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クロスと森の悪魔〜モンスターを憎む冒険者が淫乱なモンスターに変わるまで〜【FANBOX試し読み】

  [chapter:サンプル]

  ここはモンスターと呼ばれる異形の生物が跋扈する世界。この世界の人間は、日常を脅かすモンスター達と戦う日々を強いられている。

  しかし人間の中には、モンスターに逃げてばかりではならないと己の武力を行使し対抗する者もいた。

  モンスターが蔓延る森で、危険を顧みずに木々の間を走り抜けるこの人間もその一人だった。

  「依頼によれば、ここに高位の“モンスター”が潜んでいるはずなのだが……」

  彼の名前はクロス。彼は辺境の村で生まれた青年で、幼少の頃は何不自由ない健全な人生を送ってきた。

  転機は彼が十三の歳になった日の夜。

  「ちくしょう! 父さんと母さんを返せっ!」

  「クロス! 危険だ!」

  村を襲撃してきたモンスターにより村は壊滅、彼の両親は行方知らずとなった(きっと、既にこの世にいないというのがクロスの考えだ)。その時、村の青年が助けてくれた事で彼は無事で済んだものの、彼の心に残った傷は大きいものだった。

  ただ、この世界においてモンスターによって天涯孤独となった子供は無数に存在する。クロスもその中の一人でしかなかった。

  しかしクロスは、ただ泣き寝入りをするでもなく、モンスターに脅かされる人間達をどうにかしたいと考えるようになる。自分のような子供を増やしたくない、そのために強くならなければならない。

  彼はその時小さいながらもそんな志を持つに至った。あの時に助けてもらった青年に師事し、武道や剣術などの戦闘に関する知識を目一杯に頭に入れた。人を助けられるように様々な知識も蓄えた。

  こうして、彼はモンスターと戦う冒険者としての人生を歩み始めた。初めは苦難もあったものの、今や広く知れ渡る冒険者として名を馳せるのだった。

  (悪魔族は狡猾な奴が多いからな……いつ襲撃してくるか……)

  そんな事を考えながらクロスは獣の気配すら感じない“死の森”の土をゆっくりと踏み締め歩を進める。

  今回、クロスはこの森の近くにある村の人間達から依頼を受けていた。

  森に棲む悪魔とその手下が村人を次々と連れ去っている、そして連れ去られた人間達は戻ってこない――と。

  だからその元凶である悪魔を倒して欲しいと。

  クロスも同じ経験がある以上、悲しむ村人を放っておけなかった。何より、人々を脅かすモンスターの存在を許せなかった。

  自らがモンスターの毒牙にかかる恐怖を抑え込みつつ、クロスは視界の先の闇を凝視する。

  きっと――どこかに――いる。

  奴らは、常に目を光らせ、好機を窺っている。

  隙を見せてはならない、作ってはならない。

  身体中の全ての神経を集中させ、植物や風以外の気配を探ろうとする。

  彼の周りに刹那の静寂が訪れた。

  その空間には、誰もいない。何もない。そんな錯覚に見舞われる。

  「っ!」

  その錯覚は、頬を掠める爪の一閃により否定された。落ち葉を踏み締める音を頼りにクロスはその方向に向き直る。そこには角と翼を持つ醜悪な生物が立っていた。いわゆる悪魔族と呼ばれるタイプのモンスターだ。その体躯は非常に痩せ細っている。

  「ギギギ! こんな所にのこのこ来るとは、バカな人間め!」

  「ようやく現れたか……!」

  クロスはモンスターと対峙する。既にモンスターは臨戦態勢の形を取っており、クロスもそれに応じる形で剣の切っ尖を向けた。

  「ヤァ!」

  地面を蹴ってモンスターがクロス目掛けて飛んでくる。指先の鋭い爪を突き立ててクロスの喉元を狙ってくる。

  「ハッ!」

  「ギャァ!」

  クロスはそれに怯む事もせずにモンスターに斬りかかった。モンスターは悲鳴をあげて倒れるも、すぐさま立ち上がり再びクロスの命を狙うべく襲いかかる。

  「ふっ! はっ! やぁっ!」

  クロスの剣の斬撃がモンスターを切り刻む。それでもモンスターは何度も襲いかかってきたが、反撃を繰り返すといつしか動かなくなった。

  「ふぅ……なかなかにしぶとかったな」

  モンスターの命がなくなったのを確認すると、クロスは剣を鞘に戻し、大きな息をひとつ吐いた。

  (しかし、あれだけ驚異とされていたモンスターがこの程度なのか……? こいつはただの雑兵で、後ろに親玉がいる……?)

