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[chapter:サンプル]
あたしの名前は江夏一葉(えなつ かずは)。特に特徴のない普通の高校二年生だ。私の趣味は、占い……というよりも、名前やちょっとした情報を入力すると診断をしてくれるやつが好きなのだ。あなたの前世は◯◯です、あなたは◯◯の才能があります……みたいな、そんな感じの。
勿論真に受けてはいないし、単なるジョークだとは思っているけれど、やっぱりこういうのは面白いし好きだ。
「うーん……この診断も飽きたなー。なんか他のないかな?」
そう呟きながらあたしはスマホをスワイプして他の占いサイトを探す。でもいくら探しても似たり寄ったり、どこかで見たようなサイトばかり。そんなこんなでよく見るアニメの公式診断とかそんなサイトばかりになってる。
それでも私はいいんだけど、やっぱりちょっと一味違うのがやってみたいかなーってあたしは思うわけ。
草の根をかき分けるかのようにボーっとスマホの画面を見つめていると、ふとスマホにはある画面が映った。
「人生改竄アプリ……何これ?」
あたしはちょっと気になってリンクをタップする。そこには『これは人生を改竄するアプリです』。とそう書いてあった。「ぷっ」私はつい吹き出す。
人生改竄って……そんなSFじみたことできるわけないじゃん。あたしは笑いながらスマホの画面を下にスワイプしていく。
『あなたの名前、年齢、性別などの情報を入力すると、ランダムで違う世界、種族、生活の人間へと改竄することができます。
注意・一度改竄を行うと二度とその人生には戻せません。改竄した人生がどんなものであっても私達は一切の責任を追いません。
それらを留意した上で利用規約に同意しサポートを開始してください』
説明にはこう書いてあった。やけに重大に書くものだからさらに笑ってしまう。でも面白そう。あたしはそう思った。思えばあの時ちゃんと考えていれば良かったのかもしれない。そしたらきっと後悔することもなかったんだろう。
「えーっと、利用規約……はパスして、同意にチェック、『入力開始』……と」
あたしはアプリを入れてボタンを押す。すると入力画面に移動した。『あなたの名前を入力してください』と出ている。あたしは少し考えて、本名の『江夏一葉』と入力した。
次に、年齢。これに『17』と答え、性別は当然『女性』にチェックをした。他にも身長や体重、趣味など細かく指定されていて、そこであたしははじめて不審に思った。
「これ本当に大丈夫なやつ? だって……もし個人情報を集めてるやつだったりしたら……」
……やめとこう。あたしは怖くなりアプリを閉じた……はずだった。
「あれ……なんで!? なんで閉じないの!」
ボタンを押してもアプリが閉じられない。それどころか『入力するまで終了できません』の文字が。あたしは怖くなりスマホを放り投げた。やばい! これ絶対やばいやつだよ!
あたしはスマホに詳しいお父さんに相談しようと、仕事から帰ってくるまでの間しばらく待つ事にした。
「どうしよう……もし変なサイトだったら怒られちゃうかも……」
そんな嫌な想像が頭の中をぐるぐると回る。そしてあたしはスマホに手を取り、アプリの入力を続けた。身長、体重、趣味、特技……あたしの情報を余す事なく嘘偽りなく入れていく。入れて……!?
「え! 嘘! なんであたし、こんな事やってんの!」
そこであたしは狼狽した。あたしは無意識にアプリの入力を続けていたからだ。絶対やばいやつだって分かってるからもうやめようと思ったのに……どうして!?
スマホの画面から、目が離せない! 指が勝手に動いてあたしの情報を入力していく! やめたいのに止まらない!
「なんで、止まって! こんなのおかしいって!」
それでも入力はあたしの手でひとりでに続いていく。そして最後の入力が始まった。
『あなたの種族を入力してください』。
そんなの……決まってるじゃん。
あたしは『人間』と入力した。
そして、『改竄スタート』のボタンを押す。押したくないのに、押してしまう。押してしまった。
「なんで、どうして……」
スマホの画面には『改竄先を出力しています……』の文字が。これからどうなるの? もしこれが本当なら……? 考えたくなかった。
程なくしてあたしの運命が決まる文字列が出力された。と、その時、あたしの周りの空間がぐにゃりと歪むのを肌で感じていた。
「な、何!? いやっ!」
空間の歪みとともにあたしの身体も変わっていく。まず全身がくすぐったいような、ヘンな感覚に見舞われる。するとバリ。ボキ。と嫌な音がしてあたしの目線が上がっていく。もしかして、骨格が変わって、身長が伸びてる?
「そんな……! いやよ! ……!?」
あたしの口から出た声は、聞きなれたあたしの高い声じゃなくややハスキーな声。声も変わってる? と、思った矢先におっぱいがむず痒くてつい掻きむしりたくなってくる。全身にぶわっと嫌な汗をかいて腋やおっぱいの谷間に汗が溜まってく。つい気になってしまいおっぱいを揉むあたし。これじゃあなんかヘンタイのよう……
「あっ、やんっ……ふあっ」
低くなった声で喘ぐとまるで変態男のようだ。それに、なんか揉んでるおっぱいがしぼんでってる気がする……縮んで、小さくなって、固くなりはじめてる?
