わたしのヒミツができるまで

  「リコ、着いたよ~」

  お母さんの声で目を覚ますと、車の外の景色はあたり一面がきれいな緑色だった。

  ここは、おばあちゃんたちがやっている牧場。今まではお正月にしか来たことがなかったけど、今日は違う。

  春休みになってすぐ、お母さんから言われた。

  リコもそろそろ、おばあちゃんのところのお手伝いができるようになったかな~、って。

  おばあちゃんたちはお馬さんがいっぱいいる牧場をやっていて、お母さんも小さいころはお手伝いをしていたと聞いていた。

  お父さんとお母さんが、おばあちゃんの牧場の馬だ~って、テレビを見ながらよく言っていたから、私も行ってみたいってずっと思っていたんだ。

  「あーミサキ、ありがとうね! リコちゃんも、お手伝い来てくれてありがと~」

  車を降りると、建物の方からおばさんが出てきて、私たちを出迎えてくれた。

  この人が、お母さんのお姉ちゃんのメグミさん。お母さんよりちょっと背が高くて、お母さんと同じくらいの年齢なのにすごく元気そうに見える。

  「いやいや、私は連れてきただけだから。ほら、リコもあいさつして!」

  「あ……、こんにちは……」

  緊張でうまく声が出なかったけど、メグミさんはそんな私をニコニコと迎えてくれて。

  お母さんも、よくあいさつできたねって頭をなでてくれた。

  なんだか今日はいつもと違って、みんな優しい感じがする……。

  「ミサキも手伝ってけばいいのに。リコちゃんもお母さんといっしょがいいよね?」

  「社会人は春休みでも仕事があるのっ! じゃあ、私は帰るから……」

  「まあまあお客さん、擬牝台もあるんで、"抜き"だけでも……」

  「もっとダメです!」

  私にはわからない話でお母さんとメグミさんが言い合っているけど、なんだか二人とも楽しそう。

  でも結局お母さんは、車の方に戻って行ってしまった。少し残念そうな顔をしていたメグミさんも、すぐに切り替えて笑顔でこっちを向いた。

  「じゃあとりあえず、種付け場……じゃなくて、建物の方に行こうか。うちのお父さんとサンゴもいるからね」

  「は、はい……!」

  それだけ言うと、メグミさんは牧場の奥の方に歩き出した。私はその後ろをついていきながら、周りをキョロキョロと見まわす。

  見渡す限りに広がる緑。でも、肝心のお馬さんが見当たらないような気がした。

  お馬さんがいるところは家の裏の方にあるみたいで、歩いていると牧草のにおいがどんどん強くなってくる。

  そうこうしているうちに、ちょっと大きめの建物が目の前まで近づいてきた。

  建物の裏から少し坂を上ったところに建っている建物は、木でできていてすごく大きい。屋根は少し赤茶けていて、長い間ここでお馬さんたちを守ってきたことがわかる。扉の隙間からは、かすかにお馬さんのいななきが聞こえてきた。

  「さて、とりあえず中に入ろうか。ここに応接室があるんだ。疲れただろうし、まずは座って一息ついて」

  メグミさんは建物の脇にある小さなドアを開けた。そこは普通のおうちみたいな部屋で、大きなテーブルと棚がいくつも置いてある。壁には、お馬さんの写真がたくさん貼り付けてあった。

