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「立ち読みはご遠慮下さい」
コンビニ店員が、週刊少年ジャポンを立ち読みしている男に声をかける。立ち読み男は舌打ちして、店員を睨みながら出て行った。
「何で……、あいつが悪いのに……」
店員はもやもやを抱えたまま、商品の整理をし始める。賞味期限が切れた商品を段ボール箱の中へ。また食べられそうな見た目なのにもったいないと、彼はいつも思う。
「ライト君、後はよろしくねー」
「お疲れ様でしたー」
天然パーマの先輩店員が帰宅して、コンビニにいるのは彼1人。0時を越えると客はめったに来ない。ライトは1人になると色々なことを考えてしまい、[[rb:憂鬱 > ゆううつ]]になりがちだ。
週刊少年ジャポンの表紙に目がとまる。「令和の新ヒーロー登場」の大文字と、仮面をかぶった少年の絵。ライトが小さい頃はヒーローに憧れて、体を鍛えたり、モノマネをしたりと、夢見心地の日々だった。
しかし、今ガラスに映るのは、地味な黒髪のやせた男。ヴィラン登場で逃げまどうモブキャラのようだ。ライトはタメ息をつく。
「ハァ、やだやだ」
首を振って仕事に集中する。商品の廃棄後は、新商品を棚へ並べていく。新商品のさわやか!サイダーの箱を開くと――。
「あら? 何だこりゃ」
さわやかのラベルに混じって、1本だけドラゴンサイダーのラベルが貼られている。ボトルは同じ形状だが、中に金粉のような物が浮遊している。
「商品の間違いかな?」
ドラゴンサイダーを店のパソコンで検索してもヒットしない。未発表の商品らしい。
「返品するか。どこの会社だ?」
ラベルをくまなく見ても、会社名が書いていない。これでは返品のしようがない。
「うーん、困ったぞー」
「飲め」
低いこもった声が聞こえた。辺りを見回しても、誰もいない。
「飲め飲め、早く飲め」
謎の声がしきりに催促してくる。声が頭に響いて痛くなってきたので、ライトは「飲めばいいんだろ、飲めば!」と、ドラゴンサイダーを開けた。ビー玉を落とし、こぼれる泡とともにサイダーを一気に飲む。味は普通のサイダーと変わらない。口中が炭酸ではじける。
「うんまっ!」
久しぶりに飲むサイダーは、さっきまでの暗い気持ちを吹っ飛ばす。ライトの全身に気力が満ちてきた。体のあちこちに電気的な刺激が走り、肌が泡のように脈打つ。
「うっ。何だこれ……」
人の肌が白く染まっていく。毛が一つもないつるぷにの肌だ。異形の物へ変わる恐怖が芽生える。
「で、電話……」
スマホを置いた控え室へ移行したが、服がぶかぶかになって動けなくなる。彼の体は急速に縮んでいる。
鼻と口が一緒に前へ伸びていく。歯は全て犬歯のように鋭くとがり出す。黒髪は金色に染まり、剛毛となって背中まで伸びていった。瞳は黒から水色に変わる。
「グギュルルルル」
耳がウサギのように細長く伸び、水色に染まる。耳と額と鼻先は同じ水色である。頬には黒い三角形の模様が浮かぶ。頭からは茶色い角が2本飛び出した。尻のつけ根からは、丸太のように太く丸い尻尾が生える。背中から尻尾の先端は水色に染まる。
背中からは白鳥のごとく大きな白い羽が生えて、羽毛を辺りに散らす。ライトは服から抜け出て、のそのそ歩き始める。大根のように太く短い脚は歩きづらく、全然前に進まない。
「グギャ!?」
コンビニの自動ドアのガラスには、小学校低学年ぐらいの背丈のドラゴンが映っていた。全身が白く、顔の上部や首回り・両腕・両太もも・背中はサイダーと同じ水色だ。
「ギャギャオン」
