暑い。
夏真っ盛りの空気は、肌にじんわりとまとわりつくようだった。夕暮れの空が茜色に染まり、村全体が柔らかな朱色に包まれている。
神社の境内に続く石段から下を見下ろすと、提灯の明かりがぼんやりと浮かび、にぎやかな祭りの気配が漂っていた。
「蒼汰、早く行くよ」
前を足早に歩く母が、こっちを振り向いて言う。
「うん……」
短く返事をするものの、僕の足は重かった。
背後では、祭りの喧騒が響いている。浴衣姿の人々が屋台を巡り、楽しそうに笑い声を上げているのが遠くに見えていた。
屋台の焼きそばや金魚すくい、りんご飴を手にする人たちがはしゃぐ姿は、この村の夏の風物詩だった。
本来なら、僕もあの輪の中にいるはずだった。だけど、今年は違う。
僕はこれから、神社の本殿へ向かうのだ。
「蒼汰が選ばれるなんてね」
母はどこか誇らしげに微笑んでいるが、僕はどう反応していいかわからなかった。
この村では、毎年夏祭りの日に「神子」が選ばれる。神社の神様に仕える役目を担う子供が、12歳になる男女の中からランダムに一人ずつ選ばれる仕組みらしい。
その神子の役割に今年、僕が選ばれたのだった。
「まあ、確かに」
ただ、ぼんやりとそう思う。
神子に選ばれたことは、村人たちから祝福される名誉なこととされている。けれど、神子としての役目が具体的にどんなものなのか、選ばれた僕らにしか、それもお祭りの当日にしかわからない。
今までその役割をやったことがある人も、絶対に何をしたかは話そうとしない、らしい。
「蒼汰、大丈夫?」
うつむいている僕を見て、母が少し心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
「うん、……大丈夫」
そうは言ってみたものの、不安は消えないまま胸に渦巻いているばかりだ。
堅苦しい儀式のために、夏祭りに参加できないなんて最悪だ。だいたい、何をすればいいか事前に知らされないのも意味がわからないし、それで何か怒られでもしたらたまったものではない。
正直、あまり乗り気にはなれなかった。
石段を登り切ると、境内の静けさがあたりを包み込んでいて、境内に入ればそこは、まるで祭りの賑わいから切り離されたかのようにしーんとしていた。
提灯の灯りが境内を淡く照らし、神聖な雰囲気が辺りを支配している。神社の本殿が、いつもよりも大きく見えていた。
本殿の前には、狛犬の代わりにウサギの石像が二つある。
縁結び、子宝、安産祈願……。この神社のご利益にぴったりだ。このウサギの狛犬が珍しくて、わざわざこれを見に来るために県外からこの神社に来る人も多いらしい。
それに、本殿の脇には小さなケージが設置されている。
普段は何もいないけど、お祭りの日だけはいつの間にか2匹のウサギが中に入っているのだ。
昔から、この神社のウサギは神様の使いといわれている。そのため、ウサギを神様のように丁重に扱い、お祭りの際にお世話をしているのだそうだ。
「じゃあ、私はここまでで。蒼汰、頑張りなさいよ」
母はそう言って僕の肩を軽く叩くと、来た道を引き返していった。一人残された僕。本殿の前には、神社で神主をしているおじさんが待っていた。
「蒼汰くん、いらっしゃい。」
「……こんばんは」
白い装束に身を包み、穏やかな表情を浮かべている神主さんは、村の人々から尊敬されている人物だ。
僕は頭を下げ、神主さんの前に立つ。
すると、神主さんの後ろにもう一人、人影が見えた。
「……夏希?」
「こんばんは、蒼汰くん」
そこにいたのは、同じクラスの夏希だった。
同じクラスとはいっても、正直接点はあんまりない。
夏希は小柄で華奢な子で、休み時間におとなしく本を読んでいるタイプ。僕は、どちらかというと外で遊んでいるタイプの人間だから、ほとんど話もしたことがなかった。
「夏希が、神子?」
「うん、そうみたい」
「……そうなんだ」
気まずい。僕は何を話していいかわからず、目を伏せる。こんなことなら、全く知らない人が相手だったほうがまだましだったはずだ。
