号外の真相

  僕…セレス先生が好きです!

  最初はどの子も教師として好いているのだと思っていた。

  そういう意味じゃなくて…

  僕はあなたの恋人になりたいです!

  男女問わず生徒に想いを告げられることがここ数ヶ月続いている。

  それは受け入れてはならない想い。

  何度となく悲しげな表情の生徒を見送ってきた。

  モリスには

  『実用学派は学業以外にも目が向けられるほどゆとりがあっていいね』

  と、嫌味を言われる始末

  その要因が自分にあるのも悔しい

  『君は生徒との距離が近すぎる』

  とも言われた

  そういう彼もお気に入りには入れ込む癖に…

  だけど…モリスは間違った事は言わない

  彼の目から見てそう見えるということは…

  もしかして…

  私は生徒たちに何か誤解させるような事をしているのかもしれない…

  そんな疑問がふと頭に浮かんだ。

  [newpage]

  今日の授業が終わり教室から出ると、二人で使っている個人用の実験室とは逆方向へ足早に移動するシエルを見かけた。

  空き教室に入っていく背中を見て、

  またか。

  と、すぐ察してしまう程にこの行事はここ数ヶ月続いていた。

  空き教室から少し距離を置いて様子を伺うと、生命学派(うち)の男子生徒が飛び出してきた。

  今回はうちの生徒でしかも男か…

  生徒の恋愛は自由だけど学院に来ている以上、今自分が何をすべきなのかを見誤っている時点で、あの生徒は所詮サルだと見切りをつける事にした。

  最近のシエルはこの行事のあとの必ず不安定になる。

  それに気づいてから極力すぐ駆けつけることにした。

  特別深い意味はない。

  シエルが不安定になれば研究に支障がでる。

  ただそれだけの理由で…。

  そして今日も生徒の姿が見えなくなると空き教室へ入った。

  「シエル、またいつものやってたの?」

  「モリス…」

  生徒の前ではいつも鬱陶しいくらいキラキラした顔が曇っている。

  「今月に入って何人目?」

  「3人…4人目…くらいでしょうか」

  主語がなくても伝わる。

  月1回は必ず、多ければ月4~5回はあったと思う。

  それほどこの行事は恒例と化していた。

  「物好きがいるものだね」

  これも恒例と化した言葉。

  いつもこうやって鼻で笑えば

  『私の事をどう言おうとかまわないですけど、そうやって生徒を馬鹿にするのはやめてください』

  と、強く否定して小言が始まる。

  そうすればいつの間にかいつものシエルに戻っていく。

  3日前まではそれでうまくいっていたのに今日は違った…

  「ええ、本当に…」

  聞き間違えでは誤魔化せないほどはっきりと肯定する。

  その様子がいつもとは違うことに気が付いた。

  何かを考えて塞ぎ込んだ表情。

  相手の想いが積もりすぎれば重荷になるのか…

  人に想いを告げられることで、ここまで自分を追い詰める人間がいることを俺は初めて知った。

  何にせよこのままではこの後の研究に響く。

  それだけは避けたい。

  「そこは否定しなよ。俺には関係ないけど、君から言わせれば大切な生徒の想いなんだろ?

  結果はどうであれ、君があいつらの気持ちを無下にするのは違うんじゃない」

  少し驚いたような顔でシエルがこちらを見た。

  自分でも似合わないと思ってるよ。

  だけどここまで来ると、シエルの中で原因になっている要因を取り除かない事には先に進まない。

  あー面倒くさい…

  「何?変な顔でこっち見ないでくれるかな」

  思わず睨み返してしまう。

  「君に言われるとは思いませんでしたよ」

  「はぁ?お前さ、俺を何だと思ってるの?」

  「自分のお気に入りの生徒以外には全く興味がないものだと…」

  「それは間違ってない」

  「なのに、私に想いを告げた生徒たちの事を君が気遣うものだから少し驚いてしまいました」

  生徒を気遣ったわけじゃない。

  単にさっさとシエルを元に戻したいだけだ。

  「別に気遣っているわけじゃないけど、目的が何であれ自分の意志で動くのは悪い事じゃない。そこに至るまでに考えて用意をしてきたんだろうしね。ただ、すべきことの順序が違うから所詮サルなんだけど。俺の知るシエル・セレスは生徒のそういう行動を、例えそれが学業でないにしても無下にはしない。それが俺とシエルの違いだと思ってたんだけど」

  シエルは本来結構頑固で気が強い。

  いつも俺に言いそうな事を俺に言われれば気持ちが切り替わると思った。

  「モリス…君って私をよく見ていますよね」

  「はぁ?なんだかんだ言って付き合いが長いからであって見てるわけじゃないけど!」

  決して本当に見ているわけではなく目に付くだけだ。

  「ふふふ。そういうことにしておきます。」

  「お前ね…」

  軽い深呼吸をしたシエルの雰囲気は元に戻っていた。

  「ありがとうございます。

  私の生徒への接し方が誤解を招くのではないかとか考えすぎていて、生徒の事をちゃんと考えてあげることを忘れていました。こんな私の事でも好いてくれているのに…」

  「本当にね。生徒の前では偽善者面の笑顔を振りまいて物腰柔らかく強かなのに、実はマイナス思考ですぐ悩んで落ち込む。面倒な奴なのに…」

  「少し言いすぎじゃないですか?」

  活気が戻った目が俺を睨む。

  今日は多分これでもう大丈夫。

  こうやって世話を焼いている時点で俺も十分、物好きの一人と言うことか…

  「…物好きが多すぎて困るよ」

  返事はせず小さく呟き先に教室を出れば、追うようについていくる足音が聞こえる。

  「何か言いました?」

  「別に。それよりシエル、話を聞いてやったんだから何かお礼してよね」

  「勝手に首を突っ込んでそういうこと言いますか?せっかく見直していたというのに…。それより、さっきのやっぱり言いすぎじゃないですか!?ねぇ、モリス!」

  そして始まるいつもの小言…

  背後に感じるシエルの気配に足を止め、振り返り腰を抱き寄せる

  「な…なんですか!?きゅっ…」

  シエルの小言を黙らせるのは簡単なんだよ

  「モ…リス…!?い…今何を!!!!」

  「そんなことよりシエル、君を追い詰めている告白の嵐を止める簡単な方法を教えてあげるよ」

  「なっ…」

  君の重荷は俺が全部取り去ってあげるから…

  「俺のものになれ」

  翌日のルーン学院通信号外の一面は俺達の話題で埋め尽くされた。

  会うなり顔を真っ赤にしながら始まるシエルの小言を黙らせてみれば幸せそうに微笑む。

  そして、この日を境にシエルへの告白ラッシュが無事収束した。

  え?

  なんで学院通信がスクープできたかだって?

  そんなこと自分で考えなよ

  ま、君の脳ミソじゃ分からないだろうね

  Fin