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【R-18】昔ふった最弱兎がゴリラになって口説きに来た【溺愛/強引/婚前交渉】

  「……君のことが好きだ」

  「ごめんなさい」

  初夏の風が教会の裏の花壇を駆け抜ける。

  この年、十五を迎えた凛は初めて愛の告白を受けた。そして、一切の躊躇いもなく兎の獣人である少年の恋心を叩き落とした。

  少年との出会いは凛が十の頃の冬。少年は王都の路地で路頭に迷っていた。

  此処は人間と獣人が共存する国として世界的に有名ではあるが、獣人は人間から害される場面が多く、良好な関係なのかと問われるとイマイチだ。

  少年も理不尽に人間に住処を追い出されて行く当てを失くし、路地で野垂れ死ぬ運命を受け入れていた。そこに凛が現れた。

  中流階級に属する凛の実家は王都にあり、路地は凛や同年代の子供達の遊び場であった。

  当然、物理的に日の当たらない場所は溢者が蔓延る危険な場所の為、路地で遊んだことが両親にバレた日にはこっ酷く叱られた。だが、お転婆な性分であった凛は、あの暗がりのスリルが辞められなくて王都の悪餓鬼共と一緒に路地の出入りを繰り返していた。

  そして、あの年の冬は退屈凌ぎに散歩と称して一人で路地を歩いていたところで少年と出会う。赤毛の垂れた兎の耳と丸い尾は愛らしいが、布切れ同然の服で隠れる身体は痩せ細りボロボロで同情せずにはいられない。

  腕の良い医者の父と花屋を営む母を持つ凛は、両親から沢山の愛情を受けて育った故に自然と他人に手を差し伸べられる人格だった。

  「あなたどうしたの?寒そうね。お父さんとお母さんは?お家はあるの?お腹空いてる?」

  建物の外壁に背を預けて力無く座り込む少年は、生気を失った目でじっと凛を見つめるが問い掛けには答えない。

  そこで凛は綺麗とは謂えない少年の身体を抱き締めた。驚いた少年は身体を大きくびくついたが拒絶はしなかった。

  「帰る場所がない子は教会の孤児院に行くといいわ。私のお父さんはお医者さんだからよく孤児院の訪問診療に行くの。私もたまに遊びに行くのよ。そこなら寒い思いもしないしご飯も食べられるからあなたが良ければ案内するわ」

  凛は孤児院の友人達と会う為に、月に一度の診療で孤児院に出向く父親に手伝いと謂う名目で付いて行く。孤児院を運営する司教や助祭の人柄も良く子供達は皆のびのびと暮らしている様子を凛は間近で見ているから自信を持って勧めた。

  「此処にいたらあなた死んでしまいそう。一緒に行きましょう?」

  汚れた手をしっかり握って一緒に立ち上がる。子供の足で教会の孤児院に辿り着くには二時間は掛かったが、無事に少年を孤児院に送り届けることができた。

  凛の帰りは助祭が馬を出してくれたおかげで門限までに帰宅することができたが、家にいた母親に助祭が全てを告げ口してしまった為に大目玉を食らった。

  その後、凛はこれまで通り父親と共に孤児院に顔を出し、小綺麗になった少年と多少は話しをするような仲になった。しかし、少年は極度に口数が少なく幾ら社交的な凛が相手でも友達と呼べるような関係性にはなれなかった。

  あれから数年が経過し、兎の獣人タロルフは凛よりも頭一つ分も背を伸ばした。

  凛もまた良家の娘として淑女の階段を駆け上がる。大人の女性と謂うにはまだ若いが既に少女と呼ぶには失礼なほどに可憐な女性に育ち、これかもさらに美しくなることだろう。

  何かと多忙にしている凛が数ヵ月ぶりに孤児院に顔を出すとタロルフは凛を教会の裏に呼び出し思いの丈を打ち開けた。

  「……君のことが好きだ」

  「ごめんなさい」

  凛からすれば考える余地もないほどにタロルフは恋愛対象ではなかった為にはっきりと断りを入れた。

  さっきまでタロルフの背中を押すように吹いていた風はピタリと止み痛いほどの沈黙が二人の間に流れる。

  明日から三年の間、凛は隣国に留学する。凛の実家は爵位のない中流階級に位置しており、娘である凛は世間的に良家の娘として扱われている。二、三年後に社交界デビューをすることを期待されている為、隣国にいる爵位持ちの叔母の許で社交界デビューに向けての予行練習をするのだ。

  その情報を仕入れていたタロルフは、今日を逃せば二度とチャンスはないかもしれないことを悟った。留学先で良い縁があれば凛は嫁ぐことになるからだ。

  だからこれが最後の機会とばかりに長らく胸に秘めていた思いを打ち明けたのだが、見事に惨敗に終わった。

  「……参考までに教えて欲しい。君の理想とする男はどんな男だろうか?」

  その問いに凛は考えながら答えた。

  「男らしい人が好みよ。背が高くて身体を鍛えていて、私がピンチの時に颯爽と現れて助けてくれる人。職業で謂うなら軍人が良いわ。軍服姿の男性ってなんだかとても魅力的に見えるの。それと浮気をしない人が良いのだけれど……、それはあんまり期待してないわ。貴族の人たちって男性も女性も愛人を持つことに寛容らしいから」

