【シチュエーションボイス台本】獣人(聞き手)が逃げ出した先で出会ったのは生き疲れたOLでした

  作品の背景:

  現代日本に類似した都市社会。

  人間と“獣人”という異種族が存在するが、社会的に共存しているわけではなく、獣人希少でありながら差別や排斥、無視の対象とされている。とくに都市部ではその存在自体が異端と見なされ、野良犬のように扱われることもある様子。

  公的支援や保護はなく、子どもの獣人が路上で衰弱していても見過ごされるような閉塞感がある。

  聞き手:

  捨てられた獣人。この世界においては獣人は所謂現実世界における犬猫のような扱いを受けており、彼も元は飼われた存在であった。

  幼少期は獣人のコミュニティにて生活していたが、獣人を不法に捕獲する「獣人狩り」の被害に遭い、それ以来ペットとして扱われる。

  金持ちの間で獣人を飼うということがブームになっており、彼の飼い主は取り分け暴力的であった。かつては人間に狐の耳と尻尾(10本程)がついたような美麗な見た目だったが、そのような境遇の中で、片耳と2本を残したそれ以外の尻尾を失っている。

  中性的的で金髪のショタのイメージ。年齢は12歳程である。

  話し手:

  20代後半~30代前半の人間の女性。

  一人暮らしの社会人で、職場はブラック企業。荒んだ現実に慣れきっており、言葉づかいは雑で男っぽい。

  だが根は放っておけない性分で、偶然出会った少年を見過ごせず、直感的に助けてしまう。

  誰かに依存されたり、世話を焼くのは面倒だと自覚しつつも、無視できない優しさを抱えており、独り言の形で少年に語りかけている。獣人に出会うのはこれが初めてである。

  [newpage]

  「はぁ、今日も帰ったら日付変わってんじゃん。

  終電ギリ間に合うだろうけど……家まであと40分とか、地味にキツいわ。

  あー、だる。毎日これでよく倒れねーな、私。すごいわほんと。」

  「……んぁ?」

  「今の音……猫?にしては、デカくね?

  裏路地の方……なんかガサッて……」

  「……は?あの子……人間?……いや、耳……尻尾?……

  もしかして噂の捨て獣人ってやつ?」

  「……いや、マジで?うっわ、嘘じゃなかったんだ、関わりたくねぇ…

  でも、見なかったことにするのもなぁ……」

  「おーい、君さあ、なにしてんのぉ?」

  「――って、ちょ、ちょっと待て!」

  「あ、転んだ……やっば、動かない。気絶したっぽいな……」

  「うわ、近くで見たらやっば……

  ボロボロすぎる……この傷……服ももう服じゃないし……

  これ、飼い主にやられたってことだよな…

  つーか、これ警察に連絡したら逆にマズいよな?

  捨てられたのか逃げてきたのかわかんねぇけど、また元のとこ戻されんのは、あんまよくなさそうだし……」

  「おーい、聞こえる?……ダメか。

  このまま放置しとくとか……ないな。ないわ。

  はぁ……なんで私がこんな、クソ……」

  「よいしょっと、勝手に持ち上げるぞ……

  ……嘘、軽すぎじゃ?この子……年、10歳くらいに見えるけど、私でも持ち上げれるじゃん……

  まぁ、かえって好都合か」

  「おぶって……う、さすがにちょっとキツいな、これ。

  夜勤明けの体に効く……マジで腰いわすやつ……」

  「……なあ、聞こえてる?」

  「今からうち連れてくから。悪いことはしないし、売ったりもしない。

  とりあえず、ちゃんと寝かせて、消毒して……それから、なんか食わそう。

  食えるか知らんけどな……てか、獣人の飯って人間と一緒でいいの?なんもわかんねー……」

  「まじでさ、漫画かっての……深夜にゴミ漁ってるガキとか、勘弁してよ。

  しかもよりによって、今日みたいなクソ疲れてる日に……」

  「……でも、捨てられてたんだよな……しょうがねーか。」

  「……私も、捨てられたようなもんだしさ、なんて。

  ……ははっ、なんかセンチすぎてウケる……」

  [newpage]

