの小さな両腕が俺の首筋を捕らえた。

  細い指が鎖骨に食い込むように絡みつき、逃げ場を封じる。

  (何だ、この力……!?)

  相手は幼児ほどの体躯のはずなのに、まるで鉄格子に縛られたように動けない。

  その間にも、リュミナの濡れた鼻先が俺の頬を撫でるように滑っていく。

  器用に口を横向きにして、舌をねじ込み、唾液を流し込んでくる。

  なんだよ、このテクニック。

  てか、俺初めてだったのに。

  「ん……。はむ……」

  湿った吐息と共に漏れたのは、甘ったるい蜜のような音。

  小さな舌が、俺の歯列の隙間を丹念に舐め始めた。

  人間のものとは明らかに違う、厚く柔らかくしなやかなそれが、歯茎の裏側まで這い回る。

  「んん……ッ! あ、う……」

  抗議の言葉を紡ごうとしても、首の後ろに回された手が逃げることを許さない。

  甘いミルクのような匂いが鼻腔をくすぐる。それは確かに俺のベッドの男くさい匂いと混ざり合い——

  ——違う。

  もっと古い記憶が呼び覚まされる。

  ベッドじゃない。草原。月の光。金色の毛並み。

  「ふ、ぅ……っ」

  ようやく唇が離れたときには、俺の息は完全に上がっていた。涎が糸を引いて、互いの口を繋ぎ、ぽつんと落ちる。

  リュミナは満足げに微笑み、それをぺろりと舐め取った。

  「思い出した?」

  「……な……にを……」

  頭の中で火花が散る。断片的な映像が次々とフラッシュバックする。

  ——汗ばんだ肌。細い背中。俺の腕の中で身を捩る小さな影。

  ——荒い息遣い。「もっと」とせがむ掠れた声。

  ——熱に浮かされた目が真っ直ぐ俺を見る。「悠人だけのものだよ」と。

  (まさか、あれは……。夢じゃ、なくて……?)

  「うん。やっと思い出しかけてくれた」

  リュミナがにっこり笑って、俺の手を両手で包む。

  「でもね、ぜーんぶ思い出すのは、もうちょっと先。今はまだ、そのままでいいよ」

  「……どういうことだよ……」

  「サキュバスのルール。夢のことは、起きたらぜったい忘れなきゃいけないの。だから悠人も、毎回、忘れちゃってた。でも今日はハロウィン。夢と現実がいっしょになる日だから……。わたし、こっちに来れたの」

  「…………」

  わけがわからない。

  でも、リュミナが嘘をついてる感じはしなかった。

  熱くて甘い、キスの感触が、この光景を現実のものだと信じさせていた。

  それに、俺の中にある何かが、彼女の言葉に共鳴している気がする。

  心の底に沈んでいた懐かしさが、じわじわと浮かび上がってくる。

  「じゃあ、お前……。ほんとに……」

  「ほんとにリュミナだよ。悠人と、たっくさん、えっちなことしたじゃん!」

  「言うなああああああああああああ!!」

  思わず絶叫して頭を抱えた。

  言葉にした瞬間、頭の奥でパズルのピースが合わさるように、断片的な記憶が蘇ってくる。

  夜の花畑。熱い指先。子供の姿をしたまま、くっついて、絡まって、快楽に溺れていた夢の記憶。

  「うそだろ、俺……」

  「だいじょうぶ。ぜーんぶ忘れてたからセーフ! 今からは現実だから、やってもいいの!」

  「いやその理屈やばいからな!? ていうか……。ていうか俺、ただのロリコンじゃん……!」

  「うん、知ってる!」

  満面の笑みで肯定されて、俺は膝から崩れ落ちた。

  幼女が好きな気持ちは押さえてたはずなのに、こんな子を、現実じゃないとはいえ、抱いてたなんて。

  しかも、それを全部忘れて過ごしてたなんて。

  「……知ってたんだ……」

  「だって、わたしが悠人の“いちばんすき”になったんだもん」

  ふにゃ、とした笑顔で、リュミナは俺のシャツの裾を指でつまむ。

  顔が動物のそれなのに、いや、だからかもしれないが、上目遣いがかわいくて仕方ない。

  「だからね、今日は準備してきたの。悠人がちゃんと“こっちの姿”になれるように」

  「こっちの……?」

  リュミナの目が淡く光る。

  空気の匂いが変わる。

  甘い、果実のような、けれど刺激的な香気。

  「悠人、じっとしててね。ちょっと、くすぐったいかも」

  そう言って、リュミナは俺の胸元に触れた。

  肌の下で何かが弾けるような感覚。

  背中に熱が走り、脇腹がびくんと痙攣する。

  「っ……。な、なんだ……。これ……」

  「はじまりの合図、だよ」

  リュミナがくすくす笑いながら、ぱんっと手を鳴らす。

  その瞬間、俺の着ていた部屋着が、光に包まれて霧のようにふっと消えた。

  「ちょ、ま……!!? お、おい、俺、裸……っ!?」

  「ん〜、この身体に合うお洋服、あとで用意するから、今はいらないよ〜」

  「いらないわけあるかあああああ!!」

  布団を抱えて即座に身体を隠す俺。

  だがその背中には、確かに感じる。疼くような熱と、皮膚の下を泳ぐ違和感。

  何かがおかしくなろうとしている感覚が、確かにあった。

  「こ、これ……。何したんだよ、俺にっ!」

  「大丈夫大丈夫。気持ちいいだけだから。サキュバスに騙されたと思って、気が済むまでえっちしよ?」

  リュミナはいたずらっぽく笑う。

  その顔が、やけに嬉しそうに見えて、俺はもう反論の言葉をなくしていた。

  怖い。何をされるのかわからない。そもそもこんな小さい子にキスされて、これからまっとうに社会生活を送って良いのかわからない。

  それでも、"その先"を期待してしまう心があるのも、否定できなかった。

  「じゃあ、いたずら、はじめよっか」

  リュミナの言葉と同時に、月光がカーテンの隙間から差し込む。

  ほんの一瞬、部屋の空気が金色に染まった気がした。

  次の瞬間、ぎゅっ、と音がするくらい強く抱きしめられて、そのままベッドに押し倒される。

  そして、押し倒された衝撃よりも先に唇が塞がれる感覚があった。

  「んぐっ……!」

  柔らかい体が軽く体重を預けてくる。羽根のような重みなのに、逃げる術がない。

  舌先が再び押し込まれてくる。細長く柔軟なサキュバスの舌が、歯茎の裏まで丁寧に舐めあげる。

  (あっ……、まずい)

  頭がぼんやりする。あの甘い香りが部屋中に充満している。金木犀と濃厚な蜂蜜を混ぜたような匂いだ。

  思考が溶ける。リュミナのことしか、気持ちよくなることしか考えられなくなっていく。

  これはまずい。これに飲み込まれたら、何をどうされるかわからない。

  「ぷはっ……。やめろ、って……!」

  必死に顔を背けようとしても、リュミナの手ががっしりと頬を挟んでいる。その小さな掌が驚くほど強い。

  「ダメだよぉ。今日は、全部しちゃうんだから……」

  彼女はにっこり笑いながら身体を起こし、膝立ちで見下ろす格好になった。ベッドシーツが白い太腿に吸い付きそうな質感だ。

  「覚えてるって、何を」

  「ん〜? 夢の中でしたこと全部」

  マイクロビキニの紐に指をかける仕草が信じられないほど自然だった。黒くて細い布切れは、いとも簡単にほどけ落ちる。

  金の毛皮に包まれた胸元があらわになる。膨らみはわずかだけど、先端のピンク色の突起は妙に鮮やかで……。

  「あっ」

  思わず目を見開いた自分に自己嫌悪が走る。

  小さい子だぞ? こんなのおかしいだろ?

  「恥ずかしい?」

  リュミナが、本当に不審げに首をかしげる。

  「そりゃそうだろ……」

  「でも悠人、いつも夢の中ではここ触ってくれてたよ?」

  指先が自分の胸の先端をつんつんと押す。赤らんだ頬でにやりと笑う。その表情が明らかに計算されているのがわかる。

  「やめろって……お前本当に小学生かなんかにしか……」

  「だからぁ!サキュバスは見た目年齢変えられるって言ってるじゃん。悠人が大好きな体型になってあげてるの」

  言葉の端々に「わかってますよ?」という挑発が潜んでいる。

  (まさか……俺の趣味を全部把握されてる?)

  さらに下腹部の布も、リュミナは躊躇なく引き下ろした。

  小さな体躯に不釣り合いなピンクの光沢が一瞬見えた気がしたが、すぐに白と金色の毛並みに隠れる。

  「これでもまだ、あたしのこと小さい女の子だと思う……?」

  足を開きながら、俺の上にリュミナが跨る。金色の毛並みが太腿の内側で輝き、その隙間から……

  (ああ……畜生、見ちまった)