  「……分かった」

  そこまで話したところで遠くから娘を呼ぶ父親の声が聞こえて来る。

  「元気でね、タロルフ。きっとまた会いましょう」

  凛はタロルフと握手を交わして父の許に向かった。

  それから二年と半年が過ぎると凛の美貌や立ち振る舞いには磨きが掛かった。社交界デビュー前にも関わらず居候をしている叔母の家には何通もの恋文と贈り物が連日届けられるようになり、実家の方にもさっそく求婚状を贈る者も現れ始めた。

  親族一同は凛の仕上がりを大層誇らしく思っていたが、当の本人はこの状況にうんざりしている。

  留学をして最初のうちはそれはもう楽しかった。伯爵の名に肖り各貴族の邸宅で開かれる茶会や夜会に参加して、お茶会では女達だけで集まり根も葉もない噂話をその場限りで楽しんだり、ファッションの流行について語り明かした。夜会ではダンスに誘われる照れ臭さや、初対面同士で現金を賭けるボードゲームに興じる緊張や興奮は良い思い出となった。

  しかし、今となってどれもこれも新鮮味がなくなってつまらない。否、自分の将来に幻滅したと謂うのが正しいだろう。

  将来の展望が見えなくなってしまった途端、今を楽しむことができなくなってしまったのだ。

  「ロマンスだなんてくだらないわ」

  伯爵家の自室のソファーに寝ころびながらローテブルに置き去りにされている赤い表紙の恋愛小説を睨む。祖国からの道中で本屋に寄って買ったものだ。主人公である貴族令嬢が遊び人と噂される男性に告白されて一度は断るも次第に惹かれていき、男性もまた一途に主人公だけを愛し続けたことで結ばれる。そんな奇跡みたいなフィクションが描かれている。

  あの頃の凛は単純に新しい環境で運命の相手と出会えるかもしれないと胸を躍らせていたが、現実は違った。

  貴族令嬢達のロマンスと謂えば当然恋愛結婚なのだが、理想のロマンスに巡り合う機会などそう来ないし、何より恋愛結婚を語る現実の令嬢達の殆どは頭で恋愛をしている。

  それも仕方がないのは解っている。貴族の女性は自分で仕事をして富を生み出すことをタブーとされており、生涯父親ないし夫の財産に依存しなければならない為、自分で好きに使える金銭はほぼ待ち合わせていない。だから経済的な安泰を願い、財産を持ち合わせている男性を見つけることに必死になる。

  だから、どれだけ魅力的な男性が現れたとしても家柄や爵位、財産、土地、屋敷を持ち合わせているのかを見定め、常に二番手三番手の男性をキープしている。そして、それは男性も同じこと。男性――特に長男は実家の屋敷と財産を守る義務がある為、聡明な女性を求めている。

  なんだかな。思っていたのと違った。

  これが凛にとっての一番の感想で幻滅したところだ。

  良くしてくれた親族には悪いが、もう貴族の真似事はやめようかと思っている。そもそも凛は良家の娘なだけであって貴族ではない。貴族でもないのにドレスだの服飾品だの不要に買い過ぎだった。父親がせっせと稼いだ金なのになんだか申し訳ない。

  今夜の夜会で貴族ごっこはやめにする。実家に戻って母親と同じように自分で稼ぐ生き方の方がきっと自分には合っているだろう。

  そうと決めた凛は今夜の夜会の支度をする為にソファーから立ち上がった。

  今夜の夜会の主催は友人の男爵令嬢だ。凛はいつものようにシャペロンの叔母を連れて男爵邸に足を踏み入れる。

  叔母は他の令嬢達のシャペロンが集まる場所に向かい、凛は自由に若い男女と会話を楽しんだ。ダンスに誘われたらどんな男性とも踊ったし、口説かれればそれなりの返事を返してやり過ごす。正子を回ると体力的に疲れが出てきて壁際の長椅子に座って休憩する。すると主催の男爵令嬢がにやにやしながら近づいて来た。

  「いつの間にあんな素敵な人を捕まえたの?」

  「はい?」

  「庭で待ってるわ。早く行ってあげて」

  艶やかな赤いドレスを翻して去って行った男爵令嬢の言葉に凛は首を傾げながらもポーチ階段を下って庭に出る。男性らしき姿が見えないから少しだけ庭を散策する。美しい花壇の道を進むと男爵家の自慢の温室に入る。様々な花が生き生きと咲き誇る姿を見ると如何に丁寧に管理されているかが窺える。

  花を見ていると楽しそうに花屋を営む母親の姿が目に浮かんで笑みが溢した。その瞬間、飛び石を踏む音が聞こえて振り返る。そこには軍服を身に纏い制帽を被った大男が背筋を伸ばして立っていた。

