煌光の勇士 ルミナスハート 変身ヒロインは馬!?

  もものき原、古くは『百の騎原』と呼ばれた場所。

  豊かな自然と歴史が薫る地、伝承と伝説が今でも色濃く残るこの土地は……今から数百年前、異な者達の襲来を受けたと云う。

  しかしそれを御し祓った者たちがいた。

  それは人間ではあり得ぬ力を備えた存在──光の巫女と呼ぶべき乙女たちであった。

  煌めく光を放ちながら戦く彼女たちの活躍により、この地に蔓延ろうとしていた邪悪なる欲望を持った存在を封印することが出来たのだそう。

  しかし現代、再びその邪悪が息を吹き返そうとしていた。

  人々の秘めたる欲望の枷を喰らい尽くさんとする、魔なる者によってもものき原に封印されていた闇を蘇らせるべく暗躍を始めたのだ。

  そんな時、この世界の光を司る守護者【煌光の勇士】に選ばれたふたりの少女がいたと言う……。

  ⭐︎⭐︎⭐︎

  『ヤ〜〜リタイナア〜〜〜!!!!』

  悲鳴のような声を上げているのは全長数十mにも及ぶ巨大な異形の存在だった。まるで芋虫のように身体を幾つも折り畳んだかのようなフォルムで、黒い甲殻に覆われていて見た目は非常にグロテスクだ。

  短い手足には鋭い鉤爪を備えていて、背中からは触手が何本もうねり伸びて不気味さが際立っている。顔に当たる部分には目らしきものは見当たらず大きな口しか無いようだったけど、そこかしこから何やら液体のようなものを噴霧しており周囲には硫黄臭が立ち込めていた。

  触手を必死に振り回すように動かしているようだがなかなか狙いを定められないのか一向に命中せずに周囲に撒きちらしているだけだ。

  もものき原駅前は惨状と言って差し支えなかった。辺り一帯は燃え盛り至る所で火災が発生しており消防車のサイレンが鳴り響いている中、二つの影が逃げ惑い泣き叫ぶ人々の間を縫って走り抜ける。

  「行くよ!ひばりちゃん!早く!」

  一陣の風のように現れた少女はショートカットがよく似合う活発な印象を与えた。真っ黒なセーラー服を身に纏っていてどこか気怠げな雰囲気が漂うものの、今はその端正な容姿に反して凛とした声で叫んでいた。

  「礼子!ちょっと待ってってばあ!」

  一方の少女は長い艶やかなポニーテールを揺らしながら少しばかり焦燥したような表情を浮かべている。こちらは対照的にすらりと背が高くスタイルの良い体型をしている美少女であり、制服の上からでも良く分かるくらいに胸が大きく張り出していたが今はそんなことに構っている暇はないらしい。

  『ヤーリタイ!キモチイイヤリタイ!』

  突然その怪物は大きな口をガパッと開き、そこから粘着質のある白い糸状のものを吐き出し始めた。それも一本ではなく十数本はあるようで一斉に周辺へまき散らされたものだからものすごく汚ならしく、何よりも臭いが強く吐き気がしてくるほどだ。

  そんな異形の怪物が暴れるのを上空から観察する者がいた。

  「いいぞいいぞお?もっと暴れて欲望を曝け出せ……」

  そいつはそんな独り言を呟きながら薄ら笑いを浮かべていた。人間とは凡そかけ離れた姿形をした、虫が人の形を真似て化けたような容姿をしておりその顔面には複眼と触角、そして口のような器官がある。

  「欲望に飲まれた人間の感情……それは我らにとって最高の糧となる。現代のサルはとんでもない鬱屈した感情を溜め込んでおるのだなあ、くふ。これは最高のエネルギー源となるぞ?」

  まるで虫の化け物のようなそいつは心底愉快そうに呟いていた。その言葉の通り、欲望を曝け出した者……『ヤリタイナー』は、その欲望を叶えるべくして行動を起こすのだ。

  『ヤリタイ……ヤリタイ……アタマガクルシイ……』

  もものき原駅前で暴れていた怪物が急に動きを止めたかと思えば、今度はゆっくりとした動作で移動を始めた。まるで何かを探しているかのような動きだったがやがて目的のものをみつけたらしく、ピタリと止まったかと思うとその触手を一本だけ伸ばしていく。

  「ひ、ひぃっ!?ななな何あれ!?」

  『オモチャ……アソビタイ……』

  「やだっ!来ないでよっ!!」

  もものき原駅前に居合わせた人々が逃げ惑う中、その触手が逃げ遅れた女子高生に狙いを定めた。

  『オニンギョウサン……コワサレチャッタ……カッテモラッタノニ……』

  「ひぃいいいっ!?やだやだやだっ!誰か助けてっ!!」

  触手が足に巻き付いたと思った瞬間、凄まじい力で引き寄せられていく女子高生。必死に抵抗しようとするものの触手の力は非常に強くびくともしないようで成す術なく引き摺られていくしかなかった。

  『……ワタシダケノ……カワイイオニンギョウサン……』

  「ひっ!?や、やだああっ!!」

  その化け物は女子高生に向かって更に触手を伸ばしていくと服を引きちぎり始めた。ブレザーのボタンが飛び散る中、ブラウスまでもが破けてしまい下着が見え隠れしてしまっている。悲鳴を上げながら身を捩って抵抗しようとするものの、その触手は女子高生の身体に絡みつき身動きを取れなくしていく。

  「やだっ!誰かっ!!誰か助けてぇっ!!」

  『アハ……キセカエテアゲルネエ……デモダイジョウブダヨ?ワタシガズットイッショダカラ……』

  「やだっ!誰かっ!誰かあっ!!」

  遂には下着すらも剥ぎ取られてしまい一糸纏わぬ姿になってしまった少女。恐怖でその表情は歪み身体はガタガタと震えているものの、その怪物はそれを嘲笑うかのようにして少女の身体に触手を巻き付け始めた。

  『ネエネエ……アソボ?イイデショ?ワタシトイッショニ……』

  「い、いやっ!嫌ああぁっ!!助けてっ!助けてぇええっ!!」

  少女の叫びに呼応するかのようにして、怪物は触手を器用に操りながらその身体を持ち上げていく。そしてそのまま駅ビルの屋上まで運び込むと、まるで磔のように少女を捕らえたその時だった。

  「そこまでよ、悪い怪物さん?これ以上の悪行は許さないわ!」

  「もう大丈夫!私達が来たからには安心だよ!」

  颯爽とした声と共に二人の少女が現れる。一人は栗色の髪をした女子高生であり、もう一人は長くしなやかな黒髪を靡かせる制服姿の少女だった。その手に握られた杖のような道具からは眩い光が迸っており、その光に触れた触手が焼け爛れて溶け落ちていく。

  「人々の秘めた欲望を糧とする邪悪なる者よ!この煌光の勇士が相手になるわっ!さあ、覚悟しなさいっ!」

  「行きましょう礼子!変身よっ!!」

  「うんっ!ルミナスハート・セットアップ!!」

  杖に嵌め込まれた宝石から光が放たれると二人の少女を包み込むようにして眩い輝きを放つ。その光の中で制服が解けるように消え去り、一糸纏わぬ姿になる少女たちだったがそれも束の間のこと、次の瞬間には煌びやかな衣装が着装されていく。

  「清廉なる月の騎士!ルネシュバリエ!」

  杖から輝く剣と盾が出現しその手に握られると高らかに名乗りを上げた少女。その顔は凛々しくもあり優しげでもある。金色の髪を風に靡かせながら正義感に溢れた眼差しで怪物を睨みつけた。

  「シルフィーチャージ!セットアップ!」

  もう一人の少女はそう言うと両手を大きく広げてからゆっくりと腰を落としていく。まるでバレエのポーズのような格好になると、彼女の身体を中心にして魔法陣のようなものが展開されていった。そしてそこから放たれた光に包まれたかと思うとその姿が変化していく。

  四肢は伸び、身体は大きく変形し骨格までもが変化していく。首が伸び、マズルを形成、顔は伸び耳は尖っていく。蹄の付いた四肢を曲げるとまるで武装した馬のような姿へと変わったのだ。

  『疾風迅雷!白き風の戦士!シルフィークーニュ!』

  そう名乗ると同時に疾風のような速さで駆け出す馬の姿を取った少女。そんな彼女に続くようにして、煌光の勇士の片割れである少女……ルネシュバリエはひと蹴りで飛び上がるとシルフィークーニュの背に跨った。

  「「煌光の勇士!ルミナスハート!見参っ!」」

  華麗な空中機動を繰り広げながら次々と怪物の触手を切り裂いていく煌光の勇士と馬。その動きは超常の存在の如く俊敏で鮮やかであった。まるで空に踊っているかのような軽やかな身のこなしでありながらもその一撃は重く鋭いものだ。

  瞬く間に触手に絡め取られていた少女を救出すると空中の怪物に対して啖呵を切る。

  「ヨクバリン!松世ちゃんになんてことをっ!」

  巨大な芋虫を指してルネシュバリエは叫んだ。

  『けっ……馬鹿馬鹿しい。アタシはその子の願いを叶えてやっただけだぜ?』

  吐き捨てるかのようにしてヨクバリスはそう言ったが、それを聞いた煌光の勇士は即座に反論した。

  「違うわ!あんたがこの子の欲望を暴走させて怪物にしたのよ!」

  『おいおい、言い掛かりをつけてくるんじゃねえぞコラァ!?見ろ!お人形さん遊びが大好きな可愛い女の子じゃねえか!なあ?』

  『アソボウ?ワタシト、イッショニアソボウヨ?』

  怪物はそう言うと触手を伸ばしてくる。しかし煌光の勇士はそれをひらりと躱すと再び剣を構えて攻撃態勢に入った。

  「松世ちゃん!聞こえる?私よ、ひばり!あなたは今、悪い夢を見ているの!目を覚ましてっ!!」

  「梅竹さん!お願い、正気に戻って!優しいあなたがそんな姿になってしまうなんて、絶対に間違ってるわっ!!」

  煌光の勇士たちは必死に呼びかける。

  梅竹松世は彼女らのクラスメイトであり友人でもある少女だ。手芸部所属で普段から大人しい印象を受ける人物だったが、こんな化け物に姿を変えるなんて信じられない。煌光の勇士はなんとかして救い出そうと試みるのだが……。

  『ヤメテヨ……!ジャマシナイデ……オニンギョウサンハワタシノモノナノニ……!』

  巨体を激しく揺らしながら怒り狂う怪物。触手の一本を煌光の勇士に向けて勢いよく伸ばしていくとそれを叩き落そうと試みるも、その攻撃は空振りに終わる。

  『チッ!ちょこまかと小賢しい……っ!』

  「ルミナス・シールド!この攻撃は通さないよ!」

  煌光の壁が触手を弾く。その隙にシルフィークーニュが身を翻し、前肢を掻くようにして攻撃を繰り返す。

  『キャアアアアアッ!!』

  輝く蹄鉄が怪物の肉にめり込む。その痛みに悶絶する化け物だがすぐに体勢を立て直すと残りの触手を一斉に動かし始めた。

  『シネッ!シネェエエッ!!』

  「させないわっ!!シルフィートルネード!!」

  煌光の勇士が叫ぶと同時に一陣の風が巻き起こった。次の瞬間にはシルフィークーニュの身体が宙に浮き上がり、そのまま竜巻の如き激しい旋風となって怪物の攻撃を全て弾き返していく。

  「うええ、相変わらず目が廻りそう……」

  「ひばり、大丈夫?」

  「う、うん。平気だよ!それより、どうする?このままじゃ埒が明かないよ……」

  煌光の勇士は苦戦を強いられていた。いくら攻撃しても一向にダメージを与えることが出来ずにいるのだ。そんな中、ヨクバリンは空中で見下しながら嘲笑うかのように言った。

  『どうした?もう終わりかよ?しかし今回のヤリタイナーはチンケな欲望の割には随分と力が強いなあ。それだけ欲望が溜まっていたってことか?怖いねえ、人間ってのは。くふふふふ……』

  松世が手芸部で作っている人形は、皆他人にプレゼントしたり施設に寄付したりしていて彼女の手元には一つも残っていない。

  そう、手芸道具だらけの彼女の部屋には完成品の人形が一つも存在しなかったのだ。

  家に招かれた礼子とひばりはその事を不思議に思いつつも、松世が手芸に並々ならぬ熱意を持っていることを再認識させられる。

  『お人形さんは大好きなの。作るのだって楽しいし、喜んでくれる姿を見ると嬉しくなるから』

  彼女は微笑みながら語っていた。その目には確かな愛情が籠っていたように感じることが出来たのだ。

  しかし今の彼女は自分だけの人形に執着し、醜い欲望と一体化した異形の存在へと変貌してしまった。

  「松世ちゃんっ!お願い、思い出して!!あなたはただの人形が欲しいわけじゃないんでしょ!?人みたいにおままごとをしたり、一緒に寝たりしたいんだよね!?」

  ルネシュバリエこと、武智礼子がそう叫ぶ。

  すると次の瞬間、怪物の動きがピタリと止まった。まるで何かに動揺しているかのように小刻みに震えているのがわかる。その隙を逃さずに煌光の勇士たちは畳み掛けるようにして叫んだ。