  夢の中では何度も目にしたはずの、でも一つも覚えていない光景が現実に。小さな割れ目が濡れた粘膜をわずかに覗かせている。

  それがサキュバス特有の生理現象なのか、それとも興奮のせいなのか……。

  「見ないふりするんだ? 悠人も、こんなに勃起してるのに」

  「勃起って言うなああ!!」

  慌てて股間を隠そうとするが、リュミナの指先は既に俺自身の先端に触れていた。

  「はぁ……すごっ。悠人の、がっつき過ぎて熱いよぉ……」

  「っ……!」

  肉球のぷにぷにした感触を持った小さな手が、亀頭を包みこむ。

  とくとくと溢れる先走りを塗りたくって、彼女は竿の表面を濡らしていく。

  「ほら、見て。悠人ので俺の指がヌルヌルになっちゃった」

  濡れた指を見せつけるように広げると、彼女はゆっくりと、見せつけるように粘液を舐めとる。

  リュミナの瞳が一瞬だけ悪戯っぽく光った。次の瞬間――

  「ほらぁ……。よく見てよ」

  小さな体躯が、滑るようにスッと移動する。膝をつきながら前進するその動きは軽やかで、まるで風に乗る妖精のようだった。

  しかし彼女が向かう先は、間違いなく俺の顔の上だ。

  「え……。ちょ……っ!」

  抗議の声も間に合わない。視界がぐらりと傾いたかと思うと、次の瞬間、目の前に金色とピンクの織りなす魅惑的な景色が広がっていた。

  ふわりと漂う甘酸っぱい香り。熱を帯びた柔らかな毛が、視界いっぱいに踊る。

  その奥には、微かにひくひくと震える薄桃色の粘膜が見えた。まだ幼い外見に似合わない成熟した凹凸が、濡れそぼってキラキラと光っている。

  「ん……。どうしたの? 目、逸らさないで……」

  リュミナの囁き声が降ってくる。それは低くも高くもなく、しかし確かに耳の奥に絡みつく蜜のような響き。

  「悠人は夢の中であたしのここ、いっぱいいじめてくれてたのにね?」

  「うっ……。く……」

  羞恥と困惑が渦巻く。

  こんな小さい子の大事な場所を至近距離で凝視するなど、倫理的にアウトだ。

  それなのに。この異常な状況下で、脳の一部が痺れるような奇妙な興奮を覚えてしまっている自分がいる。

  「ダメだ……。こんなの、おかしいだろ……!」

  かろうじて絞り出した拒絶の言葉はあまりに弱々しい。自分の声が他人のもののように遠く聞こえる。

  それでも、ここから一歩でも先に進んでしまえば、もうもとには戻れないという確かな感触があった。

  「おかしい? どこが?」

  リュミナは小首を傾げた。金色の髪の毛が、サラサラと頬にかかる。

  「だって悠人、ずっとこうしたいって思ってたんでしょ? 小さい女の子のおまんこを、こうして……」

  ズキリと胸が痛んだ。図星だ。

  幼い体に背徳的な魅力を感じてしまう矛盾を、俺は長年抱え続けていた。

  それを、こんな形で突きつけられるなんて。

  「それにね……」

  リュミナが少し腰を浮かせ、指先で濡れた中心を軽く左右に開いた。

  くちゅっ……と微かな水音が鼓膜を打ち、濃密な雌の香りが濃度を増す。

  「ほら、見て。夢の中では悠人にたくさん愛してもらってた証拠」

  粘膜の間から溢れ出す透明な液体が細い糸を引き、シーツへと落ちていく。

  鼓動が脳髄まで届くほど大きく響いて、今にも気が狂いそうだ。

  「今も、悠人のことを想うだけでこんなになっちゃうの」

  ダメだ。もう思考が追いつかない。

  目の前で揺れる、金色の三角形とピンクの湿地帯。その中央にある小さな穴は、まるで吸い込まれるように蠢いている。そこから放たれる匂いは、理性を溶解させる甘美な毒そのものだ。

  「ふふ……」

  リュミナの含み笑いが降り注ぐ。

  「我慢できる? あたしのおまんこ、こんなに美味しそうなのに?」

  ――美味しそう?

  その言葉が脳内で反芻されると同時に、口の中に唾液が大量に溢れた。それを消し去るように、喉仏がゴクリと上下する。

  (やめろ、考えるな……! これは、犯罪……!)

  警告信号が脳内で乱舞する。それでも……。

  指先が無意識に顔の前の茂みへと伸びかけては、意思で引き戻す。それを何度も繰り返すうちに、手のひらが冷や汗でびっしょりだ。

  「ダメ……。絶対、よくない、これは……!」

  呪文のように繰り返す自己暗示。だがリュミナの挑発的な声がそれを嘲笑う。

  「嘘つかなくていいんだよ? ほら、このヒクヒクしてるところ……」

  彼女の言葉に合わせて確かに、目の前の小さな陰唇が、まるで生き物のように微かに収縮する。その動きが堪らなく蠱惑的だ。

  (触ったら、どんな感触なんだ……? 熱いのか? 柔らかいのか?)

  禁断の想像が頭を支配していく。

  甘い匂いは強さを増すばかりで、思考する気力すら奪われていく。

  「それにね……」

  リュミナの声が、さらに艶を帯びた気がした。

  本当に切なそうに、本当の恋人に話すように、彼女はゆっくりと言葉を紡ぐ。

  「悠人があたしを忘れた後も……。あたし、ずっと待ってたんだよ? こっちの世界で会える日を」

  ズキリと胸が締め付けられるような感覚。寂しげな口調と裏腹に、目の前の粘膜はより強く濡れそぼっていた。

  「ずるいよな……」

  ついに漏れた本音。抗うことに疲れ果てた心が呟いた一言だった。

  「そう? じゃあ……正直になってよ」

  リュミナの両膝が、俺の顔の両側を挟み込む。

  子供っぽい熱い体温と、幼い肉の感触が直に伝わってくる。

  「あたし、悠人のこと、ほんとに好きだから……」

  何かが切れた音がした気がした。

  「……ッ」

  次の瞬間、自分の口から漏れたのは喘ぎにも似た吐息だった。

  舌先が微かに震えながら、金色の茂みをかき分け、湿った割れ目の中心へと伸ばされていく。

  触れる。

  その瞬間。

  「ひゃ、あぁんっ!」

  甲高い嬌声が室内に響き渡った。

  柔らかい。信じられないほど柔らかい。

  舌先が捉えた小さな突起は火傷しそうな熱を持っていて、割れ目の中からはぬるぬるとした分泌物が無限に溢れてくる。甘く濃厚な味覚が舌全体を包み込み、脳天を直撃する。

  「はあっ……んっ! ゆうとぉ……。そこ、きもちぃ……」

  リュミナの腰が無意識に揺れ動き、俺の舌を求めるように押し付けてくる。その振動がさらに刺激となって思考を白く染めていく。

  (やばい……。こんなの、止まるわけない……!)

  本能が加速する。最初は恐る恐るだった舌使いが、やがて夢中で舐めしゃぶるものへと変わっていった。小さなクリトリスを探し当てると、包皮の上から優しく吸い上げる。途端に、リュミナの体が弓なりに反った。

  「あ、んっ……! 悠人、っ……!」

  リュミナの体が激しく跳ねるたび、彼女の小さな体躯は弓なりに反り返り、背中の翼がぴくぴくと痙攣している。

  俺の顔面に押し付けられた熱い性器が脈動し、溢れ出す蜜の量は増すばかりだ。

  夢中になって舌先を窄め、濡れそぼった谷間に滑り込ませると、リュミナの腰が俺の顔に押し付けるようにさらに一つ、押し下げられた。

  「ひあぁんっ! そんな……、深くぅ……っ!」

  甘ったるい悲鳴が降り注ぐ。

  気持ちよくさせられてる。俺の脳にはもう、奇妙な充足感しかなかった。

  小さな穴の内壁を舌でなぞり、時に強く吸い付く。その度に、耐えられないといったように彼女の細い太腿が俺の頭を締め付けた。熱い吐息が髪にかかり、金色の毛が頬に触れる度に脳裏に火花が散る。

  (やばい……。この味、この匂い……。狂いそうだ……)

  幼い肢体から発せられる蜜は甘く濃厚で、塩辛さも含んだ複雑な味わいだ。

  舌を這わせるたびにリュミナの幼い嬌声が鼓膜を震わせ、全身の血液が一点に集中していく。

  「ねえ、悠人……。あたしも……」

  リュミナの声が、切なげに途切れ途切れになる。

  彼女は震える手で、ゆっくり起き上がりながら囁いた。

  「悠人のおちんちんも……舐めたい……」

  その言葉と共に、リュミナの腰が少しずつ俺の顔から離れ始める。

  だが離れ際に彼女の指が俺の額に触れ、おねだりのように優しく撫でた。

  その感触だけで、背筋に電流が走ってしまう。

  俺も、もうとっくにおかしくされてしまったみたいだった。

  「う……っ……!」

  俺はされるがままに、リュミナが体勢を変えるのを見守った。

  こっちにお尻を剥き出しにして、彼女はベッドに四つん這いになる。反射的に腰を浮かせると、リュミナの細い指がすかさず俺の硬直しきったペニスへと伸びてきた。

  「わぁ……。やっぱりおっきぃ……」

  感嘆するような声音。彼女の小さな掌が俺の竿を包み込む。肉球の柔らかさと体温が直接伝わってくる。それだけでもう、暴発してしまいそうだった。

  「ふふ……。悠人も、気持ちよくなってね?」

  俗にいうシックスナインの体勢。

  何もかも初めてなのに、エロ漫画でしか見たことのない事象に巻き込まれている。

  でも、今の俺にはそんなこと、興奮の材料でしかなかった。

  リュミナの金色の尻尾がふわりと持ち上がり、俺の頭に巻きつく。まるで捕らえた獲物を逃さないとでも言うように。

  俺たちの体は互いに向かい合わせのまま密着し、汗ばんだ肌と綺麗な毛皮が擦れ合う。シーツの上で二つの身体が折り重なり、影が複雑な模様を描く。

  窓の外ではハロウィンの喧騒が遠くなりつつあり、代わりに室内には濡れた吐息と微かな喘ぎだけが響いていた。

  「はぁっ、んっ……。悠人ぉ、おちんちん……、すごく熱い……」

  リュミナの舌先が亀頭のくぼみを執拗に探る。唾液とカウパーが混ざり合い、彼女の小さな口の中で淫らな音色を奏でた。

  その一方で俺の指は彼女の未熟な性器に埋もれており、ぷっくりと膨らんだ小さな陰核を親指で軽く押し潰すたびに、彼女の華奢な肩がビクンと跳ねた。金色の毛に覆われた下腹部が汗でしっとりと濡れ光り、そこに浮かぶ淡い桃色の襞が俺の指を迎え入れようと貪欲に収縮している。

  (ダメだ……。こんな子供相手に、こんなの絶対異常だ……)

  頭ではそう理解していても、動物の本能は止まらない。俺のペニスはリュミナの小さな口の中で脈打つように膨張し、彼女の舌先が鈴口を割るように侵入してくると腰が勝手に浮き上がってしまう。サキュバスの甘い唾液が竿全体を潤し、肉球のついた掌がリズミカルに根元を扱く。

  「んふぅっ……。悠人のここ、すっごく美味しいよ……?」

  リュミナが一旦口を離し、頬を紅潮させながら嬉しそうに報告する。彼女の口元は俺の粘液で光り、小さな犬歯がちらりと覗く。その無邪気な笑顔と淫猥な行為のギャップが、俺をさらに狂わせる。

  「お前……。ほんとに、何者なんだよ……」

  喘ぎ声交じりの問いかけに、リュミナは小さく微笑んで再び顔を伏せる。

  今度は、深く。

  喉の奥まで俺を受け入れようとして、苦しそうな息遣いが聞こえるのに、その行為を止めようとしない。熱い粘膜に包まれる感覚が全身を貫き、脳髄が溶け落ちそうになる。

  (やばい……。もう持たない……!)