  クロスはやけにあっさりと終わった戦いを疑問に思う。そしてその予感は的中していた。彼の頭上に、先程と同じ姿の悪魔が飛びかかっていたからだ。

  「ふっ!」

  「ギャアッ!」

  上空を薙いだ斬撃が悪魔に直撃し二匹目の悪魔が地に伏せる。「危なかった」とクロスは一時安堵するも、その安堵はすぐさま警戒へと切り替わる。

  辺りからは、もう逃げも隠れもしないと言わんばかりに無数のモンスター達がクロスを取り囲む。

  「来い! 全員返り討ちにしてやる!」

  それからはクロスとモンスターとの長い戦闘が繰り広げられた。クロスは襲いかかるモンスター達を何体も返り討ちにし、何体も斬り捨てる。モンスターの持つ爪や牙の攻撃によりクロスは多少の傷は負ったものの、未だ余力は残っている状態だった。

  「くっ……こいつらどれだけいるんだ」

  しかし同じ姿形のモンスターが無数に現れるその状況に、クロスは焦りと苛立ちを見せ始めていた。それが彼の冷静さを欠いてしまう事となる。

  彼の後ろにはもう一つ大きな影がいた事に、彼は気が付かなかった。

  「やるではないか、人間」

  「がっ!?」

  背後から地に響くような声がしたと思うと、クロスは背中に鈍い痛みを感じて倒れた。骨が折れる音がクロスの耳に響き渡る。

  「ぐっ、ぎゃああああっ!?」

  クロスは背中への激痛で年甲斐もなく大声で叫んでしまう。急いで立とうとするも、力が入らず体を起き上がらせる事すら叶わない。

  痛みで悶えるクロスの後ろに立っていたのは彼の何倍もある図体の大男。紫の肌をし、全身に筋肉の鎧を纏っている。頭には牛のように立派な角を携え、背中に蝙蝠の被膜を彷彿とさせる一対の大きな翼を生やしていた。

  彼こそが、雑兵を使役していたモンスターの親玉で、次々と村人達を攫っていた元凶。『悪魔』と呼ばれるモンスターなのだった。

  「ふむ……」

  「がっ!?」

  悪魔は動けないクロスの髪を掴むとその身体を軽々と持ち上げる。クロスの端正な顔面を己の眼前に向き直させると、悪魔はにやりと笑みを浮かべる。口元に聳え立つ大きな牙に、黒々とした髭がその厳つさをさらに際立たせていた。

  「人間にしてはなかなかの力の持ち主だ。これならば……」

  「くっ!」

  悪魔が言葉を紡ぎ終える前に、クロスは手袋に仕込んだ小さな刃を発射する。その刃は悪魔の心臓へ深々と突き刺さる――はずだった。

  「ほう、まだ私に逆らう気力が残っているとはな」

  「えっ……? 刃が……」

  悪魔の胸筋に突き刺さり直立する刃がそこにはあった。刃は悪魔の体を通らず、先端のみが皮膚を少し傷つけただけのようだ。行き場を失った刃は力なく落ち、そのまま青葉の絨毯の中へと埋もれていった。

  「私は特殊な体でな……刃程度なら一切効きはしないのだ」

  「そんな……」

  クロスは“あの日”以来の絶望を味わっていた。身体は満身創痍、対抗できる武器はない。彼の中で『死』という恐怖の感情がふつふつと沸き上がってくる。

  悪魔は、戦意を失い死に怯えている人間を見て心の中で嘲笑すると、手に持っていた人間を地に投げ捨てた。

  「がっ!」

  「このまま殺すには惜しい逸材だ。ぜひとも有効活用させてもらわんとな」

  「くっ……来るな、来るなぁ!!」

  身動きの取れないクロスにずかずかと歩み寄ってくる悪魔。クロスはもう逃げる事しかできなかった。矜持もプライドも投げ捨てて狼狽する事しかできない哀れな姿がそこにはあった。

  しかし、悪魔はそんな彼を追い詰めるでもなく、予想外の行動を取り始めた。

  「やっ……やめ! ……ろ……?」

  クロスは、悪魔のその行動に今まで抱いていた恐怖が困惑に変わっていくのを感じた。

  それ程に理解不能だったからだ。悪魔のこの行動は。

  「あっ……うぅっ……」

  (こいつ……一体何を……?)