口を開閉したり、足を踏みならしたり、色々な動きをしても、ガラスに映るドラゴンは同じ行動を真似る。ライトはチビドラゴンになったことがわかり、頭の中が混乱する。
「ギャオス! ギャオス!」
店内を叫びながら駆け回る。もちろん、解決策など浮かぶはずがない。
「ウェーイ、もっと飲むぞー」
「これ以上飲んだら死にますよ、部長」
タイミング悪く、酔っ払い2人が入店した。丸坊主の部長は千鳥足で、真っ赤なタコ顔になっている。小太りの部下は部長の体を支えている。
「おい、店員いないじゃん」
「何言ってるんですか? あそこにいるじゃ、ありぃ?」
2人の視線がライトドラゴンに釘付けになる。ライトドラゴンは今の姿を見られたショックで、固まってしまう。
「ドラゴン見えるなんて、僕も酔いすぎたかな?」
「本物かどうか、さわってみりゃいい」
部長はドラゴンの体や翼をしきりにさわる。つるぷにの腕やふわふわの羽毛は、現実感が高い。
「おい! これ、モノホンのドラゴンだぞ!」
「ええ凄い。動物園に連れて行きましょうか?」
「バカ! こっそり飼って育てようぜ。世界を支配できる邪竜になるかもしれん」
ライトドラゴンは2人のおもちゃにされまいと、必死に逃げる方法を考えた。飛んで逃げるか。しかし、翼をいくらはばたかせても、体が全く浮かない。火を吐くか。
「ギャオオオオオオン!」
火は出なかったが、店のガラスが壊れるほどの音波攻撃が出来た。2人の男は失神している。今の内にと、ライトドラゴンは店を飛び出した。
人通りの少ない道を歩き、近くの自然公園へ逃げた。
[newpage]
ライトがドラゴンに変身してから1週間が経った。彼が未だに人間に戻れない。ファストフードの残飯で空腹をしのいできたが、闇に隠れて生きるのはもうこりごりだった。
ドラゴンになっても、他の生物と意思疎通が取れない。人間の頃よりもっと惨めだ。ライトドラゴンはのどの渇きを癒すため、噴水の水を飲む。
「グギャア……」
彼が空を見上げると、満月が浮かんでいた。満月の光は、彼の体に新たな力を与えた。
体中の筋肉が脈動し、徐々に大きくなっていく。のっぺりした腹は6つに割れ、胸板は鉄板のように硬く分厚くなる。背丈は人間の大人を遥かに超え、キリンぐらい高くなり、周りの木々より高くなった。
「グオオオオオオオオオ!」
ライトは目を赤く光らせて、天に向かって吠える。人間ではありえないほどの筋肉に包まれたドラゴンと化した彼は、もう何も恐れるものはない。こそこそ隠れず、堂々と仁王立ちしていた。
「オオオ、コレガオレ……!」
噴水の水鏡に、自らの姿を映す。全身が筋肉の塊で、古代ギリシアの彫刻のように無駄のない造形美。彼は乳首を震わせたり、力こぶを作ったりして、自らの筋肉に酔いしれていた。
[newpage]
ほぼ同じ頃、ライトドラゴンに遭遇した会社員2人と、ライトの先輩店員は、自然公園の入り口にいた。先輩店員はドラゴンがライトの居場所を知っていると思い、2人のドラゴン捕獲作戦を手伝っていた。
「どうやら、ここに住んでいるらしい」
部長はハゲ頭と目を光らせて、森を指差す。
「ここ広いですよ。どうやって見つけるんですかぁ?」
「大丈夫。ドラゴンの好きそうな肉の詰め合わせを置いておけば、きっと釣れますよ」
店員は大皿に牛肉と豚肉と鶏肉を盛って、不敵な笑みを浮かべる。平社員は頭をポリポリかいて、その肉の山を見つめる。
「それ少しもらってもいいですか?」
「「ダメに決まってるだろ!」」
「ですよねー」
部長と店員に怒鳴られて、平社員はうなだれる。その時、甲子園球場のサイレン級のけたたましい咆哮が聞こえた。
「グオオオオオオオオオ!」
