第3話 「真夜中まで我慢の刑」

  ここはケモノ界の埼玉県さいたま市[[rb:大上区 > おおかみく]]。

  金曜日の19時、ケモノ小学校埼玉校の職員室にて。

  (よし、今週の仕事は終わりだ!)

  太ったホッキョクグマの[[rb:保良 部亜 > ぽうら べあ]]先生(6年1組担任/相撲部顧問)は、帰宅の準備をしていた。

  (さて、帰る連絡をしておこう。)

  スマートフォンを見ると、妻の[[rb:由紀子 > ゆきこ]]から連絡が来ていた。

  「実家から誘われたので、今日と明日で[[rb:阿蓮 > あれん]]と実家に泊まるね

  帰るのは明日の夕方

  直接連絡できなくてごめん」

  (妻と息子がいないのか。なら、あの店に行こう。)

  学校を出た保良先生は家に帰らず、大上駅の東口へ。レストランやゲームセンターなど多くの店が並び、いつも賑やかな場所だ。

  しかし裏通りへ入れば、性風俗店の並ぶ一角がある。保良先生はその中に建つ、薄暗い雑居ビルに入った。

  地下1階へ降りると、重厚な鉄の扉が現れた。看守の服を着たサイの男性がカウンターに座っている。

  「会員証をお見せください。」

  「はい。」

  「ありがとうございます。中へどうぞ。」

  そこは会員制レストラン「Fat Furs Prison」。地下牢をイメージした店だ。

  複数の檻が並び、その中で食事ができる。不気味な店内だが、料理は格安で味も良い。

  また、個室や通路は広めに造られている。会員の条件は、体重が100キロを超えている事だ。

  保良先生は会員になって日が浅いため、今日が2回目の来店。

  店内では、肥満体のケモノたちが食事を楽しんでいる。

  太鼓腹を抱えた狸、脂肪で覆われたカバ、300キロ近くありそうな象、脂肪と筋肉が半々ぐらいのドブネズミなど様々だ。

  お腹が丸出しのケモノも多いが、保良先生は大型のスーツを着ているためそれには該当しない。

  席に着いた彼は、700円のチキンステーキを注文した。

  (この値段でこのサイズか。食べ応えがあるぞ!)

  食べようとした時、ホンドギツネの店員が来た。

  [newpage]

  「ここにお集まりの皆様、本当にラッキーですね!

  今からサプライズイベント『真夜中まで我慢の刑』が始まります!

  ルールは単純明快。これから全員に利尿剤が入った水を1杯渡すので、それを飲んでください。

  それから夜の12時までトイレを我慢していただきます。最後まで残った方には、ここでの食事が1ヶ月無料になるスペシャルチケットをプレゼントします!」

  客たちは歓声を上げた。

  「そりゃすごいな!」

  「1ヶ月無料か!絶対勝ち残るぞ!」

  「俺も負けないぜ!」

  全員に水が配られた。

  「さあ、飲んでください!」

  時刻は20時ちょうど。合計20頭の客は、同時に水を飲み干した。

  「飲んだら各自普通に過ごしてください。ただし我慢の限界を迎えるまでは店から出ないこと。また、この店のトイレを使ってはいけません。

  万が一漏らした場合、その時点で失格とします。」

  「了解!」

  客たちは食事や会話を再開させた。保良先生もチキンステーキを口に運ぶ。

  今はまだ普通の店内だ。利尿剤の効果も出ていない。

  30分後、徐々に効果が表れてきた。客たちが体を震わせ始めている。

  「も、もう我慢できない!残念だけどやめます!」

  かなり太ったカワウソの若者が料理を一気に食べ、慌てて代金を払い、店を出た。

  (私は前に1日中おしっこを我慢した事があるから、4時間ほど我慢するのはまだ軽い方だな。)