  「じゃあちょっとだけ説明をするから、あそこのテーブルに座ってね」

  メグミさんは、部屋の奥のテーブルを指さした。私は言われたとおりに、そのテーブルにつく。

  横にある大きな覗き窓から隣にある大きな部屋が見えて、そこには、茶色いお馬さんが2匹いた。

  お馬さんのそばには、それぞれ一人ずつおじさんがついていて、何かを話しているみたいだ。

  一人はいとこのサンゴちゃんのお父さんで、もう一人は……、知らない人。

  そういえばサンゴちゃんもここにいるって言ってたけど、どこにいるんだろう。

  そう思っている間に、メグミさんがお茶の乗ったお盆を手に戻ってきていた。

  「お待たせ~。じゃあ、リコちゃんにやってもらいたいことを説明するね」

  「は、はい……」

  メグミさんは、私の前にお茶の入ったコップを置いて、テーブルの向かいに腰かけた。

  私がやること、と聞いて、すこし緊張する。何をやるんだろう。お馬さんの世話かな、それともお掃除とか……。

  「リコちゃんには、あれをやってもらいます」

  そういって、メグミさんは机の横にある窓を指さした。そこには、さっき見ていたお馬さんたち。

  さっきまではちょっと遠慮がちに離れた位置にいた2匹が、今はぴったりと寄り添っていた。

  1匹のお馬さんがもう1匹の上にまたがるようにして、ゆっくりと体をこすりつけている。

  「あ、あの……、わたしじゃ力がないし、全然お馬さんのこと動かせないですよ……?」

  「うーん、そういうことじゃないんだなあ」

  そう言って、メグミさんは苦笑いした。どういうことかわからずに私が首をかしげていると、メグミさんはちょっと意地悪な顔をしながら説明してくれた。

  「リコちゃんがやるのは、お馬さんのほう。あれの、上のほうね」

  私は、もう一度窓の外を見る。2匹のお馬さんは、相変わらず体をこすり合わせている。

  上のほうって、どういうことだろう……。

  「最初は信じられないと思うけど、ここの風見家の家族のひとは、馬になることができるんだ」

  「え……、馬になるって……」

  私はメグミさんの言っていることがわからずに聞き返してしまった。メグミさんはニコニコと笑っているけれど、言っていることに頭が追い付かない。

  だって、馬が人間になるなんて、ありえない。そんなのアニメや漫画の世界の話だし……。

  「まあ、いきなり言っても信じられないよね。でも本当なんだ」

  「で、でも……」

  たしかにメグミさんはまじめな顔をしてるけど、私には信じられなかった。絵本やアニメの中の出来事と現実は違うっていうことぐらい、わたしでもわかる。

  でも、目の前のメグミさんの真剣な顔は、私に嘘をついてからかっているような顔ではなかった。

  「ちなみに、あっちのさっきまで腰振ってた馬がサンゴ。で、この写真があたしで……、あ、これミサキとあたしが一緒に写ってる」

  そう言ってメグミさんが指さしたのは、どう見てもお馬さんしか映っていない写真。私は、ますますわけがわからなくなってきてしまった。

  私のお母さんも、お馬さんだったの……? 私が混乱している間も、メグミさんは話を続ける。

  「で、馬になってなにをするかというと……。種付け、っていうんだけど、リコちゃんはまだわかんないか」

  「た、たねつけ……?」

  「まあまあ、やってみればわかるよ。大丈夫、気持ちいいだけだからさ」

  メグミさんは、またニヤニヤと笑っている。でも、私はもう何が何だかわからなくなっていた。

  知らない言葉ばっかりで、頭が追い付かない。人が、馬になる。そんなこと、あるわけないのに……。

  「そうそう! 気持ちいいだけだよ~、リコちゃん」

  後ろからの突然の声に振り向くと、そこには何も着ていない、裸のサンゴちゃんが立っていた。

  「え……、なんで、服……」

  「ん~、馬になるときは脱ぐよ? 破れちゃうからね」

  「こら、裸で出歩かないって言ってあるでしょ? リコちゃんをビックリさせないの」

  「だってえ……」

  サンゴちゃんは、メグミさんに怒られてふくれっ面をする。二人とも、裸であることには全然驚いてないし、馬になるなんてことをあたりまえみたいに……。

  でも、私はまだ信じられない。だって、人が動物になるなんて……。

  「じゃあ、サンゴも来たことだし、なってみようか、馬」

  「え……」

  満面の笑みのメグミさんの言葉に、思わずサンゴちゃんの方を見てしまう。サンゴちゃんも、にっこりと私に笑いかける。

  なんだか、こわい……。わたし本当に、馬になっちゃうの……? さっき見たお馬さんたちみたいに……?

  頭がぐるぐるしてきて、もうわけがわからない。でも、私はもう逃げられないんだってことだけは、なんとなくわかった。

  「まずは、服を脱いじゃおう。サンゴ、手伝ってあげて」

  「は~い!」

  そう言って、サンゴちゃんが私の後ろに回り込んだ。私はもう抵抗する気もなくして、言われるがまま立ち上がる。

  「はいリコちゃん、バンザイして~」

  私が両手を上げると、サンゴちゃんは慣れたような手つきでするすると服を脱がせていく。あっという間に私も裸になってしまった。これからなにをするのかわからないのが、すごくこわい。

  私はサンゴちゃんのほうを見たけど、サンゴちゃんはニコニコと笑っているだけ。

  こんなに優しくしてくれてるのに、やっぱり信じられない……。私、これからどうなっちゃうんだろう……。

  「ここじゃ狭いから、隣の種付け場のところに行こうか。馬の身体は2メートル以上になるからね」

  「は、はい……」

  メグミさんが扉を開き、私たちはゆっくりと外に出ていく。そういえば、サンゴちゃん裸なのに全然恥ずかしがってない……。私は恥ずかしくて、前を見られないのに……。

  牧場に出ると、涼しい風が体を包み込んだ。だいぶあったかくなったとはいえ、素肌に触れる風はすこし寒い。牧草のにおいがして、少し心が落ち着く気がするけど、これからなにをするのか考えると、やっぱり怖いという気持ちの方が強かった。

  「あ、あの……。わたし、どうすればいいんですか……?」

  私は、思わずメグミさんに聞いてしまった。本当に馬になってしまうのか、なにをされるのか、不安でいっぱいだったから。

  馬になる方法なんて知らないし、そもそもお馬さんになるなんて、本当にできるのかすらわからなかった。

  「そうだねえ……。まずは、四つん這いになってみようか。最終的に四足歩行になるから、立ったままだと慣れてないうちは危ないんだ」

  メグミさんは、当たり前みたいな顔をしてそう言った。四つん這い……。動物みたいに、ってことだよね……? そんなことするの……?

  でも、ここまで来て断ることはできなくて、私は言われるがままにゆっくりと地面に手をつく。ちょっとひんやりとした枯れ草の温度が、手のひらに伝わってきた。目の前には、メグミさんとサンゴちゃん。二人ともにこにこと笑っていて、これから何が起こるのかわかっているみたいなのに、私だけが理解できていない。

  「じゃあ、次は、と……。サンゴ、さっき使ったタオル、どこやった?」

  「え~、どこだっけ? 確かここに……。あった!」

  サンゴちゃんがきょろきょろとあたりを見回して、壁にかかっていた大きめのタオルみたいなものを持ってきた。

  でも、ただの大きな布じゃないみたい……。それに、ちょっと変なにおいがするような……? 私のそんな疑問をよそに、メグミさんはそれを受け取ってばさばさと振っている。

  「これはね、メス馬の匂いが染み付いたタオルなの。私たちはオスの馬になるんだけど、慣れてないうちはこういう匂いからオス馬としての本能を呼び覚ます……、みたいな?」

  「あたしぐらい何回も変身して慣れればこれなしでも変身できるけど、サンゴとかリコちゃんはこれがあった方がいいかな〜」

  「え、えっと……。はい……」

  私は二人の言っていることが全然理解できなくて、生返事しかできなかった。メス馬の匂いが染み付いたタオル? そんなのでお馬さんになるなんて、本当にできるの……?