  「……んあ……

  やっべ、寝落ちてた……昨日、風呂入る前にぶっ倒れたっぽいな……

  服そのまんまじゃん……あ〜最悪……」

  「てか、あの子は……」

  「……やっぱ居る、夢じゃなかったって事ね…」

  「ベッドで寝てる……ちゃんと布団かけといてよかったわ。私ナイス。

  っていうか、よくまあ寝てること。全然起きないからちょい不安だけど。このまま死んだりしないよね?流石に…」

  「えーっと?確か…

  深夜にタクシー拾って帰って、見知らぬ獣人のガキ担いで、

  クソ眠いのに薬箱引っ張り出して、消毒して。

  ……で、寝落ちしたってわけか…」

  「はぁ……私、何やってんだか。

  完全に終電間に合わなかったし、タクシー代エグかったし、つか、このままコイツ死んだら、私人殺し扱いされんじゃない?笑えねぇ…

  …はぁ……つか、今何時?」

  「げっ、6時じゃん…2時間後には家出ないと、ブラックにも限度あるだろ、マジで……

  てか、もう休んでやろうかな」

  「……ま、いいや。とりあえず、こいつが起きてから考えよ。コイツ何者なのかも、どこから来たのかも、なーんもわかんねえし。

  どれだけ……酷い目にあってきたのかも。

  全然わかんないしな。」

  「……うーん、こうして見ると…耳と尻尾、やっぱりちょっと……綺麗なんだよな。

  ボロボロなんだけど…片っぽしか残ってない耳とか、残った2本の尻尾とか、

  痛々しいはずなのに……なんか、見惚れちまうっつーか… 」

  「……ん?」

  「動いた?」

  「おーい、起きたか?……っ、あ、悪ぃ……!」

  「……ああ、そうだよな、怖いよな……知らない場所で、知らない人間がいて……」

  「大丈夫だって、私、別になにも怖いことしないから。」

  「……お前、昨日倒れてたんだよ。裏路地で。

  ボロボロで……ほっとけなくて、勝手に連れてきた。」

  「勝手にだったけど……ちゃんと消毒もしたし、

  包帯も巻いた。傷、ちったぁ痛まなくなってんじゃねえのか?」

  「ああクソ……そんなに怯えんじゃねえよ…

  私、獣人に興味とかないし、ペットとか、そういうのじゃないから。つーか獣人に会ったのも初めてだったし…」

  「……そ、そうだ。スープ!昨日のだけど、まだ残ってる。

  温め直せば食べられると思うんだが……食べるか?無理か?」

  「……まあ、今は無理だよな。つか、朝っぱらから肉のスープなんか重ぇか。知らねえけど。」

  「いや、嘘嘘。わかってるって。いきなり知らない家で、知らない人間がいて、そんな場所で飯なんか食えるわけないよな。

  ……大丈夫だって、食べたくなったらでいい。無理すんな。」

  「……あーあ、なんで私、こんなことになってんだか。昨日は疲れすぎて頭回ってなかったけど、普通に警察呼んだ方がゼッテーよかっただろ…」

  「……でもさ、見捨てられなかった。あんな裏路地でボロボロになってんの見てさ、知らん顔できなかった。」

  「…あー、そういやお前、名前は?」

  「……教えたくねぇか。ま、じゃあ別に良いわ。

  私、これでも人の嫌がることはしない主義だし。

  でも、呼び方ないと困るしなぁ、呼ぶときに「あんた」とか「お前」とか、なんか嫌だし。」

  「だからさ、呼び名だけでも……なにか教えてくれると、私、ちょっと助かるんだけど。」

  「……あ、そうそう、私の名前。好きに呼んでいいよ。敬語もいらん。気にしないから。」

  「……って今言っても、よくわかんねぇよな。そりゃそうだ。」

  「まあ、いっか。今は休みな。ベッド使っていいから。

  そっちの方が絶対体にいいし、少しでも……安心して寝れたら、それでいいから。」

  「……私さ、今日会社サボるわ。

  どうせ行っても地獄だし、今日は有給ってことで。後で電話するわ、クソ上司にクソ怒鳴られるだろうけど、知ったこっちゃねえ。」

  「で、ちょっとでもあんたの様子、見てることにする。あんたが落ち着くまで。……それくらいはさせてくれ。」

  「……うーん、案外私、世話焼きなのかもな、ほんとは。」

  「じゃ、ちょっとだけ横になるわ。寝てても、なんかあったら起こしてくれ、すぐ起きるから。

  ……ほんとに嫌だったら勝手に出てけよ。別に止めやしねぇからさ。」