「やだ、止まって、あたしのおっぱい……」
これは、胸筋? お父さんやクラスの男子のような男の胸になってってる? 腹をまさぐるとしなやかな凹凸が指から感じられる。これって、腹筋だよね? なんであたしがこんなに筋肉ついてるの? あたしは女の子……のはずなのに。
「な、なんか、毛まで生えてきてるし……」
胸や腋に黒寄りの灰色の毛が生えてきてる。触るとフサフサしてて引っ張ると痛い。これ、人の毛ってより、動物っぽいような……
「耳が、あたしの耳、がっ……ぐがっ、があっ……!」
耳は横から頭頂部に移動していき形も変わっていくのがわかる。その感覚に悶えていると次は口に異変が起きる。骨がゴリゴリと組み変わる嫌な感覚とともに前に突き出している。それと連動するようにあたしの毎日歯磨きして真っ白だった歯が抜け落ちていく。
あたしの小さかった鼻が濡れた黒い鼻になった頃には、あたしの綺麗な歯は歯垢で黄ばんだいびつな牙になっていた。しかもなんかここからでもわかるくらいに口が臭い……
「あたし、どうなっちゃうの」
ぽつりと口から漏れ出た声はさらに低くなっていて、もうあたしが普通の女子高校生だったとは自分でも思えないほどだ。
脚の関節が変わって踵が地につけられない爪先立ちの状態になり足先からは黒い爪が生える。
手入れしていた長い髪もバサバサと抜け落ちて、短くなった髪がひとりでに逆立つと色も黒から銀色になった。
「んっ、ぐっ、やあっ!」
お股の間がボコリ! と勢い良く膨らむ感覚がしてあたしはその瞬間お漏らしをしていた。穿き替えたばかりのショーツがあっという間に濡れそぼっていく。
あたしの全身がチクチク痛み出すと、色んな箇所に“なにか”を着けている感覚がして、あたしはまたショーツをベトベトした液体で汚した。
あたしの意識は暗転し、それがあたしの部屋での最後の時だった。
◆
「んん……」
あたしは気だるさを感じながら体を起こす。どうやら気絶してしまっていたらしい。頭がクラクラして全身がフワフワした感覚に襲われる。
「あたし、どうなって……」
辺りを見渡すとそこはいつも知るあたしの部屋ではなかった。壁には何かのポスターが乱雑に張ってあり、床には雑誌や漫画、丸められたティッシュが転がっている。明らかに他人の部屋だ。しかもどう見ても男の人の。
「ここ、どこ……? なんでこんなところに……?」
あたしは何か手がかりがあるんじゃないかと色々部屋のものを手に取ってみる。雑誌は過激な内容が書かれた明らかに大人向けのやつ。しかもグラビアまで。そしてそれは何故か女性のものではなく男性のもので、この世界でのあたしは男なのか女なのかますます分からなくなった。
そしてそこに載っている『人間』の写真は明らかにあたしの知る『人間』ではなかった。
動物が人間のように立って動いているそんな写真ばかりなのだ。まるで映画の中のCGさながらのその動物人間達は本物の生き物かのように生き生きと映っている。
「まさか」
ふとあたしの手に目をやる。そこには動物の手が映っていた。あたしも……その雑誌の彼らのように、動物人間になって、いる。
「そんな……嘘だよね!」
急いで部屋を出て、家の中のお風呂を探す。そこにならきっと鏡があるはずだから。部屋を出ると狭いダイニング、その奥にお風呂があった。
恐る恐る鏡を覗いたあたしは絶望した。あたしは、もう前までのあたしではなかった。まったく別の生き物になっていたからだ。
「いやあああああああああ!」
あたしはその時はじめて大きな声で叫んでいた。しかしその声は低く、大の男が情けなく叫んでいるようにしか見えなかった。
全身黒い毛だらけで目は黄色く濁っていて、口からは黄ばんだ牙がちらりと見えている。身長は高く筋肉質で、頭は銀色のモヒカンヘアになっている。しかもその姿は人間ですらなく女ですらなかった。あたしはこの動物を知っている。
「なんで、ハイエナなの……しかも、これ、男になってるよね……?」
あたしは力なくへたり込む。服だけはさっきまで着ていた女物の服なのが却ってあたしをおかしな見た目にさせている。その服も体の変化でボロボロになっていて、しかもスカートがはだけてショーツが見えてしまっている。
「どうしてこうなったの! あたしはただアプリを起動しただけなのに!」
あたしはひどく後悔した。軽い気持ちでこんなアプリを使うんじゃなかったと。でももう遅い。説明に書いてあっだことが本当なら、あたしはもう元には戻れない。その事実からあたしは泣きじゃくった。いかつい見た目に反して内股で嗚咽する姿はあたし本人から見ても滑稽だった。
そんなあたしに追い打ちをかけるかのような出来事が起きる。全身を駆け巡る熱い感覚とともにあたしのショーツが持ち上がった。
「んっ……なにコレ……ヘンな感じ……」
あたしの股のトコロから、ビンとナニかがたつ感覚。それは当然ながら知っていたが、受け入れたくはなかった。長くて、太くて、先端からダラリと汁を垂れ流しているソレを、あたしのものだとは信じたくなかったのだ。でも――
「もう……もうガマンできない!」
あたしは勢いよくショーツをずり下げる。そこには真っ赤なおちんちんが、血管を張り巡らせてびん、とそそり立っていた。早く出したいと汁を流している。
あたしはそれを一心不乱に扱き出した。女としてははじめての感覚だったけど、こんなこと絶対イヤだったけど、もうどうでもイイ。アタシの本能が早く出したいって言ってる。出さなキャっテ、言っテル。でっ、出る、イク!
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