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【R-18】不全な雄の筈であった【青姦/破瓜/自慰】

  老い、弱り、群れを追われた獅子を待つのは、死期を嗅ぎ付けた鬣犬や死肉を渇望する禿鷲の爪牙。傍から見れば無様なことだろう。しかし、それが誇り高い獣にとって誉ある最期なのだ。

  命は巡る。他者を血肉として生き長らえた。今度は己が他者の血肉となる番である。

  これで良い。これが良い。群れの長としての役目を碌に果たせなかったが、潔く群れを離れ、人知れず永久の眠りに旅立つ。遺す肉体は自然に帰し、誇り高く終わりを果たす。

  何も恐れることはない。全ての命が通る道である。

  そら来るぞ。血に飢えた生者達が――。

  「うわぁぁぁ! やめなさぁぁぁい!」

  弱った猛獣に集ろうとする獣の群れの間に立ちはだかるのは、松明を持った人間の女。

  獅子の男は霞む眼を見開き頼りなく震える背中を見上げる。

  鬣犬がけたたましく吠えながら女との距離を詰める。その度に女は松明を振りかざして追い払おうとするが、無数にいる鬣犬との距離は徐々に詰まる。

  女は腰から下げているポーチの中から何を取り出し地面や樹に投げ付けた。衝撃で弾けたそれは激臭を放ち、獣達は悲鳴を上げて去って行く。

  「ど、どうかしら! 私特性の催涙弾よ! 金にものを言わせて世界中の殺人級の唐辛子を詰め込んだんだから効かない訳ないわよね!」

  女は逃げて行く獣の背に向かって使った道具について高らかに解説をする。得意気に腕を組んで笑って見せるが、華奢な身体は今も激しく震え続けている。

  旅人、研究者、傭兵。外見だけを見る限りでは、どれにも当てはまらない育ちの良さそうな女がどういう事情でこんな闇夜の樹海にいるのだろうか。

  「全く大丈夫そうには見えないけど一応聞くわ。あなた大丈夫?」

  女は険しい表情で獅子の男の前にしゃがみ込む。警戒心を知らないのか、間近で獅子の男の容態を確認する。

  「どうしてそんなにボロボロなの? 服も着てないし、誘拐にでもあった?」

  女は竹製の水筒の栓を抜いて一口飲んで見せた後に獅子の男に差し出すが、獅子の男は受け取らない。

  「余計な真似を……」

  「……え、窮地を救ったつもりがお節介だったなんてことある? 冗談はやめて」

  命を救ったのだ。感謝はされど憎まれ口を叩かれる謂れは無い。

  女は口をへの字に曲げながらもう一度水筒を差し出す。やはり獅子の男は顔を背けて拒絶する。

  「お頭の足りなさそうなお嬢ちゃんに教えてやるよ。此処はただの森じゃない。樹海だぞ。人の手が行き届かない獣の聖域だ。一度迷い込んだら自然に食い殺される。そういう場所だ」

  「なんだ、意外と元気じゃない。早く水を飲みなさい」

  人の話を聞かない女の態度と図星を突かれた罰の悪さから思わず牙を剥く。しかし、女は怯むどころか呆れた様子で立ち上がった。

  「つまり、何? あなたはそういう場所だと知っていて一人で此処にいるってことは、自殺でもするつもりだったの?」

  獅子の男の唇が震える。

  これは自殺なんて低俗な行いではない。群れからの離脱。即ち自然に帰る崇高な儀式とも言える。だが、人間の女に獅子の掟について説明したところで理解など出来まい。

  「まぁ、人間生きていれば死にたくなることもあるわ。私もよく他の令嬢達に石を投げられてピーピー泣いていたもの。気持ちは解らなくもないわ。だから、あなたの死に様に口を出すつもりはないけど、流石に野生動物の生き餌になるのはお勧めしないわ。もっとマシな死に方なんて幾らでもあるでしょう」

  女の飄々とした物言いに獅子の男の額に青筋が走る。

  何一つ理解など出来てはいない。と吼えてやりたかったが、そこまでの体力はなかった。

  鋭利な眼光で女を睨み付けても女は話を続ける。

  「だから、私と一緒に素敵な死に方を探す旅をしましょう。じゃあ、まず溺死でも試してみましょうか」

  「んぶっ!?」

  女はぼさぼさ頭を鷲掴んで水筒の口を獅子の男の口に突っ込んだ。容赦なく口腔に流れ込んで来る水から逃れようとするが、衰弱している身体では碌に抵抗することも出来ない。

  呼吸が出来ない苦しみと極限の渇きに飢えている喉は無様にも上下した。

  獅子の男に水を飲ませた女は、何とかその巨体を立ち上がらせ移動する。偶然見つけた洞窟に入り、夜を明かすことに決めた。

  「私が何者かって? 今は、そうね。旅人であり、考古学者の卵であり傭兵よ」

  肩書きの多さに獅子獣人の男ライネルは、臭い物を嗅いだ時の顔をする。

  人間の女ユーリは、ある事情から単身で旅に出た。

  これでもユーリは貴族令嬢であり、デビュタントしたての頃は結婚相手を探すのに躍起になっていたが、考古学者である父の手伝いをしたのをきっかけに自分もその道にのめり込んでしまい、気づく頃には行き遅れてしまった。