  俺はリュミナの小さな臀部を両手で掴み寄せた。指が柔らかな肉に沈み込む感触。金色の毛が掌をくすぐる。彼女の細い腰が俺の動きに応じて波打つように揺れ、俺のペニスがリュミナの喉奥を突くたびに、小さな嗚咽のような声が漏れる。

  「ぐっ……。んっ、ふうぅ……っ!」

  「うっ……。リュミナ……。やべぇ、もう……ッ!」

  腰が勝手に浮き上がる。リュミナの小さな頭が俺の股間に押さえつけられ、喉奥までペニスが押し込まれる感覚に眩暈がした。

  彼女の金色の髪が俺の太腿に張り付き、汗と涙で湿っている。

  「んぐっ……ふぅっ……んんんッ……!」

  苦しそうな喘ぎと同時に、喉が強烈に収縮する。柔らかく長い舌が裏筋を這い上がり、同時に上あごの粘膜が敏感な部分を擦り上げた。

  (やばい……。この締め付け……!)

  限界が急速に迫る。脳内で火花が散り始め、視界の端がチカチカと明滅する。だが――

  「ひゃあんっ! そこ、ダメ……っ!」

  背後でリュミナの絶叫が迸る。

  俺が指を三本に増やし、彼女の小さな膣壁の上部にあるザラついた部分を執拗に押し上げた結果だった。金色の尻尾がぶんぶん振られ、細い指がシーツを握りしめている。

  「はぁっ……、悠人ぉ……。ダメ、 あたしも、イっちゃうぅ……っ!」

  リュミナの腰が空中で暴れ馬のように跳ね回り、俺の顔面に柔らかな性器を叩きつけるように押し付ける。熱い蜜が雨のように降り注ぎ、その中心で膨れ上がったクリトリスが俺の鼻先を擦る。

  その刺激が、最後の一押しとなった。

  「うっ、くっ……。リュミナ……もう……!」

  「出してぇ……。悠人の、全部飲ませてぇぇ……っ!」

  リュミナの懇願が聞こえるのと同時に、彼女の舌が尿道を抉るように突き上げた。同時に、喉奥が万力のごとく締め上げる。そのダブルパンチに耐えきれず――

  「くっ……! ううっ……!」

  俺の体が弓なりに反り返った。

  迸る熱い奔流が、リュミナの口内に注ぎ込まれていく。何度も、何度も。その間も彼女の喉は俺の精液を飲み干そうと蠕動し続けた。金色の毛が俺の太腿に絡みつき、彼女は最後の一滴まで搾り取るように吸い上げる。

  「ん、ふぅ……。おいしい……」

  ようやく口を離したリュミナが恍惚とした表情で呟く。口の端からこぼれた白濁液が細い顎を伝い落ちていく様子は、天使のような外見に反してあまりにも淫靡だった。

  荒い息遣いの中で互いを見つめ合う。リュミナの真紅の瞳は涙で潤み、頬は毛皮の上からでもわかるくらい上気している。汗で濡れた前髪が額に張り付き、その隙間から覗く小さな額が妙に幼く見える。

  一方で俺のペニスは未だ硬さを失わず、リュミナの口元で脈打っていた。彼女はそれを愛おしげに見つめながら、小さな指で竿を優しく撫でている。

  「すごかったね……。悠人の、いっぱい……」

  リュミナがふわりと微笑む。その笑顔には先程までの淫靡さはなく、むしろ慈しむような温かみがあった。金色の毛並みに覆われた手が俺の頬を包み込み、その肉球の柔らかさが心地よい。

  「ねえ……。まだ終わりじゃないよね?」

  耳元で囁く声。リュミナの細い指が、俺の硬直したペニスを優しく包み込む。

  こげ茶色の毛皮に覆われた手は暖かく、肉球の柔らかさが心地よい。先程までの情熱的な行為で汗ばんだ体からは甘いフェロモンが漂い、その匂いが鼻腔をくすぐるたびに俺の理性がまた一つ剥がれ落ちていく。

  「んふぅ……。まだまだ元気だね、悠人」

  彼女は恍惚とした表情でそう呟くと、再び俺の上に跨ってきた。小さな体躯が俺の腰の上に乗り、その尻尾が蛇のように俺の足に巻きついてくる。リュミナの中心はすでに十分に潤っていて、俺自身の先端に押し付けられた粘膜がぬるりと滑る感触を伝えてきた。

  「ねえ……。ここでしよ? もう、いいよね?」

  小さな体が自ら腰を振り、その表情や動きを下から見上げられる……という妄想が何度頭をよぎったかわからない。

  しかし実際に目の前で繰り広げられているのは、見た目が明らかに幼いサキュバスとの異常な結合だ。

  「ま、待てよ……。本当にやるのか?」

  俺の声は上ずっていた。いくらなんでも無理がある。リュミナの未熟な体で、俺のサイズを受け入れるのは物理的に不可能だろう。それに、初めてがこんな形で……。

  「当たり前じゃん! 今日は悠人の童貞もらうために来たんだよ?」

  リュミナはきっぱりと言い放ち、躊躇なく腰を下ろそうとする。金色の茂みに隠れた小さな穴が俺の亀頭にぴったりと吸い付く。その熱さと狭さに息を呑んだ。

  「くっ……!」

  「大丈夫大丈夫……。サキュバスの体は特別だからね」

  彼女はそう言うと目を閉じ、意を決するように大きく深呼吸を一つした。

  そして、先っぽがゆっくりと、毛並みに押し当てられて。

  「ッッ――!」

  予想外の衝撃だった。リュミナの小さな体が一気に沈み込み、俺のペニスが猛烈な締め付けと熱い粘膜に包まれる。

  彼女の内側は驚くほど柔らかく伸縮自在で、まるで専用に設計されたように俺のサイズを完全に受け止めた。

  「んぁぁ……っ! 入った、ぁ……!」

  リュミナが背中を反らし、金色の毛が逆立つように震える。彼女の顔は苦悶と快感が入り混じった表情で歪み、目尻からは涙が零れ落ちていた。

  「すごっ……。悠人の、おっきすぎて……。あたしのなか、パンパンだよぉ……」

  その言葉とは裏腹に、彼女の内部は激しくうねるように絡みついてくる。処女膜のようなものが破れる感覚はなく、むしろ内部の粘膜自体が歓喜に震えているかのようだ。サキュバスの体は本当に特殊らしい。

  (これが、セックス……か……)

  初めて味わう膣内の温もりと圧迫感。リュミナの軽い体重が、全て俺のペニスに乗っている感覚。ダメだとわかっているのに、いやらしい水音を奏でる結合部から目が離せない。

  金色の下生えが濡れそぼり、俺の肉棒を咥え込んだ小さな口がヒクヒクと動いている。その光景があまりにも背徳的で、俺はもう何も考えられなくなった。

  「ふふ、悠人、すごい顔してる……」

  リュミナが満足げに笑い、ゆっくりと腰を前後に揺らし始める。

  「じゃあ……動くね? あたしの中で、思いっきり気持ちよくなって……」

  ズチュ……クチュッ……

  「うあっ……!」

  結合部から粘液と空気が混ざる卑猥な音が響く。

  リュミナの腰の動きに合わせて、俺のペニスが彼女の狭い通路を擦り上げる。その締め付けと快感は、先程とは比較にならないレベルだった。幼い体内で経験する未知の快感。サキュバスの蜜壁が、俺を搾り取ろうとするかのように波打つ。

  「あっ……んんっ……。悠人ぉ……、どう? あたしの中。きもちぃ……?」

  「やば……。きつくて、あったかくて……!」

  俺は衝撃を逃がすように、下のシーツを掴んだ。目の前の少女の腰に手を回したら、何もかも終わりな気がして。

  リュミナの腰の動きは徐々に速く、激しさを増していく。小さな体躯とは思えないほどの腰つきで、俺のものを責める。金色の尻尾が俺の素肌をなぞり、その毛先が肌に触れるたびに痺れるような感覚が走った。

  「んっ、あぁんっ……。もっと……もっと、感じて……!」

  リュミナの声も段々と高まり、彼女の動きに合わせて金色の毛並みが揺れる。その様子はまるで金色の蝶が舞っているようで美しい。だがその美しさの裏で行われているのは、禁忌の行為だ。

  (ダメだ……。早く、終わらせなきゃ……)

  脳内で警鐘が鳴り続ける。

  物語の中でサキュバスとの行為に溺れた人間の末路は決まり切っている。破滅、死。そんな言葉が浮かんでは、下半身からくるぬくもりに押し流されていく。

  ペニスはギチギチと彼女の小さな蜜壺に締め付けられ、腰が勝手に持ち上がってしまう。意図せず下から突き上げる形になると、リュミナの身体がまた、弓なりに反って悲鳴に近い喘ぎ声を上げた。

