塗り音

  私の働く保育所では塗り絵ならぬ塗り音の時間がある。

  私の伴奏に、子ども達は思い思いの楽器を手に音楽を奏でる。

  音楽学校時代、面白みのない音楽と評価された私の演奏。

  当時は私の演奏に何が足りないのか分からなかった。

  でも、今なら分かる。私に足りなかったのは音楽を楽しむ気持だった。

  私一人で演奏したなら、その音楽はやはりつまらない。私の音楽には色がない。

  だけど、子ども達の音楽は下手でも楽しそうで、そこには色が溢れている。

  私はキャンバスだ。子ども達が醸し出す音色をぐちゃぐちゃにならないよう受け止める。

  どんな音を出したとしても、それを音楽へと変えてみせる。

  楽譜に従うばかりが音楽ではない。音楽とはもっと自由に、楽しむべきものなんだ。

  楽しく演奏する事で音に色がつく。音色となったそれは音楽へと変わる。

  「しょうらい、おんがくかになる!」

  小さな楽器を手に大きな声で夢を掲げる子ども達。

  私の音楽も捨てたものじゃない。