そうして人類は永遠の眠りについた。そうして人類は永遠の眠りについた。ってば。聞こえてるのかい。
「何も聴こえないな。どうしたの?」
「ほら見てごらんよ、主語の跡がある。『やるせないため息と日常のおめかし』だって。」
「ほんとうかい? 何も聴こえないな。、何も聴こえないな……」
何も聴こえないな。は文脈船から身を乗り出して望遠鏡を覗く。あっ、確かに主語だ。ここまで匂いが漂ってくる。幾田の獣たちの足跡が。彼らもまた龍を追っているのだろう。
「『やるせないため息と日常のおめかし』」
「「」どうしたの?「」も見えるでしょ。蹄灰だよ」
「」はシークエンスの獣を撫でる。彼は順接犬といつも一緒にいる。「」は自信がないから次の文脈に従うところが順接犬に気に入られている。
耳を澄ませる。何も聴こえないな。何も聴こえない。そうして人類は永遠の眠りについた。、僕も同じだ。何か聴こえてもいいはず。船はまっすぐ文脈を進んでいるのに、蹄灰は相変わらず何の足跡も無い。
うるさい!!!!! !!!!!! !!
あーもう、ほんとに うるさい!!!!!!!!!!!!! うるさいって言って るだろ! 口をつぐめよ! お前のことだよ聴こえ ないのかよ、 なぁ!
何も聴こえないな。は に怒鳴る。それはわかる。さっきからずっとひどくうるさかった。 は常に僕たちの前にいて耳障りな声で鳴きがち。いつも僕らの前後にいがち。僕は慣れた。
「そうして人類は永遠の眠りについた。」
「「」どうした?」
「」の順接犬が唸る。
「「」は「」は、何もできない……何も」
「」は怯えて船 に踞る。ひどくか細い声で何も聴こえない。順接犬が 遠くを見る。望遠鏡を覗く。 が騒ぎ立てているよう。
「そうして人類は永遠の眠りについた。逆説海豹だ」
一匹の海豹がすいーっとこちらに寄ってくる。
蹄灰への道、どうりで。足跡を逆説海豹が消していたのか。それならよくわかる。海豹は音と夢を食うから。それは僕の知見のはなし。そしてやつには蹄がない。何も聴こえないな。聴こえるか? 何も聴こえないな。何も聴こえないな。そうだよね?
「しかし、逆説海豹さん。しかし」
僕はピリオドのように意味に対して注意深く挨拶をする。機嫌を損ねないようにしなければならない。
「こんにちは。そんなに畏まらなくてもいいですよ。慣れない逆接を使わなくたって。難しいと思うから、慣れないことは」
前足をひらひらさせる。その申し出をありがたく受け取った。
「私はね、ここで母を探しているんです。見かけませんでしたか?」
「いえ。見かけていませんね。穏やかな文脈しかありません。そうだよね? 「」何も聴こえないな。?」
「そうだね。順接犬も静かなもんだ。でも、あなたのことがちょっと苦手そうだけど」
「こら、安易に逆接を使って」
何も聴こえないな。の無神経さを咎める。それは彼の美徳でもあ る。
「気にしないで。相性が悪いのはわかってる。相性が悪いって最初からわかってるなら、やりようなんてありますから」
「母ってどんなかたちしてるの?」
? ? ? ?
も立て続けに疑問符を等間隔に並べる。
「母は人類のかたちをしてますよ。東のことを西と言ったりしない、素直なかたちです。私がさきほど、初めて逆接を使った時、母のすがたをちらとみとめました。それは私たちが人類だと思う存在だったと感じています」
「そうなんだあ。」
そしたら、この話はおわり。なぜなら逆接海豹は眠ってしまったから。母人類を探しに行ったんだ。人類はすっかり眠ってしまったと聞いているからね。それは海豹にとって大事なことだったから、僕はそれを邪魔したりしない。僕たちの文脈を優先させたりしない。子供はいつでも無条件に、去った母を探さねばならない。それはわかる。
僕たちは健やかに眠る逆接海豹をそっとしておき、船を降りてあたりを探索することにした。
☆
他のみんなが出掛けている間、残された順接犬は歌っていたのだった。心が非ずだれもいぬ。いぬの言葉は連なる綿で出来ていたから、誰もかれも遮ることはできなかったのだ。でもみんなはたやすく遮ってくれたったのが、とってもうれしかったのだったのだ。いぬの言葉は綿が連続していて、シークエンスの獣と呼ばれていたけど。みんなといるときは確かにそういうことを忘れられた、そういうことだったのだ。いぬは吠えるのを忘れて歌うのだったんだ。誰も知らない歌、それが嬉しいことで、今どうしてもすべきことだったんだんた。
去ねねこのみ、去るから埋葬、見つけてわたしのロクスィリシェン
愛ねめをそぎ、サリュふしぎ、さよなら灼っかのフォルドクセ
みんなに音、いっぱ稲、並べる夜寄る逡巡杭
輪っ火をかみ、驟雨の間に、躯くべる光請う連綿縊死
ひっ、ひっ、蹄の跡は灰の中、なっ、なっ、なかなのか? なにかのなかになんなのか?