  「梅竹さんっ!!」

  『お人形さん……私のものなの……?違うわ……そうじゃないもの……!だっていじわるな子たちが取り上げてめちゃくちゃにするの……』

  『私は……ただ、遊びたいだけなのに……!どうして?ねえ、教えてよ!なんで私だけお人形さんがないの!?そんなのおかしいわ!』

  「梅竹さんっ!!大丈夫、もう大丈夫よ!」

  シルフィークーニュこと、来栖ひばりが優しく語りかける。

  「持っていいのよ!他人にあれだけプレゼントするくらい大好きで、一生モノの作品を作れるぐらいお裁縫も上手なのに!どうして自分の手で作ろうって思わなかったの?」

  『あ……ああ……』

  「わたしたちは知ってるわ。あなたの作るお人形がどれだけ素晴らしいか!」

  煌光の勇士たちは言う。その声の温かさには確かな慈愛が含まれていた。

  『そうだ、そうだよね……どうして思いつかなかったんだろう?』

  『梅竹さんっ!』「松世ちゃん!」

  煌光の勇士と馬型の神獣と化した少女は同時に叫んだ。

  巨体がだらりと項垂れ、触手が力なく地面に横たわる。戦意が喪失した様子を見て、煌光の勇士たちはそっと息を吐いた。

  「ふう……なんとかなったね」

  萎れた欲望のオーラが少しずつ霧散していく中、煌光の勇士たちはゆっくりと着地する。あとは浄化を施せば一件落着だ。

  「ふざけんじゃ……ねえぞっ!!」

  見下ろしていたヨクバリンの二対の手から禍々しい光弾が放たれる。

  「きゃあっ!」

  咄嗟に防御態勢に入るも、その攻撃は煌光の勇士たちではなく……松世に命中した。

  『キャアアアッ!!』

  「梅竹さん!?」「松世ちゃ」

  怪物は悲痛な叫び声を上げると共にみるみるうちにその身が膨れ上がっていき……芋虫の身体を突き破って巨大な羽と長い手足を持った蜂のような異形が姿を現した。

  『うふ、ふふふふっ♡アハハハッ♡♡』

  「うっ……噓でしょ?どうして!?」

  驚愕する煌光の勇士たちを尻目に怪物は高らかに笑い声を上げる。そして次の瞬間、その腹部から鋭い針が発射された。

  『アハハッ♡』

  「うああっ!?」

  煌光の勇士たちは咄嵯に身を翻してバリアーを展開する。しかし、その一撃は想像以上の威力を持っておりバリアーごと弾き飛ばされてしまった。地面に叩きつけられるも何とか受け身を取り体勢を立て直す煌光の勇士たちだったが、そこへ更なる攻撃が襲い掛かる。

  『アハハハハッ!!壊れない人形さんなんて要らないっ!!だから……私のお人形になってね♡』

  『アハハッ!キャハハハッ!!』

  怪物は狂ったような笑い声を上げながら、再び腹部から鋭い針を発射した。煌光の勇士たちはそれを必死に避けようとするものの全てを避けきることは出来ず、その内の一本がシルフィークーニュの脚に突き刺さろうとしたのをシュバリエが身を挺して庇った。

  「あぐっ!」

  『礼子っ!大丈夫!?』

  「うん、平気だよ!それより松世ちゃんが……っ!」

  羽を持った蜂は羽化直後の柔らかい甲殻から抜け出し、既に完全に硬質化した外皮に覆われていた。それがけたたましい羽音と共に縦横無尽に動き回り煌光の勇士たちを翻弄する。

  『アハハッ♡キャハハアッ!!』

  蜂は煌光の勇士たちの死角に入り込み、針による攻撃を繰り出し続けた。

  間一髪のところで避け続けるものの空からの攻撃を防ぎ続けることは難しく、徐々に追い詰められていく。

  (このまま防戦一方では埒が明かないわ!こうなったら……!)

  「ひばりちゃん!私を空へ投げ飛ばして!」

  「え!?でもそれじゃあ……」

  「いいから早くっ!!」

  戸惑うひばりだったが礼子の決意に満ちた眼差しを見て覚悟を決めたように頷く。そしてシルフィークーニュの背中に跨り手綱を握った。

  「お願い、頑張ってちょうだい!シルフィークーニュ!!」『任せてっ!!』

  四肢を折り畳んで低く構えるシルフィークーニュ。そして煌光の勇士たちはその背に脚をかけてしっかりとしがみついた。

  『行くよ……しっかり掴まっててね……っ!!』「うんっ!お願い!!」『キャハハアッ♡』

  蜂は空高く舞い上がると一気に加速して煌光の勇士たちに迫る。

  「礼子、今よ!!」『月天承知!!』

  煌光の勇士はシルフィークーニュの背中から飛び上がると空中で一回転し、そして落下する勢いを利用して蜂に強烈な蹴りを叩き込んだ。

  『キャアッ!?』

  その一撃によってバランスを崩した蜂は地面に墜落する。

  完全とまではいかないものの、その装甲が砕けたことで防御力も下がったようだ。煌光の勇士はその隙を突いて追撃を開始する。

  「今よ!浄化を……っ!」『うんっ!いくよっ!!』

  着地と同時にクーニュに跨ったシュバリエは剣を構えると一気に蜂に向かって駆け出した。そしてそのまま高く飛び上がると刀身にエネルギーを込め始める。

  「ルミナスハート・セットアップ!煌めく剣で全てを照らせ!」

  煌光の勇士が持つ大剣から眩い光が溢れ出す。それはまるで恒星の如く眩く輝きを増していき、やがてその光が巨大な一振りの剣を形作るとクーニュが全速で突撃するタイミングに合わせて振り下ろされた。

  「ルミナス・エクスキューションッ!!」

  剣から放たれた光の剣撃が蜂の胴体を真っ二つに切り裂いた。

  光の剣はそのまま地面へと突き刺さり、切り口から眩い光が放たれ始める。

  『キャハ……アハハ……ッ!!』

  異形の怪物は断末魔の叫び声を上げると共に光の中へと飲み込まれていき……やがて跡形もなく消滅したのだった。そして同時に欲望のオーラも完全に浄化され辺り一面が晴れ渡り、元通りの風景が戻ってきた。

  『やったわね!礼子!』「うん、ありがとうひばりちゃん!」

  煌光の勇士たちは勝利を喜ぶと、変身を解除して松世の元へ駆け寄る。

  制服は破れたままだったが、人形のパーツは全てそのままの姿で彼女の腕の中に収まっていた。

  「松世ちゃん!大丈夫?」

  「……あれ?私……どうしてここに……」

  どうやら記憶が混濁しているようで、自分が何をしていたのか思い出せない様子だったが怪我などはなさそうだ。少女たちは安堵しつつ、松世の手を取る。

  「松世ちゃん、誰かの為にお人形を作るのはすごく素敵な事だと思う。思いやりの心もとっても素敵だけど……自分の事も大事にしてあげてね」

  ひばりが諭すように言うと松世は静かに頷いた。

  「小さい時にね、お人形を買って貰ったの……。女の子で丁度私達ぐらいの見た目の人形で、とっても可愛くて……でもすぐに壊れちゃった。ううん、壊しちゃったの。ごめんねって言いながらバラバラにして捨てたの」

  寂しげに微笑みながら松世は語り続ける。その目には涙すら浮かんでいた。

  「お人形遊びがしたかったのに、私の家にはおままごとを出来るような居場所なんてどこにもなくて……」

  「だから人形を作っても人にあげてたのね……?」

  「うん……」

  松世は今にも泣き出しそうな声で答えた。そんな彼女の手をひばりはそっと握り返すと、優しい口調で語りかける。

  「大丈夫だよ松世ちゃん。今からでも遅くない。自分の為の何かを作ってそれを大事にすればいいんだから!」

  「……本当に……?私の為だけの何かを……作ってもいいの?」

  「うん!松世ちゃんが心から望むなら、きっとそれは素敵なものになるはずだよ。だから……ね?」

  ひばりが微笑みかけると松世は涙を拭いながら小さく笑った。

  そしてそのまま立ち上がると大きく伸びをする。

  「ん~っ!!なんかスッキリしたかも!」

  「ふふっ、良かった!それじゃあそろそろ帰りましょうか。」

  「そうだね、みんな待ってるしね!」

  そうして三人は連れ立って歩き出す。煌光の勇士と救うべき人間としてではなく友人として。

  こうして松世を欲望の怪物から救い出した少女たちは帰路につくのだった。

  「……けっ、もう少しで次の段階に進めたっていうのに……邪魔しやがって。」

  煌光の勇士たちが去った後、ヨクバリンは悪態をつきながらも松世から回収した欲望の結晶を回収して懐に収める。

  「大口叩いていた割には大したことなかったじゃない、ヨクバリンちゃん?」

  「うるせえな、黙ってろ」

  背後から現れた同じ組織に属する女性幹部、ケモノ獣人のフィリアーニャの挑発的な言葉に苛立ちを覚えながらも、ヨクバリンはその感情を表に出さぬよう注意しつつ言葉を返した。

  「あらら、怖いわね~♡そんな態度だと嫌われちゃうわよ?ただでさえあなたって愛想悪いんだから♡」

  「黙れって言ってるだろ?本当に耳障りな女だな、お前」

  「あら、それはお互い様でしょう?あなただって私の事嫌いよね。でも私はあなたの事好きよ?だから仲良くしましょう?♡」

  フィリアーニャはそう言うと妖艶な笑みを浮かべて見せたが、ヨクバリンはそれを無視するとそのまま姿を消したのだった。

  「……本当に可愛くない子なんだから♡ま、次はワタシの番だし……精々楽しませてもらおうかしら♪」

  そしてフィリアーニャもまたその場を後にする。

  晴れ渡った空とは裏腹に少女たちの心に暗雲が立ち込めようとしていた……。

  ⭐︎⭐︎⭐︎

  武智礼子と来栖ひばりは幼馴染である。

  先祖代々もものき原を統治して来た来栖の家に仕えてきた武智家の娘である礼子と、いわばもものき原を歴史上統治して来た家の姫であるひばり。

  幼い頃から一緒に過ごしてきた二人はまるで姉妹のような関係だった。

  武の家として様々な武芸を叩き込まれてきた礼子はスポーツ万能であり、快活そのものな性格で誰とでも分け隔てなく接することのできる少女である。

  一方のひばりも、性格は大人しく控えめだが芯の強さを持ち決して人前で弱みを見せることはない。

  乗馬と弓術を嗜む彼女は運動神経も良く、その凛とした佇まいから「白百合姫」と一部の生徒から呼ばれて絶大な人気を誇っていた。

  有体に言えば姫とそれを守る騎士、といった関係と見えるかもしれないが腐れ縁、悪友といった言葉の方が二人にとってはしっくり来るだろう。

  そんな二人はある日を境に煌光の勇士として目覚め、互いに支え合いながら戦ってきた。そして今日もまた……煌光の勇士として人知れず戦いの渦中へと身を投じる筈だったのだが……。

  「なんでわたし、馬に変身してるのかしら……?」

  煌光の勇士の一人、シルフィークーニュこと来栖ひばりは困惑していた。

  所謂魔法少女と呼ばれる存在に変身し、怪物と戦う煌光の勇士。

  しかし今彼女が変身している姿は明らかに馬である。

  短い毛並みに煌めくたてがみ、長く伸びた首に蹄を有した四肢。

  どこからどう見ても馬だ。しかもただの馬ではなく、競走馬のような立派な体格の美しい白毛の牡馬である。

  甲冑とフリルに彩られたドレスに身を包んだ馬と同様の意匠のルネシュバリエが騎乗すれば無敵の戦士にも見えたかもしれない。

  「そりゃ、ひばりちゃん乗馬やってるし。馬の神様に愛されてるんじゃないかな?綺麗だし強いし、ひばりちゃんにはピッタリだよ!」

  ペットボトルのお茶を一口飲んでから、もう一人の煌光の勇士である武智礼子がそう言った。

  彼女はひばりとは生まれた頃からの付き合いであり、幼馴染でもある。

  明るく人懐っこい性格で誰とでも打ち解けることが出来る彼女だが、同時に少し天然な所もあるようだ。

  「乗馬と馬は違うでしょう……。わたしだってこんな格好恥ずかしいわよ」

  ひばりはため息混じりにそう呟くと、自分の姿を見回した。

  普段の人間の姿のひばりを見れば、ほぼ全ての人が美少女だと思うであろう容姿をしている。

  黒髪ロングのストレートヘアに、切れ長の瞳に整った顔立ち。そしてスラリと伸びた手足と抜群のプロポーションはモデル顔負けであるし、その立ち振る舞いには気品すら感じられる。