  あろう事か、悪魔は己の股間にぶら下がっているその肉の巨棒をその手で慰め始めていた。

  モンスターも人間同様に生殖器はあるらしい。悪魔族は人間に近い姿をしているためか尚更だ。それでも、今このモンスターがこの場でマスターベーションを行っている事の意味が全く分からなかった。

  悪魔のその行動の真意は、すぐに判明する事となる。この後クロスの身に起きる事によって。

  「ぐっ……おぉっ!」

  嬌声混じりの叫びが森中に木霊する。悪魔はその股座の巨きな肉棒の先端から粘性のある液体を吐き出した。

  性的快感を得て逸物から発射されるそれは、普通ならば精液とされるはずだ。しかし悪魔の鈴口から発射された液体は、精液のそれとは似て非なるものであった。

  艶のある漆黒の液体――悪魔の逸物から発射されたのはそんな物質だった。

  「うぐっ!?」

  クロスは悪魔が発した黒い液体を全身に浴びてしまう。精液の濃い匂いでクロスの精神はさらに不安定になる。彼はこんな汚らわしいモノをかけられてしまうとは露にも思わなかったのか、目を白黒させてまばらに声を発する事しかできずにいた。

  「あ……?」

  「ふん、分からんか。まあよい、じきに分かる」

  悪魔の精液で体をベトベトにしたまま困惑し続けているクロス。意図の解らぬ悪魔の発言の意味を考えようと混乱する頭を振り絞ったが、その答えに辿り着く前に事が起き始めた。

  体じゅうに張り付いた真っ黒な精液は、いつしかひとりでに蠢きだす。まるでスライム状のモンスターの如く、その黒い液体は意思を持ったようにクロスの体を這いずっていく。

  「あっ……あぁっ!?」

  それにようやく気付いたクロスは驚愕の声をあげながら体を這いずる精液を振り払おうとするも、精液は一滴たりともクロスの体を離れようとはしなかった。

  それどころか、クロスにかからず草や土に撒き散った他の精液までもがクロスに向かい始めていた。

  「あぁぁっ……やめろ……やめろぉ!」

  漆黒で艶やかな悪魔の精液の、その全てがクロスという目標目掛けて集まっていく。精液はまるで身体中を包み込むかのように、クロスの腕を、脚を、そして腹や胸までもを覆い尽くしていく。

  「ぐううっ……はあっ!」

  既に腕と下半身は完全に黒の精に覆われてしまっており、まるで黒色の膜に包まれているかのようになっている。

  それでも満足せず上半身を侵食しようとする精液を、クロスはどうにかして引き剥がそうとした。しかし背中を負傷して力が出せず、さらにその液体はいくら強く引っ張ってもどこまでも伸びて千切れないという、驚くべき粘性を持っていた。

  「ははは、無駄だ人間。私の精液は私の特殊な体と同じもので出来ている。いくら力を加えようとも一度そいつを主とみなしたら一生離れはしない」

  抵抗むなしく、クロスの肉体は首から上以外全て液体で覆われてしまう。彼の全身は、体のラインだけを強調した艶のある黒一色となってしまった。

  そして、悪魔の精液の侵食は、さらに……

  「や……おぶっ!?」

  液体は、クロスの顔をも侵食し始めていた。口内に夥しい量の液体が入り込み、クロスは口を塞がれてしまう。声が出せなくなり悶えるクロスだったが、無慈悲にも液体の侵食は止まる事を知らない。

  「…………」

  そしてとうとう、クロスは肉体の全てを精液の膜で覆い尽くされてしまった。液体を引き剥がそうとした時の体勢のまま静止したクロスの姿は、まるでそういう形をした漆黒の人形のようだった。

  そのまま、クロスは固まったかのように一切動かなくなってしまった。膜越しに、鍛えられた筋肉や、それなりのサイズの彼の男性器がくっきりと浮かんでいる。

  「私の魔力を帯びた精液は人間をその者の“素質”に応じて、その肉体を私と同じ存在へと変質させる」

  悪魔は物言わぬクロスに淡々と話しかける。それは、人間は愚か高名な冒険者にすら知られていない事実だった。

  そして、この森に次々とモンスターが現れている原因でもあった。

  この森のモンスターは、悪魔に変えられた人間達だったというわけだ。

  「それは言わば『繭』だ。脆弱な肉体を捨て、強靭なる姿に進化するためのな。まあ、殆どの人間は“素質”がないせいで最下級の悪魔となってしまう事が殆どなのだがな……」

  ある時闇から生まれたこの悪魔という名のモンスターは、ある日自分の精液に、人間を自分と同じモンスターに変える力がある事に気が付いた。

  それから彼は、これまでに何人もの人間をモンスターへと変えてきた。だが、そのほぼ全ては力も知能も著しく低い劣等種ばかりであった。

  悪魔はこの森を拠点とし、同族にしたモンスター達と人間を次々と襲っていた。いつか世界の全ての人間をモンスターへと変えるために。

  「まずはその肉体を……そしてやがては魂をも変質させていく。お前がいくら抗おうが、変質は不可逆のまま進行していく……」

  悪魔は、傍目では微動だにしていないクロスの、その内の“魂”を覗いていた。そこでは必死にモンスター化に抗うクロスの魂の動きがあった。それを見物しながら悪魔はひとりほくそ笑む。彼には分かっているからだ。クロスの肉体は、着実にモンスターへと変わっている事を。