でも村には小学校は一つしかないし、対象が12歳だけなら同じクラスから選ばれても不思議じゃないか。
夏希は、緊張しているのか少し顔を強張らせていた。僕と同じように、これから何をするのか。いや、何をしなければいけないのか、不安なんだろう。
神主さんは何も口を開くことなく、僕らを見て微笑むばかりだ。
そして彼はゆっくりと振り返ると、本殿の戸に手をかけた。
普段あまり開けない扉なのか、ギギギ……と鈍い音を立てて戸が開く。中は意外と明るくなっていて、神主さんに続いて僕らは本殿に足を踏み入れた。
一面に畳が敷かれた広い空間。壁には神様を描いているのか、物々しい掛け軸がいくつも飾られている。
外に比べて、異常に涼しいような気もする。神主さんが扉を閉めると、その涼しさがさらに増したような気がした。
「神子様のお二方、こちらへお座りください。」
神主さんがゆっくりと僕たちを追い抜くと、部屋の奥で膝をつき、畳の上に正座した。僕と夏希も、神主さんの前に座る。
僕と夏希は、どちらからともなく目を合わせた。お互いに緊張と不安が混じり合っているのが、表情から見て取れる。僕は唾を飲み込み、ただ前を見つめるしかなかった。
神主さんは、僕たちを見てから言った。
「それではこれより、『神子』の儀を始めさせていただきます」
そう言った瞬間、まるで空気が変わるかのようにピンと張り詰めたのがわかった。今まで感じたことのない不思議な感覚に、僕は思わず生唾を飲み込む。
「蒼汰くん、夏希さん、お二人はこれから、神子となられるのです。ふざけたりせず、真摯な気持ちで臨むように」
「はい」
僕は、神主さんの言葉に小さく返事をした。
夏希も、緊張した様子で僕と同じように頷いていた。
「では、まずは着ている物を脱いでください」
「……え?」
僕は思わず聞き返す。
着ている物を脱ぐ? なんで?
夏希のほうを見ると、彼女も驚いたのか、目を丸くしている。
神主さんは変わらず穏やかな表情のまま続けた。
「神様の前では、人は皆平等で、動物と同じです。身にまとうものは必要ありません」
僕は、神主さんの言葉に思わず後ずさる。すごいことを言っているのに、普通の顔をしているのが逆に怖い。夏希は、少し顔を赤らめながら俯いていた。
こんなのを、みんな当たり前みたいにやっていたのか。怒りのような気持ちにすらなるけど、神主さんは有無を言わさない毅然とした態度のままだった。
仕方、ないのか。
僕は覚悟を決めると、ゆっくりと服を脱ぎ始めた。
シャツを脱ぎ、ズボンを脱ぐ。下着一枚になったところで、恥ずかしさで頭がクラクラしてきた。けれど、これは必要なことなんだと思い込むしかない。
隣では、夏希も同じように服をたたんでいるのが見えた。彼女もまた、顔を赤くしながら俯いている。
最後に靴下を脱いで裸足になった僕は、ついに生まれたままの姿になってしまった。
生まれて初めて、裸になることがこんなに恥ずかしいと思ったのは、他人の前だから、だけじゃない。きっとこの場の空気のせいだろう。ぴんと張り詰めた、先生に怒られてる時みたいな空気の感じ。それに気圧されるかのように、僕はただ股間を隠して立っていることしかできない。
まして、夏希の方を見ることなんて、できそうもなかった。それでも、僕と同じように裸になったんだろう。神主さんは満足そうにうなずいた。
「それでは、お二方ともこちらへ」
そう言うと神主さんは立ち上がり、部屋の奥へと向かった。僕たちも慌てて立ち上がると、それに続く。
そこにあるのは、本殿の扉とは違う、古くて、正直に言ってボロい感じのする扉だった。
「いよいよこの先で、神事を執り行います。その前に、この神社のご利益を知っていますか?」
神主さんは、戸の前で立ち止まるとこちらを振り返りながら問いかける。
「縁結び、って、聞いたことあります。」
夏希がおずおずと答えると、神主さんは感心したようにうなずいた。
「半分正解です。縁結びのほかに、安産祈願、子宝祈願。これらは、この神社に古くから伝わるご利益です。」