  開き直り生涯独身を貫く覚悟で考古学研究に人生を捧げると決めたのが、今さら目が覚めた父親はユーリを嫁に出す為に他国まで遠征に出掛けてしまった。

  結婚相手が見つかったらまた仕事を手伝わせてやる。なんて手紙を貰った日には、それはもう憤慨したものだ。

  母は早くに他界しており、今は兄が爵位を継いだ。

  いつまでも実家にいる負い目もあり、結婚して家を出るべきなのも分かっているが、今さら嫁ぎ先を探したところで良い縁談があるとは思えないし、自分でも己は外れくじだと思っている。

  研究は紳士の趣味。貴族令嬢が婚期を逃してまで熱中するものではない。

  社交界に顔を出す度に変り者と後ろ指を差され、孤独感から逃げ出す為にまた研究に没頭した。

  誰がこんな女を嫁に貰いたいと言うのだ。もしいるのならそれは己よりもよっぽどの変わり者か、何かを企てる悪漢に違いない。

  決して自棄になって自虐しているつもりはないし、卑屈になっている訳でもない。

  寧ろ手遅れだからこそ諦めがついて心地が良い。

  それにも関わらず、父は自分を置いて一人で面白そうな遠征に行ってしまった。

  だから、意地でも合流してやろうと旅に出ることにした。しかし、さっそく問題が発生した。

  自国の検問所では、家族の同伴のない貴族令嬢は出国出来ないと弾かれてしまったのだ。

  そこで傭兵ギルドに目を付けた。傭兵ギルドに加入している者は、世界中で使える通行手形が配布される。それがあれば一人でも世界中の国を行き来することが可能になるのだ。

  しかし、誰でもギルドに加入出来る訳ではない。何かしらの特性、能力があると見做されることが加入条件であった。

  ユーリが示した己の特性は、勿論考古学で得た知識や調査技術。それと少し齧っている薬学のノウハウ。

  傭兵ギルドは何も戦闘に特化した者ばかりが集う場所ではない。人々の助けとなる技術と知識を持った者も大勢集まり救護者の許に派遣される。

  ユーリはその博識からギルド加入を許され、さっそく隣国で「古代遺跡調査補助求ム」と言う要請を受け自国を出立した。

  そう言った依頼を熟せば給金が手に入る。そして、その足で父を追う予定でいる。

  そこまで話を聞いたライネルは、冷めた眼差しで目の前の焚火を眺める。

  「お前は自分の使命から逃げたのか」

  「……まぁ、そうなるかもね」

  貴族の男に嫁ぎ子孫を繋ぐことが貴族令嬢の宿命とされる。そこから目を背けてやりたいことを選択し続けたのだ。その在り方は人によっては悪なのかもしれない。

  「恥を知れ。今すぐ実家に帰って貰い手を探すべきだ」

  「死に損ないのあなたに言われる筋合いはないわ」

  ライネルは鼻に皺を寄せて不快感を露わにするが、ユーリは余裕のある笑みを返す。

  自分よりもずっと若い小娘に弄ばれるのは屈辱だが、同時に小娘相手に向きになる気にもなれない。

  「そう言うあなたは何処から来たの? 見たところ獅子の獣人のようだけど」

  ユーリの問い掛けにライネルは十分過ぎる間を置いてから事情を話した。

  「……俺は群れの長だった」

  誰よりも立派な鬣と身体に生まれ実力で長の座を勝ち取った。

  群れの住処をより豊な大地に移し、数多の外敵から群れを守り、食い出のある獲物を狩っては群れに捧げた。

  長としての役目は概ね果せていたと思う。しかし、最も重要な仕事を果たせなかった。

  「俺は雄としての価値がない。一度も雌を孕ませられなかった」

  「……わぁぁ……」

  デリケート且つ気まずい話にユーリは視線を泳がせる。

  「獅子獣人の俺達は群れを成し、状況に応じて居住地を変える。その過程で他所の群れと数人の雌を交換し、長がその雌達を孕ませる。俺達、獅子獣人には婚姻の制度はない。兎に角交じり合って子孫を残すのが俺達の在り方だ。だが、俺は勃ちが悪い。勃って雌を抱けても孕ませたことは一度も」

  「そ、そこまで話さなくても大丈夫よ。話し辛いこと聞いてごめんなさい」

  ユーリには大した非はないけれど謝らずにはいられなかった。

  話題を変えようするがライネルは続ける。

  「子を成せないまま年を食った。力ではもう若い雄には勝てない。長は常に群れで一番強い雄と決まっている。だから長の座を賭けて群れの雄と戦い俺が破れた。負けた長は一人で群れを離れるが掟。そして……最期は人知れず自然に帰る。それが俺達の美徳だ。お前達人間には理解出来ないだろうがな」

