2匹の人狼のクリスマス

  とあるコンビニエンスストア。

  クリスマス用のリースが飾り付けられ、店内の電灯がさらにその派手さを引き立てていた。

  が、店内は打って変わって静かなものだった。

  「はぁ…」

  予定もなく夜勤に入っていた男子高校生:ハジメは、サンタの帽子と服を着て、コンビニで1人迎えるクリスマスに不満を抱え、悲しそうにため息を吐く。

  「今頃みんなは楽しんでるんだろうなぁ…」

  そうぼやきながら天井を見上げ、自分以外がクリスマスの夜に何をしているのかを想像しながらレジに立つ。

  彼女も無く、そう言った関係にも興味の無いハジメは内心、クリスマスの夜に営みを行うカップルを見下し、けれどもどこか羨ましがるようにつぶやく。

  ピロンピロン

  すると突然、店内に入店音が響く。

  「こんな時間に…カップルかな…いらっしゃ…」

  夜遅くに来るとしたらイチャイチャしたカップルだろうと、この後する行為の準備に来たのだろうとため息を吐きながら出入り口を見る。

  「ゥルルルルルルル…」

  そこには二本足で立つ大きな人狼と化したリンが、頭が天井に付きそうになりながら窮屈そうに立っていた。

  「いっ……ま……」

  ハジメはそんな光景を見て固まってしまう。

  目の前に現れた熊ほどの大きさの肉食獣、そんな獣がこちらを涎と舌を垂らしながら見据えていた。

  そんな光景を前にすれば誰でも今のハジメのように、顔は青ざめ、汗は滝の様に流れ、凍った様に体は硬直してしまうだろう。

  「ゥルルルルルルル……」

  ズシッ…ズシッ…ズシッ……

  獣はゆっくりと足を交互に前に出し、ハジメへと近づいていく。

  「っ……っ……」

  ハジメは涙を溜め、小刻みに震えながら直立の状態でただ獣を見つめる事しかできなかった。

  「フゥゥゥ…‥」

  やがて獣はハジメの目と鼻の先にまで近づいていた。

  獣は頭を少し下げ、歯に挟まったチキンの骨を見せつけながらハジメの前に顔を出す。

  スンスン…スン…

  円を描くようにハジメの顔の周りに鼻先を近づけ、匂いを嗅ぎ始める。

  (く…食われる…!)

  口内の骨を見てしまい己の未来を予感したハジメは強く目を閉じ、死を覚悟する。

  ペロッ

  「っ…?」

  突然ハジメの頬に生暖かい感触が伝わる。

  恐る恐る目を開けると、視界は真っ赤になっていた。

  ハジメの顔全体をリンが舐めており、頬に伝わったのは彼女の舌だった。

  リンは愛おしそうにハジメの顔を舐めまわし、2、3往復ほど舐めていた。

  「あ…あ〜……きゅう…」

  ドテッ

  舌で舐められ、いよいよ美味しくいただかれると感じたハジメは、とうとう気を失い倒れてしまう。

  「ゥルル…?」

  リンは本能に従っただけで、自分が何をしたのか理解できておらず、頭の上にハテナを浮かべながら倒れたハジメを見つめる。

  ガタッ

  しばらく見つめてから動かないことを確認すると、リンはレジカウンターに乗り、ハジメの側に寄る。

  「ガアァァアア…」

  リンは倒れたハジメに向かって大きく口を開く。

  [newpage]