  胸も大きく、制服のブラウスを押し上げてその存在をアピールしていた。

  それこそ礼子と同じような魔法少女のコスチュームを身に纏っていれば様になったであろう。

  「そんなこと言って、結構ノリノリで変身してるように見えるけどなー」

  「……っ!礼子!あなたねぇ……!」

  「あはは、ごめんごめん。冗談だよ」

  ひばりのジト目に睨まれて礼子は素直に謝ることにした。いつも凛としている幼馴染がこんな風に感情を露わにするのは珍しい事だし面白いと思う反面、あまり怒らせてしまうと後が大変だというのも理解しているからだ。

  「……でもさ、実際人気あると思うよ。ほらこれ」

  地方紙の表紙を彩っているのは煌光の勇士、ルネシュバリエとシルフィークーニュ。いつ撮影したものかは分からないが、煌光の勇士の特集記事が組まれているらしい。

  そこにはルネシュバリエの凛々しい姿と、彼女の愛馬であるクーニュの姿も写っていた。

  『謎の怪物騒ぎに颯爽と現れた正義のヒロイン。煌光の勇士と呼ばれる彼女達の正体は謎に包まれているが、その活躍は多くの人々を勇気づけている』

  『彼女らの活躍によって守られた命も多くあるだろう。住民の避難誘導、そして怪物との戦闘。煌光の勇士がいなければ今頃どうなっていたか分からない』

  『煌光の勇士はただの力を持った超大な存在ではなく、誰かの為に人知れず戦う身近な存在……真のヒーローだ』

  そんな記事の内容にひばりは思わず苦笑してしまう。

  「でもこれ……わたし達が本当にこんな格好してるなんて誰も思わないでしょうね。礼子だって金髪になって、こんな格好してるだなんて誰も気付かないでしょうし」

  ひばりはそう言いながら礼子のショートヘアをクシャりと撫でる。

  「ちょっと、ひばりちゃん!髪が乱れるからやめてよー」

  「ふふ、いいじゃない。可愛いわよ?礼子は昔から髪長いのに憧れてたものね」

  そう、ひばりのような長い黒髪に憧れていたが家の事情で短くするしかなかった礼子であった。

  「もう!ひばりちゃんってば!」

  「ふふ、ごめんごめん」

  頬を膨らませる礼子に謝りながら、ひばりは改めて自分の姿を鏡越しに見つめる。

  煌光の勇士として変身した姿は確かに美しい。初めて変身した時などは自分が四足獣になった事に驚きはしたものの、今ではすっかり慣れたものだ。

  しかしやはりこの格好には違和感があるし、何よりも恥ずかしさが勝ってしまう。

  しかし、それでも戦わなければならない時があるのだ。

  「ひばりちゃん、そろそろ私帰るね。今日はフィアンセくんとデートの日でしょ♪お熱いねぇ」

  「ちょっと!からかわないでよ!両親が勝手に決めた結婚相手よ!」

  「そうは言っても、良い関係なんでしょ?年下だし可愛いし。それに、ひばりちゃんだってまんざらでもなさそうだし」

  「もう!礼子ったら!」

  ひばりは顔を真っ赤にしながら叫んだが、礼子は笑いながら手を振って帰って行ったのだった。

  「……まったく……あの子ってば……」

  一人残されたひばりは小さくため息を吐くと、そのまま厩舎へと向かった。

  すると、金髪のくりくりした癖っ毛に愛らしい顔立ちの少年がこちらに駆け寄ってくる。

  「ひばりさん!今日は早かったんですね!」

  「あ……えぇ、まあね」

  許嫁のクレール・ド・ラ・リュヌこと、クレールは嬉しそうに駆け寄ってくるとそのままひばりに抱きつき頬ずりをする。

  「クレールくん、くすぐったいわ」

  ひばりが苦笑しつつそう言うと、クレールはハッとした様子で慌てて離れた。そして恥ずかしそうに顔を赤くしながら俯く。

  「す、すみません……つい……」

  「ふふ、いいのよ別に」

  そんなやり取りをしていると、他の馬たちがヒヒン!と嘶き声を上げたので二人は顔を見合わせて笑った。

  親同士に決められた許嫁である二人だが、弟のような存在であるクレールとの時間は心地良いものだった。

  「今日は何をしましょうか?遠乗りでもしますか?」

  「それもいいけれど……少し歩きたい気分なのよね。それに、たまには馬上ではなく一緒に歩いてみたいわ」

  ひばりはそう言うと厩舎から自分の愛馬を外に連れ出す。するとクレールは嬉しそうにひばりの側へと歩み寄った。

  「じゃあ行きましょうか、ひばりさん!」

  そう言って差し出された手を、ひばりはそっと握り返すとそのまま歩き出すのだった。

  自分の社会的立場や家柄など、ひばりは気にしない性格だ。

  しかし実情はもものき原の姫として煌光の勇士として、そしてクレールの許婚としての立場がある。

  結婚は確定した未来であり、そこに異論はない。

  クレールはリュヌ家の次男坊であり、来栖の家には将来的に婿入りすることになるのだがひばりにとってそれはさしたる問題ではなかった。

  クレールの事は好きか嫌いかと聞かれれば当然好きだと答えるだろう。

  自分が年下の少年にこうも心惹かれるとは思わなかったが、それもまた悪くないと思っている自分がいるのも事実だ。

  「どう?クレールくん。馬上もいいけれど、こうして歩くのもいいものでしょう?」

  「そうですね……。でも僕としてはやっぱりひばりさんと同じ目線で歩きたいです」

  「もう少ししたらわたしの背も追い越しちゃうかもしれないわよ?男の子の成長は早いんだから」

  「それは……そうかもしれませんけど……」

  クレールはどこか不満げに頬を膨らませる。そんな様子が可愛らしくて、ひばりは小さく笑った。そしてそのまま彼の頭を優しく撫でると、今度は逆に自分が手を握られてしまう。

  「……クレールくん?どうしたの?」

  「いえ……その……」

  クレールは少し照れ臭そうな様子を見せたが、やがて意を決したように口を開いた。

  「僕……ひばりさんのことが好きです」

  突然の告白にひばりは一瞬驚いた表情を浮かべるも、すぐに優しい笑みを浮かべるとそっと彼の手を握った。

  「ありがとうクレールくん。でもわたしもあなたのことが好きよ?許嫁だからではなく、一人の人間としてね」

  「……本当ですか?」

  「ええ本当よ。疑うなら……キスでもしてあげましょうか?」

  「えっ!?そ、それはちょっと……!」

  慌てふためくクレールを見てひばりはクスリと笑った。本当に可愛い反応を見せる少年だと思いつつ、そのまま彼の額に触れるだけの口づけをする。

  「ほら、これで信じるかしら?」

  「……はい」

  クレールは顔を真っ赤にしながら俯いたが、その表情はどこか嬉しそうだった。ひばりもそんな様子に思わず頬を染めるが、ふと身体の奥底から湧き上がる熱を感じ取る。

  「ひばりさん?どうかしたんですか?」

  「……ううん、なんでもないわ。す、少し疲れてしまっただけよ」

  そう言って誤魔化そうとするものの、体の奥底から湧き上がる熱は止まらない。それどころかどんどん強くなっていた。

  (なに……これ……?体が熱い……!)

  「大丈夫ですか?もしかして風邪でも引いたんじゃ……?」クレールが心配そうに見つめてくるが、ひばりはそれを手で制しながらなんとか平静を保てそうになく、思わず駆け出してしまう。

  「ちょちょっと、お手洗いに行ってくるわ!」

  「ひばりさん!?待ってください!一人で行っちゃ危ないですよ!!」

  そんなクレールの声を振り切って、ひばりは厩舎へと駆け込む。

  身体から光が溢れると同時に、ひばりは煌光の勇士としての姿へと変身した。

  いや、正確には半端な変身である。煌光の勇士としての姿、シルフィークーニュになっていない。

  白馬の姿であるシルフィークーニュになる前に、馬への変身としての力のみが顕現してしまったのだ。

  (これは……)

  ひばりは困惑した。しかしすぐに冷静さを取り戻すと状況を把握するために周囲を見渡した。

  目線は高くなり、厩舎の天井が見える。

  「ひばりさん!?大丈夫ですか!?」

  騒ぎを聞きつけたのか、クレールが慌てて駆け寄ってくる。そしてひばりの姿を見て息を呑んだ。そこには紛れもない白馬の姿があったからだ。

  「あ、あれ……?ひばりさんは……?それに、この馬……」

  クレールは目の前の光景に理解が追いつかないといった様子で混乱しているようだった。無理もないだろう。突然厩舎の中に現れた見知らぬ白馬がひばりであるなど、普通であれば想像もつかないだろう。

  「君は……?」

  クレールは恐る恐るといった様子で白馬に近付いていく。すると、ひばりは彼に向かって顔を近付けるとそのまま頬ずりをした。その感触はとても暖かく心地良く、まるで天使を撫でているかのような錯覚に陥るほどだった。

  「ちょ!?だ、駄目だよ!くすぐったいってば!」

  ぺろり。とひばりはクレールの顔を舐める。

  「わぷっ!?な、何するんだよ!もう!」

  嬉しそうに笑うクレール。そんな彼にひばりも優しく微笑んだ。

  (ふふ、可愛いわね)

  「か、からかわないでよ!僕は男なんだぞ!」

  そう言って頬を膨らませるクレールだったが、その仕草はやはり可愛らしいものでしかない。

  「迷い馬かなあ?こんな綺麗で可愛い白馬、見たことないや」

  クレールはそう言いながらひばりの首を優しく撫でた。するとひばりは気持ち良さそうに目を細めながら小さく嘶く。

  「綺麗な毛並みだし……それにすごく大人しいし……」

  (ふふ……)

  ひばりは小さく笑うと、今度はクレールの頬を舌で舐めた。

  「わひゃあっ!?な、なにするのさ!」

  慌てるクレールを見てひばりは思わず笑ってしまうが、すぐに我に返ると慌てて顔を離す。

  (いけない……つい)

  「もう!本当になんなの!?」

  そう言いながら頬を擦っているクレールだったが、その顔はどこか嬉しそうにも見える。

  「悪戯っ子だなあ、もう!」

  そう言うとクレールはひばりを優しく抱きしめた。その暖かな体温と心臓の鼓動を感じる度に、ひばりは自分の中にあった違和感が薄れていくのを感じた。

  (……ああ)

  「君はどこから来たの?迷子なの?」

  そう言いながらクレールは再びひばりの顔を撫でる。

  ぶるる、とひばりは小さく嘶き声を上げた。

  「可愛いなあ、君」

  そう言って微笑むクレールの顔を見ていると、ひばりの中で一つの感情が芽生え始めた。

  (わたしは……やっぱりこの子のことが……)

  そしてそれと同時に胸の奥底から熱いものが込み上げてくるのを感じた。それはまるで炎のような熱量と力強さを感じさせるものだった。

  その熱の正体が何なのかは分からないが、それでもひばりの胎はらの奥に灯った熱は着実に大きくなっていく。

  「……それにしてもひばりさん遅いなぁ。お手洗いが長すぎるよ」

  そう言って首を傾げるクレールをひばりはじっと見つめる。大きな瞳で見つめられ、クレールは少し気恥ずかしそうに視線を逸らすがそれでもまたすぐにひばりの方を見つめ直した。

  「本当に綺麗な目だね。まるで宝石みたいだ。君は知らない?ここのお姫様」

  ひばりは小さく嘶くとそのままクレールの顔へと自分の顔を近付ける。するとクレールは微笑んでひばりの頬を撫でた。

  「黒髪の綺麗な人なんだよ。とっても優しくて、素敵な人なんだ。……ぼくには、もったいないくらい」

  いつも見せる顔とは違う、どこか大人びた表情をしながらクレールはそう呟く。それはまるで自分の心を落ち着けているような仕草にも見えたが、それでも暗く沈んだ顔をしている。

  「……僕は、彼女にふさわしくなんかない。そんなの、自分が一番よく分かってるんだ」

  (クレールくん……?)