  ユーリは真っ直ぐライネルを見詰めライネルもその澄んだ瞳を見詰め返す。

  「あなた達は孤高で誇り高き種族なのね。あなたの話しを聞いていると、先代から受け継いだ信念と志しを感じる」

  「……戯言を」

  「それにあなた達の死生観についてもとても興味深いわ。もしかしてあなた達は自然信仰の風習があるんじゃない? だから死を恐れていない。食物連鎖の在り方を良い意味で受け入れている。人間よりもずっと崇高で美しい種族だと私は思うわ」

  まさか古来より守り抜いて来た風習を余所者に理解され称えられる日が来るとは思わなかったライネルは、咄嗟にユーリから視線を外してしまう。

  「次のあなたの旅立は絶対に邪魔はしないと誓うわ。良い死に方も一緒に探す。でもそれまでの間はあなた達のことを他にも教えて欲しい。とても興味があるの」

  ライネルは反応に困りながらも再びユーリと視線を合わせる。

  屈託無い輝いた瞳からは、侮蔑に嘲りも感じられない。純粋な関心だけが読み取れる。

  「……」

  変な女だ。これまで出会った人種の中で群を抜いて癖が強い。

  それが、ライネルがユーリに抱いた印象だった。

  ライネルは成り行きでユーリに付いて行くことに決めた。

  数日、樹海を彷徨いながら魚や小動物を狩り、山菜や木の実で餓えを急ぎ、夜は火を起こして身体を温め、川を見つけたら水浴びをして極力清潔であるようにした。

  人里に出てすぐにライネルの衣類や食糧を調達し、今度は馬車移動で依頼があった古代遺跡に向かう。

  相乗り馬車で少し窮屈。二人は腕がぴったり触れ合う距離で小声で話す。

  「そう言えば、お前幾つだ?」

  「歳? 私は――」

  ユーリが年齢を告げるとライネルは驚愕する。

  ユーリは実年齢よりも若く見られがちで二十歳そこそこだろうと思っていたライネルは、想像よりもずっと年を重ねていることに驚きが隠せなかった。

  「思っていたより婆っ――」

  思ったことが口から零れ落ちた途端、真下から小さな手が顎を掴み強制的に口が閉じられる。危うく舌を噛むところだ。

  「そう言うあなたは幾つなのよ?」

  「俺は――」

  ユーリもまたライネルの年齢を聞いて雷に打たれる。

  「嘘よ! そんなに若い訳がっ――」

  「あぁ???」

  大きな手がユーリの顔を鷲掴みにする。ライネルは確かに実年齢よりも老けていることは自覚しているが、そんなに若い訳がないと断言されるのは癪に障る。

  良い歳をした大人の男女が子供みたいに言い争いをした末、互いにそっぽを向いて沈黙の攻防を続ける。

  そのうち、ユーリの方が船を漕ぎ始め夢現を彷徨う。

  子猫を胸に抱く夢だ。胸元でじゃれる子猫を撫でていると頭上で咆哮のような怒鳴り声に目が覚める。

  「おい!! 俺の連れだぞ! 触れるな!」

  ユーリの隣にいた中年の男の手をライネルが掴み上げている。

  その男はユーリが眠っている間にユーリの胸元を弄り、それに気が付いたライネルが激昂したのである。

  事情を把握した乗客と運転手は、その男を馬車から放り出した。

  唖然とするユーリを力強く抱き寄せたライネルは、自身が纏う外套の中にユーリをしまう。

  「もう大丈夫だ。俺に寄り掛かって寝ていろ」

  「???」

  ユーリの体温が上昇する。ライネルの突然の紳士らしい姿にときめいてしまい胸が苦しくて、二度目どころではない。けれど、厚意を無碍にすることが出来ず、暫し眠ったふりを続けた。

  †††

  目的の古代遺跡まではまだ先は長い。道中の雷雨の晩。そこそこ値の張る宿に駆け込んだ。

  「痛い出費だわ。もっと安い宿が良かったんだけど」

  手持ちの金が心許なくなるのは避けたいから安宿を求めたのだが、立ち寄った町の宿の殆どが満室だった為、端から選ぶ余地はなかった。

  なんとか入った宿も空室は一室のみ。言わずもがな、今夜は同室である。

  「この雨だ。仕方がな――」

  部屋に入り雨を吸った外套を脱いだユーリの姿にライネルは言葉を詰まらせる。

  酷い雨に降られた外套は雨除けの意味を果たしていなかった。ぐっしょり水を吸った服がユーリの身体に張り付き美しい曲線が浮き彫りになり、ほんのりと肌の色が透けている。

  水辺で水浴びをした際は、何があっても見たいように配慮していたのにも関わらずこれでは気遣いが台無しだ。これ以上は見てはいけない。そう思うのにユーリから目が離せない。