  「ひゃあんっ! んっ、悠人ぉ……。やっと、積極的になってくれた……?」

  彼女の細い太腿が俺の胴体を強く挟み込み、その拍子に金色の毛が俺の腹部に擦れる。その温かく柔らかな感触に酔いしれていると、突然、下腹部に鋭い疼きが走った。

  「っ……!?」

  視線を落とすと、リュミナの金色の陰毛が覆いかぶさっている俺の腹部に、何かが浮かび上がっていた。

  「え……?」

  にわかには信じがたい光景だった。

  下腹部に浮かび上がっていたのは、鮮やかな金色に輝く複雑な紋様。その輪郭がぼんやりと発光し、周囲の肌を淡く照らしていた。

  「あっ……! 始まったぁ……」

  リュミナが、嬉しそうに声を上げる。腰の動きが一瞬止まり、彼女は結合部から少しだけ腰を浮かせて俺の腹部を覗き込んだ。

  「これはね……、サキュバスとの契約が結ばれた証……。そして、悠人が、本当の姿に目覚める、印だよ」

  彼女の金色の指が優しく紋章を撫でる。その接触だけで腹部の疼きが鋭くなり、熱い奔流が全身を駆け巡る感覚に襲われた。

  ペニスから来る刺激とはまた違う、鈍く、しかし強い快楽。暖かいものを食べたあとみたいに、じんわりと満たされるような、そんな感触。

  「何を、言ってる……?」

  「うん! 悠人にはね、特別な資質があるの」

  リュミナが再び腰を落とす。ズチュッという、ひときわ大きな粘液の音と共に再び猛烈な快感が脳天を突き抜けて、思考するモードに入りかけた脳を再び溶かしていく。

  「普通の人間はね、サキュバスが夢に現れても忘れるだけ。でも悠人は違った。何十回も夢で会って……しかも覚えてた。それってね……」

  彼女の金色の髪が汗で首筋に貼り付き、金色の毛が俺の胸元に擦れる。

  「悠人の魂そのものが、俺たちと同じ力を持っている証拠なの」

  「同じ……力…?」

  思考がまとまらない。リュミナの内部は相変わらず激しくうねり、俺を追い詰める動きを続けている。彼女の金色の尻尾が俺の腰に絡みつき、その毛先が背筋をくすぐるたびに電流が走る。

  「そう!」

  リュミナが楽しそうに笑う。さっきまでの蠱惑的な笑みとは違う、年相応の女の子みたいな声。

  胸騒ぎが止まらない。恐怖とも、危機感とも違う感情が、どんどん膨れ上がってくる。

  「魔力の適性が高い人間はね、俺たちサキュバスと共鳴して……覚醒できるんだよ……」

  彼女の言葉に呼応するかのように、腹部の紋章が一層強く輝いた。

  「俺はずっと待ってたんだ……。悠人が覚醒できる時を。そしたら、一緒にこっちの世界でも生きていける……」

  「いっしょに……?」

  そんなわけない。俺はただの普通の人間で、リュミナみたいなのに絡まれる要素なんて、ないはずなのに……。

  だがその疑問を掻き消すように、リュミナの腰の動きが激しさを増す。金色の毛並みが揺れるたびに汗とフェロモンの匂いが立ち込め、俺の理性を溶かしていく。

  「ん……うっ……!」

  呻き声が漏れる。リュミナの内部はもはや単なる快楽の器官ではない。彼女の動き一つ一つが俺の全身に異様な感覚をもたらす。まるで皮膚の下で熱い血が煮えたぎるようだ。その熱さが特に耳と尻に集中していく。

  「ふふ……。感じてる? これから、もっと気持ちいいよ……?」

  リュミナが甘く囁きながら、観察するみたいに顔を近づけてくる。

  もっとってなんだ。そんな疑問を咀嚼する間もなく、耳にピリッとした痛みが走った。

  かすかな熱を伴って、耳介が内側から引っ張られるような感覚。鏡がないので確認できないが、確実に形状が変化しているのを感じた。

  (なんだこれ……。本当に、耳が……?)

  シーツを搔くばかりだった手を頭上に持っていくと、奇妙な感覚が伝わった。

  丸いシルエットで、確かに毛が生えている。髪の毛とは違う、ちょうどリュミナの肌みたいな感触で、でも確かに、”耳を触っている”感覚があって……。

  同時に、臀部にも奇妙な違和感があった。腰骨の辺りがむず痒いように疼き、何かが突き出そうともがいている感覚。まるで体内から、別の存在が生まれ出ようとしているようだ。

  「あっ……んっ……! 悠人の……中から出てきてるよ……!」

  リュミナが歓喜の声を上げる。彼女の腰の動きは先ほどよりも大胆になり、金色の茂みに覆われた結合部が歓喜の涙を流すように汁を漏らす。

  臀部の違和感はますます強烈になり、まるで骨格自体が書き換えられているかのようだった。腰から下がぐにゃりと歪む感覚。それと同時に、全身の骨格が軋むように収縮し始めた。

  「んっ……。な、なに……!?」

  思わず声が漏れる。

  視界の隅に映る自分の腕や脚が……短くなっている?

  まさかと思いながらも確信が湧く。手足が縮み、関節が曲がる位置すら変わろうとしていた。

  「ふふっ……良い感じだね、悠人」

  リュミナが嬉しそうに目を細める。彼女の真紅の瞳には、期待と興奮が宿っていた。

  「ほら、見て? あたしたちはね……。魂の波長が共鳴すると、より一体化する形に進化するの」

  リュミナが俺の縮みゆく腕を掴み、自らの金色の毛に覆われた腕と並べて見せる。確かに、俺の腕は彼女と同じくらいの細さになりつつある。皮膚の表面からはオレンジに近い茶色の毛がじわじわと生え出し、手のひらには肉球らしき柔らかい膨らみが形成され始めていた。

  「あ……ああ……ッ!」

  言葉にならない悲鳴が喉から漏れる。

  自分の体が自分じゃなくなっていく恐怖。それなのに、下半身は未だリュミナに深く咥え込まれたままであり、彼女の内部からの刺激が異様な熱となり脳天を突き抜ける。

  だんだん、感度も高まってるみたいだった。

  これじゃまるで、俺もリュミナみたいな獣人に、しかもロリっぽい姿に変わってるみたいじゃないか。

  視界の角度が変わり、リュミナの表情が以前より大きく見える。

  いや、違う。自分が小さくなっているのだ。

  「かわいい……!」

  リュミナが感極まったように叫び、俺の縮んだ体に覆いかぶさった。

  彼女の重みが以前より重く感じる。俺の体そのものが軽くなっているのだ。

  骨格が軽量化され、筋肉の密度が変わる感覚。背もおそらく彼女と同じくらい……つまり小学生レベルにまで縮んでいる。

  「背も縮んでる……? なんだよ、これ……!」

  震える声で問いかけると、リュミナは慈しむような笑顔を浮かべた。

  初めて、彼女の笑顔に恐怖を覚えた。狩る側の生物が、獲物を見つけた時の笑みに見えて。

  「サキュバスの契約者はね、パートナーのサキュバスと一番波長が合う姿に変化するの。悠人の場合は……」

  彼女の指が俺の新たな獣の耳を優しく撫でる。

  くすぐったい。頭の横ではなく、頭頂部に耳が位置している違和感をかき消すように、強制的に多幸感を脳に流し込まれているみたいに、怖い気持ちが霧散していくようだった。

  「ネコ科、なのかなぁ……? まだわかんないや。でもなってみればわかるよ。……ほら、気持ちよ~くなって、サキュバスになっちゃお?」

  「サキュバスに、なんて……っ」

  怒りとも絶望ともつかない感情がこみ上げる。しかし体は正直に、異常な快楽を快楽として享受し続けていた。

  縮んだ体はリュミナとの一体感を以前より強く感じ取り、彼女の内部で擦れるペニスが爆発しそうなほど脈打っている。しかも、獣人化していくことで感覚器官が過敏になっているのか、膣壁のざらつきや収縮するリズムを以前よりも鮮明に感じ取れてしまう。

  「そう……。これからはずっと一緒だよ? 同じ、種族として……」

  リュミナの腰の動きが、変化を促進するように再び激しさを増す。今や俺たちの体格差はほとんどなくなり、彼女の金色の毛が俺の全身を覆うように擦れる。

  リュミナの身体が触れたのをトリガーとするみたいに、胴体から熱いものが噴き出す感覚。

  見下ろせば胸や腹から橙褐色の毛がぼわっと吹き出し、まるで炎が燃え広がるかのように俺の体を覆い尽くしていく。

  「く……っ!」

  全身を駆け巡る灼熱。骨格が変わり筋肉が縮み細くなるのに合わせて、皮膚の上を新しい毛が覆っていく様子は悪夢そのものだ。それなのに、下半身から来るリュミナの熱と締め付けが、全ての抵抗を溶かしてしまう。

  「ん……。悠人、すごくキレイになってきたね……?」

  リュミナがうっとりと囁きながら、俺の新たにできた胸の毛皮に掌を這わせる。その指先が触れた瞬間――

  「……あ、っ!?」

  信じがたい刺激が背骨を駆け抜けた。視線を下ろすと、自分の胸元には僅かながら膨らみができていた。

  僅かな脂肪の集積と、薄い乳輪。男の胸とは明らかに異なる、控えめながらも確実な乳房。

  それがリュミナの指によって形を変えられ、甘い疼きとなって脳を侵す。

  「え……? これ、女の子の……」

  混乱する俺の前でリュミナは悪戯っぽく微笑み、両手でその小さな膨らみを揉みしだき始めた。

  小さいながらも柔らかく、指に吸いつくようにそこはシルエットを歪め、鈍い疼きを脳に伝えてくる。

  「ほら……。女の子はここでも感じるんだよ?」

  「やめっ……。あ、あっ……!」

  乳首を指先で弾かれた瞬間、全身が電気に貫かれたようだった。

  男の体では到底感じ得ない性感帯からの、直接的な刺激。リュミナが摘んだり捏ねたりするたびに、下腹部がキュンと引き攣り、結合部から粘液が溢れ出す。

  「ふふ……。悠人の乳首、もうビンビンだね……。気持ちいいでしょ?」

  「んっ……。やだ……っ、こんなの、変だ……っ!」

  拒絶の言葉とは裏腹に、身体は正直に反応してしまっていた。

  リュミナが指先で乳首を転がすたびに背筋が反り返り、喉から漏れる声はもはや拒絶ではなく嬌声に近い。

  男らしい低音の声もいつの間にか霧散し、リュミナほどのソプラノではないにしろ到底男としては通じない少女らしい音しか出せなくなっていく。

  金色の尻尾が俺の足に絡みつき、彼女の内部は収縮と弛緩を繰り返しながら俺を更なる深みへと引きずり込んでいく。

  「んふ……。悠人のおっぱい、可愛い……。もっと、感じて?」

  リュミナが屈み込み、俺の左胸に唇を寄せる。舌先が乳首を捉え、まるで母乳を求める赤子のように吸い上げてきた。

  「ひゃあっ!? ああんっ……!」

  まるで神経束を直接嬲られるような激しい快感。右の乳首は指で扱かれ、左は唇と舌で愛撫される。その甘美な責めと同時にリュミナの腰使いが激しさを増し、結合部から響く卑猥な水音が洞窟に響いた。