  でも、メグミさんもサンゴちゃんも、もうすっかりその気だし……。私はもう何も言えなくて、二人の指示に従うしかなかった。

  メグミさんは私の前にしゃがみこむと、そのタオルで私の鼻をすっかり覆った。しっとりと湿ったそれから、動物園みたいな強烈な臭いが鼻を抜けてくる。

  おそるおそる臭いをかいでみると、やっぱりなんだか変なにおいがする。これが馬の臭いなんだと思うけど、あんまりいいにおいじゃない。でも、嫌いってほどでもなく、クセになるような……?

  私はいつの間にかタオルを顔に押し付けて深呼吸してしまっていたみたいで、サンゴちゃんがくすっと笑ったのが聞こえた。

  恥ずかしいけど、なぜかやめられない。この匂いをかいでいると、頭がぼーっとしてきて、もっと嗅ぎたくなる……。

  「痛くないからね〜。もっと嗅いでいたくなるでしょ? そう、身を任せて……」

  メグミさんが何か言っている。でも、もう何も考えられない……。私はただ、このタオルのにおいをかぐだけ。

  もっと嗅ぎたい……。もっと……、もっともっと……! 私はいつの間にか、自分でタオルに顔を押し付けていた。鼻がつぶれるぐらい押し付けて、大きく深呼吸する。

  私がその匂いに夢中になっていると、突然サンゴちゃんが後ろから私の体を抱きしめて、私の胸を優しくつかんだ。

  「ひゃんっ!」

  思わず変な声が出てしまって、私は慌てて片手で口をふさいだ。

  サンゴちゃんの手が、私のおっぱいを優しく揉んでいる。なんだかむずがゆいような、変な感じ……。でも、不思議といやな気分じゃない。

  「リコちゃん、どう?」

  おまたのところで手を動かしながら、サンゴちゃんは私に聞いてくる。私は、何も言わず首を小さく縦に振った。

  こんなところを人に触られたことなんてなかったけど、なんだか気持ちいい。それだけはわかった。

  「はい、吸って〜、吐いて〜。イメージしてみて、オス馬になるのを……」

  メグミさんが、また何か言っている。オス馬になる……? 私は、サンゴちゃんに胸を揉まれながら、言われたとおりにイメージしてみた。

  さっきまで目の前にいた、サンゴちゃんだったらしいお馬さんの姿。あのお馬さんみたいに、私もなるのかな……。

  そのときだった。体の奥から、突然熱いものが溢れ出すような感覚が襲ってきたのだ。

  な、なにこれ……。お腹の奥の方がムズムズして、なにかが身体中を駆け巡っているみたい!

  息が荒くなり、思わず体が震えてしまう。でもそれは決して不快な感覚じゃなくて、むしろすごく気持ちいい……。

  そして、私の体が突然びくんと跳ねた。それと同時に、体の奥から何かが一気に溢れてくるような感覚がある。その何かはどんどんと大きくなって、私の体を内側から圧迫していった。

  「お、いいよ〜。いい感じ。怖いなら、目をつぶっててもいいからね」

  メグミさんの声が、遠くで響くみたいに聞こえる。私はもう何がなんだかわからなくて、ただ言われた通りに目をつぶってこの感覚に身をゆだねることしかできなかった。

  正座したあとに足が痺れるみたいな感覚が、全身に伝わっていく。でも、その痺れはむしろなんだか心地よくて、全身がじんわりと暖かくなっていくような感じがする。

  見えないけど、多分、体が大きくなっていっているのがわかる。体全体がギチギチと音を立てているのが聞こえるから、嫌でも感じることができた。

  手の指と、足の指の感覚がない。ただ、手のひらが一つになっていって、指がくっつきあってしまっているような感覚。

  足の指も、一本一本がくっついていってしまっている。足の指がぐにゃぐにゃと勝手に動くのはなんだか気持ち悪かったけど、すぐに慣れてしまった。

  背中の筋が、大きく伸びをしたときみたいに自然に開かれて、呼吸がすごく深くできるようになる。肌の表面がちりちりとかゆくなるみたいな感じがしたかと思うと、それが全身に広がって、まるでふかふか毛布に包まれてるみたい。

  感覚が鋭敏になっているみたいで、肌に触れる風も草のにおいも、なんだかとても気持ちいい。

  お馬さんになるってこういうことなんだ……。確かにこれは気持ちよくて、ずっと続けばいいのにって思ってしまいそう……。

  「リコちゃん、身体が立派だね~。サンゴが馬になったときより大きいんじゃない?」

  「え、ほんと? でも、二人で並んで馬になってみないとわかんないじゃん!」

  サンゴちゃんの声は、なんでかちょっと悔しそうだ。今の私は、それにちょっと笑いそうになるぐらい余裕があった。

  変化の感覚は、ついに首から顔の方にあがってくる。顔も、だんだん大きくなっていくのがわかる。顔の骨がギチギチと音を立てながら形を変えていくのは、なんだか不思議な感じだった。

  鼻が前に伸びてきて、口の位置も変わっていく。口が前に突き出してきて、歯並びも変わっていくみたい。

  鼻の穴が広くなって、草や土の匂いがよりはっきり感じられるようになって。耳も鋭くなっているのか、遠くの草がざわめく音まで立体的に聞こえるようになっていた。

  「サンゴ、どう? 生えてきそう?」

  「うん、たぶんもうちょっと……」

  メグミさんがサンゴちゃんになにか聞いている。生えてきそうって、なにが……?