「せっつ、せっつ、そ、は卵生か? ではないか?」
ではないな? 空く間で数列、未su枷ば? せー霊くたって寝腐って……。
☆
母について考えていました。
私が目覚めたときにいた母は、人類と言うんですが、もういませんでした。私は逆接の海豹であることは分かっています。母を探す必要がありました。そこには注意深く廃棄された逆接が切り終えた爪のようにこっそり置かれており、私が触るとわらいはじめました。わらいはじめた? 爪ですからわらうことは無いと思いました。私のせいでしょうか。それとも母のおかげでしょうか。起きないことが起こるのは無条件に母の仕業でしょうか。
☆
「みんな、見てよこれ」
何も聴こえないな。が何かを見付けたようだった。
「何か見付けた?」
「うん、ほら、龍の交尾だよ。交尾の跡。蹄灰が述語まで繋がってる。『やるせないため息と日常のおめかし』はやっぱりここにいて、述語を探していたんだ。で、きちんと交尾を果たしたみたい」
「おーっ、そうなんだね。お手柄だ、何も聴こえないな。」
「えへへ」
! ! ! !
も等間隔で何も聴こえないな。を褒めた。誰かが褒められると嬉しい。みんな仲間だし。
「「「「」」」」
「「」震えてどうしたの?」
「」が順接犬を抱えて震えている。顔色がわるい。
「船酔いでもした?」
「いぬが死んじゃった……」
「」はか細い声で言った。
「えっ」
「「」?」
よしよし… … 、つらいね 。大丈夫だよ 。
「いぬがさっきまで楽しそうに歌っていた……。楽しそうで、おれまで楽しくなって、一緒に歌っていたんだけど、いまはもうしんでる……」
「」はいぬを抱き締めて震えている。そこから動けない。
「「」……。大丈夫? 順接犬はもうおじいちゃんだったもんね。つらいね」
何も聴こえないな。は「」の背中を撫でる。いぬがしぬのはつらいね。いぬは唐突にしぬもんだから。心構えできないから、びっくりするよね。
「そうして人類は永遠の眠りについた。、今日は一旦戻ろうよ。「」がかわいそうだし、順接犬がいないなら龍も見付けられないと思う」
「そうだね。戻ろう。ここまで来れたなら十分だ。「」戻っていぬを埋葬してあげよう」
「」はうなずいていぬを抱き締めた。
が「」の代わりに船を操り、みんなで家に帰った。みんなでいぬを弔って、見送った。見送るときはみんなさみしかったけど、ひとりじゃなかったからある程度大丈夫だった。
☆
極光を強姦する紫化に至りし名もなき焔は、舟を見送ってほっと一息吐きました。彼は龍と呼ばれていて『やるせないため息と日常のおめかし』という鴨を大切にしていたからです。彼は誰もいなくなった文脈上でひっそり、鴨と手をつないで互いの口を啄み合いました。波紋が改行を揺らして、ピリオドの精霊たちが彼らを祝福します。龍は幸せになりたくて誰かに何かを言われても、邪魔をされても一緒にいたいという気持ちを強くもっていました。それは正しいことで、彼にとって全てと思いたいことでした。苦手ないぬの鳴き声が消え、二人の生活はやっと静けさを楽しめるようになりました。二人は交尾をして主語と述語を繋げました。それは注意深く為された文脈上での蛮行でした。