  「悠人ぉ……。すごいよ……っ! 新しいお耳がピクピクしてる……。お尻の尻尾も揺れてる……!」

  リュミナの指摘に思わず自分の臀部を見る。そこには確かに細長い尻尾が生え、意志とは無関係に感情を表すように左右に揺れていた。

  (マジかよ……。俺の身体、全部……)

  視界に入る自分の手は小さく華奢になり、褐色の毛がびっしり生えている。爪は鋭く尖り、指先は柔らかい肉球状。

  「もうすぐ、完全に目覚めるよ……」

  リュミナが俺の金色の毛が生え揃った頬を両手で包み込み、潤んだ真紅の瞳で見つめてくる。

  その指先が唇に触れると同時に――

  「ッ!?」

  口腔内に未知の衝撃が走った。歯茎が焼けるような熱さに襲われ、歯列がゴリゴリと移動する感覚。鋭利な犬歯が生え伸びて、肉食獣らしい、獲物の肉を噛み切るための形状に変わっていく。

  「お口も変わってきてるよ……? 悠人の牙、素敵……」

  リュミナが嬉しそうに呟く声すら遠く聞こえる。

  口蓋が吊り上がり顎骨が前方へ突出する痛みと快感が入り混じる中、視界が涙で滲んだ。

  頬骨が盛り上がり、鼻梁が短く尖っていくのがわかる。人間の顔が崩れ、別の生物へと作り変えられていく恐怖と興奮。その矛盾した感情が脳内で渦巻き、快楽中枢を麻痺させる。

  「んっ……。ふ、ぅ……!」

  開いた口から溢れる吐息は熱く湿り気を帯び、舌を舐めると鉄と獣臭さが混じった味が広がる。

  不意に、視界の下に黒ずんだものが映った。リュミナと同じ、黒ずんだ獣の鼻。

  「新しい姿の悠人も、絶対に可愛いから……。あたしが、永遠に守ってあげるね?」

  その言葉に抵抗する余裕もなく――

  全身の変化が加速する。腰椎から伸びる尻尾の動きが自分の意思でコントロールできるようになったと思った瞬間、

  「くっ……うああっ!!」

  脳髄を灼くような強烈な快感が突き抜けた。リュミナの内部がこれまで以上に複雑な動きで俺を締め上げ、搾り取ろうとする。その動きはもはや人間の女性の比ではなく、サキュバス本来の搾精能力がフル稼働しているかのようだった。

  「きて、悠人……。全部……、あたしにちょうだい……っ!」

  リュミナの懇願と同時に、金色の尻尾が俺の腰をきつく締め上げる。

  「ひっ……。ぐああっ……!」

  リュミナの絶叫と俺の咆哮が重なり、ベッドが軋みを上げる。彼女の腰が空中で固定され、全身が激しく痙攣し始めた。金色の毛が逆立ち、細い背筋が弓なりに反る。結合部から噴き出すような水音が連続し、リュミナの小さな体は絶頂の波に翻弄されていた。

  「んっ……ああああっ……! しゅごいっ……。悠人の、ぜんぶ……っ!」

  彼女の内部は超自然的な収縮を繰り返し、俺のペニスを絞り尽くす。その圧力は肉体的な限界を超え、精神まで絞り出すような強烈さだった。

  「うっ……くっ……。出る……。出ちゃう……ッ!」

  ドクンッ!

  「あ、あああっ――!」

  熱い奔流が、リュミナの最奥へと注ぎ込まれた。

  一度の放出とは思えないほどの量が次々と溢れ出し、結合部から逆流した精液が二人の腹を白く染める。

  「んぐぅ……っ! もっと……もっとぉ……!」

  リュミナが貪欲に求め、腰を小刻みに動かし続ける。その動きに合わせて、俺の射精もさらに勢いを増す。

  まるで無限に続くかのような射精。白い液体が途切れることなく流れ出し、彼女の蜜壺を満たしていく。その熱い奔流が、俺自身の人間だった部分――男としての機能、性別そのものを溶解させているような感覚だった。

  リュミナが悪戯っぽく笑うと、わざと見せつけるように腰を持ち上げた。結合が解かれ、俺の股間に残っていた痕跡。半透明の糸を引きながら露わになったのは。

  「あっ……」

  言葉にならない驚愕。つい先ほどまで猛り狂っていた男の象徴は、今まさに消滅しようとしていた。

  萎みかけたペニスの根元から、粘液が細く糸を引いている。それは精子を出し尽くし、透き通った精液とも粘液ともつかないものに変わり果てていた。

  「ふふ……。もうほとんど見えなくなっちゃったね?」

  リュミナが嘲笑うように言いながら、指先でそっと触れる。触られた瞬間、微かな振動が走ったが、もはやそこには快感も痛みもない。ただ不思議な違和感だけが残る。

  「どんどん小さくなるよ……見てて?」

  彼女の指が促すように軽く押すと、男の象徴だったものがさらに縮み始める。まるで粘土が溶けていくように輪郭が曖昧になり、色素が薄れていく。竿の部分は見る見るうちに萎んでいき、皮の中に飲み込まれる。

  「くっ……。なんだよ、これ……」

  喪失感が胸を締め付ける。自分が男でなくなるという実感。しかし同時に奇妙な解放感もあった。長年悩みの種だった性の衝動や葛藤が溶けていくような……。

  「大丈夫。これからはあたしと同じサキュバスとして……。女の子として、ずっと生きていくんだから」

  最後の一滴の粘液が小さな玉となって零れ落ちると同時。

  空気の抜けるような微かな音を立てて、男の象徴は完全に消失した。

  代わりに現れたのは、滑らかな割れ目。褐色の毛に覆われた、リュミナと同じような幼い女性器だった。そこから排出された最後の粘液が、彼女の金色の尻尾に滴り落ちる。

  「やっと……あたしと完全にお揃いになったね!」

  リュミナが満面の笑みで俺を抱きしめる。その抱擁はどこか勝ち誇ったもののようにも見えた。

  「これでずっと一緒だよ? 同じサキュバスとして、ずっと……」

  フラフラとした足取りで立ち上がる。ベッドサイドの鏡に向かう途中で、自分の身体のバランスのとり方が以前と全く違うことに気づいた。腕や脚が短くて、つま先立ちしてるみたいな変な感覚。そして何よりも――視界が低い。

  鏡に映った自分を見て、俺は言葉を失った。

  そこにいたのは……誰だ?

  金茶色の毛に覆われた小柄な身体。

  リュミナと同じくらいの背丈――おそらく小学校低学年程度の体格だろうか。頭の上には艶やかな鬣のような髪が乱れ、その両側からピンと立った大きなライオンの耳が生えている。

  鏡の中の俺の顔は確かに成人男性だったはずの悠人の面影を微かに残しつつも、丸みを帯びて幼くなっている。大きく潤んだ瞳はリュミナと同じ金色だ。そして何より……

  「……うそだろ」

  胸元には僅かだがふくらみがあった。

  華奢な肩に沿って滑らかなラインを描き、褐色の毛がその起伏を彩っている。

  そして下腹部――先ほどまで確かにあったはずの男の象徴は跡形もなく消え去り、代わりに茂みに覆われた滑らかな割れ目が備わっていた。

  何より、背中には小さな翼。隣にいるリュミナと同じ、コウモリのような翼が、ぱたぱたとその存在を主張していた。

  「どう? あたしの言った通りでしょ?」

  いつの間にか背後に立っていたリュミナが、俺の肩越しに鏡を覗き込みながら囁いた。

  当然のことを言うように、あくまで明るい口調で。

  「ライオン……なのかな? すっごくかわいいよ、悠人……」

  「これが……俺なのか……?」

  震える手で、鏡に映る自分の顔に触れる。そこには金色の毛に覆われた柔らかな頬があり、鏡の中の獣人も同じ動きをした。

  喉仏は消え去り、声も以前の掠れたものではなく、少しハスキーながらも少女のもの。

  「そうだよ。あたしと同じ、ケモノのサキュバス!」

  現実感がなかった。

  全身を動物の毛並みに覆われた小さな体。頭上のケモ耳。

  何より、股間には男の象徴はなく、自分でも気づかぬうちにヒクヒクと震え、熱い蜜を滲ませている、女の子の部分。

  「ふふ……興奮しちゃってるね」

  背後からリュミナの甘い声が囁きかけられ、細い指が俺の背中の毛を優しく梳く。

  「ここも……」

  次の瞬間、その指がゆっくりと俺の股間の茂みをかき分け、直接割れ目に触れた。

  「……ひっ!?」

  冷たい指先の感触に思わず腰が跳ねる。鏡の中の獣人の少女――俺は目を見開き、リュミナの指が触れている部分を見つめた。

  「女の子の場所……気持ちいいでしょ?」

  リュミナは楽しそうに言いながら、指をゆっくりと上下に動かし始めた。ヌチャ……と粘っこい音が静かな室内に響く。

  「や……め……っ」

  抗おうとするが、その動きに合わせて腰が勝手にくねり、リュミナの指を迎え入れるように割れ目が開いていくのが分かった。鏡に映る自分の姿はあまりにも淫らで、周りに比べて少し濃い毛が蜜に濡れて光っている。