  私がそう思ったのもつかの間、突然私の体に今まで感じたことのないような刺激が走った。思わず変な声を出してしまう。

  「ヒィンッ……!」

  「おっ、リコちゃんいい声出すね~。でも、もうすこしだから我慢ね」

  私はその感覚に耐えながら、なんとか声を出さないように努めた。

  声を出したはずなのに、出てきた音はまさに馬の鳴き声だった。頭がぼうっとして、うまく考えられない。お腹の奥で、ぐるぐる熱いものが動いてるみたい。

  ぐちゅぐちゅと、サンゴちゃんの手が私の大事なところをいじっている音がする。恥ずかしいけど、気持ちいい。

  そして、私の体の中で何かがはじけるような感覚があった。その途端、私は今までに感じたことのないような解放感を味わう。おまたのあたりが急に重くなって、なんだか変な気分……。

  サンゴちゃんが手を離すと、私の大事なところから何かが出てくるのがわかった。その何かの感覚がどんどん強くなっていって、同時におしっこをするときみたいに、奥の方からなにかがせり上がってくる。

  「ヒィンッ! ヒィーンッ!」

  私は思わず、馬の鳴き声を上げてしまった。もう、恥ずかしいなんて思う余裕もない。体が熱いし、なんだか頭もふわふわして……。

  そしてついに、私の身体から何かが飛び出した。

  ぶしゅっ、と、炭酸が勢いよく吹き出すみたいな音がして、身体から勢いよく飛び出したそれが草の上にびしゃびしゃとまき散らされる。

  気持ちいい。気持ちいい……!

  思わず、目を開けていて。私から見える世界は、今までとは全然違っていた。

  まず目に入ったのは、長くなった自分の鼻の所。口と鼻が一緒にあって、すごく変な感じ。

  それに、今まで見えなかった後ろの方まで、はっきりと見える。そもそも私がすごく大きくなってるみたいで、メグミさんもリコちゃんも、わたしが見下ろすみたいなところにいるように見えていた。

  びっくりして自分の姿を見渡そうとしたけど、首が思ったより長くて全身がうまく見られない。

  お馬さんの姿だったサンゴちゃんと同じ、茶色い毛皮。少し後ろを見れば、ふさふさの尻尾が揺れている。

  わたし、本当にお馬さんになっちゃったんだ。

  「ヒヒィィィーンッ!」

  思わず口に出したはずのわたしの声は、やっぱり馬の鳴き声だった。なんだか、自分の声じゃないみたい……。

  視界の端に見えるのは私の手—いや、前足。信じられないけれど、それが自分の体の一部だという確信が、胸の奥にすとんと落ちるように湧き上がる。

  身じろぎしようとすると、背中がいつもより長く感じられた。背骨がしなる感覚が妙に心地いい。踏みしめる地面がやけにリアルで、草のしっとりした感触が蹄越しに伝わってくる。

  あれ、蹄?と頭で思っても、心は「それで当然」と言っているみたいだった。

  「うんうん、立派な馬体だね。射精の量も申し分ない感じ。そこも、もうサンゴのよりおっきいんじゃない?」

  「も~っ! いいじゃんか、ちゃんと種付けできるんだから!」

  メグミさんとサンゴちゃんはなんだか言い合いをしているみたい。でも、そんなの気にならないほど、私は自分の体に夢中になっていた。

  人間のときとはぜんぜん違う感覚で、自分の体が本当にお馬さんになってしまったんだと改めて実感する。

  「じゃあ、ちょっとだけ歩いてみようか。変に意識しないで、人の体でいるみたいに歩こうとしてみて?」

  メグミさんに促されるまま、私は一歩踏み出してみた。最初の一歩は慣れない感じでうまくいかなかったけれど、すぐに感覚をつかんで歩くことができるようになった。

  脚を交互に動かすたびに、全身がゆっくりと揺れる。ひづめが地面を踏み締めるたびに、軽い音の響きが心地よく耳に伝わる。

  草の踏みしめる感覚が気持ちいい。風が体を撫でていくのも心地いい。お日様の光がぽかぽかして、すごくあったかい……。

  お馬さんになることに戸惑いがあったはずなのに、今はもうそんな気持ちは忘れてしまいそうだった。

  「よしよし、順調順調。それなら、次の段階に行こうか。厩舎まで、歩きながら説明していくね」

  メグミさんは嬉しそうにそう言うと、私に手招きして前を歩き出した。サンゴちゃんも、それについていく。

  これは、ついてこいってことなのかな? 私も置いて行かれないように、慌ててその後ろにつけていくことにした。

  緑の原っぱの中の土むき出しの道を、とことこと歩いていく。

  本当に不思議な感覚だった。背が高くなった分、景色がいつもと違って見える。それに、視界も広いし、なんだか遠くまで見渡せる気がした。

  「私たち風見家は、こうやって馬になって種付けするの。私たちの種で生まれた馬たちはとっても賢くて、乗馬向きの馬たちになるんだよね。だから、私たちの種はとっても重宝がられてるの」

  「あたしはよくわかんないんだけど、すっごい大金を払ってでも私たちに種付けして欲しい人も多いんだって。でもお母さんは流石に種馬としては引退気味だから、あたしとかリコちゃんみたいな若いのに種馬としての仕事が回ってくるんだ~」

  メグミさんもサンゴちゃんも、なんだか少し自慢げに話している。二人は当たり前みたいに言っているけど、まだわたしは全然ことの次第を飲み込めていなかった。

  それに、種付けって……? お馬さんのお仕事なのはわかったけど、それってどういう意味なんだろう?