  ピチャ…ペチョ……

  「ん…ん〜?」

  気を失ったハジメの頭の中に水音が響き渡る。

  その音で目を覚まし、ハジメは真っ暗な天井と面を向かう。

  「あれ…俺って…確かバイト中に……」

  いつの間にか倒れていた事と、見慣れない天井に違和感を覚えるハジメ。

  ピチャ…

  「いっ…?!」

  ハジメは水音と共に脳に走る電流のような衝撃に思わず声が漏れる。

  「え…?」

  その感触が伝わる下半身を顔を上げて見る。

  ペロッピチャッペチョッ

  見ると獣のリンがハジメの陰茎を舐め回していた。

  「なっ…?!ちょ…え?!」

  ハジメは驚き体を起こす。

  よく見ると先ほどまで着ていたバイト着もサンタの服も無く、丸裸になっていた。

  また、辺りを見回すと先ほどまでいたコンビニではなく、薄暗い6畳の一室のようだった。

  リンは倒れたハジメの襟を咥え、記憶に残っていた自分の棲家に持って帰って来たのだった。

  それはコンビニがあまりにも眩しく、落ち着かなかったためである。

  ピチャッ…

  何故落ち着かないのかというと……

  「ルアァァ……」

  グプッ…

  「はっ…?!」

  性の営み、即ち交尾をするためである。

  彼女が空腹に続いて求めていたものは、独りの寂しさを和らげる温かさであり、子孫繁栄という生存本能を持つ獣にとっては欠かせない性欲を満たす事であった。

  まずその準備として、リンは伸びた口を使ってハジメの陰茎を口いっぱいに咥える。

  「ちょ…な…なに…して…あっ!」

  グプッジュプッジュルルルルッ

  「ンンッ…ルァウ…ンブッ…♡」

  リンは咥えながら何度もマズルを上下に動かし、下品な音を立てながら陰茎を扱く。

  長い舌を絡めることでより滑らかになり、それが陰茎にさらなる刺激を与えていた。

  「だ…ダメだっ…て…えっ…!」

  ハジメはその刺激に翻弄され、着々と睾丸には精液が生成されていた。

  このまま刺激が続くと射精してしまうと感じ、それを恐れたハジメは獣に訴えかけるが、陰茎に走る快感で体が硬直してしまい、それ以上は何もできなかった。

  またその訴えも何とか絞り出せた程度の声であり、陰茎を咥えるリンの尖った耳にはまるで届かず、届いたとしても彼女には理解はできなかっただろう。

  「ンッ…♡ンブッ…♡アブッ…♡」

  ジュプッジュルルルルッジュゾゾッブジュルルル

  一刻も早く射精して欲しいと本能的に願い、さらに口を動かす速度を上げる。

  舌を絡ませ、その上で伸びた口で掃除機のように吸い上げる。

  グチュグチュグチュグチュグチュッグプッグプッ♡

  また興奮が高まってきたのか、リンも自分の膣に何度も何度も指を出し入れし、刺激を与えていた。

  欲しがるように膣は指を締め付け、空気を漏らしながらぐちゅぐちゅと水を鳴らす。

  「うぅ…それやば…!」

  リンの口内ではすでにハジメのカウパーが溢れ、すでに射精寸前であった。

  そして…

  「も…でっ…!」

  ビュルルルルルルルッ

  彼の我慢も虚しく獣の口の中で溜めていた精液が漏れ出す。

  「ンンゥ…ンブッ…ウゥン♡」

  温かく濃厚な液体が口内に溜まり、獣は満足そうに鳴き声を上げる。

  ビュー…ビュルル…

  「うっ…うぅ…っはぁ…はぁ……」

  射精が落ち着き、ハジメは反動で強い疲労感に襲われる。

  冷え切った部屋にも関わらず、ハジメの全身は汗で濡れ、湯気も出ていた。

  ジュルッ…チュパッ…

  「ンルアァァ……♡」

  対して獣は口内に吐き出された精液をハジメに見せつける様に口を大きく開く。

  スライムの様に上顎と下顎にひっついた精液からもまた湯気が立っており、獣が息を吐くたびにその湯気が漏れ出る。

  「アァン…ングッ…ンンッ…ゴクッ…」

  見せた後は長い口を閉じ、ひっついた精液を喉に押し流し、強く喉を鳴らしながら飲み込む。