  「やめちゃダメだよ?」

  リュミナのもう片方の手が俺の顎を優しく持ち上げた。真紅の瞳が、真っ直ぐに俺を見つめている。

  「悠人はね、もう女の子なんだから。女の子が気持ちよくなる方法……。あたしが教えてあげる」

  そう言うと、彼女は俺の秘裂を愛撫する指の動きを大胆なものに変えた。クリトリスを探り当てられると、ビクンと全身が痙攣した。

  「あっ……! なに、これ……っ!」

  今までの男性としての快感とは全く異なる種類の刺激。鋭く一点に集中するような、それでいて内側から湧き上がるような甘い疼きが全身に広がっていく。

  「これがね……女の子の感じるところ」

  リュミナが俺の耳元で囁く。彼女の息遣いが首筋にかかり、それすらも新たな快感となって脳を痺れさせる。

  「もっと感じて? あたしと同じ、サキュバスになったんだもん……。いっぱい気持ちよくなれるよ?」

  リュミナの指が膣口を優しくなぞり、入り口を探る。その浅い部分をくすぐられるだけで膝がガクガクと震え、立っているのもやっとだった。

  「ふ、あっ……! あっ、……なんか……。くる……っ!」

  知らない感覚が急速に高まっていく。それは尿意にも似た切迫感と、もっと深く強い何かが同時に押し寄せてくるような未知の感覚だった。

  「いいよ……。そのまま、あたしと一緒に……」

  リュミナが俺の身体を後ろから抱きしめるように密着し、鏡の中では二人の毛並みが溶け合うように絡み合っている。彼女の金色の尻尾が俺の腰をきつく締め上げ、逃げ場を奪う。

  「イって? 女の子として、初めての絶頂……あたしに見せて?」

  その言葉を合図にするかのように、こりっ、と、膣内のある一点を、リュミナの細い指が刺激した。

  「ひっ……あああああーーーーっ!!!」

  脳裏が真っ白に染まり、全身が激しく痙攣した。

  初めて味わう女の絶頂は、想像を遥かに超えるものだった。男性としての射精のような一瞬の快感ではなく、津波のように何度も打ち寄せる深い陶酔感。

  秘裂からは大量の蜜が溢れ出し、太ももを伝って床に滴り落ちていく。鏡の中の獣人の少女はだらしない嬌声を上げ、金色の毛に覆われた体を弓なりに反らせて悦びに打ち震えていた。

  「上手にイケたね、悠人」

  絶頂の余韻でぐったりとする俺の頬に、リュミナが優しくキスをする。

  そして、俺の小さな体を、リュミナはひょいと持ち上げた。まるで人形でも扱うかのように軽々と。

  先ほどまで俺が蹂躙されていたベッドへと連れ戻され、仰向けに押し倒される。金色のシーツが肌に触れる感触すら、新鮮だった。

  「ふふ……次はこっちでたっぷり可愛がってあげる」

  リュミナが悪戯っぽく微笑むと、その顔がゆっくりと俺の股間へと近づいてきた。秘裂が再び外気に晒され、ヒクヒクと震えているのが自分でもわかる。

  「ま……待って……」

  制止の声も虚しく、リュミナの舌が俺の新たに生まれた花弁を割って入ってきた。ザラリとした舌の感触が、割れ目に触れる。

  「ひゃうっ!?」

  鋭い電流のような快感が脊髄を駆け上がった。今まで感じたことのない種類の刺激だ。男性器で感じる直接的な快感とは違い、粘膜を舐め上げられるたびに内部から蕩かされるような甘い疼きが広がっていく。

  「あっ……。やっ、やめっ……!」

  必死にリュミナの頭を押しのけようとするが、小さな獣人の腕には力が入らない。金色の耳がぴくぴくと動き、全身が快感に震える。

  「んふ……。おいしい……。悠人の、新しい味……」

  リュミナはまるで甘いハチミツでも味わうかのように夢中で俺の秘所を舐め回し、時には強く吸い上げる。その度に腰が勝手に跳ね上がり、男としての自我を溶かしていく。

  「あっ……。ああ……っ。おかしく……なる……っ」

  涙が金色の睫毛を濡らす。女性としての快楽はあまりにも深く、底なし沼のように俺を引きずり込んでいく。そして、リュミナが俺の内股に口づけをした時だった。

  「悠人……」

  リュミナの動きが一瞬止まり、真剣な眼差しで俺を見つめた。

  「今日から君は……イリスだよ」

  「……え?」

  突然の宣言に戸惑う俺の頬を、リュミナが優しく撫でる。

  「イリス……あたしがずっと考えていた名前なんだ。サキュバスになった悠人にぴったりだと思って」

  リュミナの真紅の瞳が妖しく輝く。

  「だから……。これからは『イリス』って呼ぶね?」

  「イリス……?」

  その名前を口にした瞬間、奇妙な感覚が胸を満たした。まるでそれが本当の自分の名前であるかのように。魔力の同調が深まるにつれて、新しい名前への親和性が生まれているのかもしれない。

  「そう……イリス」

  リュミナが再び俺の秘裂に舌を這わせながら囁く。

  「んっ……。や、そんな……っ」

  否定しようとしても、リュミナの舌技に翻弄され、言葉が途切れる。自分のナカに侵入される、未知の感覚。それでも、それを快楽として受け取ってしまう自分がいることに、疑問を持つことができない。

  「ひぅっ……! あっ……。ああ、ん……っ!」

  幼い少女のような甲高い嬌声が自分の口から漏れる。恥ずかしさと快感がないまぜになり、思考が霞んでいく。

  体格は小柄で少女そのものなのに、感度は信じられないほど高い。リュミナのちょっとした仕草や言葉に、びくんと全身が震えてしまう。

  「ふふ、いい声……。イリスは本当に可愛いな……」

  リュミナが満足そうに微笑む。その笑顔は無邪気でありながら、絶対的な支配者のようにも見えた。

  「これからもっともっと、楽しいことしようね? あたしたち、ずっと一緒なんだから……」

  その言葉と共に、リュミナの責めが再び激しさを増す。

  溢れる蜜を啜り上げる音、肉襞を舐められる感覚、クリトリスを甘噛みされる鋭い刺激……。全てが混然一体となって、ロリサキュバスのイリスとなった俺を絶頂へと導いていく。

  「あっ……。ああ……っ! もう、だめぇ……っ!」

  抗う術もなく、新たな快楽の波に身を委ねていくしかなかった。

  金色の毛が汗と蜜で濡れ光り、細い腰が何度も痙攣する。リュミナの舌が与える快感は深く、甘く、そして決して醒めることのない悪夢のようにイリスとしての自我を蝕んでいった。

  リュミナの舌が俺の中心を貪るように這い回る。獣毛が唾液と愛液で濡れて束になり、ヒクヒクと痙攣する秘裂に貼り付く。もう何度も達しているはずなのに、快感の波は一向に引かない。

  「あっ、やぁ……。もう……。ダメだってば、ぁ……っ」

  泣きそうな声で訴えても、リュミナは楽しそうに笑うだけだ。その真紅の瞳が妖しく光り、俺の反応をひとつも見逃すまいと凝視している。

  「嘘つき。イリスのおまんこ、もっともっとって言ってるよ?」

  そう言って彼女はさらに深く、舌を埋め込んできた。ザラリとした舌が肉襞をこそぎ、奥へ奥へと進んでくる。指とはまた違う、熱くて湿った異物感が頭の中を焼く。

  「ひぅっ……! そ、そこぉ……っ!」

  一番弱い場所をとん、と押された瞬間、視界が明滅した。腰が勝手に浮き上がり、リュミナの頭を挟み込むようにして閉じた膝が震える。金色の毛に覆われた太ももが汗で濡れ、シーツを掴む小さな指先が白くなる。

  (だめだ……。気持ちよすぎて、何も考えられない……)

  頭の中で「悠人」という名前が遠ざかり、「イリス」と呼ばれるたびに身体の芯が甘く疼く。

  これが。サキュバスの契約の力なのだろうか。リュミナの魔力が俺の体内で暴れ回り、未知の快感を呼び起こす。

  「ねぇ、イリス」

  リュミナがようやく顔を離し、ぺろりと唇を舐めながら囁いた。その口元は俺の愛液でてらてらと光っている。

  「もっとすごいことしようか? 一緒に、もっと気持ちよくなれる方法」

  「……?」

  朦朧とする意識の中で問い返すと、リュミナは俺の腕を引っ張り上げた。小さな獣人の体は簡単に彼女の胸に収まる。トクトクと早い鼓動がリュミナの胸から伝わってくる。

  「こうやって……」

  リュミナが俺の腰を抱え上げ、向かい合わせになるように座らせた。金色の毛皮に覆われた二つの幼い体が密着する。

  「お互いのおまんこをくっつけて……こすり合わせるの。貝合わせっていうんだよ?」

  説明しながら、リュミナが俺の秘裂に自分の濡れそぼった場所を近づけてくる。熱い湿り気が伝わってきて、それだけでお腹の奥がきゅんと疼いた。

  「や……恥ずかしい……」

  思わず目を逸らす。男だった時の記憶が微かに抵抗を訴えるけれど、身体は正直だった。金色の茂みの奥が期待に震え、さらに蜜を分泌しているのが自分でも分かる。

  「大丈夫。怖くないよ」

  リュミナの柔らかな声と共に、彼女の秘裂が俺のそれにぴたりと重なった。

  「あ、あっ……!」

  それだけで電流のような快感が走り、小さく悲鳴を上げた。熱い粘膜同士が触れ合う感覚。ヌチュ……という水音が俺たちの間に響き渡る。

  「動いてみて?」

  リュミナが後ろに手を回し、腰を支える。

  恐る恐る、腰を前後に動かしてみた。

  粘膜同士が擦れるたびに信じられないほどの快感が背筋を駆け上がる。リュミナの金色の毛と俺の毛が絡み合い、愛液でどろどろになっていく。

  「んっ……あっ……。すごぃ……っ!」

  最初の羞恥心はすぐに吹き飛んだ。もっともっとこの刺激が欲しい。俺は夢中になって腰を振り始めた。リュミナもそれに合わせて動き、二人の秘所はまるで一つの生き物のように蠢き合う。

  「あはっ……。イリス……、積極的……っ!」

  リュミナの喘ぎ声が俺の耳をくすぐる。彼女の金色の耳がピクピクと動き、俺も同じように耳を震わせながら、一心不乱に腰を動かす。汗で濡れた獣毛が絡まり合い、互いの肌に密着する。