  私がそんなことを考えている間にも、メグミさんは説明を続けていく。

  「で、次のステップね。馬になることはできたから、次は種付けの練習。いきなり生身の馬を相手にすると事故があるかもしれないから、今からちょっと練習をしてもらいます」

  それだけ言って、メグミさんが立ち止まった。目の前には、さっきのより大きな木造の建物。5分ぐらい歩いただろうか。いつの間にか、目的地についていたみたいだ。

  入り口には、馬の顔の形をした看板がぶら下がっている。たぶん、ここがメグミさんが言っていた"きゅうしゃ"ってやつなんだろう。

  メグミさんが、建物の扉をぎい……と開ける。中は薄暗くてよく見えないけれど、なんだか変なにおいがした。

  そのにおいで、私はすぐにここがどんな場所かを察した。馬の、においだ。さっき私が出した、白いおしっこみたいな液体と同じ臭いが、鋭くなった嗅覚を嫌と言うほど刺激する。

  メグミさん、サンゴちゃんに続いて私も建物に入っていく。中は、思ったより広かった。テレビでみたことがある、普通の馬小屋、って感じ。

  でも、馬は一匹もいなかった。代わりに、馬小屋の奥の方が大きな鏡張りになっていて、そこに何かの機械が置いてある。

  「ここは、私たちが普段馬になるときに使っているところね。仕事の前とか、まあ普通にムラムラした時とか」

  「お母さん、ムラムラはないでしょ~。あたしもさっきここで馬になったとこだから、精子の臭いすごいけど……」

  「まあ、それはね……。で、リコちゃんには今からあの鏡の前で種付けの練習をしてもらいます!」

  メグミさんはちょっと恥ずかしそうにそう言って、奥にあった大きな機械を指差した。

  跳び箱と平均台を足して2で割ったみたいな、変なかたちの機械。とても練習相手にするお馬さんには見えないけど、何をどう練習すればいいんだろう。

  私が戸惑っていると、サンゴちゃんが何かのタンクみたいなのを持ってきて、機械の端っこに何かの液体を塗りつけ始めた。

  メグミさんにぽんとお尻を叩かれて、その機械の前に導かれる。横から見たその機械は、正面から見た時とは全然違った印象だった。

  穴だ。機械には、大きな穴があった。そこから、なにかの液体がぽたぽた垂れている。さっきサンゴちゃんが塗ってたやつだろう。

  その液体のにおいを嗅いでると、なんだか体が熱くなるような、馬に変身したときと同じ感覚が蘇ってくるみたいな……。

  「そもそもリコちゃんは種付けがわかんないか。種付けっていうのはね、リコちゃんのおちんちんをメスのおまんこに挿れて、オスの精子をメスのお馬さんにぴゅっぴゅってすることなの」

  リコちゃんのおちんちん、という言葉に、思わず一歩後ずさる。

  そうか、私、今はオスの馬なんだ……。

  「心配しないで。そんなに変な意識をしなくても、本能に任せるだけで大丈夫だから」

  そう言って、メグミさんは私を機械の後ろまで連れて行った。鏡には、いつもの私とは全然違う私の姿が映ってる。

  馬の姿もそうだけど、おまたのところにぶら下がっている、おちんちん。なによりも目を引くのは、その大きさだった。すご〜く長くて、太さも大人の腕ぐらいある気がする。

  「これがリコちゃんのおちんちん。う〜ん、今の段階でこれなら、大人になったら全盛期のあたしより大きくなるかもな〜」

  メグミさんが私のおちんちんにそっと触れながら言う。私は、思わずまた鳴き声が出そうになるのを必死にこらえた。

  だって、こんなに敏感だなんて思わなかったんだもん……。それに、触られただけでこんなに気持ちいいなんて……!

  「じゃあ今から私がリコちゃんに、お馬さんの交尾の仕方を教えてあげます。おちんちんを支えてあげるから、そのまま前に進んでみて?」

  そう言ってメグミさんは、私のおちんちんの根元をそっと支えた。

  私は、言われるがまま前に脚を踏み出す。一歩、二歩と進んでいくうちに、なんだか体がムズムズする感じがしてきた。

  「はい、そこで前脚を蹴り上げて、台の上に乗る!」

  その言葉と同時に、メグミさんに言われたとおり、前脚を蹴り上げた。馬になってるんだから当然なんだけど、蹴り上げる力が思ったよりも強くて、私の体は一瞬で台の上に飛び乗ってしまう。

  びっくりして横を見たら、鏡の中の私も心なしか驚いた顔をしていて。でも次の瞬間にはもう、私の意識はおまたのあたりに集中していた。

  ドキドキする……。心臓の音がうるさいぐらいに響いているのがわかる。おちんちんがムズムズしてたまらない……。

  そして、メグミさんの手で支えられていた私のおちんちんは、そのまま前に突き出された。その勢いで私の体は前かがみになって、そのまま機械の穴へと吸い込まれていく。

  ずぷぷっ……と、私のおちんちんが機械の中に飲み込まれていく。そのままおちんちんはどんどんと奥まで入っていき、とうとう根元まで入ってしまった。

  ひんやりした機械の中と、液体の感覚がおちんちんから伝わって、その瞬間、頭が一瞬真っ白になった。ちょっと遅れてから、気持ちいい感覚が押し寄せてくる。

  なにこれ、すごい……! 種付けって、こんななんだ……。

  おまたがむずむずして止まらない。 もっと、もっとしたい! 私は思わず腰を動かし始めていた。でも当然私の前脚は宙に浮いていて、後ろ足だけじゃうまく動かすことができない。

  「そんなんじゃ駄目だよ、リコちゃん。ほら、こうやって腰をカクカクって動かしてごらん?」

  そう言ってメグミさんが私の腰に手を当てたかと思うと、そのまま押すように前後に動かし始める。その動きに合わせて、私は夢中で腰を振り続けた。

  「(気持ちいいっ! 種付け、すごいっ……!)」

  もう、何も考えられなかった。ただただ気持ちよくなりたくて、夢中で腰を振る。

  お腹の中が熱くて、この熱をどこかに逃したくて、でもどこにも行けなくて、もうただひたすらに。

  おまたのところが熱くて、気持ちよくて、だんだんなにも考えられなくなってくる。そしておちんちんの奥の方から何かが込み上げてくる感覚がして……。

  頭の中が真っ白になった瞬間、私のおちんちんから何かが飛び出ししていくのがわかった。

  びゅるっ、びゅるるるっ!と勢いよく放たれたそれは、機械の中を通ってびちゃびちゃと音を立てて飛び散っていくのがわかる。それと一緒にものすごい気持ちよさが全身に広がっていって、私は思わず体をのけぞらせていた。