「で、それが何か……、関係あるんですか? こんな、服を脱がせて……」
僕は思わず口を挟んでしまった。すると神主さんは、少しびっくりしたような顔になった後笑顔で言った。
「関係ありますとも。これからわかることです」
そして、ゆっくりと戸に手をかける。
鈍い音を発しながら扉が開くと、中から生温い湿った空気が流れてきた。中は薄暗くてよく見えないが、かなり狭い空間だということだけがわかった
同時に、夏希が怯えたように僕の腕をギュッとつかんできた。今いる部屋より小さくて、暗くて、僕もまた、未知の恐怖に足がすくむ。しかしそんな僕らの反応をよそに、神主さんは言葉を続ける。
「これから君たちは中にいる巫女の指示に従い、神様に仕えることになります。巫女の言葉をよく聞いて、丁寧に行動してください。」
神主さんの声が静かに響く。夏希は、相変わらず僕の腕をつかんだままだ。僕は彼女の手をそっと握り返した。
「巫女さんの言葉を、聞くだけでいいんですか?」
夏希が小さな声で尋ねると、神主さんは頷いた。
「そうです。ただ、それだけでよいのです。」
言葉の意味を深く考えることなく、僕たちはさらに奥の部屋へと通された。
そこは、さっきいた部屋よりもずっと暗くて、そして狭苦しい空間だった。
明かりは真ん中にある机に乗ったろうそくだけ。ゆらゆらと揺らめくその明かりが、部屋の壁を淡く照らしている。
奥には小さな祭壇のようなものがあり、そこに一人の女性が座っているのが見えた。その女性は巫女装束を身にまとっており、顔はよく見えなかったが、20歳は越えているくらいだろう。
「巫女様、お二方をお連れいたしました。」
神主さんはそう言って一礼すると、そのまま部屋を出て行った。
部屋に残された僕たちは、どうしたらいいのかわからず立ち尽くしていた。
「……では、始めましょう」
突然、巫女さんの声が響いた。彼女の声はどこか冷たくて、抑揚がないように思えた。
僕は思わず息を飲む。これから一体何が始まるのか、想像もつかなかった。
「二人とも、そこに立って、向かい合って」
巫女さんの言葉に従い、僕たちは言われたとおりに向かい合う。
暗くてよく見えないとはいえ、お互い裸だ。夏希は恥ずかしそうに顔を背けている。
僕もまた、彼女の顔を見ることができなかった。ちんこが少し硬くなり始めているのを感じて、僕は思わず股間を隠している手を握りしめた。
蝋燭の火が揺れる音が聞こえるぐらいの静寂だった。
恥ずかしさと緊張で、僕はもう限界だった。
巫女さんは僕たちなど気にする様子もなく、ただ淡々と祝詞らしい何かを唱え始める。
「あ、あの……」
夏希が口を開いた。しかし、巫女さんは言葉を止めることはない。僕が代わりに質問をしようとした時、夏希は諦めたようにまた口を閉じてしまった。
僕も仕方なく、巫女さんの言葉に耳を傾けるしかなかった。しかし、祝詞は何語かすらわからず、何を言っているのか全く理解できない。
——ザワリ。
何かが、背後に立ったような気配がした。
「……?」
振り返ると、そこには何もいなかった。気のせい、なのか……?
しかし、その気配はすぐにまた現れた。今度はさっきよりもはっきり感じることができる。
何かが、僕の肩を撫でるような感触が、確かにある。見えない手が、背中を這っている。
確実に、誰かが触っている。肌に直接触れられている感覚が、徐々に鮮明になっていく。
「な、なんだよ、これ……」
思わず声が漏れるが、巫女さんは祝詞を止めることなく続けていた。
肩から腕、指先へと何かが触れて、空気が流れていくような感覚がある。血液が逆流するような奇妙な感覚。
その瞬間、肩の感覚が消えた。
「え……?」
恐る恐る肩のところを見てみると、僕の肩には白い毛が生え始めていた。
「な、なんだこれ……。」
毛が生えた部分はじわじわと広がり、腕へと侵食していく。
意味のわからない、現実味のない光景にパニックになった僕は、思わず何もないところに向かって腕を払ってしまう。
違和感はどんどん大きくなって、毛に覆われた僕の腕が、だんだん、小さくなっている……?