  鼓動が走り出す。掌がじっとり汗ばんで、眼球が渇いても瞬きも出来ない。

  生唾を飲み込んだ。その時、部屋の扉が叩かれた。

  「お客様。湯の用意が御座いますがお使いになられますか?」

  宿の女将の声にユーリは「えぇ、使わせて頂きます」と返事を返し、ライネルと向き直る。

  「先に行って来て」

  「ばっ……女のお前が先に入れ。体調を崩すぞ」

  「そう? ありがとう」

  ユーリはライネルの心遣いに感謝しながら部屋を出て湯浴みに向かった。

  部屋に一人取り残されたライネルは、苛立った手付きで重たい外套を脱ぎ自身の股間に視線をやった。

  「っ……なんでだ」

  股間の中心に高いテントが張っている。

  過去にこれほど完璧な起立を見せたことはなく、その持ち主であるライネルは動揺から片手で口元を押えた。

  物を確認しようと恐る恐るベルトを外し、前を寛げた途端にそれは勢いよく飛び出した。

  震える手で竿を掬い上げるように握りゆっくり扱く。

  次第に鈴口に無色透明な雫が生まれ大きく育ち過ぎた頃、弾けて竿を伝い扱く手を汚す。それでも竿を握る手を構わず上下に滑らせる。

  久し振りに味わう快楽に頭も身体も歓喜してもう射精に向かうことしか考えられない。

  深く目を瞑って女の裸体を思い浮かべる。過去に抱いた女は何人もいた。引き出しは幾らでもあった筈だが、瞼の裏に浮かぶのはユーリの笑顔と最程の艶めいた姿。

  酷い罪悪感と背徳感に苛まれるが、それが劣情の薪となる。理性と色欲を行き来しながら果てを何度も耐えてみせる。しかし、いよいよ限界が近い。

  「っ、っ~~イ……くっ……っ――!」

  弾ける間際、廊下から話声が近付いて来る。咄嗟に物をズボンの中に押し込めた所で扉が開かれる。

  「……どうして、着替えてないの?」

  宿の受け付けをした際に寝間着とタオルが支給されている。何故全身濡れたまま立ち竦んでいるのかと湯浴みから戻ったユーリに問われる。

  「どの道、風呂の時に着替えるんだ。手間だろう」

  「そう……?」

  首を傾げるユーリから逃げるように部屋から出て女将に連れられ浴室に向かった。

  その晩から微妙に距離を取られるようになったことにユーリは気が付いていたが、特にそれについて言及するでもなく旅路を行く。

  「ライネル、見て。あれよ。やっと着いたわ」

  高台の上から見える古代都市跡。その奥には地に半分ほど沈んでいる神殿と思われる建造物がある。

  目を輝かせながら駆け出すユーリをライネルはゆったりと後を追う。

  古代遺跡調査隊の隊長に挨拶を済ませると早速仕事が割り当てられる。

  兎に角発掘作業に尽力して欲しいということだった為、ライネルは土の色が異なる箇所――遺構周辺を大まかに掘る作業を担当し、ユーリは間もなく出土が見込まれる地層で鏨やハンマーを使って遺物の発掘を行う。

  なんで俺まで……。

  成り行きでマシな死に方とやらを探すことを目的にユーリに付いて来たが、今のところ良い情報は一つも入って来ていない。

  けれど、此処まで全て金の工面をして貰った。頼んではいないが、恩を返すつもりで手伝ってやれば良いと自分を納得させたライネルは、積極的に穴掘りを手伝う。

  ユーリとは分かれての作業だ。ユーリが何をしているのか気になってしまい、獣の耳を駆使してユーリの様子を伺った。

  「君は腕が良いな! どうだ、このままうちの学芸員になるのは」

  「前向きに検討させて頂きます」

  はぁぁあ???

  男に勧誘を受けて満更でもない様子のユーリが気に入らライネルの額に青筋が走る。

  父親に会いに行くのがこの旅の最終地点だろうが。そもそもマシな死に方とやらを俺に提示する為に引っ張って来た癖に早速目移りしやがった。土の中のガラクタが掘れればなんだって良いってのかよ。あぁ、そうかよ。俺のことはただの雑用にしようと思って生かしたんだろうな。最初からいけ好かない女だと思ってはいたが、此処まで露骨に俺を厄介払いしようとするなんてとんでもない女だ。

