ひかりの数だけ 海風はゆれ
小さな耳に そっと寄り添う
さざ波の奥で 眠る記憶は
いとしい面影を 呼んでいる
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白く煙るような虚のひと隅で、
ふたつの気配が寄り添うように立っていた。
羽のように淡く揺らぐ気配は、どこか優雅で静まり返っており、
その傍らに落ちる影は、深い森の底で眠る獣のように凛としていた。
ふたりのあいだには、見えない細い糸のような震えが
かすかに触れ合っている気配だけが漂っていた。
「また……この“[[rb:間 > あわい]]”に呼ばれたのかしら。」
ふわりとした声が虚の縁を撫でた。
龍の影は、その瞳だけが温度のある光を含んでいた。
揺らめく光の奥で、海の底に眠る古い風の記憶が
いっときだけ目を覚ましたかのように、微かに瞬いた。
「呼ばれた、というより…問われた、というのが近いでしょうな。」
狼の影はゆっくりと頭を巡らせ、どこでもない場所を見つめた。
淡々とした声音の裏に、わずかな楽しげな揺らぎが潜む。
足もとに触れる虚の大地は、雷鳴の痕跡のように
深く沈む響きをわずかに返していた。
「ふふ……あなたらしいわね。」
「あなたこそ。」
しばらくのあいだ、ふたりは同じ静けさを分け合った。
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沈黙が綾を結んだその瞬間、虚のどこかで空気がひと筋だけ動いた気がした。
風とも、遠い囁きともつかない微かな揺らぎがしのび寄り、
その奥で、鳥の気配にも似た“ほのかな音”が
一度だけ空をくぐり抜けたように聞こえた。
まるで、これから動き出す世界の息を、遠くから聴いているように。
「……動くのかしら。今度こそ。」
「動くでしょう。あれだけ揺れている。」
「揺れ、ね。」
「揺れは兆しです。兆しは循環を歪ませ、歪みは……」
「はいはい、また難しい話を。」
龍の影は微笑ましく肩をすくめた。
「しかし。」
狼の影が続けた。
その声は水底から湧き立つ深い響きを伴っていた。
「歪みの先には、必ず“選ぶ者”が生まれる。
選ぶ者がいれば、流れは形を変える。
変わる流れは、時に世界を新しくする。
私は…その瞬間がどうにも嫌いになれないんだ。」
淡い虚の気流が彼の尾を撫で、その先で細い紐のような光が
ほつれるように揺れた。
「相変わらず。」
龍の影は小さく笑い、その笑みは海霧のように融けた。
「あなたって、本当に……そういうところ、可愛いのよ。」
狼の影が一瞬むっとしたように沈黙し、
その隙に龍の影は美しい尾を翻すように身を返した。
「結び目にも終わりがある…それで充分ではなくて……?」
その言葉だけを残し、淡い光の余韻となって消えていった。
光が消えた後、虚の空気には雷鳴のこだまのような静けさが
細く長く続いていた。
残された狼の影は、ほんの少しだけ目を細め、
しかしすぐに静かな満足を帯びた息を吐いた。
「……ハーレン。」
独りごちる声は、虚に吸い込まれ、
次の揺らぎが訪れるその瞬間まで、
また白い沙の淵に沈んでいった。