  「?」

  男爵令嬢が言っていた男性とは彼のことだろうか。

  制帽の陰で見づらい顔を覗き込むように少し身を屈めてみるが、距離がある為にあまり意味がない。

  「こんばんは」

  凛の方から声を掛けると男は制帽の唾を掴んで僅かに持ち上げる。何処かで見た覚えのある顔だ。

  「お久しぶりです、凛。タロルフです」

  凛の口から素っ頓狂な悲鳴が漏れる。その名だけは恐らく死ぬまで忘れないと思っていた幼馴染の名で、きっと会いましょうと別れを告げながらも二度と会うことはないと思っていた顔だった。

  本当にタロルフ?格好からして軍人になったみたいだけど、凄い変わりようだわ。最後にあった時はキュウリみたいに華奢だったけど随分と逞しくなったわね。それに貴族のパーティーにいるってことは良家の養子にでもなったのかしら?

  話し方も昔と違って丁寧で紳士的だ。顔付きも体格も態度も別人で凛は少し緊張を覚える。

  「お久しぶりですね……。お変わりはありませんか?」

  「いいえ。あなたが留学に行ってしまってから私は変わりました」

  「そ……、それはどういう?」

  凛の目の前まで歩み寄ったタロルフは、制帽を脱ぎ凛の顔を覗き込むように腰を折る。

  制帽の下から現れた少し癖のある柔らかな赤毛の髪、それと同じ色の兎の垂れた耳だけは変わらないが、昔のような幼さは欠片にも感じられない。

  何故だろうか。心臓が煩い。

  「私にとってあなたは女神です。この身を捧げて良いと思うほどにお慕いしていたのに突然目の前からいなくなってしまったのです。心が壊れそうなほどに寂しかった」

  「???」

  もしかして口説かれている?

  恋の駆け引きはそれなりに学んだつもりだ。男はその気がなくとも礼儀として女を口説くし、女も男の懐が見えるまではそれに付き合う。

  それを知っていればどんなに男前の誘いであろうとも自分を見失わずにその場限りで楽しめた。それなのに何故だか今はまともにタロルフの目が見られない。

  「か、固い話し方はお互いやめましょう。い、今は何しているの?此処にいるってことは良家に養子になったのかしら?住まいはこっちなの?それともまだ――」

  手袋を嵌めたタロルフの手が凛の頬に伸ばされ、愛らしい唇に囚われた一本の髪を親指で優しく解き放つ。

  「この話し方はやめられません。あなたを口説くのに必要な策ですから」

  お上手ですね。いつもなら言える返しが出て来ない。これではまるで真に受けているかのようだ。完全に会話の主導権を握られてしまい悔しくて堪らない。

  凛があわあわと動揺している間にタロルフは凛の問いに答える。

  「今は孤児院を出て軍に所属しています。此処にいるのはあなたのお父様にご助力を頂いたからで他家の養子になったわけではありません……。私も一つ伺っても?」

  「え?えぇ、なんでも聞いて」

  凛は羞恥から一歩後ろに下がってタロルフから距離を取る。タロルフはふわりと笑みを見せるだけで距離を詰めようとはしなかった。

  「いつ頃、こちらに戻って来て頂けるのでしょうか?」

  留学はいつまで続くのかと謂う問いに凛は少し気まずそうに打ち明ける。

  「留学期間はあと半年残っているんだけど、もう帰ろうかと思っているの。いくら淑女らしく振舞っても私は貴族じゃないし……、場違いなのよね」

  まるで自分を卑下しているかのような言い方になってしまったが、本人にそのつもりはない。ただ、理想と違った世界について行く気力がないだけなのだが、建前が身体に染みついてしまった凛は無意識にそのような繕い方をしてしまった。

  それにまんまと嵌ったタロルフは、凛の片手をそっと持ち上げ手の甲に額を付けて否定する。

  「そんなことはありません。今夜のあなたは誰よりも美しい。これまで数多の男に言い寄られたことでしょうし、きっとあなたが貴族になるのは難しいことではないでしょう……。でも」

  熱の籠った深緑の虹彩に女の顔をした凛が映る。射抜くような真摯な眼差しに凛は呼吸を忘れてタロルフの言葉を待った。

  「まだ誰のものにならないで頂きたい」

  のぼせてしまいそうなほど強烈な口説かれ方に凛は耳まで真っ赤に顔を背ける。

  「かっ……神様にでも祈ることのねっ!」

  無様に声を裏返す凛をタロルフは静かに笑い取った手をそっと離す。

  「祖国でお待ちしております。どうか少しでも早く帰って来てください。でないと、寂しくて死んでしまいそうです。なにせ兎ですから」

  最後に「おやすみなさい。凛」と言ってタロルフは背を向けて去った。

  取り残された凛が温室で茫然としていると、シャペロンの叔母が様子を見にやって来たては、一瞬にして凛が誰かに恋をしたことを悟り「むふふ」と怪し気に笑った。

  その夜は早々に伯爵邸に帰宅して眠りに就こうと寝台に潜り込むが、全く寝つけずに朝を迎えてしまう。

  寝台から上体を起こしカーテンが閉め切られた薄暗い部屋で呟く。

  「育ち過ぎじゃない??」

  昨夜のタロルフの育ち具合を思い出して今さら絶句する。

  最後にあった時のタロルフは、確かに凛より背は高かったが風が吹けば飛ばされそうなほどに貧弱だったのは間違いない。それがたった二年そこらで身長はさらに伸びてぺらぺらだった身体は分厚くなった。動きのなかった表情はバリエーションを増やし、寡黙だった口は女を熱烈に口説くようになっていた。