  「ゲエッ……♡」

  そして満足そうにゲップを吐く。

  本来のリンならそんなことはしないが、獣である今の彼女にはそれを止める羞恥心も理性もない。

  「ウゥン…♡」

  そんなブレーキを失った彼女は、いよいよ本番に移ろうとしていた。

  体を起こし、大きく足を開いてハジメの上にまたがる。

  彼女の膣はひくひくと動き、涎の様に粘着性のある液体を垂らしながら疼いていた。

  「え…ま…待って……」

  ハジメは疲労で頭がうまく働いていないが、彼女が何をしようとしているかは理解できていた。経験自体した事はないが、保健の授業や彼女持ちの友人から嫌というほど聞かされ、知りたくもない知識がここで発揮されるとは彼自身も思っていなかった。

  そんな彼女を止めようとするも、反して彼の陰茎は未だに勃起をしたままだった。

  「ゥルルルルルルル…♡」

  グチュッ

  そんな彼の言葉など聞く耳も持たず、リンは腰を下ろして膣口にハジメの陰茎を当てる。

  「んっ…!」

  射精後で敏感になった亀頭に滑りのついた膣が当たり、反射的に声が漏れてしまう。

  ジュプププッ

  「おっ…?!」

  「ンオッ♡」

  そのまま液体によって滑り込ませながら、陰茎はスムーズに彼女の中に飲み込まれていった。

  「オッ♡オゥッ♡ウゥン♡ハウゥン♡」

  ビクッビクッビクッ

  待ちに待った感触と温度が彼女の膣内を満たし、獣は舌を垂らしながら嬉しそうに声を漏らす。体も跳ねるように小刻みに震わせ、膣内から伝わる快感を全身で堪能していた。

  「おっ…おぉ…?」

  ハジメも丸呑みにされた陰茎から伝わるうねうねとした感触ととろけてしまいそうな温度により、頭が正常に動かなくなってしまいおおよそ人が普段出さないような声を出す。

  「ウゥ…♡ゥン…♡ルァウゥン…♡」

  バチュッ♡バチュッ♡バチュッ♡バチュッ♡

  リンは夢中になりながら腰を上下に振り始める。

  その度に陰茎に付いた精液や涎、また膣内から溢れる愛液が混ざり合い、いやらしく水音と吸い込むような音を奏でる。

  「んあっ…♡あっ…♡あっ…♡あっ♡」

  ハジメは瞳を小さくし、何度も何度も擦られる陰茎の刺激で声にならない声を漏らす。

  毛でフサフサした表面とは裏腹に、リンの膣内は愛液でぬるぬるになっている上に波状に唸ったひだによって陰茎が扱かれ、特にカリが連続でひだに引っかかる度に電流のような刺激が小刻みに何度も脳に響く。

  「んおおおっ♡やっ…やっば…♡」

  バチュッ♡バチュッ♡バチュッ♡バチュッ♡

  そんな快感が一定のリズムで延々とやってくる。

  おまけにリンの膣は離さないと言わんばかりにきつく締め付け、その分さらにひだの絡みも固くなり、ハジメはあまりの気持ちよさに獣のような声を上げ始める。

  「ンオッ♡オゥン…♡」

  そんなハジメを見下ろし、ひたすら腰を動かすリン。

  彼女も中でひだが引っかかる度に快感が走り、舌を垂らしてしまうほどに気持ちよくなっていた。

  「ウゥ…ウゥン…ンンッ♡」

  チュッ

  「んんっ?!」

  昂った興奮を抑えきれず、リンは開いたらハジメの口を自分のマズルで塞ぐ。

  ハジメの口の中に自分の長い舌を押し込み、ハジメのぷるぷるな舌に絡ませる。

  「ンンッ…ンチュッ…レロォ…♡」

  一度口から離し、よだれを糸のように引きながら再び口を合わせ、それを何度も繰り返す。

  「んんっ…んんんんっちゅ…んれぁ…」

  ハジメは一方的なキスに驚き自ら離れようとするも、自分より一回りもある毛で覆われたリンの体と大きな手によって体と頭を抑えられ、何度も唇にマズルの先を当てられる。

  バチュッバチュッバチュッバチュッバチュッ♡

  その間もリンの腰は止まることなくハジメの下半身の上で跳ね、フサフサな尻を何度も叩きつける。

  (な…なにこれ…あつい……あたま…とけそう……)