  「彼女の隣にはもっと相応しい人がいて……僕なんか見たいな人間じゃ……」

  クレールはそう言うと、再び俯いてしまった。そんな事ない!と叫びたくともこの身体では叶わない。ひばりはもどかしさを感じながら、それでもクレールに伝える為に精一杯嘶く。

  「ありがとう……慰めてくれてるんだね?優しい子だ」

  そう言って彼はひばりの頭を優しく撫でた。しかしその顔はやはり暗いままで、見ているこっちまで辛くなってくるほどだ。

  (クレールくん……)

  ひばりは切なげに目を細めると、そのまま彼の頬をぺろりと舐めた。

  「わひゃあっ!?」

  驚いた声を上げるクレールだったが、すぐに笑顔になるとひばりに向き合ったまま口を開く。

  「ありがとう」

  そう言うと彼は再び優しく微笑んだのだった……。

  その後、白馬は駆け出すように逃げていき、代わりに厩舎から戻ってきたひばりをクレールは笑顔で迎え入れた。しかしその表情にはどこか影があり、それを見たひばりは胸が締め付けられるような感覚に陥った。

  ⭐︎⭐︎⭐︎

  ──夜。

  クレールは自室のベッドに横になり、天井を見上げていた。胸が締め付けられるような痛みと、そして寂しさが襲ってくる。

  (ひばりさん)

  彼は心の中で彼女の名を呼んだ。しかし返事はない。当然だ、彼女はもうここにはいないのだから……。

  しかしそれ以上に彼の心を締め付けるものがあった。それは──。

  「今日のあの子……家に帰れたかな」

  そう呟くと、クレールは深いため息をついた。白い毛並みに青い瞳の白馬。そして彼女が自分の頬を舐めた時の感覚を思い出すだけで胸が締め付けられるようだった。

  クレール自身、人間より動物の方が好きだと言う自覚はあったが、あの白馬は特に可愛らしく思えたのだ。

  そう、彼の性愛は人間ではなく動物、とくに馬に向けられるものだった。

  だからこそあの白馬を見て、一瞬で恋に落ちてしまったのだ。

  許嫁のひばりを姉のように思うことはあっても、異性として意識しようにもその先……いつか果たさねば成らない儀式がある。

  まるで機能しない肉棒はしかし、人間以外ならば何の抵抗もなく屹立する。

  まるでそれを嘲笑うかのように……。

  それがクレールを傷付け、そして苛んでいるのだった。

  伝えられる筈もない、自分の本心を。

  「ひばりさん……僕は」

  そう呟きつつ、クレールは目を瞑る。瞼の裏に映るのは許嫁の姿ではなく、彼の想い人の姿だった。

  美しい馬体に煌めくたてがみ。

  草木の生い茂る森の中を疾走するその姿。

  凛々しく、そしてしなやかな体躯とそこに宿る魂の輝きにクレールは魅せられたのだ。

  だが、それは許されない恋であることも彼は知っている。だからこそ自分の想いを隠し続けていた。しかし今日だけは我慢ができなかったのである。

  「はぁ……っ、はぁっ!」

  クレールはズボンを脱ぎ捨てると、既にいきり立った肉棒を取り出した。そしてそれを握り込むとゆっくりと上下に動かし始める。

  「んっ……はぁ……」

  最初はぎこちなかった手の動きも次第に早くなっていく。やがて先端からは透明な液体が流れ出し始め、滑りがよくなってきた。

  あの大きな白い馬体に跨り、そして……。

  「ひばりさん……っ!」

  妄想の中でクレールは白馬に跨り腰を振る自分の姿を想像する。あの大きな馬体と柔らかな毛並みの感触を想像し、さらに興奮が高まってくるのを感じた。

  (ああ……)

  やがて限界が訪れたのか、彼は大きく痙攣し精を解き放とうとしたその時。

  「アラアラ♡どろどろした欲望のニオイがすると思ったら……こんなにカワイイ子がセンズリするニオイだなんて♡」

  突然聞こえてきた声に驚いてクレールがそちらへ振り向くと、そこには見知らぬ美女が立っていた。赤いボンテージに白いファーを肩にかけ、ウェーブがかかった銀髪に真っ赤な瞳。

  その全身は毛皮に覆われており、頭の上には大きな三角耳が立っている。

  腰からは細くしなやかな尻尾が生えており、直立歩行してこそいるが、その容姿は人間離れしていた。

  「な……っ!誰!?どこから入ってきたの!?」

  突然の闖入者に慌てふためくクレールだったが、そんな彼を面白がるように美女はクスクスと笑う。

  「うふふ♡ワタシの正体なんてどうでもいいじゃない?それよりキミの話よ♡」

  美女は妖艶な笑みを浮かべながらゆっくりと近付いてくる。その威圧感に気圧されながらもクレールはどうにか口を開いた。

  「な、何なんですか……あなたは……」

  震える声でそう言うクレールを見て、美女は舌なめずりをしながら答える。その仕草一つ一つが艶かしく見えた。

  「ワタシ?そうねぇ……わぁるい魔女さんってところかしら?」

  「ま……魔女……?」

  「そうよぉ♡キミの欲望を叶えてあげに来たの♡」

  (な、何を言って……?)クレールが混乱していると美女は更に続けた。

  「アナタ、人間以外の生き物が好きなんでしょ?しかも四足歩行の動物に欲情しちゃう変態さんなのよね?」

  「そ、それは……」

  クレールは否定しようとしたができなかった。事実だったからだ。しかしそれを他人に知られることは彼にとって何よりも危惧すべきことだった。

  だからこそ今まで隠し通してきたのだが、それが今こうしてバレてしまっていることに恐怖を覚える。

  「安心しなさいな♡誰にも言わないから♡」

  そう言うと美女はクレールに抱きついた。毛皮の暖かな感触が伝わってくると同時に甘い匂いが鼻腔を刺激する。

  その香りはクレールの思考を蕩けさせ、正常な判断力を奪っていった。そんな様子を見て美女はさらに笑みを深めると耳元で囁いた。

  「キミが望むなら……ワタシが叶えてあげる♡アナタのその欲望を……ね♡」

  「僕の……欲望……」

  「そうよ♡好きな相手と好きなだけ交尾がしたい……そんな欲望♡」

  美女の言葉にクレールはゴクリと唾を飲み込む。屹立した猛りは小柄な体躯には不釣り合いなほどに大きく、血管が浮き出るほど硬く反り返っている。

  「どう?キミの欲望……叶えてみたくない?」

  美女はそう言って妖艶に笑う。その笑顔を見た瞬間、クレールの中で何かが弾けたような気がした。

  そして彼は無意識のうちに首を縦に振っていたのである……。

  ⭐︎⭐︎⭐︎

  明くる日、武智家の道場で立ち会いが行われていた。

  礼子の目の前に相対するは身の丈190センチの大柄な青年だった。

  研ぎ澄まされた肉体と気迫。それだけで並々ならぬ実力の持ち主であることがわかる。

  上段に構えるその姿勢は隙がなく、まさに達人のそれであった。

  しかし目前の礼子は無刀のまま、静かに相手の出方を伺っている。

  異種なる武の立ち会い。

  礼子は今まで何度も経験しているものの、やはりこの緊張感は身体の芯まで染み渡っていく。

  そしてその瞬間、目の前の青年が動いた。

  空気を引き裂くような鋭い踏み込みと共に放たれた一撃は凄まじい速度で礼子に迫る。

  しかしそれに対して彼女は慌てることもなく冷静に対処した。

  体を僅かに捻って躱すとそのまま相手の懐に潜り込むべく前進する。しかしその動きは相手が思うより更に速く、そして深いものだった。

  振り下げよりも低く、床に滑るように足を運ぶ。

  それはまさに地を這う蛇のような動きであった。

  相手の視界から外れるように動くことで、相手から認識され難くすると同時に間合いを詰めることに成功したのである。

  「くっ……!」

  青年は咄嵯に防御の姿勢を取ろうとするが、既に遅い。礼子の放った掌底が鳩尾にめり込んだ。

  「がはっ!」

  青年は苦しそうな声を上げ、そのまま倒れ込む。気絶してもおかしくない完璧に入った一撃だったが、しかし彼はギリギリのところで持ち堪えていた。

  だがそれでも勝敗は決している。礼子は青年に手を差し出した。

  「大丈夫ですか?」

  青年はその手を掴むとゆっくりと立ち上がる。その表情には悔しさが滲んでいたが、それ以上にどこか清々しい様子も感じられた。

  「……ありがとうございました」

  青年が礼を言うと深々頭を下げる。

  武智は武の家だ。当主は皆女。当代の猛者の胤を宿すのは、最強である武智の女の役目である。

  よって礼子に立ち会って勝利を納めれば武智のひと枝となれるという慣習がこの家にはある。

  今の勝負で青年が勝利していれば、礼子は有無を言わさずこの男とまぐわって子を成していたことだろう。

  武智の名は表にこそまず出てこないが、闘いの社会では知らぬものはいないほどである。

  この青年とて只者ではなかろう。

  「凄まじい、ですね」

  青年が驚いたように呟く。礼子は満面な笑みを浮かべると、誇らしげに言った。

  「まぁこれでも次期当主ですから♪お兄さんも中々でしたよ?」

  その言葉に青年は照れたように頭を掻くと、再び深く頭を下げる。

  「例え今回のような木刀でなく、真剣でも同じように懐に潜り込んで来られる。そんな気がしました」

  青年の言葉に礼子は嬉しそうに微笑む。

  「それは光栄です♪次は刀でやってみたいですね」

  冗談なのか本気なのか分からない言葉に青年は苦笑するしかなかった。

  「また次の機会があれば是非」

  青年はそう言うと、そのまま武智家を後にした。その背中を見送った後礼子は大きく伸びをする。

  「いつ見ても凄いわね、礼子」

  正座で観戦していたひばりが感心したように言うと、礼子は照れ臭そうに頭を搔く。

  「まぁ私の取り柄って言ったらこれだけだからねぇ」

  謙遜した様子の礼子だったが、その顔はどこか嬉しそうだった。

  武智の婿取りの立ち会いには、慣例として来栖の人間が見届けることになっている。

  礼子の見合いは来栖の人間が取り仕切り、その見届け人となったのがひばりだったのだ。

  かれこれ2年は来栖の人間としてひばりは礼子に付き添っている。

  「それで、次のお見合いはいつ?」

  「うーん……まだ決まってないみたい。最近お見合いの話が来なくてさ、ちょっと不安なんだよね」

  「そうなの?」

  今日のような立ち会いは優しいほう、何より顔が礼子の好みでない限り、お見合いは悲惨な結果に終わる。

  再起不能になるような男もいる。

  「まぁ、自由恋愛出来ないのは分かってるけど、ちょっとねぇ……」

  礼子はそう言うとため息をついた。

  「ひばりちゃんは良いなあ……決まった相手が居て、しかもあんなカワイイ王子様でさ。私なんて今日みたいなキリッとしてる男の人からしたら女として見られないだろうし」

  礼子は冗談めかしてそう言ったが、ひばりは真剣な表情で首を振った。

  「そんな事ないわ。今日の方、きっと今度は刀を持って来るわよ」

  「え?なんで分かるの?」

  「だって、あの人……礼子に恋してたもの。目がね、キラキラしてたわ」

  ひばりの言葉に礼子は驚いたような表情を浮かべた後、恥ずかしそうに頬を赤らめた。

  「そ、そうかな……って!私冗談で言ったの!本当に真剣と素手だと危ないし……!」

  慌てる礼子だったが、ひばりはクスクスと笑う。

  「礼子だって剣でも槍でも持ち出せば良いのよ。それなら絶対負けないでしょう?」

  ひばりの言葉に礼子は一瞬キョトンとした顔をした後、満面の笑みを浮かべて言った。

  「そりゃ当然!」

  自信たっぷりな礼子の様子にひばりは微笑む。武智の家は武具ならなんでもござれ。

  要人警護の為徒手空拳から必要であれば刀から銃火器まで何でもござれで、それが武智の血なのだ。

  ルネシュバリエとして剣を振るう礼子は、こと剣技において全武智を凌駕する存在であった。

  だからこそ、立ち会いに於いては素手が常である。

  それに対して舐めた視線を送るのは武智に連なるものとしてあるまじき行為。今のところ、礼子の子宮を疼かせてくれるような相手は現れてはいない。

  しかし、もし現れたならば……それはきっと運命的な出会いであると言えるだろう。

  「お母さんだって17でお兄ちゃんを産んでるんだから、私もまだ掛かるかなあ……わざと負けるわけにもいかないし」

  礼子はそう言うと、道場の窓から外を眺める。真っ青な空が広がる快晴の日だった。

  当代の武智の子は4人兄妹で、皆種の違いで同じ母から産まれている。

  礼子の母、現当主の烈花は無敵の王として名を馳せており、その強さは礼子とて身をもって知っている。

  あの母が10代で負ける筈がない。

  そして、負けなければその身に子は宿らないのだ。

  (どうせ、自分が最強だからどの男の人でも良いって考えなんだろうなぁ……)

  礼子は母の性格を思い出し苦笑する。しかし、それは同時に彼女の強さの証明でもあった。

  (私もいつかはお母さんみたいに……)