  可愛い顔をしているとは常々思っていたが、まさかあそこまで美丈夫に育つなんて想像もしていなかった。

  「……かっこ良かったかも……って違うッ!!」

  恋を知らない乙女の凛は、胸の高鳴りを認めることができずに再びシーツの中に隠れて悶え苦しむ。

  予定よりも早く帰国した凛を待ち構えていたのは、今年の王室主催の舞踏会。つまりは社交界デビューを飾る場である。

  一年に一度開かれる王室主催の舞踏会に参加し、女王に挨拶ができれば晴れて社交界デビュー、一人前の淑女として世間に認められるのだ。

  だが、既にその気を失っていた凛は憂鬱で仕方がなかった。凛の社交界デビューは本来であれば来年を予定していたのだが、投げ出すように留学から帰って来てしまったばかりに両親は変に気を効かせて今年の舞踏会に参加することになってしまった。

  貴族でもないのに社交界デビューをする必要があるのか。それが本音だが、この日の為に大枚をはたいて留学をさせた両親のことを思うと嫌とは言えず、今夜凛は社交界デビューを果たす。

  「母さん?どうして着替えないの?一緒に行ってくれるんじゃないの?」

  「えぇ、あとで父さんと二人で行くわ。あなたは先に行ってなさい」

  凛の着替えを終えてから数十分。いつまで経っても母親がドレスに着替えないから凛は落ち着かない様子だ。

  決して広くない家で重たいドレスの裾を持ち上げながら凛は不満顔で呑気にコーヒーを飲む母親に近づく。

  「先に行けって無理言わないで。流石の私でも一人で王宮に行くなんて心細いわ」

  「そのお役目、私に引き受けさせて頂きたい」

  ぴゃっ!凛は変な声を上げて固まった。

  二階の狭いフリーホールで揉めていた母と娘の前に現れたのは軍服姿のタロルフであった。隣国で再開したものとは違い、厳か催しの際に着用を義務付けられている黒地の軍服と制帽、そして左肩に純白のペリースを下げた様に凛は見惚れて言葉を失う。

  「少し遅刻よ、タロルフ。娘が待ちきれないって肝を焼いているわ」

  「申し訳ありません。渋滞に少し捕まってしまって」

  「あぁ、タロルフ来たか。娘のエスコート悪いが頼むぞ」

  「お任せください」

  「なんでそんなに仲良いの!?」

  さらに奥の部屋からクラバットと格闘したまま顔を出した父親が参戦した。自分がいない間に三人は明らかに親睦を深めていたことが窺えて一人でどぎまぎする。

  両親は何故かタロルフを名で呼び捨てて家の中にまで招いているのだ。ただの知り合いにしては気を許し過ぎだ。しかも、人生で一度切りしかない娘の社交界デビューの日に他所の男にエスコートを頼むだなんて信じられない。

  「うちには息子がいないからな。男手が必要な時によく手を貸してくれているんだ。タロルフなら何も心配することはない。連れて行ってもらいなさい……。あぁ、母さん、これどうやって結ぶんだ?」