「蒼汰くん!」
目の前で、夏希が驚きの声を上げる。見ると、夏希の腕にも、黒い毛が生え始めていた。
何か、確実にまずいことが起きている。僕は慌てて夏希の腕をつかみ、部屋から逃げようと思った、のだが。
その瞬間。
見えない手が僕の両肩と足を掴み、ぐいっと持ち上げた。
「えっ……!?」
一人の手じゃない。いくつもの手に支えられて、僕の身体が軽々と空中に浮かぶ。
体がふわりと持ち上がり、足が畳から離れる。夏希も同じように持ち上げられ、宙に浮いていた。
「やめて……!」
夏希の悲鳴じみた声が、狭い空間にこだまする。必死にもがこうとするが、まるで柔らかい布で包まれるように、腕や足が空中で固定されてしまった。
それに驚く暇もなく、今度は足の部分を根元から、すーっと滑らかに撫でられる。
「んっ……、」
くすぐったくて、思わず声が出てしまった。その反応に気を良くしたように、足を撫でる手の動きが大胆になっていくのがわかる。
お腹や背中も、あちこちを同時に弄られて、僕は思わず身をよじった。
しかし、見えない手は僕の抵抗などお構いなしに、どんどんと身体を侵食していく。
撫でられたところから、徐々に毛が伸びて、僕の身体を覆っていく。
まるで、体を作り替えられているような感覚に、恐怖と不安が入り混じる。
夏希も同じように、腕を触られながら足が持ち上げられている。彼女の方も、足から徐々に毛が伸び始めていた。
こんなの、まるで動物みたいじゃないか。
「おい、なんだよこれっ! 離せよ! ……こんなのっ、ぐっ、キュ、キュイっ!?」
「蒼汰くんっ、どうしたの!?」
叫ぶことすら、許されなかった。
黙れとばかりに喉をひと撫でされ、次の瞬間には、もう人の声が出せなくなっていた。
なんとか逃げようともがいても、体を抑えこまれて動くことができない。そもそも、もがくような腕が、足が、短くなりすぎてうまく動かせなくなっているのだ。
「キュ、キュイイイ……」
自分の口から漏れるのは、ただの動物のような鳴き声だった。
やがて、僕の腕も足もすっかり毛に覆われてしまった。人の肌の感触はもうほとんどなく、むしろ柔らかくてすべすべとした肌触りが伝わってくるほどだ。
まるで見せつけられているかのように、自分の手が人間のシルエットを失っていく。指が短くなって、何も持てない、動物の前足に変わっていく。
問題なのは、仰向けになった身体のせいで強制的に視界に入る、ちんちんだった。
こんなわけのわからない状況なのに、なぜか股間だけは熱を帯びていた。こんな状況にも関わらず、僕のちんちんはどんどん硬くなっている。
それを嘲笑うかのように、見えない手が僕のちんちんをそっと撫で上げた。
「キュイィッ!!」
思わず、甲高い声を上げてしまった。
まるで電気が走ったかのような、鋭い快楽。僕の頭は真っ白になり、一瞬何も考えられなくなった。
しこしこと、最近覚えたオナニーそのものみたいに、ちんちんを上下に擦られる。そのたびに、今まで感じたことのないほどの快感に襲われ、僕はただただ知らない鳴き声で喘ぐことしかできない。
「だ、だめっ、大事なところは、人に触らせちゃだめって、あっ、キュウン……」
残っていた夏希の声すら鳴き声になってしまって、僕はもう、何も考えられなくなっていた。
夏希もまた、おまんこから汁をほとばしらせて、腰を浮かせながら気持ちよさそうに鳴いていた。
そんな夏希の姿を見て、ようやく気づいた。
ウサギだ。僕の身体も、夏希の身体も、ウサギのそれになっているんだ。
「キュイィッ! キュイッ!!」
仕上げだとばかりに、ちんちんを弄る速さが早くなって、顔全体をまさぐられる。まるで、顔全体をマッサージされているみたいだ。
何もわからない。確かめようにも、この前足じゃ顔には触れられない。ただ、ちんちんから与えられる気持ちよさだけがあった。
耳が引っ張られて、頭上に移動していく。小さくなった鼻先が、視界の下でひくひくと動く。
「変身する」が、「気持ちいい」とリンクする。脳ごといじられているみたいに、思考がどんどんと蕩けていく。