  ドクン

  リンに抑えつけられて硬直した体から心臓が大きく高鳴る。

  ビキビキビキビキビキキ

  その鼓動を合図に、ハジメの体に血管が浮き出るほどの力が入り始める。

  口からリンの唾液を流し込まれたハジメの体は突然変異を起こし、心臓が血液の循環を促進させ、彼の体を作り変えようとしていた。

  ビキッグキグキッ

  「んろぉ…おっ…おおお…♡」

  最初の変化は手からだった。

  あっという間に爪は黒く鋭いものに生え変わり、手の形はリンと同じくクリームパンのようにぱんぱんに膨れ、人狼のものへと変わっていく。

  その変化すら快感になっているのか、ハジメはリンに舌を舐め回されながら気持ちよさそうに吠える。

  ベキベキベキッ

  足も軋むような音を立てながら伸びていき、苦しむように足をバタバタと暴れさせながら同じく狼の後ろ足のような形へと変化していく。

  グググググッギチチチチッ

  弱々しそうだった胴体は見る影もない程に筋肉が膨張し、今上に乗っている自身よりも大きなリンを持ち上げながら体が大きくなっていく。

  胸筋はパンパンに張り、腹筋も6つに割れていく。

  ニョキッジュニュニュニュニュニュ

  床と臀部の間からは尻尾が伸び始めており、無理矢理押し除けながら顔を出していた。

  ファサファサファサファサッ

  次第に人の肌を隠すように黒い毛が彼を覆い始める。

  ミチッミチミチミチミチッ

  「ンルアッ?!」

  体の膨張に伴い陰茎もさらに膨らんでいき、咥えていたリンの膣からは不穏な音が聞こえ始める。

  やがて膣は膨れ上がる陰茎を自然と押し出し始め、すべて包まれていた陰茎が半分ほど顔を見せ始める。

  「アッ…アッアッ…アア……」

  余裕そうに腰を振っていたリンは膣内を埋め尽くす圧迫感に苦しみ出し、振っていた腰を止めて状態を仰け反って固まってしまう。

  瞳孔が縮んだ瞳と、緩んだ口から垂れる涎が彼女の現状を物語っていた。

  「はっ…はっ…はっ…はあっ…!」

  ガシッ

  「アゥ?!」

  そんな彼女に休む暇を与えないように、狂気に満ちた瞳をしたハジメは彼女の腰を大きな両手で掴んだ。

  ブヂュン

  「オゥ…!?♡」

  そのまま目一杯力を入れ、半分ほどはみ出ていた陰茎を無理矢理リンの膣内に再び押し込んだ。

  されるがままだったハジメの姿は消え、今リンが跨っているのは理性が蒸発し、目の前で涎を垂らすだらしない雌を喰らうことだけを考える雄だった。

  バチュッバチュッバチュッバチュッバチュッバチュッ

  「へっ…へっ…へっ…へっ……♡」

  「オッ…♡オ"ッ♡オゥン♡ンオッオ"ッ♡」

  雄は下から雌の膣目掛けて腰を目一杯突き上げ、それを引いてはまた尻の弾力を用いて突き上げ、引いては突き上げを繰り返し、雌への反撃を行う。

  雌も先ほどとは違って余裕をなくし、雄の顔を掴んでいた手は空気を掴んだまま動かなくなり、電気の消えた天井を意味もなく見上げながらひたすら汚い声を漏らす。

  「うぅ…うぅぅぅううっ♡」

  ヂュパンッパンッパンッパンッパンッパンッ♡