  「そういう訳だから。タロルフから離れないように。頼むわね」

  「はい」

  凛の母は娘を婚約者でもない男に預けて父の許に向かってしまった。

  残された凛の目の前に手袋を嵌めた大きな手が差し出されが、凛はその手を取って良いものか迷う。

  「どうか慈悲を頂きたい。今宵、あなたを守護するお役目をお与えください」

  「……っ、歯痒いから普通に話してってば」

  凛がその手を取ると家から連れ出され、自宅前に停まっている軍所有の馬車にエスコートされる。当然、凛は待ったを掛けた。

  「国家の紋章がデザインされているってことは軍所有の馬車ってことよね!?の、乗れるわけないじゃない!私はただの医者の娘よ!?」

  「はい。ですが、私の想い人ですから問題ありません。女性を口説くから貸してくれと上司に頼んだら快く許可が下りました」

  「ばっ……」

  馬鹿みたいな話だと分かっていてもときめいている自分がいて情けない気持ちになる。

  凛は無駄にもたついたが結局は断る選択しなどない為、タロルフと二人きりで馬車に乗る。

  本来、未婚の娘が男と二人になることはとんでもない不良行為に値するのだが、凛の両親がそれを知らない筈がない。

  なんとなく目の前の男に外堀を埋められている気がするのだが、なんと言って言及すれば良いのか分からない。

  ちらりと目の前に座るタロルフを盗み見ると、深緑の虹彩と目が合って咄嗟に逸らす。

  「……そんなに見ないでっ」

  「難しい相談です。貴女があまりにも美しいから目が離せない」

  「やめなさいっ!」

  タロルフが相手じゃなければなんてことなのにっ……。

  揺れる馬車の中、正面から熱い眼差しを向けられる凛は「うわぁぁ」なんて淑女らしからぬ奇声を上げる。

  こんな様子で王宮に踏み入れたら何かやらかすのではないかと思っていたが、留学で場数を踏んだ凛は完璧な淑女となって社交界デビューを果たした。

  だが、凛の淑女の仮面を剥がそうとする不届き者がすぐ傍にいた。

  それは、豪華絢爛な舞踏室の玉座の前にて。タロルフのエスコートで無事に女王に謁見することができたその時、女王が二人の仲について問うた。

  「お似合いな二人だこと。この場で二人揃っているということは縁談がまとまったのですね」

  「いえ、いまだ口説いている最中で御座います。ご両親の承諾は得ておりますので、あとは私の頑張り次第です」

  それは初耳だった。

  女王が上品に「まぁまぁ」と喜んでいる前で凛は笑顔を絶やすことはなかったが耳の赤味は隠せない。

  女王との謁見が済むとすぐにダンスの曲が流れ始め二人は手を取り音楽に合わせて華麗に舞う。と思いきや、タロルフのリードが下手過ぎて凛は面を食らう。

  「とんでもなく下手ね」

  「……少しお静かに願います」

  「いや、だって、ほら、ほらほらほら」

  「……凛」

  少し早いステップになった途端にタロルフの足が縺れそうになるから凛は無邪気な笑みを見せる。

  軍での仕事が多忙だった為に一度しか練習ができなかった。と言い訳をするが、凛は反撃の好機とばかりに「ふーん、そう」「随分と自信有り気な態度だったのにね?」「女を口説くには少し爪が甘いんじゃない?」ととことん煽る。

  「散々人の心を揺さぶった罰よ」

  満開の華が咲き誇るような笑みを見て分かる通り、これまで経験したダンスの中でタロルフとのこの瞬間が一番楽しかった。

  ファーストダンスを終えるとタロルフは凛の腰を抱いてベランダに出る。目隠しにベルベット生地のカーテンを降ろし、正面から真摯な眼差しで凛を見つめるとさっきまで無邪気だった凛の表情が一瞬で赤らみ女の顔になる。

  「私に心を揺さぶられたのですか?」

  墓穴を掘ったことに気がついた凛は手の甲で額を押えながら俯くが、タロルフの大きな手が小さな顎を掬い上げて熟れた顔が晒される。

  「む……、昔と違うから少し緊張したって意味よ」

  「昔と違うのは当然です。あなたの好みの男になれるように努力しましたから」

  「?」

  留学に行く前に男の好みを聞かれたことをすっかり忘れている凛は首を傾げる。

  「背が高くて身体を鍛えている男らしい人が好みだと言っていたでしょう。だから、背を伸ばす為に苦手な食事を取るようにして身体も鍛えました。職業は軍人が良いと仰るから選びました」

  昔のタロルフが痩せていたのは、草食系の獣人であることも関係するだろうが、単に食が細かっただけだった。食べることが苦手だったが、背を伸ばし身体を作るには食事と運動しかないと孤児院の司教が言ったから実践をした。当然、最初は辛かったが努力が実になる感覚を身体で感じることができるようになると食事を楽しめるようになり、気がつけば兎の獣人とは思えないほどの屈強な身体になった。

  獣人は総じて運動能力が高い為、軍に入団する際の実技試験ではトップで通過した。上官からは気に入られており仕事は順調。獣人で身分が最古層だからか人間の女からのアプローチは殆どないが、容姿が良い為に密やかに虜になっている女も少なくはない。

  「ですが、一つだけ叶えて差し上げられるか分からないことがあります。ピンチの時に駆けつけてほしいと仰いましたが、そもそもあなたに降り掛かる火の粉は全て排除致しますのでそのような機会は来ないかもしれません。仮に貴女に危険が差し迫った時は逸早く参上する気概はあります」