「なっ、何だ?」
「あっ、あれは!」
森の間からドラゴンの顔が突き出ていた。会社員らが出会った水色のドラゴンに似ている。
「もしかして、あのドラゴンの親ですかね?」
「わからん。とりあえず行こう」
「あっ、待って下さいよぉ」
3人は巨大ドラゴンがいる方へ走っていく。森の木々をかきわけ、ドラゴンのいる噴水へたどり着いた。見つからないよう、藪の中から様子をうかがう。
「フンッ! フンッ!」
ドラゴンはボディビルダーのように、様々な筋肉の部位を強調するポーズを繰り返す。
「何あれ……。ナルシストなのかな?」
「[[rb:武川 > ぶかわ]]、チビドラゴンのこと尋ねてこい」
「えぇ? 嫌ですよ、部長! 俺は子ども出来たばかりで、死にたくないですよ! 部長の方が先行って下さいよ!」
「何だと? 俺は見た目がタコっぽいから、すぐ食われそうで嫌なんだよ!」
「それを言うなら、僕の方がぽっちゃり豚ですよ!」
「2人とも静かにして!」
店員が2人に注意するも、時すでに遅し。巨大ドラゴンはよだれを垂らして、藪の方を観ていた。
「ウマソウナニオイ……」
店員は慌てて肉の詰め合わせを差し出す。
「ど、どうぞ……!」
ドラゴンは全ての肉を口の中に入れ、よく噛んでから飲み込んだ。ドラゴンは満足そうに目を細める。
「あ、あのぉ、小さいドラゴン見かけましたか?」
「ソレオレダ」
「ええ? じゃあ、コンビニで出会った店員が、どこに行ったか知ってますか?」
「オレガライトダ」
「なっ、何だってぇ!?」
衝撃の事実に、先輩店員はまばたきを繰り返すだけだ。会社員らはドラゴンの迫力に押されて、ちぢこまっている。
ライトドラゴンは[[rb:矮小 > わいしょう]]な人間を見て考える。彼らと遊びたいが、今の自分の力ではきっと潰してしまう。同じぐらい強い存在になれば問題ないが。
同族化の方法を思案している内に、ライトドラゴンの股間がうずき出す。股間のスリットから赤い肉棒が飛び出し、キリンの首のように細長く伸びた。亀頭の真下はいくつもの突起がついていて、異形のイチモツだ。筋が脈打ち、いつでも発射しそうだ。
「わわわ! デカチンポだ!」
「部長、逃げましょうよぉ!」
「でも、彼は元人間で――」
ライトドラゴンは股間に力を込めると、滝の勢いで精液が人間達にかかった。ドラゴンの精液は濃厚でねばつき、彼らは身動きが取れない。
「く、臭い。せっかく新調したスーツが……」
「武川君、どこだ? 武川君!?」
「ライト、お前、何でこんなことが?」
精液まみれになった人間達は文句を言っていたが、次第に口数が少なくなっていく。全身が熱くなり、筋肉竜への変化が始まっていた。体がパンパンに膨れて服は裂け、背中から白い翼が生え、しなる巨木のような尻尾が地面に伸びる。
次々とライトと同じような筋骨隆々の巨大ドラゴンが出現した。
「ギャオオオオオオオン!」
部長は人間時と同様に髪はないが、顔の上部・首回り・両腕・両太もも・背中が赤く、それ以外は白いドラゴンだった。
「グオオオオオオオオン!」
平社員の武川の長い金髪はライトドラゴンと同じだが、体色は黒と白の組み合わせだ。人間同様に腹がぽっこり出ている。
「ガオオオオオオオオン!」
先輩店員の長い金髪は人間時と同じくパーマがかかっている。体色は緑と白の組み合わせだ。
「アレ? オレドラゴン?」
「アアア! ドラゴンニナッテルゥー!」
「ライト、ハヤクモドセ!」
ライトドラゴンは3匹の新たな姿を見て、ニヤニヤしている。イチモツの先端を3匹の鼻に順番につけて、こう言った。
「コノスガタ、イイダロウ?」