  やがて雄は雌の腰を掴んだまま上体を起こし、そのまま雌を倒してマウントを取る。

  先ほどの雌と立場を逆転させ、今度は足腰を巧みに使って上からプレスするように腰を雌に叩きつける。

  「ア"ア"ア"ア"ア"ア"♡♡♡」

  雌はなす術もなくされるがままに押し倒され、抵抗の意思がないことを示すように両手を上に放り投げ、無防備に腋を見せつけながら甲高い鳴き声で吠える。

  ジュプッジュプッジュプッジュプッジュプッ♡♡♡♡♡

  次第に腰の動きが速くなり、雄の睾丸も縮み始める。

  いよいよ射精が近づき、早く出したいと急かすように雄は何度も何度も膣に陰茎を押し込む。

  「んぐっ…んごっ…るアォ…ア"ア"ア"ア"ア"…♡」

  グキッゴキッグククッガコッグググググッ

  絶頂が近づくのと同時にハジメの顔は音を立てながら歪んでいき、鼻や口が前に伸びていき、耳も頭上に登っていきながら、ハジメは完全な人狼へと姿を変え終わる。

  「ルアァァ♡イ"ウ"♡イ"ウ"♡イ"ウ"ウ"ウ"ッ♡」

  リンは舌を放り出しながら、何度も膣から伝わる圧迫感から来る快感にも、襲ったはずだった雄にも負け、敗者として種を吐き出される事を快感と共に待っていた。

  本能の中に少しだけ残った記憶から引っ張り出された言葉という表現が漏れ、人の言葉のような喘ぎ声を上げながら自身も絶頂しようとしていた。

  ボビュルッ

  「アゥ♡」

  すると、膣内に熱い液体が流れ込んでくるのを感じた。

  ブビュルルルッボビュルルルルルルルルッ♡♡♡♡♡

  「オッオゥン♡ンゴォ♡ォン♡オ"ッオ"オ"オ"オ"オ"ッ♡♡♡」

  ブシャアアアァァァァァァ…♡♡♡♡♡♡

  そのままリンの膣内には大量の精液が押し流されていく。

  ハジメは一滴でも多く流し込もうと腰を力一杯押し付け、睾丸に溜まった精液を一刻も早く吐き出そうと力を入れて小刻みに震える。

  リンは足を空中に放り投げ、伸ばしながら股を開き、雄の種付けを受け入れながらその種子を受け止める。獣という比喩すらおこがましく感じるほどの下品な喘ぎ声を上げ、リンは流れ込んでくる快感と、もう一つの願いを満たしたことを喜んだ。その喜びを体現するように派手に潮を吹き、肛門もキュッと力を入れて閉めていた。

  「オッ…♡オゥ♡ウッ…ンムッ?!」

  涙や鼻水、涎を流しながら虚を向いていたリンのマズルを、もう一つのマズルが重ねてきた。

  ハジメは1匹の雄として雌との交尾を行っていた。

  だがその中でいつしか、人としての愛情も抱えるようになり、リンを番いとしてだけでなく、パートナーとして意識し始めていた。

  「ンッ…ンムッ♡」

  リンも理性を失いながらもその愛を、意味はわからずとも受け止め、嬉しそうにハジメに背中に手と足を回しながら抱きしめる。

  ビュルルルルルッ…ゴプッ

  その間もまだ射精は続き、やがて膣と陰茎の隙間からは吐き出した精液が漏れ始めていた。

  孤独な人狼のクリスマスは、もう1匹の雄の体温に包まれ、暖かく迎える事となった。

  [newpage]