  「そ……、そんなこと言ってた?」

  「えぇ。それと浮気についてですが、ご心配には及びません。私は凛以外の女性に一切の興味もありませんし、私は貴族ではありませんから愛人など不要です」

  またして強烈な口説き方に凛の心臓は激しく鼓動する。

  「ですから私もあなたの浮気は許しません。凛もどうか私だけを愛して、よそ見なんてしないでください」

  「っ……」

  タロルフは凛の腕をそっと掴み上げてイブニンググローブに隠れる細い手首に唇を寄せた。

  「ずっと貴女だけに恋焦がれています。どうか私のものになって、私の妻になって頂きたい」

  真摯でありながら獰猛な男の眼差しに射抜かれた凛はついに白旗を上げる。

  ひ弱で寡黙だった少年が自分を手に入れる為に努力し変貌を遂げたその姿に心打たれない女なんてきっといない。

  恋は盲目とはよく言ったものだ。親無しだとか、家柄だとか、種族だとか本気でどうでもいいと思った。断る理由も一応は探してみるが少しも見当たらない。

  凛は大きく頷いて答える。タロルフは歓喜して華奢な身体を掻き抱き赤く染まった耳介に唇を寄せた。

  星空の許で互いの視線が絡み合い、柔らかな頬を指の背で撫でて口づけの許可を待つ。少しの間を置いてから小さな頭が軽く傾いた。

  タロルフは静かに凛の唇を奪う。たった一度柔らかく吸い上げてから一度間を置くけれどまたすぐにその唇を食んで口づけを繰り返す。

  次第に紅が崩れてタロルフの唇に色が写る。その様はなんとも妖艶で凛は直視できずに部厚い胸板を押し返しながら顔を背けた。

  それを許さないとばかりに頬をその手で包み込まれて再度唇を奪う。しかも今度は分厚い舌が凛の唇を割り狭い口腔を侵略する。

  「っ」

  驚いて逃げ腰になる凛を強靭な腕がしっかりと取り押さえタロルフは己が満足するまで淫靡な口づけを堪能する。

  凛の腰が立たなくなってようやく唇を離せば、銀の橋が二人を繋いだ。

  浅い呼吸を繰り返す凛は大きく目を見開いて状況の処理に務めるが思考がまともに働かない。そんな凛の様子にタロルフは恍惚と眦を下げて凝視する。

  「良かった。そのご様子ですとファーストキスを頂けたのですね。因みに私も凛が初めての相手です」

  「なっ……、なっ……」

  言葉にならない音を無意味に奏でる凛を抱き直したタロルフはしみじみと独り言を溢す。

  「私の初めては全てあなたに捧げます。必ず貰ってくださいね。凛」

  凛はもう子供ではない。タロルフが何を言わんとしているのか分かってしまい、ついに頭から湯気を立てた。

  凛が社交界デビューを果たして早々に二人は短い婚約期間を設けた。

  タロルフはすぐでも結婚したい様子だったが、花嫁には色々と支度が必要だから少し待つように言いつけた。

  立派な紳士になったタロルフであれば数ヶ月ぐらいの辛抱など造作もないどろうと高を括っていた凛はあっさりと食われることになる。

  「駄目駄目駄目!駄目よ!わ、私達はまだ婚約期間中よ!」

  タロルフが王都の隅に家を買ったと言うから見学に来た凛は、簡易的に作られた寝室の寝台に転がされて迫られていた。

  獲物に迫るタロルフは口元で笑みを作って凛を懐柔させようとするが、その目には鋭い眼光が灯っているせいで凛の警戒レベルは引き上がる。

  「申し訳ありませんが、全く我慢ができそうにありません。抱かせてください」

  「だ、だからっ……、駄目だってば……」

  白シャツの釦を上から外していく姿に凛は両手で顔を押えて目隠しをするが、シャツが脱ぎ捨てられた音を聞いて思わず指の隙間からタロルフの身体を盗み見る。

  驚愕した。いつも軍服で隠されている身体はさぞ男らしいのだろうと勝手に想像していたのだが、その身体は凛の想像を遥かに超えた仕上がりで言葉を失くす。

  幼い頃に見た動物図鑑に載っていたゴリラの絵が海馬から突如として引き出され、煽情的な状況であることを一瞬忘れる。

  「お気に召して頂けたようで良かった。この身体はあなたのものですから好きにして構わないのですよ」

  凛の手を取り隆々と波を打つ腹にその掌を押し付ける。凛はぴゃっ!と短い悲鳴を上げた。

  「その代わり、あなたの身体も私に頂きたい。いいですね、凛」

  「そ、そんなの勝手よ」

  シーッ。唇を尖らせ息を鳴らしてから凛の唇を優しく奪う。わざとらしくリップ音を立てながら角度を変えて口づけを楽しむタロルフに次第に凛の身体の強張りも解けていく。

  「あっ……、だ、だめっ……て……」

  小さな後頭部に片手を沿えて軽く上体を持ち上げたタロルフは、背中にあるワンピースのファスナーを静かに降ろす。

  肩からワンピースを外そうすると阻むように凛は自分を抱き締めるから、今度は深く淫靡な口づけで翻弄してやりながらワンピースを引き剥がした。

  繊細な花柄のレースがあしらわれた下着姿になった凛は、細い腕でなんとか身体を隠そうともじもじする。その姿が余りにもいじらしくて可憐でタロルフの目が細められる。

  「綺麗だ」

  「そっ……、そんなことは、多分、ないわ」

  「いいえ、綺麗ですよ。絶対に」

  「っ……」

  絆される。愛を囁かれ、賞賛を受け、愛でられる喜びは最早快楽であった。

  甘く淫らな口づけに夢中になり隅々まで身体を撫でられながらついに下着も奪われる。