雄のドラゴンの臭いに酔った3匹の目は、赤く澄んだ瞳が丸く大きくなる。3匹はもう反抗しない。ライトドラゴンの僕として生きていくのだ。
「アタラシイナマエ。オマエ、レドナ」
「ハイ、レドナデス」
元部長のレドナは恭しくおじぎする。
「オマエ、ブラッケン」
「アリガタキナマエ!」
元平社員のブラッケンは腹を叩いて、喜びを表現する。
「オマエ、グリーガ」
「ライトサマ、アリガトウ」
元先輩店員のグリーガはライトの頬にキスをした。ライトは鼻の穴をふくらませて興奮する。
「オマエタチノアジヲシリタイ。オレノヨウニダセルカ?」
ライトが自らの男根を指差すと、3匹はうなずく。彼らが力を込めると、巨大なイチモツが飛び出した。
ペニスの形状は同じだが、色が違う。レドナは黒、ブラッケンは青、グリーガは黄色だ。
「レドナダセ」
レドナの剛直から精液がほとばしる。ライトは顔を精液まみれにしながら味わった。
「スコシニガイ」
次にブラッケンの雄液を味わう。飛ぶ方向が一定で、ライトの顔が汚れることはなかった。
「サワヤカ。ノドゴシイイ」
最後にグリーガの雄液を味わう。彼のジュースは一度に大量に放出され、周りのドラゴンにもかかった。
「ピリピリスル。オモシロイ」
「アノォ、ノミアイシテモイイデスカ?」
レドナが恐る恐る尋ねる。ライトは牙を見せて笑う。
「ユルス」
ドラゴンたちは互いの精液を味わい始める。筋肉ダルマの竜が子どものようにはしゃぎながら雄液を飲みかわす様子は、恐怖を通り越して滑稽に見える。
「ツギ、シリデアジワウ」
相手の尻の穴を舐めてほぐしてから、自慢のビッグマグナムを挿入する。4匹はライト、レドナ、ブラッケン、グリーガの順に、電車のように連結する。
「ダスゾ」
ライトの肉棒がレドナの尻を突けば、レドナ棒がブラッケンの尻を突き、ブラッケン棒がグリーガの尻を突く。互いの筋肉が揺れ、汗と羽毛が飛び散る。相手の乳首をつまんだり、首を噛んだりして、桃色の吐息が漏れる。
ドラゴンの射精時間は長く、夜が明けるまで繰り返し出していた。周囲は花が枯れるほどドラゴンの雄臭さが充満している。
「アレ、アレアレ?」
4匹の体が急に縮んで、筋肉がしなびていく。最終的に小学校低学年ぐらいの背丈になった。
『満月の夜以外はこの姿みたいだな』
『えぇー。これから面白くなるところなのにぃ』
『こんな小っちゃいのじゃ満足できないよ』
4匹のペニスは人の親指大にまで縮んでしまった。これでは相手も自分自身もイカせることが出来ない。
『次の満月まで待ちましょうか』
『ハァー、残念』
4匹のドラゴンは森の中へ入っていく。満月の夜までは、人に見つからないよう、こそこそ生きる暮らしが続くのだ。
『次は電車をケツ穴に入れるのはどう?』
『面白そうだねぇ』
『仲間も増やしましょうよ』
『あー。早く次の満月にならないかな!』
ライトはふと思う。1匹では心細かったが、仲間がいると安心できるし、ヤりたいバリエーションも増える。ヒーローではなくヴィランの姿になったが、これはこれで悪くない。
『腹減ったなぁ。何食べる?』
『ライトよ。俺らのコンビニの残飯あさりに行こう』
『コンビニかぁ。あそこでライト様に出会って良かったなぁ、ブラッケン?』
『はい。もう人に戻るなんて、ありえませんよ!』
4匹ははじまりのコンビニへ駆け出す。まだ筋肉竜化現象は始まったばかりだ。
(終わり)
※『 』のセリフは、人間にはグギャアやアンギャアなどの鳴き声で聞こえます。
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