気持ちいい、もっと気持ちよくなりたい、もっともっと。
そんな僕の願いに応えるかのように、見えない手がさらに強くちんちんを擦る。
人間性を、全て吐き出そうとするように、ちんちんの奥から、何かが、登って……。
全身が大きく痙攣し、視界が真っ白になる。今まで感じたことのないほどの快楽に、意識が飛びそうになる。
僕は無意識のうちに足をピンと伸ばしながら、声にならない叫びを上げた。
「キュイィーッ!!!」
びちゃびちゃと、いつも一人でシているときなんかとは比べ物にならないほどの量の白濁が吐き出される。
見られてることへの躊躇なんて、心の片隅にもなかった。ただ、気持ちいいという快感だけが、僕の頭の中にいっぱいに広がっていく。
でも、変化はそれで終わらなかった。僕のちんちんは、精子を吐き出して、吐き出し続けて、どんどん小さくなり始めた。
「(なんでっ、なんで、気持ちいいのに……!)」
徐々に小さくなって、無くなっていく僕のちんちん。それと同時に、今度はお腹のあたりが熱くなってくる。
違う、こんなこと、認めない。こんなこと、あるはずがない。
僕がどれだけそう思っても、身体は止まってくれなかった。僕のちんちんはどんどん小さくなって、やがて"有る"という感覚すらなくなってしまった。
そして、お腹のあたりがムズムズし始めて……。
「キュイィッ! キュイッ!!」
僕はまた、甲高い声で鳴きながら腰を浮かせた。今度はもう、ちんちんから精子が出ることはなかったけど、それでも気持ちいいという感覚がずっと続いていた。
お腹がむずむずする。たまらなく熱くて、切なくて、誰かとくっついていたくてたまらなかった。
理解したくない。でも、僕の本能は理解していた。
「(ウサギはウサギでも、メス……)」
絶望だった。僕の身体はもう、完全にウサギのメスになってしまったんだ。
もういい、とでも言うように、そっと地面に下ろされる。小さくなった身体から、部屋がとても大きく見えた。
一歩も動けなかった。逃げようとも思えなかった。だって、僕や夏希の姿を見て、誰が僕らだってわかってくれるんだ。
これから、僕はどうなるんだろう。もう、元の姿には戻れないんだろうか……。
「神事の準備は整いました。今のあなたたちは、神の化身。子を成し、村の子孫繁栄のために尽くすのです」
祝詞を唱え終えて黙っていた巫女さんが、僕たちにそう告げる。
子を成し……。つまり、それって……。
巫女さんは、僕たちの身体をそっと持ち上げる。そしてそのまま部屋の奥にある小さな扉を開けた。
「……、」
抵抗する気力もなくて、僕はされるがままになっていた。夏希も同じで、もう何も言えずにいるようだった。
扉の向こうには、外の景色。本殿の脇の、あのウサギ小屋だった。
「ご安心ください。交尾をして、子供を作れば元には戻れます。あなたたち同士の間でだけ、神通力……、いわばテレパシーのようなもので会話できるはずです」
巫女さんは、それだけ言うと僕たちを空の小屋の中へと放り込んだ。
小屋の中は動物の臭いが充満していて、とてもじゃないが居心地のいい場所とは言えない。隅っこに、寝床のように藁が少しだけ置いてあるだけ。
それに、問題は……。
「おっ、今年の神の使いが出てきたよ」
「お母さん、うさぎさんでてきた〜!」
見物するために事前に集まっていたのだろう、村人たちの人だかりがそこにはあった。
夏祭りの日だけ、このケージに入ってくる名物のウサギって、「神子」がウサギにされた姿だったのか……。
『蒼汰くん、わたしたち、どうすれば……』
頭の中に、夏希の声が響く。そうか、会話はできるって、こういう……。
『どうすればって、交尾して、子供を作るしかないんだろ!? でも、僕はメスにされちゃったみたいだし……』
自分で言った言葉に、泣きそうになる。
ウサギにされて、女にされて、交尾して、子供を作らなきゃいけない。そんな現実、受け止めたくなかった。
でも……。
もし本当に、この姿のまま戻れなかったら? 一生ウサギとして生きていかなきゃいけなくなったら……?