  「リュ……リュミナぁ……っ!」

  彼女の名前を呼ぶと、リュミナが嬉しそうに微笑んで俺の唇、いや、獣の口を奪った。舌が絡み合う濃厚な口づけと、下腹部での卑猥な擦り合わせが同時に起こる。まるで全身が性感帯になったかのように、どこを触られても快感が走る。

  「イリス……。イリス、可愛い……」

  リュミナが俺の名前を連呼するたびに、お腹の奥が熱くなる。サキュバスの契約により与えられた名前。それが俺を縛り付け、同時に甘美な響きで解き放っていく。

  (あ……来る……。また、大きいのが……っ)

  身体の奥底から湧き上がってくる強烈な快感の予兆。それは前回までの快感とは比べ物にならないほどの巨大な奔流になりつつあった。リュミナの魔力と俺の魔力が完全に溶け合い、互いの快感神経が直接繋がったかのような錯覚。

  「リュ……ミナぁ……。おれ……もう……っ」

  言葉にならない懇願を込めてリュミナを見つめると、彼女は真紅の瞳で慈しむように俺を見つめ返し、強く腰を押し付けてきた。互いの敏感な突起が擦れ合い、最も深く鋭い刺激が脊髄を貫く。

  「あ、ああああーーーーっ!!」

  目の前が真っ白になり、世界が弾け飛んだ。意識が一瞬で蒸発するほどの凄まじいオーガズム。全身が弓なりにしなり、金色の毛が逆立つ。膣口から熱い液体が噴き出すような感覚と共に、内側から迸る絶頂が俺を飲み込んだ。

  (なに……これ……)

  意識が急速に薄れていく。リュミナの温もりを感じながら、俺は深い闇の中へと沈んでいった。最後に見たのは、満足そうに微笑むリュミナの顔と、天井に揺らめく金色の魔法陣の淡い光だけだった。

  —

  暖かい気配で目が覚めた。

  目蓋の裏に、じわりと滲むような金色の光が差している。

  カーテンの隙間から、ほんのりと朝の陽が射し込んでいた。

  時間は、おそらく七時を少し回ったあたり。

  曜日の感覚も、肌寒さも、妙に現実的な朝の感触だった。

  俺はまだ布団の中で、しばらく動けずにいた。

  まどろみの中にあった、昨夜の記憶が、波のようにゆっくりと押し寄せてくる。

  ピンポンと鳴ったチャイム。

  狐の少女。

  赤い瞳と、ふわふわの尻尾。

  ベッドに倒れ込むようにして、そのままの流れで……。

  その先のことは、少し曖昧だった。

  ただ、熱かった。

  触れるものすべてが、やたらと甘く、柔らかく、現実とは思えないほど官能的だったことだけは、確かに身体が覚えていた。

  俺は静かに息を吐いて、天井を見上げた。

  「……夢……、じゃないよな……」

  呟いた声が、やけに鮮明に耳に響く。

  喉が乾いていた。

  でも、何かを飲もうという気にもなれなかった。

  ふと、布団の重みに違和感を覚える。

  ゆっくりと視線を横にずらすと、そこには小さな背中が、すやすやと呼吸を刻んでいた。

  浅い寝息とともに、腰のあたりからぴょこっと伸びた尻尾が、俺の脚に絡んでいる。

  毛並みのいい狐のそれ。

  見間違えることなんて、あり得ない。

  「……マジで、いたのかよ……」

  俺はそっと身体を起こす。

  動かないように気をつけながら、横たわるその子の顔を覗き込む。

  金色の髪が枕に散らばっている。

  小さな額、長い睫毛、ほんのり上気した頬。

  呼吸に合わせて、黒ずんだ獣の鼻先が微かに動いていた。

  リュミナ。

  昨日の夜、俺の部屋に突然現れて、この狐耳と翼を揺らしながら、当然のように俺の横で眠ってしまった少女。

  まさか、夢じゃなかったのか。

  いや、でも、そこにいる。

  今も。

  嘘みたいに。

  何事もなかったように。

  「……ちょっと、現実っぽくなってきたな……」

  つぶやいた俺の声に反応したのか、リュミナの尻尾がぴくんと動いた。

  その毛先が、俺の腰のあたりをくすぐってくる。

  なんとなく、わざとやってる気すらする。

  俺は苦笑して、布団の端を握ったまま、彼女の額にかかる髪をそっとかき上げた。

  柔らかく、ほんのり甘い香りが指先に残る。

  (……この匂いも、昨日と同じだ)