  「あ、そうだ」

  礼子が何かを思い付いたような声を上げると、それに反応してひばりが首を傾げる。

  「どうしたの?」

  「ひばりちゃん、ちょっと付き合ってよ」

  「え?どこに?」

  突然の誘いに驚くひばりだったが礼子は特に気にすることもなく続ける。

  「いいからいいから!ほら早く準備して!」

  「ちょ、ちょっと待ってよ……!」

  こうして2人は屋敷を後にし街へ出かけるのだった。

  ⭐︎⭐︎⭐︎

  二人の向かったのは小さな公営温泉。もものき原には温泉が多く、この温泉もその一つである。

  「はぁ〜……気持ちいい……」

  湯船に浸かり、礼子が幸せそうな声を上げるとひばりもそれに同調するように大きく伸びをした。

  「本当ね……たまにはこういうのも良いわね」

  来栖の家にはこれより広い浴場があるが、ひばりはあまりそれを好まない。

  ぷかりと浮いたふたつまろみが湯船に浮かんでいる。その先端には薄桃色の突起が見え隠れしており、礼子はそれに目を奪われていた。

  「どうしたの?礼子」

  「おっきいなぁ……と思って」

  「そうかしら?」

  ひばりはそう言うと自分の胸を持ち上げてみせる。その動きに合わせてたぷんっと揺れる様子に礼子は思わず生唾を飲み込んだ。

  「うん……羨ましい!私もそれくらいあればなぁ……」

  礼子はそう言うと自分の胸に手を置いた。ひばりほどではない、小ぶりな乳房がそこにはある。

  「身軽な礼子にはこのくらいの大きさがちょうど良いのよ」

  ひばりはそう言うと微笑んだ。その笑顔に礼子もつられて微笑む。

  「確かに、ひばりちゃん変身してもおっぱいあるんだもん♪馬って言うより牛みたい」

  シルフィークーニュの脚間には確かな質量を持った脂肪の塊があった。衣装にあまり隠れていないので、その大きさはひばり自身がよくわかっている。

  「もー!礼子ったら!」

  ひばりが頬を膨らませると、礼子はその頬を指でつつく。ぷすっと空気の抜けた音がして、二人は笑い合った。

  そんなやり取りをしている内に時間は過ぎていく。温泉から上がる頃には2人の体は完全に温まり、火照った肌はほんのり赤く染まっていた。

  「ふぅ〜……さっぱりしたぁ」

  髪を乾かし終えた礼子は大きく伸びをした。突っ張った背筋に、張りのある乳房が揺れる。

  「ほらひばりちゃん♪」

  頬にひんやりとした感覚があり、思わず飛び上がる。

  「ひゃあ!」ひばりが悲鳴を上げた。

  「もう!礼子ったら!」

  ひばりは頬を膨らますも、差し出された牛乳の瓶を見るとすぐに機嫌を直す。「ありがとう」と小さく言うと、礼子からそれを受け取った。

  「たまには平和に過ごすのも良いよねえ」

  そう言いながら礼子は牛乳を飲み干した。空になった瓶を黄色いカゴに入れると、ひばりもそれに倣う。

  「そうね、でもいつヤリタイナーが現れないとも限らないから、油断は禁物よ?」

  ひばりの言葉に礼子は苦笑する。

  「分かってるって!常在戦場、でしょ」

  礼子はそう言うと自分の頬を軽く叩き気合いを入れる。ひばりもそれに倣うように自分の頬に手を当てて微笑んだ……その時だった。

  ラジオのくぐもった音声がスピーカーから流れてくる。

  『……げて下さい!現在もものき原牧場付近にて『ヤリタイナー』の目撃情報が相次いでいます! 特徴は白い体毛、赤い瞳……』

  休息も束の間。2人はすぐさま駆け出す。

  「牧場だとここからすぐ近くだね。急ごう!」

  「ええ!」

  2人は顔を見合わせると、そのまま走り出したのだった。

  ⭐︎⭐︎⭐︎

  もものき原牧場はもものき原の外れにある。普段は穏やかな風景が広がっているのだが、今は違う。

  逃げ惑う牛や羊があちこちで確認できた。そしてそれを追う異形の姿。まるで巨大な狼のようなそれは、鋭い牙を剥き出しにして唸りを上げている。

  それが動物を追いかけるように、牧場の動物達を襲っていた。

  『ヤリタイナー』は人間の性欲が具現化した怪物である。

  個人によってその欲望は様々な姿をとって現れるが、共通して言えるのは『ヤリたい』という感情に突き動かされているということ。

  そしてそれは人間だけに限らない。動物や虫、果ては無機物にまでその欲望を向けることがある。

  その怪物の傍らにはまたしても異形の存在、邪神の復活を目論む『邪神団』の幹部構成員の影がある。

  フィリアーニャもその一人だった。

  『ウフフ♡良い暴れっぷりねえ♡あんなに小さくてカワイイボウヤがこんなに大きくなっちゃうなんて♡』

  フィリアーニャは舌なめずりをする。彼女の視線の先にはヤリタイナーがいた。

  そう、クレール少年が変身した姿である。

  「グオオオ!」と咆哮を上げ、彼は目の前の牛馬を追っては吠えている。その度に彼の股間には大きく膨らんだ陰茎がビクンと跳ねるのであった。

  『ウフフ♡素敵よボウヤ♡』

  フィリアーニャは興奮気味に言うと腕を組んだ。豊満な乳房が腕に圧迫され、さらに強調される。

  『フフフ♡ウフフ♡』

  フィリアーニャは興奮のあまり笑い出した。浅ましい人間の欲望、それが具現化する。その滑稽な姿が彼女の嗜虐心を煽った。

  さて、どこまでこの少年は自分の欲望を醜く肥大化させていくのだろうか? フィリアーニャはそれを思うと自然と笑みが溢れてしまうのだった。

  「そこまでよ!」

  背後から鋭い声が聞こえたかと思うと、そこには2人の少女が立っている。

  礼子とひばりだ。

  フィリアーニャもこの存在の出現は予測していたのだろう。驚く様子もない。

  『あらぁ♡礼子ちゃんにひばりちゃんじゃない!』フィリアーニャは嬉しそうに微笑んだ。

  「そのヤリタイナーを元の人に戻しなさい!絶対に許さないんだから!」

  礼子が叫ぶように叫ぶと、彼女は腕を組んだままクスリと笑う。そしてわざとらしく首を傾げた。

  『ウフフ♡そんな事してもヤリタイナーになった人間はその欲求が満たされるまで止まらないわよ? それに、この子の性欲は底なしよ♡』

  フィリアーニャの言葉に礼子は歯噛みした。確かに彼女の言うことも一理ある。

  そう、根本的な解決が出来ない以上、この事態を収めるには元凶であるヤリタイナーを浄化するしかない。

  しかし問題はその手段だ。

  「グオオ!」と叫んでいるヤリタイナーを見てひばりは不安げに呟く。

  「あの様子じゃ説得も難しそうね……」

  『ウフフ♡そうねえ……でも大丈夫じゃないかしら♡』

  フィリアーニャの言葉に2人は首を傾げる。

  『さあ、変身してみせなさい煌光の勇士。せいぜい頑張ってこの子を元に戻してみてね♡』

  フィリアーニャの挑発的な言葉に礼子は一歩前に出た。

  「そう……なら、仕方がないわね」礼子の言葉を受けひばりも覚悟を決める。そして二人は同時に叫んだ。

  『煌めけ!希望の光!』

  2人が叫ぶと、それぞれの体が光に包まれていく。

  「ルミナスハート、セットアップ!」「シルフィーチャージ、セットアップ!」

  それぞれが異なる口上を述べ、変身シークエンスが進んでいく。礼子は銀の光に包まれ、ひばりは青い光に包まれた。そして光が収まるとそこには煌光の勇士が立っている。

  白馬に跨る月光の騎士、煌光の勇士だ。

  「月光の騎士、ルネシュバリエ!」「月光の疾風!シルフィークーニュ!」

  「『ルミナスハート!推参!!』」

  2人は高らかに名乗りを上げ、フィリアーニャを見据える。

  『ウフフ♡良いわねえ♡でも相手はあの子の方よお?』フィリアーニャが指差す先、そこにはヤリタイナーとなったクレール少年の姿があった。

  「グルルルル……」と唸り声を上げる彼は、まるで獣のように鋭い眼光を2人に浴びせる。その威圧感に2人は一瞬たじろいだ。

  「なんだろう……いつものヤリタイナーとちょっと違う気がする……」

  礼子は不安げに呟く。いつものヤリタイナーはもっと俗で、どこか人間味があった。しかし今回はまるで獣だ。

  その視線は、目の前のシルフィークーニュにのみ向けられていた。

  『ウフフ♡その通り、特別よ♡ねえ、クレールちゃん♡』

  衝撃的だった。

  フィリアーニャがよもや許嫁のクレールの名前を呼んだのだ。

  『なんですって!?』

  動揺を読み取ったかのように、ヤリタイナーと化した少年は雄叫びを上げ飛びかかってきた。その勢いは凄まじく、あっと言う間に距離を詰めてくる。

  「くっ……!」シルフィークーニュが身を躱すも、その動きすら読んでいるかのように彼は方向転換すると再び襲いかかってくる。

  「嘘でしょ!?なんで!?」

  ルネシュバリエの驚きも当然だった。直接会ったことも少ないが、クレールは聡明で心優しい少年だった。

  それが今はどうだ?まるで理性を失った獣ではないか。

  「グルルル……!」と唸り声を上げるヤリタイナーの攻撃をなんとか受け流すも、その力強さにシルフィークーニュはよろめく。

  『ウフフ♡どう?驚いたでしょう?でもまだまだよ♡』

  フィリアーニャの声に呼応するかのように、ヤリタイナーは次の攻撃を繰り出した。その素早い動きにシルフィークーニュが翻弄される中、苦戦を強いられる。

  「このっ……!」とルネシュバリエは剣を振るい応戦しようとするとクーニュが叫んだ。

  「やめて礼子!お願い!」

  『あら、優しいのね♡』

  フィリアーニャは嬉々として言う。その間もヤリタイナーの攻撃は止まらずシルフィークーニュを苦しめ続けていた。

  このままでは埒が開かないと判断したのか、ルネシュバリエが叫ぶ。

  「仕方ないよ!話が通じるような状態じゃない!とにかく浄化をするしかないよ!」

  『で、でも……』シルフィークーニュが躊躇っている隙に、ヤリタイナーは咆哮を上げると飛びかかってきた。咄嵯に身を躱すも、シュバリエは完全に避ける事は出来ず肩を強打してしまう。

  「あうッ!」

  『大丈夫!?』ひばりの声が聞こえたがそれに答える余裕はない。そのまま吹き飛ばされたルネシュバリエは柵に激突してしまう。

  「くうぅッ!」全身に衝撃が走るが、何とか耐える事に成功した。しかしルネシュバリエへの追撃はなく、ヤリタイナーの施設はクーニュにのみ向けられている。

  その目は欲望に燃えているようにも見えた。

  『わたしよ!クレールくん!お願い!正気に戻って!』

  ひばりは必死に呼びかけるがその声は届かない。ヤリタイナーと化したクレールの目は、シルフィークーニュしか捉えてはいなかった。

  そう、目の前の美しい牝馬しか見えていない。

  『ウフフ♡すごい欲望♡それじゃ、もう少し派手に行きましょうか♡』

  フィリアーニャの言葉と共にヤリタイナーの体に禍々しい力が渦巻き始めた。彼の肉棒がビクビクと脈打ち肥大化していく。

  『あ……あぁ……』そのおぞましい光景にシルフィークーニュは思わず後ずさった。

  それがなんなのか知らないひばりではない。しかし、それを目の当たりにするのは初めての事だ。

  『グルル……!グオオォッ!!』

  ヤリタイナーは雄叫びを上げるとそのままシルフィークーニュに飛びかかる。その動きはまるで獣のように俊敏だった。

  「くっ……!」

  慌てて駆けようにも間に合わない。ヤリタイナーの鉤爪がクーニュを掴み、そのまま地面へと押し倒されてしまう。

  「きゃあああっ!」

  衝撃と共に土煙が舞う中、ヤリタイナーはシルフィークーニュを組み敷いたまま一心不乱に躯を押し付ける。

  「うぐっ!や、やめて……!クレールくん……」

  『グオオォッ!!』

  クーニュの願いは届かず、ヤリタイナーはその欲望を満たそうとするかのように赤熱したかのような逸物を尻に擦り付ける。

  「うああっ!熱いっ!」

  その熱量にたまらず悲鳴を上げるシルフィークーニュを余所に、ヤリタイナーは腰を振り続けた。まるで交尾でもするかのように何度も何度も打ち付けられる肉棒の感覚に恐怖を覚えずにはいられなかった。