  「リコちゃん、初めてなのにすごいね〜。これなら本番も問題ないかな?」

  メグミさんが褒めてくれるけど、私はそれどころじゃない。おまたのむずむずが止まらないし、頭の中もなんだかふわふわしてて、何も考えられなくて……。

  そのまま私の体は力が抜けて、台の上にへたり込んでしまう。でも、私のおちんちんはまだまだ元気いっぱいで。機械の中でびくんびくんと脈打っているのがわかるし、それに、なんだかまだ出し足りないような気さえしてくる……。

  「お、まだ足りない? 本番は明日だし、好きなだけ出してもいいよ」

  メグミさんの言葉に、私は反射的に再び腰を振り始めていた。機械のひんやりした感覚と、おちんちんに絡みつく液体が気持ちいい。

  さっき出したばかりなのに、もう次のがこみ上げてきている。機械の中にまたびゅるっ!と勢いよく吐き出していく感覚がして、私は思わず身震いしていた。

  そのまま何回出したかは、今となっては覚えていない。

  [newpage]

  次の日。

  目が覚めて最初に感じたのは、全身の筋肉痛だった。馬の姿だと変なところの筋肉を使ってるだろうし、当たり前か……。

  夢中になって機械に射精し続けた私は、しばらくすると勝手に人の姿に戻っていった。

  そこからは、お馬さんになったことなんか嘘みたいに普通にご飯を食べて、普通に寝ることになった。

  でも、私の中には昨日感じた気持ちよさがしっかりと刻み込まれていて。

  メグミさんの言ってた通り、種付けってこんなに気持ちいいんだ……。そう思ったら、なんだか無性にドキドキしてしまった。

  そして、朝ごはんを食べた後。メグミさんに言われた通りに準備をして、私たちはついにお家を出発した。

  「じゃあ、まずは厩舎まで行こうか」

  「は、はい……」

  昨日通った同じ道を、またメグミさんが先導してくれる。サンゴちゃんは別の場所でお父さんのお手伝いをするみたいで、今日は二人きり。

  「あたしも初めて種付けしたときはすっごくドキドキしちゃったんだよ~。最初の頃はうまくいかなくてさ~」

  「そう、なんですか……?」

  私がちょっと気後れしてそう言うと、メグミさんは笑って続けた。

  「大丈夫だって~! 最初はみんなそんなんだし、それに今日は家族みんなでサポートするから」

  「そ、そうかな……?」

  メグミさんたちがついてくれるのは心強い。でもやっぱり、私は少し不安だった。ちゃんと、できるのかな……。

  そんなことを考えているうちに、私たちはいつのまにか厩舎の入り口までたどり着いていた。

  今度は自分でドアを開けて、中に入る。

  中に入った瞬間、また昨日と同じにおいが鼻をついた。お馬さんの臭いって、こんなに強いんだ……。

  「じゃあ、リコちゃん。まずは準備から始めよっか」

  「はい……」

  緊張する私とは対照的に、メグミさんはなんだか楽しそうだった。

  昨日と同じように、でも今日は自分から、服を一枚一枚脱いでいく。そして、一糸まとわぬ姿になった私は、鏡の前に立たされた。

  昨日も裸になったはずなのに、改めて自分の裸を見るとやっぱり恥ずかしい……。

  「さあ、お馬さんになるよ〜。今日のタオルはついさっきお馬さんのおまんこを洗った時のやつだから、さらに臭いがすごいかも……?」

  そう言いながら、メグミさんがぶんぶんとタオルを振り回している。鼻先に当ててもいないのに、そのタオルからはむわっとしたにおいが漂ってくる。

  現金なことに、私のおまたはその臭いを嗅いだだけでムズムズし始めてしまった。今はまだおちんちんなんてないはずなのに、もう昨日の気持ちよさが蘇ってきて、射精したくてたまらない。

  「焦らない焦らない。四つん這いになって、ゆっくり吸ってね」

  私は言われるがまま、四つん這いになる。そして、そのまま渡されたタオルに顔をうずめた。

  すぅぅ……。はぁ……。

  その瞬間、私の全身に電気が走ったような衝撃が走る。昨日味わった、体の変化の前兆の熱さ。

  手や足の先から、じんわりと熱を帯びていくのを感じる。全身が熱くてたまらなくて、思わず腰が動いてしまう。

  「きた……、きます……。馬に、馬になっちゃいます……っ!」

  私が思わずそう宣言すると、メグミさんは満足そうにうなずいていた。

  今度は、自分で自分の変化をちゃんと見たい。受け入れたい。意を決して、鏡の中の私をじっと見つめる。

  手のひらを床につけたまま、少しずつ指がくっつき始めた。チョコが溶けるみたいに、五本の指がくっついて黒い一つのかたまりへと変わっていく。

  「これ、私の手……?」

  目の前で起こることが信じられなくて、思わず指先をじっと見つめた。そんなことをしてるうちに、手首から肘にかけての筋肉が盛り上がりながら馬の前足になっていく。

  直接見ても、鏡越しに見ても、その変化の勢いは止まらなかった。伸ばした足がギシギシと音を立てながら後ろ脚になって、前後揃った動物の足になって、膨らんでいく胴体を支えてくれる。

  「すごい、こんなに……」

  わたしの体がどんどん大きくなって、馬のサイズへと成長していく。そのあいだにも、わたしの肌から柔らかな産毛のようなものが生え始めて、どんどん全身を覆っていく。肩から背中、全身に毛が生えていって、濃く、しっかりとした馬の毛並みが完成していった。

  胴が完全に馬の形になったころ、首筋に違和感が走った。痛みはないとはいえ、鏡に映る自分の首がぐぐっと伸びていくのはさすがに違和感がすごい。目の高さが上がるにつれて、顔にも変化が及んでいく。