  保良先生は自信があるようだ。

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  その後も客たちが次々と脱落した。

  水牛の夫婦、サイ、狸、アライグマ、黒猫の女性、猪、スカンク、ライオンの順に退店し、21時の時点では10頭に減っていた。

  「ビールのLサイズお願いします!」

  保良先生と同じくらい太ったパンダが注文をした。連れのヒグマが話しかける。

  「なんでそんなに頼むんだ?」

  「自分を鍛えるためさ。」

  (あのパンダ、すごいな。)

  保良先生が感心していると、丸々としたニホンアナグマの中年女性が話しかけてきた。

  「すみません、あなたもしかして[[rb:極ノ海 > きょくのうみ]]ですか?」

  「はい、そうです!」

  彼はかつて力士だった。極ノ海は当時の四股名だ。

  「わあ、嬉しい!あたし相撲ファンなのよね。極ノ海も応援していて、何度も観戦に行ったのよ。」

  「ありがとうございます。嬉しいです。」

  「それで今は何をしているんですか?」

  「ケモノ小学校埼玉校で、教師及び相撲部の顧問を担当しています。」

  「まあ、元力士に教わる相撲部なんて素敵ね!」

  彼女は嬉しそうだが、やはり体を震わせている。

  保良先生と彼女が会話を楽しむ間にドブネズミ、虎、白うさぎが脱落。やがてニホンアナグマも脱落した。

  「チケットはもらえなかったけど、極ノ海と話せて良かったわ。あー漏れる漏れる!」

  時刻は22時。残りは保良先生、象、カバ、チーター、パンダ、ヒグマの6頭だ。

  パンダはまたビールを注文し、ヒグマに呆れられている。

  チーターは足を組んで股間を押さえている。

  カバは全身を震わせ、象は股間に手を伸ばそうとしているが太鼓腹ゆえに手が届かない。

  保良先生も体を震わせているが、一番落ち着いているように見える。

  6頭は我慢を続けた。

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  23時、チーターが脱落した。

  「ああ、もう我慢できねえ!」

  そう叫び、チーターらしからぬ遅い足取りで退店。パンダも後に続いた。

  「俺、先に帰るわ……あんなに飲むんじゃなかった……」

  さらに時間が経ち、象とカバも脱落した。

  23時50分。残った客は保良先生とヒグマの2頭だ。

  どちらも下半身を震わせ、表情は苦しみに満ちている。

  (ぐっ……膀胱が破裂しそう……)

  (苦しい……我慢できない……)

  保良先生も予想以上に辛そうだ。

  23時58分。

  「も……もう……無理……やめます……」

  ついにヒグマが脱落した。

  (すると、私は……)

  そこへホンドギツネの店員とサイの受付係がやってきた。

  「おめでとうございます。あなたが優勝しました!こちらが1ヶ月有効のスペシャルチケットです!」

  「ああ、嬉しい……なんという幸せだ……」

  保良先生はチケットを受け取った。

  しかし、すぐにでもトイレに行く必要がある。

  少しでも気が緩んだら漏らしてしまうため、股間を押し込めながら階段をゆっくりと登った。

  5分かけて登り終えたが、大上駅まではまだ距離がある。

  遅い足取りで表通りに出ると、明るい駅へと向かう。レストランから駅まで20分もかかった。

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  保良先生はようやく駅のトイレにたどり着いた。太った彼には立小便が難しいため、個室に入る。

  (やっと……やっとだ……)

  震える手でズボンを下ろし、竿から黄色い液体を発射する。その量は非常に多かった。

  (ああ、すっきりした……)

  彼の表情は開放感に満ち溢れていた。

  トイレから出た彼は、普段通りの足取りで家へ向かった。

  (これで明日……いや、今日から1ヶ月無料で食べられるぞ!)

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  翌朝。保良先生はスペシャルチケットを使い、開店から午後まで思うままに食事を楽しんだ。

  「あら、極ノ海さん優勝したの?良かったわね。」

  昨日のニホンアナグマがうらやましそうに話しかけてきた。彼女は常連客のようだ。

  「はい、昨日は頑張りました!」

  「まあ、あなたは相撲だけでなく膀胱も強いのね!すごいわ!」

  羨望の眼差しを受けた保良先生は、得意気に笑った。

  [chapter:おしまい]