  今にも自分の陰部をコレが貫いて来るのかと思うと恐怖しか感じない。しかしそれ以上に自分にのしかかるのは間違いなく愛する婚約者なのだ。

  「クレールくん……!目を、覚まして!」

  『グルルル……!グオオッ!』

  シルフィークーニュの言葉など聞こえていないのか、ヤリタイナーは再び腰を打ち付け始めた。肉棒の先端が彼女の秘所に押し当てられるたびに嫌な汗が背中を伝う。

  「うあぁああっ!やだっ!そこは……!そこだけはだめっ!」

  「クーニュ!」

  ルネシュバリエは動かない身体をなんとか動かそうとするが、柵に阻まれてどうすることも出来ない。しかしこのままではクーニュは犯されてしまうだろう。

  『ウフフ♡良いわあ♡まさにケダモノね♡』

  フィリアーニャは楽しげに笑い声を上げる。そんな彼女にシルフィークーニュは叫んだ。

  「お願い!クレールくん!君はそんな人じゃない!目を覚まして!」

  『グルル……!』ヤリタイナーの動きが止まり、その目がシルフィークーニュを見据える。その瞳はどこか虚ろで焦点が合っていなかった。唯々、己の欲望を満たすためだけに動いているように見える。

  『あら?わからないのかしら♡その子はアナタを……いえ、アナタの美しい躰を犯したいのよ♡ そして、ぐちゃぐちゃになるまで犯して……孕ませたいのよ♡』

  『そんな嘘よ!クレールくんが、そんな……ああっ!』

  ヤリタイナーの腰がさらに強く押し付けられる。肉棒の先端が彼女の陰部に入り込もうとしていた。

  『キレイ……キレイ……お馬さん……かわいい……』

  うわ言のように呟くその声は確かにクレールの声である。しかし、その言葉とは裏腹に彼の腰の動きは激しくなっていく一方だった。

  『そんな……まさか……』

  ひばりの脳裏に浮かぶは先日の厩舎での出来事。

  『……僕は、彼女にふさわしくなんかない。そんなの、自分が一番よく分かってるんだ』

  あの悲しげな顔と馬となったひばりを撫でる優しい手つき。

  最近彼から感じる、どこか余所余所しい雰囲気。

  馬となった自分を見る目の、違和感。

  『いや……嘘よ……クレールくん……』

  ひばりはその瞳から大粒の涙をこぼした。だが、それはヤリタイナーと化した彼の耳には届いていないだろう。

  今はただ自分の欲望を満たすためだけの獣と化しているのだから。

  『そうよお♡ご想像の通り♡お馬さんにしか欲情出来ない変態さんなのよ♡ウフフ♡』

  後頭部を殴られたような衝撃がひばりを襲う。

  『嘘よ……そんなの……』

  信じたくなかった。だが、今目の前で起こっている現実が全てだ。

  クレールは他でもない、シルフィークーニュの馬体に欲情し、今まさに交尾しようとしているのだ。

  「あ……ああ……」

  ひばりは呆然としてヤリタイナーと化したクレールを見つめていた。愛する婚約者の姿に対する涙は止まらない。

  『グルルル……!』

  ヤリタイナーは腰を振りながら、シルフィークーニュの首筋に舌を這わせた。生暖かい感触が肌の上を這う感覚に鳥肌が立つ。

  そして次の瞬間、ヤリタイナーの口が彼女の首筋に噛み付いた。

  「きゃああ!?」突然の痛みと恐怖に悲鳴を上げるシルフィークーニュだったが、それでもなおヤリタイナーは止まらない。そのまま首筋を貪るように舐め回すと今度は耳に舌を差し入れた。

  ぬめりとした感触に背筋を震わせる。しかしそれすら許さないとばかりにヤリタイナーはさらに激しく責め立てた。

  「いやああっ!やめてぇ!」シルフィークーニュは悲鳴を上げたが、それは逆効果だったようでさらに強く噛まれてしまう。

  「うあああっ!!」痛みのあまり絶叫するが、それでもヤリタイナーの動きが止まることはない。それどころかより一層激しさを増したようにすら思えた。

  『グルルル……!』「い、いや……!やめて……!」

  シルフィークーニュの願いも虚しく、ヤリタイナーの動きはさらに激しくなっていくばかりだ。まるで獣のように荒い息を吐きながら腰を振り続けている。

  『ウフフ♡どう?気持ち良いでしょう?愛し合う二人、いや2匹かしら?それが一つになる瞬間は堪らないわねえ♡』

  フィリアーニャの声が頭に響く。だが今はそれどころではない。何とかしてこの状況から逃れなければ……!

  『グルルル……!』「あ、だめっ!そこは……!」

  ヤリタイナーの剛直がシルフィークーニュの膣口へと押し付けられるも、衣装に守られていて中に入る事は無い。しかしそれでもなおヤリタイナーはその行為をやめようとはしなかった。

  『グルルル……!』「いやっ!やめてぇ!」シルフィークーニュの懇願を無視し、ヤリタイナーは腰を動かし続ける。その度に彼女の衣装が破けていったが気にする余裕はなかった。

  「くっ……やめなさいっ!」

  ルネシュバリエの怒りの籠った言葉が響くと同時に、眩い閃光と化した一閃がヤリタイナーの背後から襲いかかった。

  無防備な状態からのこの渾身の一撃であれば必ずやヤリタイナーを浄化出来る、そう信じて放った一撃だ。しかし、その一閃はヤリタイナーの背中を浅く切り裂いただけに終わった。

  『あら?ダメよ♡』「な……!?」フィリアーニャの嘲笑うかのような声にルネシュバリエが驚愕した。

  瞬時にヤリタイナーの元に移動していたフィリアーニャの脚が、煌光の勇士の腹を蹴り上げる。

  「ぐうっ!」と呻きながら吹き飛ぶルネシュバリエにフィリアーニャが追撃を仕掛けた。

  『ウフフ♡』「あぐっ……!」ヤリタイナーを庇うかのように立ち塞がったフィリアーニャは、そのまま煌光の勇士を蹴り飛ばした。

  『ダメよおジャマしちゃあ♡どうせだからお姉さんと遊びましょうよ♡』

  フィリアーニャは笑みを浮かべると地面へと降り立ち、女豹のポーズをとった。何もセクシーな格好をしている訳ではない。

  ただ、その姿勢を取っただけでルネシュバリエはごくりと生唾を飲んだ。

  肉食獣のごとき眼光、そして全身から漂う危険な香り。

  『ウフフ♡どうしたの?お姉さんに見とれちゃった?』

  フィリアーニャの指先がゆっくりと地面を掻いた瞬間、烈火のごとき一飛びでルネシュバリエへと肉薄してきた。

  「くっ!」礼子が慌てて防御姿勢を取るも、盾を上に弾かれてしまう。そのままフィリアーニャの回し蹴りが煌光の勇士の腹部に炸裂した。

  「ぐうぅっ!」苦痛に顔を歪ませるも、この程度では終わらないと覚悟するルネシュバリエだったが次の行動に移る前に再びフィリアーニャの手が伸びてくる。

  『あらあらぁ♡ヒト相手のお行儀の良い動きじゃ、このお姉さんには通用しないわよぉ?』

  フィリアーニャはそう言いながら爪を煌光の勇士の衣装に突き立てる。

  『ほらぁ♡もっと頑張らないとぉ、お姉さんの爪で穴だらけになっちゃうわよぉ?』

  「くぅっ……!」礼子は必死に抵抗するがフィリアーニャはすかさず後ろに飛び退いて距離を離す。

  そして次の瞬間にはもう目の前に居た。

  「なっ……!?」『ウフフ♡驚いたかしら?』フィリアーニャは微笑むと、そのままルネシュバリエの咄嗟の攻撃をひらりと躱した。

  『遅いわよ♡』フィリアーニャのしなやかな腕から繰り出される一撃は、まるで鞭のようにルネシュバリエに巻きつくとそのまま投げ飛ばした。「きゃああっ!」悲鳴と共に地面を転がる礼子を見下ろしながらフィリアーニャは再び地面に降り立った。

  『ウフフ♡ほら頑張らないと♡大好きなお友達のロストバージンが決まっちゃうわよ?』

  フィリアーニャは嗜虐的な笑みを浮かべると、ゆっくりとヤリタイナーの元へ向かった。その後ろ姿を見ながら礼子は必死に立ち上がろうとするが力が入らない。

  「うぅ……くうっ……!」悔しさのあまり涙が溢れ出てくる。このままではシルフィークーニュの身が危ないというのに何も出来ない自分が情けなかった。

  人間相手なら男にだって負ける気はしないのに、相手が女でしかも人間ではないとなると話は別だ。

  「くうっ……くそおっ!」礼子は悔しさのあまり叫んだ。

  しかしその声は誰にも届かない。

  『グルルルッ!』ヤリタイナーはシルフィークーニュの首筋に噛み付いたまま離れようとしない。まるで絶対に獲物を逃さないというかのように。

  肉棒で尻を舐り、唾液を塗りつけるようにして首筋を舐め回す。

  『グルルルッ!』「うあっ……ああ……!」シルフィークーニュは涙を流しながら必死に耐えていた。しかしそれも長くは続かない。

  ヤリタイナーの剛直は既に限界近くまで膨張しており、今すぐにでも彼女の膣内に侵入せんとばかりに脈打ち続けている。

  『クレールくん……ごめんなさい……わたし、貴方がこんなに苦しんでるなんて……何も気付かなくて……』

  シルフィークーニュは涙ながらに懺悔の言葉を口にした。

  『馬が好きだって言ってたわよね?初めて会った日のことよ、覚えてる?』

  よもや届くまいと思っての独り言であったが、意外にもその言葉はヤリタイナーに届いていた。

  びくんとヤリタイナーの動きが止まる。そして次の瞬間にはシルフィークーニュの首筋から口を離すと、ハァハァと荒い息をしながら呟いた。

  『ひばりさんを愛してるから……だから僕は……!こんな事したくなかった!でも、止まらないんだ!!』

  ヤリタイナーの瞳からは大粒の涙が溢れ出て獣性で押し潰していた感情が溢れ出した証左に他ならなかった。

  『どうしようもないんだ!人間だって嫌いじゃないのに体が反応しない!努力しても無駄だった!僕は!僕はああああああ!!』

  ヤリタイナーは咆哮を上げた。まるで自分の中にある獣性を吐き出すかのように、叫びながら空を仰ぐ。

  『どうしたら良いんですか……。フィアンセにぼくは動物性愛者の異常者だと伝えろとでも?そんなのは無理だ。僕には彼女を愛しているという自負がある。だと言うのに、こんなのは裏切りだ!』