嫌だ、絶対に嫌だ……! そんなことになるぐらいなら……。
『蒼汰くん、わたしも、男の子にされちゃったの……。ほら、これ……』
そう言うと、夏希はころんと仰向けになって、自分の股間を俺に見せつけた。
毛並みの中にある、小さな、でも確かなピンク色の突起物。ぬらぬらと光るそれは、真っ黒な毛の中で確かに自信を主張していた。
それは、間違いなく男にしか生えていないもので、夏希が今、確かにオスだっていうことを示している。
股間を見せられた途端、僕の身体にも異変が起きたような気がした。
いや、起きたんじゃない。ずっと前から起きていたのに、見て見ぬふりをしていたんだ。
僕だって今は、メスなんだ。男じゃない、女なんだ。
だけど、それを認めてしまったら……。
『交尾って言われても、どうすればいいかわかんなくて、それで……』
夏希の声が、途中で途切れる。下を見ると、彼女は恥ずかしそうに足をもぞもぞさせていた。
ああ、そういうことか……。
まあ、小学生の女の子が、いきなりオスの体にされて、交尾しろったって、わかるわけないか。
……だったら。
僕は立ち上がると、大きく足を開いた。そして、腰を高くして、夏希にお尻を向ける。
『ほら、ここ……、わかるだろ……』
僕の目線からは見えないけど、これなら夏希からは見えるはずだ。
僕の、女の子の、大事なところが。
身体がうずいてる。お腹が切なくて、オスを求めている。
一刻も早く元に戻りたい一心で、僕はメスとして、夏希を誘うんだ。
『そこに、ちんこ入れるんだよ、っ……』
恥ずかしい。人生で一番恥ずかしい。でも、もう後には引けない。
『は、早く挿れろっ……。お前も、戻れないのは嫌だろっ……』
顔から、火が出そうだった。人間の体だったら、顔が真っ赤になっていたはずだ、絶対。
言っている意味は伝わったようで、夏希が、息を呑むような気配がした。
そして、ぴとっと僕の入り口に何かが触れる。それは熱くて、硬くて……。夏希のちんちんだとわかるのには、そう時間はかからなかった。
そして、そのまま……。
ずぶりと、僕の中に「それ」が入ってきた。
『っ、くうっ……』
『あっ、ああぁっ……』
僕の中を押し広げていくそれは、とても熱くて硬くて、そして大きく感じられた。
お腹のあたりが、はちきれそうだ。こんな小さな身体に、こんなものが入るなんて、信じられなかった。
僕の中が、夏希で満たされていく。僕の中を、夏希に犯されている。
もっと感じたい。もっと奥まできてほしい。瞬間、頭をよぎったのはそんな感覚だった。
身体に引っ張られて、変になっちゃったのか……?