  一糸まとわぬ姿となった凛の身体は緊張と羞恥、そして細やかな愛撫で粟立ち胸の頂きは固く起立している。

  「可愛いですね。一生懸命固くさせて」

  「ひぅ!?」

  なんの前触れもなく乳頭を摘まみ上げられた凛は鳴き声を上げた。

  やめてくれと太い手首を両手で掴んで引き剝がそうと試みるが力では全く敵わない。

  指の中で圧し潰されながら転がされる愛撫は凛に快楽を教える。

  「凛も触って」

  「へっ……、アッ」

  凛の手を再び自分の胸に押し当て激しい鼓動を伝える。猛々しい鼓動に男を感じた凛は胎を切なげに疼かせる。

  そのあたりから凛の抵抗は曖昧になりタロルフの愛撫を惜しみなく受けて数十分程度で音を上げた。

  「も、もっ、やめてっ……、からだ、へん、だからっ」

  内腿とピタリと閉じて腕で顔を隠す凛をねっとりと見降ろすタロルフは、細い太腿に触れて閉じられた内腿に指を捻じ込む。そこは股座が溢れ出たぐっしょりと濡れている。

  少し強引に膝を割り股座を露出させれば凛はぐずぐずと文句を垂れた。

  「やっ、やぁぁっ、やめて、見ないでっ……、見ないでばかっ」

  「……」

  タロルフは唐突に黙り込む。全身から噴き出した汗が玉となり凛の白い肌に落ちては滑り落ちる。心臓はさらに激しく血液を循環させる。既に膨れ上がった熱杭はズボンの生地を限界まで押し上げてかなり窮屈だ。先走りの汁も生地に滲み出て染みを作り己の滑稽な様に「ハッ」と笑いを溢す。

  中指をしゃぶって唾液を纏わせてから指先で蜜口を割る。はじめて感じる異物感に目を丸くして狼狽する凛の様子を観察しながら奥まで指を押し進める。

  「あっ……あっ、あぁっ……」

  「痛いですか?」

  「い、いたいっ……」

  嘘を吐いてしまった。痛みは殆ど感じない。指一本程度だからなのかとも考えたが、経験豊富な夫人達からの教えでは、最初は小指一本も入らないほどに痛かったと語る者も少なくはなかった。

  きっと自分がおかしいのだ。自分が淫乱だから痛くなんだ。どうしよう。処女じゃないって疑われたら……。嫌われちゃう。

  嘘を吐いた罪悪感と良からぬ妄想が加速してハラハラと涙を溢す凛にタロルフは申し訳なさそうに笑った。

  「申し訳ありません。こればかりは回数を重ねるしかありませんから。優しくしますから少しの間我慢をお願いします」

  「違う、ご、ごめんなさっ」

  惚れた男に嘘を吐く罪悪感に耐えられなかった凛は、実は痛みがないことを打ち明ける。でも処女であることはどうか信じてほしい。恐らく自分はどうしようもない淫乱だろうけどどうか嫌わないで。と涙ながらに伝えた。

  その言葉にタロルフは安心したように肩の力を抜いた。

  「あなたの純潔を疑ってなどおりません。仮に経験があったとしても私はあなたを愛していたでしょう。痛みがないのなら良かった。でもきっとこれを入れる時は流石に痛みを伴うはずですよ」

  片手で自身の熱杭を取り出し見せつけると凛の涙がぴたりと止まる。

  それははち切れそうなほどに膨れ上り真っ直ぐ天井に向かってそそり勃っている。鈴口からは先走りの汁を溢して竿を湿らせ浮き出る太い血管を走る脈動がよく見える。

  凛の頭は真っ白になった。

  「でもしっかり慣らしますから安心してください」

  「っ、っ、アッ、アッ、アッ、や、やっぱりやだぁっ」

  中指を奥まで挿し込まれると全身に悪寒のような快楽が駆け抜ける。

  中を丹念に解されながら腹の裏側を擦られ最奥を小突かれると堪らない気持ちにさせられる。気持ちが良いだなんて認められなくて必死に鳴き声を抑え込む。

  「凛、目を瞑らないでこれを見て」

  「ぅあっ」

  最奥を圧迫されて思わず瞑っていた目を開けると、天井を指す熱杭に視線を奪われる。

  凛に見つめられている間は視姦されている気になってしまい、それは別の生き物のようにぴくぴくと揺れる。

  「あなたに見つめられているだけで果ててしまいそうだ」

  「あっあっあっ、だ、だめっ、~~、たろる、ふっ?あっあっあっ、だめ、やだっ、~~~へんっ!わたひ、へんだからっ」

  「大丈夫。そのまま想像してください。今からこれであなたを貫いて沢山気持ち良くなって、私に子種を注がれるんです」

  「だ、めっ――っ、っ、~~~~~~~~~~~~~~ッ???」

  小刻みに最奥を小突かれて凛は初めての絶頂を迎えた。強大な快楽に困惑しながらも深い快楽の波に溺れることができた凛は、呼吸を止めて必死にシーツを握り締める。

  波が過ぎ去り犬のように忙しなく酸素を補給していとタロルフは凛に覆い被さり凛の手を強く握って寝台に押し付ける。

  「力を抜いて」

  蜜口に張り詰めた亀頭が押し付けられて凛は我に返る。

  「だ、駄目!これ以上は本当に駄目……。初夜まで待っ」

  懇願する凛を黙らせる為に唇に噛みつく。容赦なく口腔を舌で蹂躙して多量の唾液を流し込んでやると簡単に目を回すからなんとも哀れで愛らしい。

  「淑女であるあなたは未婚のまま破瓜を迎えることを大罪のように感じているのでしょうが、そんなことはありません。これは初夜の練習だと思ってください」

  「れん、しゅ……?」

  「えぇ、練習です」

  練習……、なら、仕方ないのかな?