  「! そろそろか」

  クロスの黒い人型に一筋の罅が入った。黒の繭と化したクロスの元の肉体を破り捨て、新たなモンスターとしてのクロスの体が露出していく。隙間から見える岩山のようなごつごつとした肌は、その肉体がとうに嘗てのクロスのものではなくなっているということを物語っていた。

  (――なんだ、これは)

  クロスは繭の中で夢を見ていた。

  (――暖かい)

  見知らぬ空間の中、生まれたての姿でただ浮かんでいる。そんな夢を。

  しかし、そんな心地の良い夢はすぐに終わりを迎え、悪夢へと転換を始める。

  (ぐうっ!?)

  クロスの筋肉が、一瞬にして膨れ上がる。重戦士も真っ青の岩山のような筋肉がクロスに纏われた。

  さらにその上から弾力のある脂肪が乗っていく。筋肉の下の骨も太く堅強になり、その影響で背丈もぐんぐんと伸びていく。

  (やめろっ! 俺の体が!)

  クロスは拒否するも、変わりゆく肉体はさらなる変化を続けている。

  充分な肉体を手に入れたクロスの体はゆっくりと歳をとっていく。皮膚に皺ができていくと、全身に毛が生え揃っていく。眉毛が太くなるのにつれて端正な顔は厳つくなり口元には髭が生えた。

  一瞬にして中年相当の体へと加齢したクロスの変化は、股間の生殖器へと及びはじめる。ペニスはむくむくと太く大きくなっていき、それに合わせて睾丸もこれまでの倍以上の立派なサイズに成長した。

  (そんな……グオォ!?)

  しかしそんな体になっても彼の変化はまだ終わってはいなかった。しかも今度の変化は、人間の範疇を超えたものだった。

  手足の爪が鋭く伸びると、耳が上に尖っていく。

  色白だった全身の皮膚は、森の木々を彷彿とさせる真緑色へと染まる。

  髪は全て抜け落ちスキンヘッドになり、涎を垂らしながら、口から上向きの大きな牙が生えた。

  (ぐ、おォ……)

  人間の面影はあれど、それとは全く異なる異形の姿へと、夢の中のクロスは変わってしまった。

  そこで彼の夢は終わった。

  「グオオオオオオオォ!!」

  夢から醒めたクロスは、夢と同じ異形の姿で雄叫びをあげていた。役目を終えた“繭”はボロボロに崩れ落ち、塵となって風に運ばれていった。

  「素晴らしい! 緑肌の大鬼とは、お前はなかなかの“素質”があったようだな!」

  クロスの目の前で悪魔が歓喜の声をあげる。クロスは夢で見た、あの筋骨隆々の怪物の姿そのものとなっていた。そしてこの姿こそ、悪魔によって変質させられたクロスのモンスターとしての肉体だった。

  「よし、この鬼を『オーク』と名付けることとしよう。お前は今日からオークだ」

  「そ、そんな……」

  『オーク』などという勝手な個体名を付けられたクロスは、その現実を受け入れられず膝をついて狼狽する。しかしその感情はやがて悪魔への怒りへと転化する。

  この時、クロスは何故か言い表す事のできない怒りに支配されていた。とにかくイライラして仕方がない。目の前の敵を叩き潰したくて仕方がない。

  肉を潰し、骨を折り、めちゃくちゃに犯してやりたい――クロスはそんな憤怒と暴力に満ちた感情に支配されていく。

  「ふざけるッ、なアァァァ!」

  そして怒りに任せて悪魔にその太い腕を振りかざした。しかし――

  「ァァァァ……ッ!?」

  すんでの所でその拳はぴたりと静止した。にやにやと笑う悪魔の鼻先に拳を叩き込んでやりたかったが、どうしてもその次を行うことができなかった。いくら力を入れてもそれ以上、前に動かない。まるで、肉体そのものが悪魔を攻撃することを拒否しているようだった。

  「愚かな。もうお前は私の眷属だ。主である私を傷付ける事は本能が許すまいよ」

  「俺は……お前なんか!」

  「やれやれ、人間の“魂”がやかましいことだ。さっさと処理してしまうか」

  それでも抵抗を続けるクロスを見て、悪魔は呆れたように呟くと、突如クロスに背を向け、腰を落とした。

  「……どういうつもりだ……」

  悪魔は尻を前へと突き出し、ゆらゆらと尻尾を振っている。まるで誘っているかのようだ。

  [[jumpuri:続きはFANBOXで > https://jinogrehead.fanbox.cc/posts/8486198]]

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