  夢じゃないということを、肌と匂いで確かめながら、俺はようやく心のどこかで納得し始めていた。

  ——こいつは、リュミナだ。

  ——そして、今、俺の横で眠っている。

  小鳥の声が、遠くで聞こえた。

  それは、ほんの少し前までいた夜とは、まったく違う世界の音だった。

  俺は上半身を起こして、ベッドの端に腰を下ろした。

  毛布の端から、リュミナの尻尾がゆっくりと滑り出していく。

  まるで、まだ夢の続きを引きずっているような動きだった。

  手を伸ばして、髪をかきあげる。

  額に汗が張りついている。

  どこか、熱っぽい。けれど身体は軽かった。

  何かを確かめたくて、ベッド脇のスマホを取る。

  時刻は朝の七時十二分。

  通知欄が一つ、点滅していた。

  「……ん?」

  画面をスワイプする。

  見慣れないアプリからの通知が表示されていた。

  【残高更新のお知らせ:+10,000,000円】

  一瞬、理解が追いつかなかった。

  「は……?」

  もう一度見た。

  目を擦った。

  でも、何度確認しても数字は変わらない。

  ゼロが、桁違いに多い。

  まるで、宝くじでも当たったような。

  「ちょ、ちょっと待てよ……。え? なにこれ、詐欺? 乗っ取り? いや、誰が……」

  口座履歴を開いて差出人を確認する。

  そこに記されていた名前は——

  【魔界金融庁交付/対地居住支援金】

  「…………」

  あまりに突拍子もなさすぎて、何も言えなかった。

  思考が真っ白になる。

  数秒後、布団の中から、ふにゃ、とした声がした。

  「ん〜……なぁに? 朝からうるさい〜」

  「お、おいリュミナ!? お前、これ! これどういうことだよ!?」

  「ん〜? あ、おかね?」

  寝ぼけ声のまま、リュミナはゆっくりと上半身を起こした。

  髪がふわっと揺れ、光を反射する。

  まだ寝ぼけた目で、俺の持っているスマホを覗き込みながら、口をもごもご動かした。

  「いっぱいあるでしょ〜?」

  「“いっぱいあるでしょ〜”じゃねえよ! なんで俺の口座に一千万入ってんだよ!!」

  「悠人、こっちで暮らすんでしょ? だったらお家とか家具とか、いろいろ必要だもん。支援金だよ、しえんきん」

  「支援金って、どこの制度だよそれ!? 国のもんじゃねぇだろ絶対!」

  「うん、魔界のだよ?」

  さらっと言い切るリュミナ。

  その言葉の明るさに、逆に反応が遅れる。

  「……魔界の?」

  「うん。こっちの世界で生きるって決めたひとには、ちゃんと出るんだよ。前はもっと少なかったけど、最近はレート上がったからいっぱい出るの」

  レート上がった、って軽いノリで言うな。

  「お前な……」

  ため息が漏れる。

  状況が状況なのに、どうしてか怒る気にもなれなかった。

  リュミナはまだ眠そうな顔で俺の肩に寄りかかる。

  その体温が、じんわりと服越しに伝わってくる。

  「ねぇ、悠人」

  「……なんだよ」

  「昨日の夜のこと、ちゃんと覚えてる?」

  「……あー……」

  言葉が詰まる。

  あまりにも生々しい感触が、脳裏をよぎった。

  童貞を奪われて、ケモノの女の子になって。イリスなんて名前までつけられて。

  だが、あれを“夢”と切り捨てることもできなかった。

  「うん……覚えてる。……全部、ってわけじゃないけど」

  「そっかぁ。じゃあ、もうあたし、夢の子じゃなくなったね」

  リュミナはうれしそうに笑った。

  その笑顔は、やっぱりどこか無邪気で、子どもみたいに透き通っていた。

  俺はその横顔を見つめながら、ぼそりと呟いた。

  「……でもさ。お前、こっちでどうすんだよ。戸籍とか、家とか……あと、耳とか尻尾とかさ」

  「ふふん。そんなの、なんとかなるよ〜。わたし、魔法使えるもん」

  「便利な言葉だな、魔法って」

  「本当だもん。見てて?」

  リュミナはパチンと指を鳴らした。

  瞬間、俺の視界が一瞬かすむ。

  まばたきをした次の瞬間には、彼女の狐耳も尻尾も、まるで最初から存在しなかったみたいに消えていた。

  リュミナの面影を残した、普通の女の子が目の前にいるだけ。

  「……うそだろ」

  「ね? これなら外でも平気でしょ?」

  「いや、便利すぎるだろ……」

  俺が呆れている間に、リュミナはふああと欠伸をして、再び布団に潜り込んだ。

  小さな背中が、くるんと丸くなる。

  尻尾が消えても、そこにいた証拠のように、毛布が少しだけ膨らんでいた。

  その姿を見ていたら、胸の奥に温かいものが滲んできた。

  昨夜までの現実感のなさが、少しずつ輪郭を帯びていく。

  どうやら本当に、これが俺の日常になるらしい。

  「なあ、リュミナ」

  「んー?」

  「……俺、起きたとき、一瞬だけ夢だったのかなって思った」

  布団の中から顔を出したリュミナは、まばたきを一つして、静かに笑った。

  「そっかぁ。でも、夢じゃなかったでしょ?」

  「……ああ。お前が隣にいて、安心した」

  俺は、そう言って小さく息をついた。

  変わってしまった現実を受け入れようとする自分と、ほんの少しだけ未練がましく“戻れるなら”と願っていた自分がいたのは確かだった。

  だから、目覚めた瞬間の人間の姿に、正直ほっとしたのも事実だ。

  リュミナは俺の手をそっと包み込んで、囁くように言った。

  「わたし、悠人の生活を壊したいわけじゃないんだよ。……ただ、いっしょにいたかっただけ」

  幼い顔がちょっとだけ真剣な感じに引き締まり、でも、一瞬で幸福をかみしめるようにふにゃっと歪む。

  「悠人は今まで通り、大学行って、ごはん食べて、眠って……。その隣に、わたしがいられたら、それでいいの」

  その言葉に、肩から力が抜けた。

  てっきり全部を変えられてしまうものだと思っていた。

  サキュバスのイリスになって、人間としての生活も、身分も、全部が“魔族”の側に引きずられるものだと。

  だからこそ、もう戻れないことを受け入れる覚悟までしていた。

  でも、それは違った。

  「……なんだよ、それ」

  思わず呟いた声に、リュミナが首をかしげる。

  「え?」

  「いや……そういうの、最初に言ってくれよ。覚悟して損した」

  リュミナはくすっと笑って、小さくつぶやいた。

  「でも、ちゃんと覚悟してくれたの、うれしいよ」

  俺はその言葉に、どこか胸が温かくなるのを感じた。

  魔法も、サキュバスの姿も、そういう“非現実”はまだうまく馴染めてない。

  けど、リュミナが俺の生活を尊重してくれるなら、たぶん、きっと大丈夫だ。

  「……お前、意外と気ぃ使うんだな」

  「だって、悠人のことが大事だもん」

  返ってきたその声は、いつもの調子で、そしてとても優しかった。

  「……なあ、もう一個聞いていいか?」

  「うん? なになに?」

  「俺って……。その、サキュバスになったわけじゃん。半分だけどさ」

  「うん、そうだよ〜」

  「……それって、ちゃんと普通に暮らせるのか? 食事とか、体調とか……。なんか“エネルギー補給”とか、そういうのあるんじゃないのか……?」

  思いきって口にしてから、自分で少し恥ずかしくなる。

  魔界の話なんて本気で信じてるわけじゃなかったはずなのに、今や完全に“変身後の生活”を心配している。

  リュミナは、ぷっと吹き出した。

  「なにそれ、悠人かわいい」

  「いや、真面目な話だって!」

  「うん、知ってる。でも大丈夫だよ?」

  「……ほんとかよ」

  「ほんとほんと。サキュバスって言っても、別に“えっちしないと死ぬ!”とか、そういうんじゃないから」

  「……ああ、それ聞いてマジで安心した……」

  「でも、したくなったらいつでもしていいんだよ?」

  「台無しだよそれぇ!!」

  顔が一気に熱くなる。

  リュミナはケタケタ笑いながら布団にくるまり、なぜかまた生えていた尻尾を器用にくるんと巻きつけて隠れる。

  「んふふ、でもほんとに平気だよ? ごはんも普通に食べられるし、魔力の調整もわたしが手伝えるし」

  「……ああ。ありがとな」

  「んー?」

  「なんか、ちょっとずつだけど……俺、落ち着いてきた気がする」

  「よかった〜。だって、悠人が不安そうだと、わたしも寂しくなっちゃうもん」

  リュミナが顔だけ出して、にっこり笑った。

  俺はスマホを枕元に置いて、小さく呟いた。

  「……お前、ほんとに居座る気だな」

  「うん、もちろんだよ〜」

  布団の中からくぐもった声が返ってくる。

  その声音には、どこか“安心している”ような響きがあった。

  俺は肩をすくめ、苦笑した。

  「ほんっと、マイペースだなお前……」

  「だって、悠人の隣が、いちばん安心するんだもん」

  そう言いながら、リュミナは毛布の中で俺の手を探してきた。

  小さな手が、俺の指をそっと握る。

  それだけで、不思議と胸の奥のざわめきが静まっていった。

  少しの沈黙。

  俺は天井を見上げたまま、昨夜からのことを思い返していた。

  狐の少女が現れ、ありえないことが起き、そして今、こうして隣で眠っている。

  その全部が現実で、何ひとつ幻じゃない。

  信じられないことなのに、息をするように当たり前に受け入れられるのは、たぶん、もう俺の中に“あの血”が流れているからなんだろう。

  リュミナが俺の手の甲を指先でなぞりながら、ふと顔を上げた。

  「ねぇ、悠人。もう気づいてる?」

  「……何を」

  「悠人もね、今なら、いつでも“こっちの姿”になれるよ」

  「……こっちのって……」

  リュミナは小さく笑って、俺の胸に手を当てた。

  その掌から、微かに温かい光がにじむ。

  すると胸の奥が、ゆっくりと鼓動を強めた。

  身体の内側がざわつく。

  皮膚の下を流れる血が、まるで別のものに変わり始めたような。

  意識を少しだけ向けると、背中の奥がくすぐったくなる。

  耳の奥で、遠い羽音のようなものが響く。

  リュミナが囁く。

  「ね? わたしと同じ。悠人の中にも、ちゃんと“サキュバスの魂”があるの」

  「……ほんとに、俺が?」

  「うん。昨日の夜に目覚めたんだよ。あのとき、わたしたち、魔力を混ぜたから」

  「混ぜた、って……」

  「だから、悠人ももう半分は魔族。変身したいって思えば、すぐなれる」

  俺は思わず息をのんだ。

  魔族。サキュバス。

  その言葉は、まだどこか現実離れしていた。

  けれど、リュミナの目は冗談じゃなかった。

  その真紅の瞳の奥に、自分の姿が映っている気がして、なぜか胸が少しだけ熱くなる。

  「……なあ、それって、危なくないのか? 人間の世界でバレたら……」

  「大丈夫だよ。魔力で姿を隠せるし、わたしがいる限り、ぜったい平気」

  「お前がいる限り、ね……」

  リュミナはくすりと笑う。

  「うん。ずっといるもん。だって、悠人といっしょに生きるために来たんだよ?」

  その言葉が、あまりにもまっすぐで、少し眩しかった。

  思わず視線を逸らして、部屋の窓を見やる。

  差し込む朝の光が、まるで祝福のように床を照らしていた。

  「……ほんと、お前、言葉が重いんだか軽いんだかわかんねぇよ」

  「えへへ。重くてもいいでしょ? わたし、悠人がすきだから」

  その言葉に、心臓が跳ねた。

  不思議と、拒否したい気持ちはなかった。

  むしろ、その音が嬉しくて仕方ないような、そんな感覚だった。

  リュミナは毛布の上で身体を丸めながら、柔らかい声で続けた。

  「ねぇ、悠人。これから、どうしたい?」

  「どう、って……」

  「このまま人間として暮らす? それとも、こっちの姿でいっしょに生きる?」

  俺はしばらく黙ったまま、考えた。

  昨夜の熱の残滓がまだ指先に残っている。

  胸の奥には、どこかで“変わってしまった”自分の気配がある。

  もう、完全に人間じゃないのかもしれない。

  けれど、それが不思議と怖くはなかった。

  「……どっちでもいいかな」

  「え?」

  「お前がいる方で、生きていけりゃ、それでいい」

  リュミナの目が一瞬見開かれ、次の瞬間、とろんとした笑顔に変わった。

  「……悠人、すき」

  「はいはい。朝からテンション高ぇな……」

  「だってうれしいもん」

  リュミナは嬉しそうに身体を寄せてきて、俺の胸に頬を押しつける。

  小さな温もりが、胸の奥まで溶けていくみたいだった。

  そのまま、俺の手を取って、両手で包み込む。

  「ねぇ、ほら、感じる? この中で、ちゃんと魔力が動いてるよ」

  リュミナの指先が俺の掌の中央を押さえる。

  そこから、微かな熱が滲み、脈が一拍強く打った。

  意識を向けると、体の中をゆるやかに流れるものがあった。

  それは血よりも軽く、呼吸よりも深い、何かあたたかいもの。

  「これが……俺の中の、魔力?」

  「うん。ちゃんと生きてる。だからもう、わたしたち、つながってるんだよ」

  リュミナの言葉が胸の奥に落ちていく。

  ゆっくりと目を閉じると、暗闇の向こうで小さな光が脈打っていた。

  まるで心臓とは別の場所にもうひとつ“命”が宿っているような感覚。

  「……不思議だな。怖くない」

  「でしょ? だから言ったの。楽しいよ、これから」

  リュミナはにこっと笑うと、俺の頬に軽く唇を寄せた。

  それはキスというより、魔法の印のように感じた。

  「これでね、悠人が変身したくなったら、すぐなれる」

  「したくならないって、そんなすぐには」

  「ふふ。なりたいときになればいいの。無理しなくていいから」

  その声は、やわらかくて、少し眠たげで、心地よかった。

  そのままリュミナは俺の肩にもたれ、目を閉じる。

  「……なぁ、リュミナ」

  「なぁに?」

  「お前、俺がサキュバスになっても、変わらず一緒にいられるか?」

  「もちろん。だってそれが、いちばんの願いだったもん」

  「……願い?」

  「うん。悠人と同じ姿になって、同じ時間を生きること。それがずっとの夢だったの」

  リュミナの声が、眠りに落ちる前の子供のようにかすれていた。

  その響きがあまりに優しくて、俺は気づけば彼女の頭を撫でていた。

  金色の髪が指に絡み、細い呼吸が肌に触れる。

  「……そっか。じゃあ、叶ったんだな」

  「うん。叶ったの……」

  そのままリュミナは眠りに落ちた。でも、彼女のぬくだけは確かに残っていた。

  窓の外では、光が街を満たし始めていた。

  空の青さが深くなり、鳥の声がもう一度近づく。

  俺は深呼吸をして、ゆっくりとまぶたを閉じた。

  胸の奥で、微かな鼓動が響く。

  それは確かに、人間のものではなかった。

  けれど、温かかった。

  俺の中に流れる新しい命の音が、隣の少女の呼吸と、静かに重なっていた。

  俺はそっと囁いた。

  「……よろしく、リュミナ」

  「……ん……。よろしく……」

  寝言のような声が返ってくる。

  俺は笑って、彼女の髪をもう一度撫でた。

  柔らかい光の中で、リュミナの笑顔が少しだけ浮かぶ。

  そしてそのまま、再びまどろみへと落ちていく。

  二人の新しい朝が、静かに始まっていた。