僕の思いに応じるように、夏希の腰が無遠慮に動く。ずんっずんっとリズミカルに中を擦られるたび、頭が蕩けそうになるほど気持ちいい感覚が身体を突き抜ける。
身体中を駆け巡る快楽の波に呑まれて、僕はもう何も考えられなくなった。
『やだぁっ、……なか、とろとろでぇっ! おかしく、なるっ……!』
夏希が、気持ちよさそうに叫ぶ。その声すら、今は僕の興奮を煽る材料にしかならない。
人の言葉すら忘れていた。メスとして、ただ鳴き声を漏らすことしかできなかった。
気づけば僕は、自分から腰を動かしていた。もっともっととせがむように、夏希のちんちんを奥に誘うように、腰を動かす。
もう何も考えられない。気持ちいいことしかわからない。無数の観衆も、視界に入らない。
ただ、この快感をずっと感じていたかった。
『やだっ、おしっこ、でるっ……! いやあぁっ!!』
『うっ、あっ……、いくっ……うああっ!』
夏希が叫ぶ。お腹の中で、ちんちんが一段と大きくなって、それで……。
バシンと強く身体を叩きつけられたと思うと、熱いものが僕の中に注ぎ込まれていた。その感覚は、今まで感じたことのないほどの快感だった。
夏希のちんちんが脈打つたびに、精液が吐き出される。そのたびに、僕は絶頂を迎えていた。
頭が真っ白になって、何も考えられない。気持ちいいという感覚だけが、僕を支配していく。
やがて射精が終わったのか、夏希の腰がゆっくりと離れていくのを感じた。
ずるりと引き抜かれたそれは、まだ硬さを失っていないようだった。
『これが……、交尾……』
夏希が、ゆっくりとかみしめるようにつぶやいた。
精子を注ぎ込まれた、お腹のあたりが熱かった。ちょっとだけ冷静になった頭で、僕はその熱を確かに感じていた。
これでいいはずだ。僕は直感的にそう思った。でも、その時。
『夏希、ちょっと離れ、……!?』
僕の上に再び夏希がのしかかってきていた。
荒い息遣いが、僕の顔にかかる。そして夏希はまた、硬くなったそれを僕の入り口にあてがっていた。
『お、おい、もういいだろっ!交尾は、終わったんじゃ……』
『まだ、もうちょっとっ……。いいでしょ? まだ元に戻ってないんだし……』
夏希はそう言うと、僕の何度か入り口にそれをこすり付けた後……。
ずぶぶっ!
再び、僕の中に入ってきた。
「キュイッ!」
さっきまでの遠慮なんか欠片も無くて、ただの動物みたいな、乱暴な交尾。
それでも、挿れられた、ただそれだけなのに、もう何度目かもわからない絶頂が僕を襲う。
精液と愛液でぐちゃぐちゃに濡れたそこは、もうなんの抵抗もなく夏希を受け入れた。それどころか、もっともっと欲しいとでも言わんばかりにきゅうっと締め付けてしまっている。
夏希の動きは、まるで獣みたいだった。僕のことなんて少しも考えていなくて、自分が気持ちよくなるためだけに動いている。
その乱暴な動きすら、僕は気持ちいいと感じていた。
こんなの、オスに無理矢理犯されて悦んでるメスじゃないか……! でも……。
僕の身体は、そんな乱暴な交尾をも快感として受け止めてしまっていた。
『いやだっ……。こんな、ちょっと、休憩……!!』
『蒼汰くんっ……。気持ちいいの……? わたしも、気持ちいいよぉ……』
ヒトとしての声も聞こえていないみたいに、夏希は僕の中を犯しまくって。
やがて、もう一度熱いものが僕の中に解き放たれていた。
『んっ、くうぅ……!!』
『あっ、ああっ!!』
二回目の射精だというのに、一回目と何ら変わらないくらいの量が、僕のお腹の中に注がれる。
ただそれを受け止めることしかできない僕は、交尾が終わったというのに気持ちよさが収まらずに痙攣する身体を制御できないでいた。
僕はもう、限界だった。
気持ちいいのが止まらない。ずっとメスとして、気持ちよくなってしまっている。
出されたお腹の中が、うずいてたまらない。妊娠させられてるのなんて、火を見るよりも明らかだった。
こんなの、だめだ。人間に戻れても、おかしくなる……。
そんな思考もすぐに霧散して、また腰を夏希にこすりつけられるとあっという間に絶頂させられる。
『蒼汰くんっ、まだ、良いよね……?』
夕焼けだった外の景色は、もうすっかり夜になってしまっていて。
『うんっ、……夏希、まだ、僕のこと犯して……』
僕の理性は、もう欠片も残っていなかった。