  凛の警戒心に一瞬の綻びが生じた瞬間に亀頭が蜜口を押し割り狭い蜜壺の奥へと進んで行く。

  「――???あ、あぁっ――、やぁぁっ~~???」

  「っ……、凛、好きです。愛しています」

  タロルフは強張る身体を強く抱き締め互いの唇を合わせながら真っ直ぐ腰を進める。

  いくら蜜壺が濡れそぼっていても正真正銘初物の蜜壺は固い為、タロルフの予想通りに凛は痛みに喘いで顔を歪める。

  最奥に鈴口が到達するが熱杭の根元は入りきっていない。これを全て納めるには最奥のさらに向こうを犯すしかないが、それは初夜にとっておくことにする。

  「痛いですね。大丈夫、すぐに良くなりますから。ほら、キスをしてください」

  「~~~っ」

  タロルフは破瓜の痛みと男の熱を知って呆然とする凛に口づけをするようにせがむ。パニック状態に近い凛は言われた通りにタロルフの唇に自分の唇を押し付けた。

  それを合図にタロルフの紳士の仮面が剥がれ落ちる。

  ゆるゆると腰を前後に揺らして凛の反応に変化が表われるのを待つ。破瓜の痛みに苦しむ姿は心底可哀想に思うのに興奮して熱杭はさらに膨張する。

  あぁ、なるほど。これは確かに最高の快楽だな。

  タロルフは一人で納得した。性的快楽とは別のこの精神的快楽は男の身勝手な征服欲だ。男が女を手籠めにする話はよく聞くが、確かに惚れた女を力ずくでねじ伏せていると思うと気分が良い。

  自分はそんな外道とは違うと思っていたが、結局は初夜まで待てなくて凛を丸め込んで婚前交渉を強いた。

  可哀想に。と他人事のような感想はあれど後悔はない。

  「――アッ、ンッンッンッ、う?あっ、やぁ、やぁぁっ」

  「っ……申し訳ありません、どうにも堪え性がなくて……。もう出します。あなたの中で出します」

  「へっ?う、うっ、――アッ、アッ、な、に?えっ?あっやぁぁっ、だ、だめ、だめぇっ」

  「っ……凛」

  僅か数分で射精を迎えたタロルフは、少しの隙間を許さないとばかりに凛を強く抱き締めた。

  ガクガクと無様にも腰を痙攣させて種付けをする快楽は凄まじく、頭蓋の中身が溶け出すような感覚を初めて覚える。

  「アッ……、アッ、で、でちゃった……の?」

  胎の中に広がる熱に狼狽する凛の上から上体を起こしたタロルフは、細い腰に痕が残るほど掴んで先ほどよりもずっと激しい抽送を開始する。

  「――アッアッアッアッぃあっ、やら、やえっ、おわ、り?おわり、じゃない?えっ?アッアッアッ」

  「早漏でお恥ずかしい……。ですがなにせ兎ですからその気になればいくらでもできますよ。言い方を変えましょうか?一度出したぐらいじゃ足りないんです」

  「やえっ!やらっ、アッアッアッアッ、お、おく、はこあいのっ、やえてっ」

  「えぇ、この先はまだ我慢します」

  それから日が暮れるまでタロルフは凛の身体を貪り多量の子種を薄い胎にばら蒔き続けた。

  「ひ……、ひどいわっ……、あんな、あんな、あんなっ!」

  「あまり大きな声を出したら身体に響きますよ」

  深夜、日付が変わる前。一応紳士であるタロルフは今日中のうちに凛を自宅に送り続ける為に辻馬車を拾った。

  馬車の中で羞恥と罪悪感が複雑に入り混じった顔で嘆く凛の隣には、多幸感丸出しのタロルフが身を寄せて座っている。

  「今日のことは二人だけの秘密です。特にご両親にはバレないようにしてください。もしバレたら二人共叱られてしまいますから」

  「どの口が言うのかしらっ」

  それから二人は結婚の準備を進めながら幾度となく身体を重ね、初夜の時にはすでに凛は自らの口でタロルフの熱杭を強請るようになっていた。

  あとがき

  いつもお世話になっております。銀鹿です。

  久々に随分とハッピーなものが出来上がってしまいました。こんな予定ではありませんでした。もっと片想いを拗らせた主人公を予定していたので悔しいです。

  2月はあと二、三本投稿する予定なのでお時間ありましたら次回作もお付き合い頂けると嬉しいです。

  それでは、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

  次回のお話でお会い致しましょう。

  銀鹿

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