  頬が少しずつ前に突き出し、鼻のところが伸びていく。お馬さんの顔へと変わるにつれて、口元がしっかりと広がり、唇が厚くなっていく。鼻の穴が徐々に膨らみ、呼吸が深くなる。鼻の奥に新鮮な空気が満ちる感覚が、すごく気持ちいい。

  ふわりと耳が伸び、少し高い位置へと移動していく。新しい感覚に戸惑いながらも、それが自然に感じられた。視界がぐわっと広がって、部屋のすべてが同時に目に入るようになる。

  腰のあたりで、ひんやりとした風が吹いた。そこには何もなかったはずなのに、ふさふさとした感触が伝わってきた。尻尾だ。根元から生えていく感覚がくすぐったく、無意識のうちにひらひらと振ってしまう。鏡越しに見ても、しっかりとした尻尾がそこにあった。

  そして、待ち望んでいた感覚。ぐつぐつとした熱さが、体の奥の奥に感じられる。

  「(おちんちん、……おちんちんっ!!)」

  頭の中にはもう、それしかなかった。早く出したい、気持ちよくなりたい。それだけが思考を支配していく。

  そして、その時はやってきた。おまたの奥のムズムズ感が急速に大きくなっていって、集まっていく感覚。そして、それは出口を求めてぐるぐると渦巻いていく。

  ぐちゅ、と肉が体の中から出てくる音がかすかに聞こえた後、待ち望んでいたあの感覚が押し寄せてくるのがわかった。もう我慢なんてできない。だって、こんなにも気持ちいいんだから……!

  わたしは思わず前脚で床を蹴り上げながら、思いっきり腰を突き上げた!

  びゅっ、びゅるっ!! どぴゅっ!

  おちんちんの先から、すごい勢いで白い液体が飛び出してくる。その勢いは止まることなく、そのまま鏡をびちゃびちゃに汚していく。

  鏡に映る私は、もうすっかりお馬さんでしかなかった。でも、その変わり果てた姿を見ても、昨日感じたような怖い気持ちは全然なくて、むしろすごく幸せで、気持ちよくて……。

  私はそのまましばらくのあいだ、鏡に向かって精液を垂れ流していた。

  「おっけーおっけー。変身はもうばっちりだね! 慣れていくうちに射精も我慢できればカンペキかな〜」

  「ブルル……」

  メグミさんがそう言いつつ、平然とした顔のまま鏡をタオルで拭いていく。私はといえば、鏡に精液をかけてしまったことにちょっと罪悪感を感じつつも、それ以上に気持ちよく射精できたことが嬉しくてたまらなかった。

  あとは、生身のお馬さん相手に種付けするだけだ。昨日練習させてもらったとはいえ、やっぱりまだちょっと緊張するな……。

  わたしの気持ちを知ってか知らずか、メグミさんはどこからか長いひもみたいなものを持ってきていた。

  「じゃあ、馬具をつけていくよ。ちょっと顔下げて、口開けてね〜」

  言われるがまま、あーんと口を大きく開けると、そこに太い棒みたいなものが差し込まれる。メグミさんはその棒の両端を持って、ぐいぐいと私の顔を動かしていった。

  歯と歯の間に棒が入って、何かのベルトで頭を巻かれて……。気づいたら手綱みたいなのもついていて、その端をメグミさんが持っていた。

  「ごめんね〜、気持ち悪いと思うけど、馬の中身が人間だってバレないために馬具もつけてるんだ。ちょっとの間だから我慢してね」

  ちょっと窮屈だけど、それ以外は特に不快じゃない。むしろ、馬としての自覚がどんどん強くなってきて、すごく嬉しい気持ちになる。

  次はいよいよ本番だ。そう考えると、自然と鼻息が荒くなってしまう。早くしたい、種付けがしたいって気持ちがどんどん高ぶってくる。

  メグミさんに手綱を握られて、わたしは意気揚々と厩舎を出るのだった。

  昨日来た道を、今度は馬の体で逆走していく。メグミさんはわたしのちょっと前で、手綱を持って先導してくれていた。

  馬になったばかりの時は歩くだけでも慣れなかったのに、今のわたしは手綱を引かれるがままに何不自由なく前進することができる。体がすごく軽くて、地面を蹴って一歩進むたびになんだか幸せな気持ちになれる気がした。

  「今日のお相手は唯一私たちの事情を知ってる仲がいい人だから、あんまりバレないようにって気を張らなくてもいいよ。ほんとは馬具もいらないぐらいだけど、基本的にはバレないようにって意識は常に持ってて欲しいから、慣れるために」

  メグミさんはそう言って、手綱から手を離して私の首を優しくなでてくれた。

  確かに、これからするのは種付けなんだし、万が一にも正体がバレたりしたら大変なことになってしまうかもしれない。バレないようにって考えるのは普通だし……。

  でも、今の私にはそのことが逆にドキドキ感を増していくような気がしていた。私の正体は秘密のままで、知らないお馬さんになって、種付けする。

  あともう少しでそれができるんだと思うと、自然と前脚の蹄がカツンカツンと地面を蹴る音が早くなってしまうような。

  「さあ、そろそろ着くよ。準備はいい?」

  メグミさんがそう言って、手綱をくいっと引っ張ってくる。私はそれに答えるように軽く頭を上げて、首を上下に振ってみせた。

  昨日着いた時とは印象が違う、種付け馬がもうすぐそこまで来ていた。

  入り口をくぐって建物の中に入ると、奥の方に一匹の馬と、知らないおじさんが一人立っていた。

  この人が、メグミさんが言ってた「事情を知ってる人」なのかな。そのおじさんは私たちに気づくと、笑顔で手を振ってくれた。私もそれに倣って首を動かしてみる。

  「おお、この子がこないだ言ってたいとこの子かい。立派な馬体だね〜。今日が初めてなんでしょ?」

  「うん。だから今日は練習みたいな感じでよろしくね! 大丈夫、種の強さは保証するよ」

  「風見さんとこの子なら信用してるから大丈夫だよ」

  メグミさんはそのおじさんと軽く言葉を交わした後、私のおしりをポンポンと叩いてきた。

  これは、行けってことかな……?