  ヤリタイナーの悲痛な叫びにシルフィークーニュの胸も締め付けられるような思いだった。彼女の感じている罪悪感は決して間違ってはいないものだったからだ。

  そんな彼女の心情を悟ったのかヤリタイナーはゆっくりと身体を離すと悲しげな声で呟いた。

  『僕を殺してください』

  『そんな事……出来ないわ!』

  シルフィークーニュの悲痛な叫びが響いた。だがヤリタイナーは首を振ると再び口を開く。

  『僕はもう戻れないんだ!だからお願いだ、美しい貴女の手で終わらせてくれ!』

  地面に横たわるルネシュバリエは何も出来ない無力感に苛まれていた。

  『くっ……!動け、私の身体っ!』しかしどれだけ念じようとも動く事はなかった。

  「くそぉっ……!」悔しさのあまり歯噛みする礼子の目の前で、ヤリタイナーはシルフィークーニュに自ら首を差し出した。

  浄化出来るかどうかすら不明。その心はあまりに限界まで追い詰められていた。

  『グルルルッ……』ヤリタイナーは覚悟を決めたかのように目を瞑る。シルフィークーニュは、来栖ひばりはしかし、彼に背を向けた。

  『どうして!?』

  ヤリタイナーの悲痛な叫びにシルフィークーニュは毅然に答えた。

  『分かったわ。わたしが……わたしが貴方を楽にしてあげる!』

  脚をずいと開き、性器をさらけ出す。すっかりボロボロになっていた衣装からは、シルフィークーニュのそこが丸見えになっており、濡れた蜜口は淫らに輝いている。

  つんとした肛門も、ぴっちり閉じた割れ目も全て丸見えだった。

  それがぱくぱくと物欲しげに開閉するたびに、中に見えるピンクの粘膜が顔を覗かせる。

  『貴方のその欲望を全て、わたしが受け止める。だから、お願い……クレールくん』

  シルフィークーニュの懇願にヤリタイナーは目を見開いたまま固まっていた。そして次の瞬間には彼女の元へと飛び込んだ。

  『グルルルッ!』「ああぁあっ!」シルフィークーニュが悲鳴を上げると同時に、肉棒が彼女の陰部に擦り付けられていく。

  ぬちゃりという音を立てて彼女の陰部と亀頭がキスをするかのように触れ合った。

  『優しいのね。貴方のそういうところ、大好きよ』

  シルフィークーニュは慈愛に満ちた表情を浮かべると自ら腰を突き出した。

  『グルルルッ!』ヤリタイナーはそれに応えるようにして肉棒を突き入れたのは、少し上の菊花。

  「うあぁあっ!」シルフィークーニュは背中を大きく仰け反らせながら叫び声を上げた。

  破瓜の痛みに構えていた所に、肛門へと巨大な肉棒が割って入って来たのだ。当然とも言えるだろう。

  想像以上にすんなり侵入してきた亀頭は、シルフィークーニュの腸内粘膜と擦れ合うようにして奥へ奥へと進んでいく。

  『グルルルッ!』「あがっ……ああ……!」ヤリタイナーは腰を振りながらピストン運動を始めた。

  その度にシルフィークーニュの口から苦しげな声が漏れ出るも、彼女は決してヤリタイナーから目を逸らす事はなかった。

  肉棒が抽挿される度に彼女の腸内からは腸液が溢れ出し、結合部から流れ出る。

  その滑り気が潤滑油となりヤリタイナーのピストン運動を加速させる結果となった。

  「うぐぅっ……!」シルフィークーニュは痛みに顔を歪ませるも決して弱音は吐くまいと唇を噛み締める。

  子宮が腸壁越しの振動により、歪に形を捻じ曲げている。

  腸内から感じる異物感がシルフィークーニュの思考能力を奪っていった。

  「あ……ああ……」

  『グルルルッ!』ヤリタイナーはシルフィークーニュが感じ始めた事に気付いたのか、さらに激しく腰を動かした。

  カクカクと腰を振るその動作は、まさに獣そのもの。

  腸壁越しに子宮を刺激され、シルフィークーニュの口から甘い吐息が漏れ始めた。

  「うわぁ……すごい……」

  先程まで雪辱に燃えていた礼子だが、その光景に思わず目を奪われてしまった。

  シルフィークーニュは懸命にヤリタイナーの欲望を受け入れている。

  『グルルルッ!』「あ……ああ……クレールくん……!」

  初めての性行為がこんな形になるなんて……。

  シルフィークーニュは悲しさと悔しさで涙を流していた。しかし、それと同時に彼女の心の中には不思議な感情が生まれつつあった。

  (わたし……クレールくんと一つになれて嬉しいって思っちゃってる……)

  腸内を犯されながら、シルフィークーニュはそんな思いを抱き始めていたのだ。

  肉棒が腸内を突き上げるたびにシルフィークーニュは甘い声を上げるようになっていた。

  「あ……ああ……!クレールくん……!」彼女の声に呼応するかのようにヤリタイナーの腰使いが激しくなっていく。

  シルフィークーニュの口から漏れる声が悦びを帯び始めた事に気が付いたヤリタイナーはさらにペースを上げた。

  ペニスは膨れていき、シルフィークーニュの腸内を埋め尽くす。

  (あ……ああ……!クレールくん……!出そうなのね……良いのよ!わたしの中に……!出して……!)

  シルフィークーニュは嘶いて愛する人に全てを委ねる意思表示をした。それを見たクレールは一気に駆け抜けた。

  『グルルルッ!!グルオオオオオオオ!!!』

  「あぁあああっ!!♡♡♡」

  シルフィークーニュは背中を仰け反らせて絶叫した。

  ヤリタイナーの肉棒から放たれた大量の精液が、腸内を焼き尽くさんとばかりに暴れ回る。

  それは今まで抑えて来た欲望全てを吐き出すかのような射精だった。

  肉棒がビクビクと脈打つ度にシルフィークーニュの腸内へと大量の白濁液が流れ込んでいく。

  (あ……ああ……出てるぅ……♡)

  射精の脈動のたびにヤリタイナーの身体が徐々に縮んでいき、やがて人の姿へと戻っていった。

  意識を失い、ぐったりとする彼を見たシルフィークーニュは、ゆっくりと身体を地面に横たえた。

  腸内に溜まった精液がどろりと音を立てて零れ落ちる。

  (クレールくん……)

  ヤリタイナーだった愛する人の頭を優しく撫でながらシルフィークーニュは思う。

  こんな形にはなってしまったけれど、自分に全てをさらけ出して身体を捧げてくれた。

  それが何よりも嬉しかったのだ。

  ヤリタイナーへと変貌していた今日のことは忘れてしまうであろうが、彼の心が少しでも安らかになれば良いとシルフィークーニュは願った。

  『あらあら、ハッピーエンドね♡』

  フィリアーニャの楽しげな声に、シルフィークーニュは燃え盛るような怒りを覚えた。

  「人の欲を暴走させておいて何がハッピーエンド……?ふざけないで!」

  純粋な怒りを見せるシルフィークーニュに対し、フィリアーニャは両手を上げて楽しげに笑った。

  『ごめんなさいね♡でも、面白いものが見れて満足したわぁ♡』

  そう言うとフィリアーニャは立ち上がりその場を去ろうとするも、その行く手を阻むようにしてシルフィークーニュが立ちはだかる。

  『礼子!いつまでグズグズしてるの!一度や二度の敗北で挫けてんじゃない!戦って!』

  座り込んでいたルネシュバリエの首根っこを咥えたかと思うと首の力で投げ飛ばし自らの背に無理やり騎乗させた。

  「うっ!?そんなんじゃないから!ただちょっと気が抜けちゃって……。もう、しょうがない!」

  心が折れかけていたルネシュバリエに喝が入り、再び闘志が燃え上がる。

  シルフィークーニュの背は熱いほどに熱を持ち、ルネシュバリエを鼓舞していた。

  「腸が煮え繰り返る思いよ……絶対に許さない」

  『あらぁ、まだやる気なのかしら?もう戦う力は残っていないかと思ってたわぁ♡』

  フィリアーニャが舌なめずりをしてニヤリと笑う。

  その笑みは余裕と自信に満ち溢れていた。

  万全の状態でも勝てるかどうか分からない相手であるのに、今のシルフィークーニュたちは満身創痍だった。

  それでも手負の獣は恐ろしい。

  怒りと愛によって、煌光の勇士に新たなる力が生まれようとしていた。

  『いくわよ!煌光の勇士の真の力を、見せてあげる!!』

  「うん!貴方たちの邪悪な欲望は私たちが浄化する!」

  燃える炎と吹き荒れる嵐がその身を包み込んで行く。

  煌きを増した二人の勇士は新たなる力を得て、今ここに覚醒する。

  『燃える炎は愛の怒り!煌光の勇士シルフィークーニュ・ラヴァーレ!!』『吹き荒ぶ嵐は愛の証!煌光の勇士ルネシュバリエ・フランメ!』

  二人の声が重なり、その身を光が包み込んだ。

  ユニコーンの如き一角獣を模した鎧を身に纏ったシルフィークーニュと紅いマントと大剣を手にしたルネシュバリエがフィリアーニャを見据えていた。

  『あらぁ、すごいわぁ♡』

  ぱちぱちと拍手しながらフィリアーニャは目を細める。

  『見せてあげるわ!私たちが手に入れた新しい力を!』シルフィークーニュの言葉にルネシュバリエが力強く頷いた。

  「いくよ!リベンジマッチ、受けて貰うよ!」

  『あらあら、暑苦しいのは嫌いなの。さぁて、姿が変わったぐらいで簡単に勝てるかしら?』

  フィリアーニャは余裕の表情を浮かべながら二人を待ち構える。

  それを見たシルフィークーニュとルネシュバリエは同時に地面を蹴った。

  『煌きなさい!』「はぁああっ!」シュバリエの大剣が火花を散らしながら迫り来るが直線的な突進にフィリアーニャも余裕を持って回避しようと身を翻す、しかし次の瞬間には目の前にはシルフィークーニュの姿があった。

  一角獣の角の一撃をかろうじて受け止めるが、その力に押し切られそうになる。

  『っ……やってくれるじゃない♡』フィリアーニャは不敵に笑うと背後に飛び退き距離を取る。

  「逃さないよ!」すかさずルネシュバリエの大剣の追撃が襲い掛かり、その重い一撃を受け止めたフィリアーニャは顔をしかめる。

  それは彼女が初めて見せた苛立ちと苦痛の表情だった。

  『小癪な真似をしてくれるわね……!』フィリアーニャはギリリと歯を食い縛りながらシルフィークーニュを睨み付けるも、その瞳には余裕の光が宿っている。

  『その減らず口、叩けなくしてあげる!』

  シルフィークーニュがそう嘶くと、その背に跨ったルネシュバリエが頷く。

  「いくよ!ラヴァーレ!」「ええ、フランメ!!」二人の掛け声と共にフィリアーニャ目掛け駆け出す。

  必殺の一撃を繰り出すべく、シルフィークーニュは炎に包まれ、ルネシュバリエは嵐を纏い武器を構えた。

  「たあああああっ!!」シュバリエの咆哮と共に炎と風が混ざり合い竜巻となる。

  その一撃はルネシュバリエの持つ大剣を包み込み巨大な炎の竜巻を生み出した。

  『これは……迂闊だったわね♡まあ欲望はたんまりと頂いたし……そろそろ潮時かしら♡』

  フィリアーニャは迫る竜巻を見上げながら不敵な笑みを浮かべた。

  「ルミナスハート・フィナーレ!!」

  シルフィークーニュの掛け声と共に竜巻が巨大な炎の渦となってフィリアーニャを飲み込んだ。

  欲望を滅却するその一撃を受けては、さすがのフィリアーニャも無傷ではいられない。

  「やった……!倒した!私たちの勝ち!」ルネシュバリエが喜びに声を上げる。

  『待って、シュバリエ。全く気配が感じられないわ。恐らくこれは……』

  シルフィークーニュが訝しげに呟く。

  逃げられた、そう確信する他ない。

  変身を解いて、礼子とひばりがフィリアーニャが消えたであろう方向に向き直るもなんの痕跡もない。

  「くっ……逃がしちゃった……」

  「仕方がないわ……それより……」

  「うん……私達もそろそろ限界みたい……」

  変身を解いた礼子とひばりが地面にへたり込む。二人とも疲労困憊の様子だ。

  大きすぎる力にはそれ相応のリスクが付きまとう。

  今回の激しい新たな変身と戦闘は二人の体力を著しく消耗させていた。

  そんな互いを見て、ひばりはクスリと笑う。

  「そうね……でも、いい運動になったんじゃない?」

  「もう!バカにしないでよ!私、本当に心配したんだからね!」

  礼子は頬を膨らませて、ひばりの胸をポカポカと叩く。

  「ふふ、ごめんね礼子。確かに……ちょっとお尻は痛むけど……でも、私は大丈夫。それより……」

  「うん……そうだね」

  二人はフィリアーニャが消えたであろう方向を見つめる。

  「次は負けないよ」

  「ええ、絶対に倒しましょう!」

  2人は決意を新たにするのだった。

  ⭐︎⭐︎⭐︎

  クレール少年が目を覚したのはその日の夜。涼しい夜風が彼の頬を撫でていた。

  「うっ……ここは……?」クレールは辺りを見回しながらゆっくりと身体を起こした。

  「あ、目を覚ましたのね……。良かった」

  ひばりは布団に寝かせていたクレール少年を優しく抱きしめ、頭をゆっくりと撫でた。

  「ひばり……さん……?」

  夜からの記憶が定かでなく、クレールはぼんやりとした頭で考える。

  (僕は……確か……ひばりさんと会ったあと……)