  「あんた、いつの間にそんなに掘ったんだよ」

  「まだ体力あるならこっちも手伝ってくれ」

  「?」

  気が付くと辺りがやたらと暗いことに気が付く。降って来た声を追って見上げると晴天が随分と狭くなっていた。無意識に必要以上に掘り進めてしまったらしい。

  学芸員達は作業が捗るからと大喜びだが、ライネルとしては全く誇らしくない。

  穴から這い出ようと地上に指を掛けた時、目の前に膝を突いたユーリと視線が合う。

  「一人でこんなに掘ったの? 流石、獅子の獣人ね。頼りになるわ」

  「!」

  花が咲いたような屈託のない眩しい笑顔で賞賛を受けたライネルの胸がじんと温かい痛みを帯びる。

  「食事の面倒は全て見てくれるみたいだから、頑張って働きましょう。あ、水分は取ってね」

  ガラス製の水筒がライネルに渡される。調査隊からの支給品だ。

  ユーリはまた後でね。と手を振って持ち場に戻った。

  「……」

  穴から這い出たライネルは、水筒に口を付けて己を呼ぶ学芸員達の許に向かった。

  †††

  真夜中に神殿の入り口に立つ不審な人影に重たい声音が襲う。

  「おい、何をしている」

  「ヒッ!」

  不審な人影――ユーリの喉から短い悲鳴が上がった。

  距離を取りながら振り返れば、眉間に皺を寄せたライネルが立っている。

  低い声音の正体がライネルであったことに安堵しながらも早鐘を打つ心臓を押さえながら憎らく唸る。

  「吃驚させないでよ」

  「悪いな。不審者だと思ったんだ」

  「失礼ね。ちゃんと中に入る許可は取ってあるわ」

  常々この神殿を見学したいと思っていたが、日中は発掘作業で忙しい為、夜の立ち入りを許可された。

  松明に火を付けたユーリにライネルは一緒に行くと言う。

  「俺も付き合ってやる」

  「えっ? 疲れているでしょう? 無理に来なくても……。ねぇ、ちょっと」

  ユーリの制止を振り切りように闇の中へと進むライネル。ユーリはその後ろを小走りで追い駆け結局二人並んで奥へと進む。

  内部にもかなりの土が入り込んでいおり進めない箇所が多いが、露出している巨大な壁画や一枚岩で出来た玉座にユーリは興奮が隠し切れない。

  目を輝かせながら荘厳な造りの椅子を照らしてよくよく観察していたが、注意事項を思い出す。

  「あ、気を付けて。毒のある植物が自生しているから――ってぇぇ!? 何をやっているの!?」

  振り向くとライネルが素手で蔓植物を鷲掴み引き抜いていた。

  「お前が歩きやすいように」

  軽率な行動にユーリはライネルに駆け寄りそれが何であるかを確認する。それは軽い神経毒を持っている植物であり、呆れた眼差しでライネルを睨む。

  「気遣いは嬉しいけど無暗に知らない動植物には触らないで。これは大した毒ではないけど早く手を洗った方が良いわ。もう帰りましょう」

  「――」

  歩き出したユーリに続こうとしたライネルだが、突如膝から力が抜けてその場に蹲る。

  「ライネル! 症状を教えて。吐き気はある? 眩暈は?」

  「っ……い、や……、大丈夫だ。お前は先に戻れ」

  「馬鹿じゃないの? 置いて行ける訳ないじゃない。でも、歩けないなら人を呼んで来るわ。待っていて」

  「待て!」

  駆け出そうとしたユーリの手を強い力で掴み引き留めた。

  「誰も寄越すな……少しすれば……おさ、まる……っ」

  歪む顔に滲む脂汗がユーリが持つ松明の明かりを反射する。

  頑な姿勢を見せるライネルの前にユーリは膝を突ついて視線を合わせながら優しく語り掛ける。

  「ライネル、小さな傷や軽い毒でも放置すれば命取りになるわ。あなたに相応しい死は此処じゃないでしょう」

  獅子の獣人故に弱っている姿を他者に見られたくないのだろうと思ったユーリは、真剣な表情で説得を試みる。

  ライネルも悟った。理由は話さなければユーリは引かない。だから、教えてやることにした。華奢な手を何度か握り直した後、強く引き寄せある物を握らせる。

  「……っ!?」

  「理解したか? お前の言う通り毒のせいだろうが、こんな有様だ。ほっといてくれ」

  服越しに感じる硬く熱を持ったそれにユーリの顔がカッと赤く染まった。

  「わ、分かっ……」

  距離を取ろうと逞しい肩に手を添えるが、掴まれた手は解放されない。

  「このままだとお前のこと、喰っちまうぞ」

  「っ~~お、落ち着いたら戻って来て!」

  ライネルの手から強引に脱げ出したユーリは駆け足でその場を離れた。

  ライネルは強い後悔から自身の鬣を掻き毟る。

  やってしまった。あんな風に脅かしてみっともない。可哀想なことをしてしまった。

  長いこと蓋をしていたユーリに対する欲求が、植物の毒によって抑えきれなくなった。

  日中はユーリの姿を探し求め、毎夜ユーリの姿を夢に見た。無邪気でありながら時折見せる大人の落ち着きや、女らしい仕草にときめきが止まらない日々。惚れてしまったことは疾うに気が付いていたが、認めてしまえば獅子の伝統を守れなくなる。