  「・・・」

  12月25日

  世間がクリスマスという年に一度のイベントを楽しむ中、リンは上体を起こし、ジト目になりながら空気を見つめていた。

  乱れた髪、裸の体、それにまとわりつくベタベタした感触と灰色と黒い毛、パンパンに膨れたお腹と股から漏れ出す液体、そして隣で寝息を立てる全裸の見知らぬ男。

  「・・・はああぁぁぁぁ………」

  リンは二日酔いのように重くなった頭を抱え、大きなため息をはく。

  「やっ……ちゃったぁぁぁ……」

  後悔の念を吐きながら俯き、乱れた髪をわしゃわしゃとさらに掻き乱す。

  それからしばらくしてハジメも起き、自然と2人は服を着ないまま正座をして向かい合ったまま黙り込む。

  「・・・」

  「・・・」

  「えーと…お姉さんが…昨日の…?」

  先に口を開いたのはハジメだった。

  朧げな記憶を少しずつ繋げていき、いま目の前に座る彼女が昨晩自分を襲った人狼か尋ねる。

  「・・・はい」

  リンは顔を見ないように俯いたまま小さく答える。

  「・・・お姉さん、狼人間なの?」

  「・・・はい…」

  「昨日のことは」

  「・・・うっすら覚えてる程度で」

  「・・・酔っ払った勢いじゃないんだからさ…」

  「面目ないぃ……」

  そんな問答が進み、ハジメはリンが人狼である事と、昨日の一夜を通して自身も人狼にさせられてしまった事、その流れで恐らく交尾にまで至った事を理解しながらも受け入れ難そうだった。

  「そっかぁ…まさか初めてがなぁ…」

  「うぅ…ごめんなさいぃ…どうか…どうか…」

  ハジメは自分には縁の無い話だと思っていた初めての性行為が人狼相手で、自身も人狼になって行った事を頭をかきながら再認識する。

  リンは泣きながら両手を合わせ、ハジメに許しを乞いながら今回のことを内密にしてほしいと懇願する。人狼の中でも一般人を巻き込んでしてしまうことはちらほらあるが、高校生相手に交尾を行い、しかも一般人を人狼にしてしまった事が世間にバレると隠れて暮らす彼女らにとっては生活どころか一族の存亡すら危ぶまれる。

  プルルルルルルル

  「うおっ?!」

  そんな中ピリピリした空気が流れる中、携帯の着信音が鳴る。

  「あ、俺の携帯!」

  鳴っていたのはハジメの携帯で、相手は彼の母親だった。

  彼は急いで立ち上がり、正座するリンを背にして電話に出る。

  「も、もしもし、母さ…」

  「あんたどこで何してたの!!!!!」

  「うっ……」

  側から見ていたリンですら耳を塞ぐ程の怒号が部屋に響く。

  電話の内容はバイトしていたはずの息子がいないとコンビニの店長から連絡があり、それを問いただすものだった。

  「ご…ごめんって…実は……」

  と、事の顛末を話そうとした瞬間にハジメは何かに気づき、口を止める。

  そして振り返り、変わらず裸で正座するリンを見つめる。

  「…?」

  リンは母親に事実を告げられる事に怯え、ビクビクとハジメを見つめながら、こちらを見るハジメにどう反応したらいいか迷う。

  「・・・」

  ハジメは自身が被害者とは言え、ここで事実を言ったら彼女らはどうなってしまうのかという考えが頭によぎる。

  昨晩の自分を思い出し、人狼化する事で理性が効かなくなり本能の向くままに体が動いてしまう事実を経験した事を振り返る。

  (彼女だって…こんな事、望んでたのかな…)