  霞がかった記憶を探るように考え込んでいると、ひばりがクレールをぎゅっと強く抱きしめた。

  「えっと……あの……」

  突然の抱擁に戸惑いながらも顔を赤らめる。

  「高熱を出して外で倒れている所をわたしの家まで運んだの。良かった、本当に……」

  ひばりの瞳には涙が滲んでおり、声も微かに震えていた。クレールはそんなひばりを安心させるように彼女の背中に手を回し優しく撫でさする。

  「ごめんなさい……僕、きっと迷惑をかけちゃったんですよね」

  申し訳なさそうに言うクレールに対して、今度はひばりが首を振った。

  「ううん……逆よ。あなたが倒れた時、わたしとても怖かったの……だからこうして無事なあなたの顔を見ることができて本当に嬉しいわ」

  ひばりの言葉にクレールは胸が熱くなるのを感じた。

  「ありがとうございます……」

  クレールも小さく微笑み返すとお互いの視線が交錯する。

  「何故でしょうね……すごく、すっきりしたような……今までの人生で1番と言っていいぐらいはっきりとして、そして迷いのない気持ちなんです」

  迷いなく澱みなく、はっきりと自分の思いを告げるクレールの姿はこれまでとはまるで別人のようだった。

  その瞳には確かな意志が宿っており、とても子供とは思えない程の強い輝きを持っていた。

  「ひばりさん」

  すっとクレールがひばりの手を握れば、彼女もそれに応えるように握り返す。

  「貴方が好きです」

  真っ直ぐなその言葉にひばりは顔を赤らめながらも、しっかりと彼の瞳を見つめ返した。

  「でも、僕は……貴方を幸せにできる自信がありません」

  「クレールくん……」

  ひばりはそっと彼の手に自分のもう片方の手を重ね、優しく包み込むようにして握り返した。

  「本当に優しい人なんですね、ひばりさんは。でも、だからこそ、僕は貴方の側にいる資格はないんです」

  まっすぐで、それでいてどこか悲しげな彼の表情を見て、ひばりは思わず目頭が熱くなるのを感じた。

  「僕は、ダメなんです。人間の女性に身体が反応しないんですよ。だから、僕は一生子を残すことができない。そんな許嫁は、ひばりさんには相応しくありません」

  そう呟くクレールの頬には一筋の雫が流れ落ちる。

  そんな様子を見て、ひばりはゆっくりと顔を近づけると優しく彼の目元にキスをする。

  「っ……!?」驚いた顔をするクレールに微笑みかけながら彼女は言葉を続けた。

  「わたしは、貴方がどれだけ苦しい思いをして来たのか分かろうともすることができなかったわ。それが、悔しいの」

  「ひばりさん……僕は、でも分かったところで軽蔑するでしょう?これはそういう呪いなんですから」

  クレールの言葉にひばりは小さく首を横に振って、真っ直ぐに彼の目を見つめた。

  「どんな事でも受け入れる覚悟はできてるの……だから、あなたが抱えている辛いもの全てを教えて欲しいわ」

  あまりの真摯さにクレールは息を飲む。そして数秒の沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。

  「ひばりさん……僕は……」

  深夜に嗚咽を漏らしながら心の内を明かそうとするクレールをひばりは強く抱きしめた。

  少年の手が、彼女の背へと回されると堰を切ったように涙が流れ落ちた。

  「僕は、ヒトには反応しないのに……馬には反応してしまうんです……。何故かは分からないけど……とにかく、馬にしか性的興奮を覚えないんです」

  分かっていたとは言え、あまりにも衝撃的な告白にひばりは思わず言葉を失ったが、すぐに気を取り直すと彼の頭を優しく撫でる。

  「……そうだったのね……今まで言えなくて辛かったでしょう」

  クレールは黙ったまま小さく頷く。そんな彼に対して、ひばりはさらに強く抱きしめると彼の耳元で囁くように語りかけた。

  「じゃあ、今度はわたしの秘密を打ち明けないとね」

  ひばりの言葉にクレールは驚いたような表情を浮かべた。

  「え……ひばりさんに何か……?」

  「ええ、実はそうなのよ」そう言って彼女は小さく微笑んだ。

  そしてすくっと立ち上がり、衣服を脱ぎ捨てる。

  「あ……え……?」突然のことにクレールは言葉を失った。

  ひばりの裸身が月明かりに照らされると、その美しい身体に目を奪われてしまうが身体は反応しない。

  大きく瑞々しい乳房にくびれのある腰、そしてお尻にかけてのラインがとても綺麗だ。

  しかし性欲は湧かず、ただ美しいと感じるのみだった。

  「一体……何を……?」

  戸惑いを隠せないクレールに対してひばりは優しく微笑むと、ゆっくりと縁側から庭へと降り立った。

  「ねぇ、クレールくん」

  ひばりは少し離れた位置で立ち止まるとクレールの方に向き直る。月明かりに照らされた彼女はとても神秘的で美しかった。

  「見ていて」

  ひばりがそう言うと、その足元から淡く輝くような白い光が広がり始める。それは瞬く間にひばりの身体を包み込んでいった。

  「なっ……!?」

  あまりの眩しさにクレールは手で顔を覆った。しかし次の瞬間には光は収まり、そこには美しい出立ちに身を包んだ白馬の姿があった。

  「シルフィー……クーニュ……?」

  『なんだ、知っていたのね』

  地方ニュースでも最近は毎日のように取り上げられている。今やこの地のアイドルと言っても過言ではない程に人気の存在だった。

  クレールは特にシルフィークーニュに思い入れがあり、その勇姿を何度もテレビやネットなどで見ていた。

  「ひばりさんがシルフィークーニュ……!?」

  クレールは驚愕の声を上げるが、それでもまだ信じられないと言った様子で目の前の光景を見つめていた。

  そんな様子を知ってか知らずかひばりはゆっくりと口を開いた。

  『そう……可笑しいわよね。人間から馬に変身して戦ってるだなんて』

  自嘲気味にひばりは笑った。その笑みにはどこか諦めのような感情が見え隠れしていた。

  『これがわたしの秘密。そして、わたしが戦う理由。この力で、人助けがしたいの』

  「ひばりさん……」

  クレールは彼女の言葉を受けて何かを考えるように押し黙ってしまう。

  『……軽蔑した?』ひばりは馬の姿のまま寂しげに尋ねてくるが、すぐに首を横に振ると優しく微笑んだ。

  「いいえ、そんなことはありません。むしろ……」

  もじもじとしながらクレールは言葉を詰まらせる。

  『むしろ……?』

  「その……とても綺麗だな、と……」

  その言葉にひばりは思わず吹き出してしまう。

  『ふふ、ありがとね』

  「いえ……こちらこそ」

  2人はお互いに見つめ合うと思わず笑い合ったのだった。

  『わたしだって初めはびっくりしちゃった。でも、不思議と腑に落ちたの。ああ、わたしはこのために生きていたんだなって』

  「ひばりさん……僕は……」

  クレールは何か言いかけたが、そこで言葉を止めてしまう。そんな彼に対してひばりは優しく語りかける。

  『ねぇ、クレールくん……。クレールくんの苦しみは、わたしにはとても想像もつかないものだと思う。でも……わたしは貴方を支えてあげたいと思ってるわ』

  「ひばりさん……」

  『だから、わたしをもっと頼って欲しい。何でも一人で抱え込もうとしないで……』

  ひばりの真っ直ぐな瞳に見つめられると不思議と心が落ち着いた。

  「ありがとう……ございます……」クレールは目に涙を浮かべながらひばりに抱きついた。

  『ふふ、可愛い子ね』ひばりは優しく鼻で彼の頭を撫でると、そっとその身体を離した。そしてそのままゆっくりと唇を重ねた。

  「んむっ!?」突然のことに驚いたが、すぐに長くて大きな舌がクレールの口内に侵入してくる。

  初めての感触に頭がパニックになりそうになるも、すぐに心地良さを覚え始める。そのまましばらくお互いの舌と唾液を絡ませた後、ゆっくりと口を離すと銀色の橋がかかった。

  「ぷはぁ……」ひばりは妖艶な笑みを浮かべると今度はクレールをそっと押すような形で縁側に立たせた。そしてそのまま尻をつき、文字通り四つん這いの姿勢になった。

  「ひばり……さん?」クレールの目の前には大きく実った大きなお尻と、そして愛液で濡れた女性器が広がっていた。

  『わたしね、馬の姿だと性欲と言うか……どうしようも出来ないの』

  恥ずかしそうに笑いながらひばりは続ける。

  『だからね、お願い……この身体が嫌でないなら……ここで、して』

  「ひばりさん……」クレールはゴクリと唾を飲み込む。そしてゆっくりと彼女の秘部に顔を近づけると舌先で優しく舐め上げた。

  『あっ♡』その瞬間、ひばリの身体に電流のような快感が走った。

  「だめぇ♡そこっ♡」

  今まで感じたことのない感覚に戸惑いつつも、ひばりは快楽に身を委ねる。

  「ひばリ……さんっ」

  クレールの舌使いはとても巧みで優しく、それでいて的確に敏感な部分を責めてくる。

  大ぶりな陰核を剥き上げて、舌先で転がすように刺激する。その度にひばリの腰が跳ね上がり、愛液が溢れ出す。

  「ああぁっ♡クレールくん……わたしっ♡」

  次第にひばりの声に余裕が無くなっていく。そんな彼女に追い打ちをかけるようにクレールは吸い付くようにして陰核にしゃぶりつく。

  ひとりでに開閉する陰唇は発情した牝そのもので、クレールはそれに吸い寄せられるかのように舌を入れ込んでいく。

  「ああっ♡だめぇぇっ♡」

  一際大きな声でひばりが叫んだ瞬間だった。彼女の下半身から潮が噴き出した。それはまるで噴水のように高く吹き上がり、クレールの顔や身体を濡らす。

  「はぁっ♡はぁ♡」

  ひばりは大きく肩を上下させながら呼吸を整える。

  『ご……ごめんなさい』「いえ、その……」クレールは顔を真っ赤にしながら答える。

  「とても綺麗でした……こんなに感じて……発情臭がこんなに……」

  「クレールくん……恥ずかしいから言わないで」

  『でも、嬉しい。もっとして』とひばリは四つん這いの体勢でお尻を高く上げる。

  その姿勢はまるで交尾をねだっているようで、クレールは思わず生唾を飲み込む。

  「夢じゃないんですよね……」

  『ええ、夢じゃないわよ』ひばりは優しく微笑みかける。

  『だから……来て』

  縁側に立っていても届くか怪しい高さのお尻にクレールは肉棒をあてがうと、ゆっくりと挿入していく。

  「んっ……ふぅっ……」ずぷっと音を立てて亀頭部分が膣内へ収まったところで一旦動きを止める。

  「大丈夫ですか……?」心配そうに尋ねるクレールに対してひばりはこくりと小さく首肯する。

  『お、大きい……わね。もう少しゆっくり、ね?』

  「は、はいっ!」そう言うとクレールはゆっくりと肉棒を押し込んでいく。

  ひばりの膣内はとても狭く窮屈だったが、それが逆に刺激となって射精感を煽った。しかしここで果てる訳にはいかないと歯を食いしばって耐え忍ぶ。

  やがて根元まで入り切ると、ひばリは深く息を吐いた。

  「全部……入っちゃいましたよ」

  そう言ってクレールは優しくひばりのお腹を撫でた。

  『ええ……わかるわ』

  「動きますね……」そう言うとクレールはゆっくりと腰を引いていき、そして一気に突き入れた。

  『ああぁぁ♡』

  突然の快感にひばリの膣内はぎゅっと締まり、クレールのものを締め付ける。その感覚に彼は一瞬意識を持っていかれそうになったがなんとか耐えるとピストン運動を始めた。

  「はぁっ……はぁ……」

  『あぁっ♡クレールくんっ♡すごいぃっ♡もっとぉ!』

  ひばりは蕩けたように身体を揺らすと、脚の間の乳房がぶるんぶるんと揺れ動く。

  「ひばリさん……綺麗です」そう言ってクレールは彼女の胸を鷲掴みにした。

  『あっ♡おっぱいもみながらなんてっ♡』そして空いた方の手で乳首を摘まみ上げた。その瞬間、膣内がさらに強く締まった。

  『だめぇっ♡もう♡イっちゃうっ♡』

  「僕も……出そうです……」そう言って一層激しく腰を打ち付ける。ひばりもまた、絶頂寸前の状態だった。子宮口を強くノックされその度にびりびりと電流が流れるような感覚に襲われる。そしてついにその時が訪れた。

  『ああああぁぁっ♡♡♡』

  一際大きな声でひばりが喘いだと同時に大量の潮を噴いた。それと同時に膣内が激しく収縮し、その締め付けに耐えきれずクレールも射精した。

  「うっ……!」

  『ああぁぁっ♡熱いのが……♡♡♡』

  どくんどくんと脈打ちながら大量の精液を流し込まれ、ひばりは幸せそうな表情を浮かべた。

  「はぁ……はぁ……」クレールは息を整えるとゆっくりと肉棒を引き抜いた、その瞬間にまたも潮吹きをした。

  『ああぁぁっ♡♡♡』そしてそのままぐったりと倒れ込み地面へとへたり込んでしまった。

  ヤリタイナーと化したクレールとの交尾よりずっと心満たされるものだった。

  『……クレールくん、もっと強く抱きしめて』そう言ってひばりは両腕を広げた。

  「はい……!」クレールは嬉しそうに微笑むと彼女の胸元に飛び込むようにして抱きついた。そして優しく背中を撫でながら耳元で囁くように語りかけた。

  「……こんな僕ですけども……これからも側に居させてくれませんか……?」

  ひばりはクスリと笑うとクレールに軽くキスをして答えた。

  『ふふ……これからも、ずっと一緒よ。こんな身体だけど、愛してくれる?』

  「勿論です」ひばりの乳房に顔を埋めながらクレールは即答する。そしてそのままぎゅっと強く抱きしめた。その暖かさを身体いっぱいに感じながらもまだ足りないとばかりに、お互いを求め合うようにして熱く激しく口づけを交わしたのだった。

  ──これから煌光の勇士はどのような困難に直面するのだろうか。

  きっと大丈夫だろうと、そう思えた。

  ひばりはクレールの頭を撫でながら、そっと微笑んだ。