  合図を受けて、奥にいるお馬さんの方に目を移した。

  わたしより細身ですらっとした体型の、きれいな栗色のお馬さんだ。気品があって、でもどこかおっとりしたような優しい顔をしている。

  遠くからでもわかる、メスの臭い。変身した時の気持ちよさの記憶もあいまって、萎えかけていたおちんちんに熱が戻ってくる。

  「(ああ……。早く、種付けしたい……っ!)」

  私ははやる気持ちを必死に抑えながら、そのお馬さんに近づいていった。

  おじさんが、メス馬の尻尾を退けてくれて、昨日謎の機械相手にそうしたように、メグミさんが私を導いてくれる。

  むき出しになった、相手の子の、おまんこ。私はもうたまらなくなってしまって、昨日練習した通りに、前脚を蹴り上げて。

  「(……っ!!)」

  入り口に先っぽが触れると、それだけで体にびりっとした気持ちよさが走る。私は思わず腰を引いてしまいそうになるけど、メグミさんが手綱でぐっと引っ張ってそれを許してくれない。

  私は覚悟を決めて、ゆっくりと腰を突き出していった。

  ずぷっ……。

  私のおちんちんの先っぽの部分が、おまたの入り口へと入っていく。機械とは違って、熱くて、ぬるぬるしてて、すごく気持ちいい……!

  まだ先っぽだけなのに、あまりの気持ちよさに思わず力が抜けてしまいそうになる。私はぐっと奥歯を噛み締めてそれを堪えながら、さらにおちんちんを押し込んでいった。

  ずぷっ、ぐちゅっ……。

  肉が押し広げられていく感触がして、どんどん快感が強くなっていく。そしてついには、私の一番太いところがおまたの中にすっぽりと収まってしまった。

  でも、まだ終わりじゃない。ここからが本番なんだ。私はゆっくりと腰を引いていった。すると中の肉が吸い付いてくるような感覚があって、それがすごく気持ちいい……っ!

  おまたの入り口までおちんちんを引き抜いたところで、今度は一気に奥まで突き入れた。おまたの奥の壁とおちんちんの先っぽがぶつかって、ぐちゅっという音が体の奥から響いてくる。

  「ブルルッ!」

  お馬さんのおまんこ、すごいっ……!

  私は思わず声を上げてしまった。でもそれはお馬さんの鳴き声にしか聞こえなくて、なんだかそれがとても嬉しかった。

  私はさらに、腰を引いては突き入れてを繰り返す。そのたびに、私の体の奥から気持ちいいのがどんどんとこみ上げてくる。

  「いやぁ、初めてにしては上出来じゃないか。サンゴちゃんもいるし、風見牧場も安泰だねぇ」

  「えへへ、でしょー?」

  そんな二人の会話がかすかに聞こえてきたけど、今の私は種付けのことで頭がいっぱいでそれどころじゃなかった。

  馬体の快感に慣れてきた私は、徐々に腰を動かすスピードを上げていく。まるで本物のお馬さんになったみたいに、興奮して鼻息が荒くなってしまうのを抑えられない。

  おまたの入り口から奥までを、何度も何度も往復する。そのたびに中の肉がきゅうきゅう締め付けてきて、それがすごく気持ちいい……。

  そして、その気持ちよさはやがて限界を迎えようとしていた。おちんちんの先っぽのあたりがムズムズして、熱いものが体の奥から込み上げてくる感覚。

  私は最後に思いっきり腰を突き上げた。その瞬間に、私のおちんちんの先っぽから白い液体が勢いよく飛び出していく。

  びゅっ! どぴゅっ!! びゅるっ、びゅくっ!!

  「ヒンッ! ヒィーン!」

  おまたの一番奥で、私のおちんちんが暴れている。その気持ちよさに思わず声を上げてしまうけど、お馬さんの鳴き声にしか聞こえない。その事実がさらに私を興奮させていった。

  私は種付けの快感に酔いしれながらも、最後の一滴を出し切るまでしっかりと腰を押し付け続ける。

  「そう言えば、馬としての名前は決めたの? サンゴちゃんはそのまま、『コーラルウィンド』にしてたよね」

  「あ、そうだった。じゃあ……、リコちゃんは『ラピスウィンド』で!」

  「はっはっは、そのままかい。まあ、風見牧場らしくていいんじゃないか?」

  メグミさんとおじさんが何かを話している。でも、私は種付けの気持ちよさで頭がいっぱいになっていて、それをよく理解することができない。

  ようやく射精が終わると、わたしはゆっくりと腰を引いた。私のおちんちんの先っぽには白い液体が大量に付着していて、オスとメスの両方のにおいが混じったような複雑なにおいが充満していた。

  私がおちんちんをおまんこから引き抜くと、中に入っていたのが栓になっていたみたいに一気に精液が溢れ出してきた。それを見て、私は思わずうっとりとした表情を浮かべてしまう。

  おまんこから白い液体を流しながら、ぐったりとする相手のお馬さん。その様子を見て、私はまた興奮してしまっていた。

  もっと、もっと種付けしたい……っ! そんな私の気持ちを察したのか、メグミさんが私に声をかけてくる。

  その目はなんだかちょっと意地悪な光を帯びていた。

  「さあ、ラピスウィンドさん。可能なら明日にでもまた種付けしてもらうけど、いいかな……?」

  考えるまでもない。わたしは馬の姿のまま、首を縦にブンブン振るのだった。