  暗闇の中。よく見える目でズボンの中から物を取り出す。

  やることは一つしかない。愛おしい姿を思い浮かべながら自身を慰める。

  「っ……っ……ゆー、り……ユーリッ――」

  その名を口にした途端に白濁が飛び出す。

  一度果てれば治まるかと思ったが、劣情は滾る一方で今度は乱暴に竿を扱く。

  喘ぎが漏れぬように食いしばって二度目の果てを目指す。

  「ユーリ……ユーリッ!」

  「き、聞こえてるってば」

  「!」

  緊張した声音に驚いて顔を上げる。そこには赤面したユーリが立っている。

  無様に放り出している魔羅をしまう余裕のないライネルは、ただ羞恥に染まった顔を見上げた。

  「どうして戻って来た?」

  「水……水を飲んで」

  ユーリは私物の水筒の栓を抜きライネルの口に付ける。

  言われるがまま半分ほど水を飲んだ後、動揺に揺れる瞳がライネルを真っ直ぐ見詰めた。単純に目のやり場に困っているのだ。

  「毒を抜くには体内の水分を抜くのが早いわ。兎に角、出せるものは出すの。わ、私が何を言っているか分かるわよね?」

  「……いや、分からない」

  「なんでぇ???」

  当惑するユーリの眼に薄い涙の幕が張られる。

  つまりなんだ。都合良く解釈して良いのなら、その毒抜きとやらを手伝ってくれるのか。否、駄目だ。付け込むな。卑怯な雄には成り下がらない。逃がしてやらないと。

  「襲っちまうって言っただろう。早く、戻れ……」

  「だ、だから……つ……付き合ってあげる」

  ユーリの返答に獣の瞳孔が点になるまで絞られる。

  ライネルの手がユーリの手を強く掴み、ユーリは咄嗟に身を引こうとする手遅れだ。

  「……正気か?」

  「え、えぇ……。言ったでしょう。命に関わることなの。だから、出せるものはなんでも、出した方が良いわ」

  「お前が手伝う必要はないと思うが」

  「もしその過程で体調が悪化したら困ると思って……。でも、嫌なら離れて――」

  大きな手がユーリの襟足をくしゃりと握った。

  ゆっくり顔を寄せて至近距離で視線が絡まり合う。

  「キスが……したい……」

  「そっ……それは、必要、かな?」

  「駄目か?」

  二人の距離は間も無く零になる。

  嫌ならば顔を背ければ良いだけのことだったが、ユーリは瞼をそっと閉じてライネルの口付けを受け入れた。

  繊細で優しい口付けだった。いつ理性が弾けても可笑しくない極限の状態でライネルは、最上級の慈しみを籠めてユーリに愛情を注ぐ。

  「……キスって……ドキドキするのね」

  額は合わせるが視線を合わせようとしないユーリは、初めての口付けの感想を溢す。

  男の一人や二人を知っていても可笑しくない歳だが、ユーリは貴族令嬢だ。貞操を守る義務がある為、夫以外の味を知ることは出来ない。

  けれど、こうしてライネルに口付けを捧げたのは、既に結婚は諦めているからだった。

  それとは反対に獅子の獣人には、そのような厳粛な規律はない為、成年を迎えた段階で男女共に純潔は散らす。故にユーリが口付けも知らないことに驚くが、次の瞬間には愛おしさが爆発し、理性が音を立てて崩壊する。

  「ユーリ……ユーリッ」

  「ンッ!?」

  小さい後頭部を強く掴んだライネルは、形の良い唇にしゃぶり付く。何度も角度を変えて下唇を吸った。

  次第にその場の空気に呑まれて行くユーリ。緊張していた身体は口付けの心地良さから弛緩してライネルに身を委ねる。

  ライネルの手がユーリの背中や肩を愛撫する。緩急を付けて大きく撫で回される快感に全身の毛が逆立ち堪らず逃げ出そうと細腕で分厚い胸を押し返すけれど、押し返し分だけユーリを抱く腕に力が込められた。

  「口を開けろ」

  「なにっ――!?」

  分厚く長い舌が濁流となって狭い口腔に侵入し、ざらついた舌の表面で小さな舌に絡み付いて執拗に扱く。淫靡で濃密な口付けは最早口淫。ユーリの女としての本能を刺激して胎にときめきを与える。

  感じたことのない昂りに怯えるユーリ。その様子を愉しむかのようにライネルは薄目を開けている。

  「ちょ、ちょっと待って! わ、私を触る必要はなくて、私があなたを」

  「愛したいんだ。頼む」

  「~~っ???」

  殺気に近い劣情の眼差しにユーリは緊張と羞恥から押し黙ってしまう。

  その隙にユーリの肩から外套を外し、ブラウスの釦を手際よく外して行く。下着に包まれたまろい柔肌が露わになるとライネルの息が上がる。その様はまさに獣。

  「ラ……ライネル? お、おちっ――アッ~~」

  緊張から汗ばむ艶やかな首筋に吸い寄せられた獣は優しくそこに口付ける。何度も何度も労わるようにわざとリップ音を立てて少しずつ滑り降りる。

  「だ……だめっ、ライネル……ライネル……っ」

  「ユーリ」

  双峰の谷に口元を埋め徐に舌を出して繰り返し柔肌を味わう。

  次第に塗りたぐった唾液が玉となって谷を滑り落ち薄い腹まで伝った。

  「――やっ」

  胸当てに指が掛かる。拒否しようと身動ぐユーリだったが、峯の飾りは簡単に暴かれ獣が透かさず食らい付く。

  「~~っ、やめ! な、なに、してっ」

  赤子に返ったかのように短い律動で乳頭を吸うライネルから目が離せないユーリ。

  どうにかして引き剥がそうと控えめにその頭を両手で包み込むように掴むけれど、ライネルはそれを「愛でられている」と勘違いして歓喜し、愛撫に熱が入る。

  じゅっと音が立った瞬間、乳頭の付け根が甘噛みされ縊れた腰が強く反った。

  「んぅぅっ~~~」

  ブラウスの裾から熱を持った両手が侵入し、胸当ての金具を外す。胸の拘束がなくなった不安感から腕で自身の双峰を抱えようとするが、ライネルがそれを許さない。脆い手首を片手一つで背後で束ね、剝き出しになった乳頭を口と手で丹念な愛撫を施す。