  そんな考えが導き出された彼の口から出た言葉は、意外なものだった。

  「彼女が来ちゃって、サボっちゃった、ははは!」

  「え…?」

  人狼に連れて行かれたという事実を告げず、彼女の頼みで黙って帰ったと嘘を告げた。

  「だってクリスマスじゃん…彼女もうるさくてさ……そんなの店を高校生1人に任せるコンビニも……はい…調子乗りましたすみません……」

  強気になったかと思えば弱気に謝ったり、けれども昨夜起きた事実を語る事は遂になかった。

  「・・・うん、この後ちゃんと謝りに行くから…うん…今度連れていくから…はーい」

  ピッ

  うまく切り抜け、通話を切って耳に当てたスマホを下ろす。

  「えーと……」

  振り返って再び正座し、頭をかきながら彼女に話し始める。

  「昨日って…危険日?」

  「はぇ…?」

  唐突な質問に怯えていたリンは力が抜けた返事を返してしまう。

  「いや、だってほら…そのお腹だと絶対妊娠しちゃうでしょ……」

  わたわたと慌てながら訳を話すハジメ。

  「あ、え、えーと…確か大丈夫だったと思う……」

  「……はあぁぁぁ…」

  答えを聞いたハジメは崩れ落ちるように上体を前に倒す。

  「え…なに、その反応…」

  「だって俺、高校生ですし…もしこれで子供できちゃったら…まだ責任取れないですから…」

  「…ん?まだ…?」

  ハジメの言葉に少し疑問を持つリン。

  「まだ」という一言によって、彼の言う責任の意味が大きく変わる。それが気になり再び聞き返す。

  「…成り行きとはいえ、俺も男です…あなたの事がほっとけないというか…その…嫌に思えないというか…」

  混濁する記憶と胸を掻きむしるようなもどかしさでうまく表現が出来ないハジメを、リンは黙って見つめていた。

  「それって…その……」

  「…はい…お付き合い…しませんか…?」

  「…へ?」

  リンは初めてハジメと面を向き合い、その言葉を受け止めた。

  記憶がないとは言え自分は襲った側なのに、無理矢理犯した上に人狼に変えてしまった張本人なのに、何故そんな言葉を言ってもらえたのかが謎だった。

  「…な、なんで…私、覚えてないのに…あなたにした酷い事、全然覚えてない無責任な畜生なのに…」

  「畜生は言い過ぎでしょ…」

  リンは足を畳んだまま体を前に出し、手で支えながら前に移動し、ハジメに近寄って疑問を投げかける。

  「なんでそこまで…してくれるの…?」

  「……」

  返す言葉を慎重に選びながら、ハジメは口を動かす。

  「なんか…好きになっちゃった…のかな……」

  「……」

  「何でかわかんないけど…お姉さんの顔と、その…匂いってあー!違う違う!そう言う意味じゃないんだけど、なんか…安心するんだよ…何故かわかんないけど…」

  ハジメは、彼女の体を重ねる中でいつの間にか芽吹いた愛を表現しきれず、歯切れの悪い言い方でどうにか伝えようと努力する。

  「………」

  リンはそんなハジメを見ながら静かに涙を流す。

  今まで人狼だと恐れられ、避けられ、クリスマスのような特別な日の夜も1人で過ごしてきた彼女にとって、「安心する」と言う一言が心を打った。

  それが正しい表現でないとしても、その言葉に込められたハジメの思いは紛れもなく真実であると、彼女の心は受け止めた。

  「……うっ…うぅ…ひぐっ」

  「え…うわわわわちょちょちょちょ……」

  リンは思わず声を出しながら泣き始めてしまう。

  それを見てハジメは慌てながら何とかしようとするが、何も思い浮かばずただあたふたするしか出来なかった。

  「ごめんなさい…ごめんなさい……」

  「だ、大丈夫ですって…というかこっちも…その…色々ごめんなさい…覚えてないけど……」

  「絶対責任取りますから…!このお腹の子供、絶対産みますから!」

  「いやだから俺まだ高校生!てか、今日大丈夫って言ってましたよね?!」

  「うぅ…なんか不安になってきちゃった…」

  「やめてくださいよ!?情緒で妊娠のするしない決めるの?!」

  こうしてリンのクリスマスは例年よりも涙で濡れたが、少なくとも寒さは感じないクリスマスとなった。

  「「へっくち!!」」

  多分。