  すっかり固く緊張してしまった乳頭にたっぷりの唾液を纏わせ、指と掌で丁寧に塗り込む作業に没頭する。

  「っ、っ、っ、ら、らいねる? なに? なにが、したいの?」

  ライネルが何を求めているのかは理解していた。しかし、貴族令嬢として清く育ったユーリは、この行為――前戯の必要性についてはあまり理解していない。

  「交尾がしたい。来い」

  ライネルは地面に胡坐をかいた自身の膝の上にユーリを背中から座らせ、片足を自身の腕に掛けて開脚を強いる。

  「や、やだ! 何をするのっ」

  暴れるユーリを力で押さえ付けながら自身の中指と薬指を口に含んで唾液を纏わせる。その指をユーリの股座に持って行きショーツのクロッチから控えめに湿った秘部に触れる。

  白い喉から引き攣った悲鳴が上がる。

  先程までの反抗的な態度から一変し、恐怖心から小鹿のように震える。

  それを良いことにライネルは、陰列を濡れた指で繰り返しなぞった。

  徐々に水音が大きく鳴り響きユーリの呼吸も乱れ始める。水音の正体はライネルの唾液だけではない。快楽の蜜がじわじわと花弁の奥から溢れて来ていた。

  「ユーリ、入れるぞ」

  「へっ? ――ァアッ~~~~っ、っ、っ」

  耳介に唇を張り付けて優しい声音が宣言する。その瞬間、一般的な男の指よりも太い中指が真っ直ぐ蜜壺の中に差し込まれる。

  酷い痛みにユーリの眼からは涙がはらはらと零れ落ち、ライネルの腕にも降る。

  「痛いのか? 悪い……。今、良くしてやるからな」

  指が根元まで入ると指先が最奥を小突く。抽送は行わずに奥を柔く突き上げるだけに留める。

  隘路はひりつく痛みを抱えているが、最奥を小突かれる度に温い快楽が生まれてユーリは当惑する。

  「はぁっ……はぁっ、ぁ……? は……ンッ……ンッ……?」

  「こっちを向け」

  手淫を行いながら小さな顎を掴んで首を固定し、無防備な唇にむしゃぶり付く。

  唾液を流し込み飲ませては、お前のも寄越せとばかりに短い舌をしゃぶった。

  「~~~ッ――ッ~~~ッ――ッ」

  手淫は抽送の段階に入る。隘路を行き来しながら最奥を不規則に刺激され、ユーリの身体が時折痙攣を起こす。

  唇を離しユーリの表情を覗き込む。覚え始めの快楽に蕩けた表情。けれど、瞳はいまだに恐怖に揺らめき涙が止まらない。

  ライネルの胸が痛む。ユーリの善意に付け込んで無体を強いたことを改めて認識する。

  「ンッ」

  長い指が股座から引き抜かれた。

  「もう分かっただろう。このままだと本気でお前を喰っちまう。だからもう行け」

  最後の理性を振り絞ってユーリの拘束を解く。

  ユーリはもたつきながらもライネルの膝から退く。

  遠ざかって行く体温に手を伸ばし掛けるライネルだったが、拳を作り固く目を瞑って耐えた。

  それにも関わらず、温もりが自らの意志で戻って来た。

  「な、にを、している?」

  ユーリは両手をライネルの肩に置き馬乗りになる。

  その表情は相変わらず羞恥から赤く色付いているし、唇は震えている。けれど、その瞳は覚悟を決めていた。

  「せ……責任を要求するわ! 私を、辱めた責任を――ヒッ」

  強靭な腕が透かさず縊れた腰を掴み退路を塞ぐ。掌から伝わる震えが嗜虐欲と征服欲を燻らせ獣の呼吸がさらに荒くなる。

  「……具体的には?」

  「い、行き遅れとは言え、私は貴族令嬢なのよ……お、夫以外に乙女を捧げることは出来ないの。つまり、そのっ……わ、私を娶る覚悟はあるのかしら?」

  ライネルの三白眼が限界まで開かれ動揺から瞳が震える。

  ユーリの腰の重心が少しずつ落されショーツ越しに互いの陰部が擦れ合う。

  「……俺はきっとお前を孕ませられない。それでも俺で良いのか?」

  そう問いながらももう逃がしてはやらない。ライネルの手には力が籠る。

  終始強張っていたユーリの表情が解けて笑顔を見せた。

  「馬鹿な人。私はあなたさえいれば良いのよ」

  慈愛に満ちた優しい手がライネルの頬を撫でた。

  「でもっ――へアッ!?」

  話の途中。強引にクロッチがずらされ串刺しにされたユーリは、呼吸を忘れて尋常ではない異物感と圧迫感に悶え苦しむ。当然、痛みもあったが想像よりかはマシであった。ライネルの献身的な愛撫のお陰だろう。

  しかし、それはまだ半分程度しか納まっておらず、ライネルは少しずつ腕に力を入れてユーリの腰を落として行く。

  「っ……言ったな? 俺のものになるんだな? 違えるなよ」

  「~~~~~~~ッ」

  耳介にべったりと唇を付けて低く唸るように忠告しながらじわじわと挿入を深める。

  こつん。最奥に亀頭が届きユーリは身震いを起こす。

  汗ばむ顔に口付けの雨を降らせる中、ユーリは必死に言葉を繋ぐ。

  「その、代わりっ……、わた、し、だけ……私、だけに、して……。いっぷた、さい……とか、ゆるさな、い、からっ――アッ――アァァッ」

  一夫多妻は許さないと釘を刺すユーリが愛らしくて愛おしくて堪らないライネルは、弾力のあるまろい臀部を強く鷲掴み腕力だけで上下に振る。

  「ッ、ッ、ッ――、や、やぁぁっ……っ、っ」

  破瓜の痛みと快楽と羞恥とときめきに苛まれ腰が立たないユーリは、広い胸に身を預けける。

  たちゅん……たちゅん……たちゅん……。

  肌がぶつかり水音が立つ。ゆったりとした律動でありながらも力の籠った抽送に翻弄されるユーリは、上手く鳴けずに眉を寄せる。

  「俺を独占してくれるって言うのかよ。光栄だな……っ」

  「~~ンッ! ンッンッンッ――、う、ふぅ、はっ、アッ!」

  ぐちゃぐちゃな口付け。激しくなる水音と荒くなる息遣い。

  熱い、苦しい、気持ちが良い。目の前の男が愛おしい。

  ユーリは無意識のうちに自ら薄い唇を吸いライネルの劣情を煽る。

  「っ……お前こそ、どうしてくれるんだよ。お前のせいで死ねなくなった。責任を取るのはお前もだろう。ユーリ」

  「アッアッアッ~~、えっ? なん、で? なんでぇ???」

  「お前に惚れちまったって言ってんだよ」

  「ひぐっ――~~~~~~~~、あぁぁぁ、あぁぁっ、アッアッアッ――やっ、やぁぁっ! やらっ、そんな、に、しないでぇっ! もっと――もっとゆっ――やぁぁぁっ~~~~」

  ユーリの鳴き声を聞けば聞くほど滾るライネルは、射精に向かう為に激しい抽送を繰り返した。ユーリも初めて覚える何かが上り詰めて来る感覚に怯えて身体を強張らせる。

  「お前もっ……お前も俺だけにしておけ。もしお前が他の雄に目移りでもしたら、きっと俺はそいつを殺す」

  「アッ――な、にっ??? アッ――~~~~~ッ――~~~~~ッ――~~~~~ッ???」

  苛烈な独占欲を向けられたことが引き金となり、ユーリは初めての果てを迎えた。

  凄まじい締め付けにライネルは奥歯を噛み締める。額から大粒の汗が滲み滑り落ちた。

  「出るっ……出すからなっ……ユーリッ」

  白濁が迫り上り、切羽詰まったように唇を合わせユーリの呼吸を奪う。それから間もなく、鈴口を子宮口にぴったり合わせて多量の白濁を吐き出した。

  まるで放尿のような勢いで吐き出された子種は、一瞬でユーリの胎を満たし、溢れた分は結合部から滲み出る。

  ライネルは悟った。己はきっとユーリと出会う為に生まれ、ユーリを愛し、守り、孕ませる為にこの身体があるのだと。

  あれだけ雄としての自信がなかったにも関わらず、不思議と今はユーリを孕ませる気概がある。

  「ライネ、ル……?」

  解けた瞳で呆然とライネルを見上げるユーリの愛らしさといったらない。

  熱を持った頬を両手で包み甘やかすように口付けを交わす。

  心を通わせた二人は、愛を深め合いながら引き続き旅の最終地点であるユーリの父の許に向かう。

  しかし、あれだけ娘に結婚しろと言っていた父親が、いざ娘の男を目の前にして泣きじゃくり結婚を認めないと言い出す事態になるとは、この時はまだ想像もしていなかった。

  あとがき

  少し陰のある主人公と天真爛漫なヒロインの両片想いのお話を書いてみました。やはり、ハピエンしか勝たん、ですね。

  この後の展開も夢が膨らみますがこの辺でご容赦ください。

  次回のお話もお付き合い頂けると嬉しいです! FANBOXの方お是非、ご検討ください。

  最後までお付き合い頂きありがとうございました!

  銀鹿

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